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じゃあ、こういうのもありだよね?

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 子どもたちを子ども部屋のベッドに寝かせに行くと、じゃあと手を取られ、私の部屋へとジョージアと二人で戻っていく。
 デリアにも休みを出したので、今日はリアンが側についてくれるはずではあったのだが、どうも今日は部屋に誰も来ないようであった。


「ジョージア様、お出かけしないのですか?」
「今日は、屋敷でゆっくりするよ!アンナは少し出歩きすぎだよ?」
「……そうですけど」
「何処かに行きたかった?」


 ジョージアに寂しそうに言われると、私は首を横に振る。さっきまで子どもたちと朝食を取っていたソファに戻るとそこに座らされた。
 うしろからぎゅっと抱きしめられ肩口にジョージアの頭がとんっと乗ると小さくため息をつくジョージア。
 私は気づかなかった。いや、気づこうとしなかったのかもしれない。


「疲れてますか?」
「えっ?そんなことは……」
「……そうですか」
「うん、大丈夫。でもね、たまにはアンナに甘えたいし、甘えてもらいたい。夫婦なんだから、一緒に
 いる時間がもう少しだけほしいよ」


 私は、また、反省する。子どもたちだけでなく、ジョージアに寄り添うことも疎かにしていたのかと……


「……ごめんなさい」
「いや、我儘を言っているのもわかってるんだ。本来なら、俺がしないといけないアンバー領の改革を
 アンナが主導で動かしてくれているんだ」
「いいえ、私に配慮が足りないの。ジョージア様が何も言わないことをいいことに、好き勝手している
 ことは、わかっているもの……」


 しゅんと肩を落とすと、私に回していたジョージアの手に力が入る。


「アンナ、俺ね、今から物凄く情けないことを言うよ。聞きたくないなら、ここから離れてもいい。
 どうする?」


 選択権を私に委ねてくれるジョージアに、私は逆らわず聞くわと答えた。
 私が、聞かないといけないジョージアの心。私にしか話せないはずだ。まぁ、他に胸の内を話せる女性がいるなら別だけど……ディルが、それはないと言っていたので、私しかいないとほんの少しの自分への自信と、ジョージアが今から話すであろうことに少しだけ身構える。


「……よかった。聞いてくれるって言ってくれて」
「もちろんですよ!私は、ジョージア様の話はきちんと聞きます。私の耳に痛いお話が殆どでしょう
 けど……」


 ハハ……と耳元で笑うジョージア。
 それで?と少しだけ話す声音をあげて聞くと、耳元で囁かれる。
 不意をつかれてしまい、顔が真っ赤になった。聞きなれていても、この距離で不意に言われると恥ずかしい。
 ジョージアの落ち着いた声は、ゾクッと背中を何か這わすようであった。


「いい顔してるね?」
「煩いですよ?ジョージア様は、そうやってどこぞの令嬢を誑し込んでくるんですか?」
「滅相もない。アンナだけにしか、言ったことがないよ!」


 くっくっくっと笑うジョージアは、さっきより少しだけ声が明るくなった気がした。


「もぅ、いいです!ジョージア様は、聞いてほしい話があったのではないですか?」
「あぁ、そうだった。うちの奥さんの話を聞いてほしいんだ!」
「へぇーどんな奥さんなんです?」
「うちの奥さん、人という人を、特に男性を誑し込む天才なんだ!」
「た……誑し込んでなんていません!ジョージア様もウィルもみんな、誑し込むっていうけど……」
「自覚がないって怖いよね……本当に。俺なんて、公に離婚しろとまで言われたのに……すごい悩んだ
 のにさ?」
「公なんて、放っておけばいいのですよ!昨夜も言ったじゃないですか!」


 小さくため息をつくジョージアは、少し憐れんでいるように私を見る。


「なんですか?」
「公にそんな物言いをできるのは、アンナだけだよ。公は、本当に側に置きたいと思っているんだから
 アンナにだけは、甘いだろ?」
「……そんなことはないです!ジョージア様は、公が望めばこの手を手放しますか?」


 胸の前で交差されているジョージアの腕をギュっと掴むと、まさか!と苦笑いしている。


「アンナに離婚の意思がないなら、手放すわけがないよ。まぁ、考えなくはなかったけど……公に呼ば
 れて、城に何回か行ったけど、アンナを公妃にと言う話は割と出ていたんだ」
「お酒の席でですよね?」
「まぁ、そうだけど……意外と本当に欲しいものは、公はぐずぐずに酔わないと言わないんだけど、
 頻繁に言われていたとこに、この間の謁見で離婚を突きつけられたら、不安にもなるよ。その話を
 しようと思っていたら、『ジョージア様、コーコナへウィルと二人で行ってきます!』じゃ、不安に
 ならない方が不思議じゃない?」


 逆の立場なら……たぶん、たぶん、たぶん、しばらく口も聞かないだろう。忙しいのでとディルかデリアをかいしてジョージアを避ける。絶対に。


「……その奥さん、随分奔放なのですね?」
「うーん、わかってたことだけどね?元々、アンナの心の中をしめているのは、金の王子様だろ?」
「前はです。今は銀の王子様が私の唯一ですよ!奥様は、奔放に出歩いてますけど、戻る場所は、必ず
 銀の王子の隣だと決めているのですって!」
「そうなの?」
「そうですよ!疑っています?私……私って言っちゃった……もう、いっか……私は、ジョージア様が
 世界で4番目に好きですよ!愛しています!」
「4番目?1番じゃなくて?」
「ジョージア様は、私が1番好きなのですか?」
「……4番目か」
「私は、子どもたちが1番好きですから、三人もいれば、ジョージア様は自然と4番目になりますよね?」
「あぁ、そういうこと?」
「そういうことです。ジョージア様は、私が1番好き?」
「1番って言うより、アンナの変わりはいないよね?」
「こんなじゃじゃ馬のどこがいいのやら……」


 はぁ……と大きくため息をつく。それも、二人共がだ。


「どこと言うわけではなくて、アンナがアンナだからいいんだよ。俺を選んでくれてありがとう」
「それは、私も一緒ですよ!ジョージア様が、結婚を快諾してくれたから側にいられるのです」


 二人で笑いあうと、優しい雰囲気になった。さっきまでと違う温かい空気に私たちも頬が緩む。


「俺、聞きたかったんだけど?」
「なんですか?」
「もし、政略結婚じゃなかったとしたら……アンナは、どうしてた?」
「お父様に我儘言って、ジョージア様と結婚させてもらったかな?」
「お義父様も側に置いておきたかっただろう?例えば、仲のいいサンストーン公爵家とか。同じ筆頭公爵
 家であるわけだし、うちよりずっと財力も権力もあってアンナが苦労することもなかっただろう?」
「それでも、私はジョージア様の隣を希望しましたよ!アンジェラに会いたかったですし!」
「それが、1番なの?」
「私、ジョージア様に捨てられる『予知夢』見てましたからね……ジョージア様そっくりのアンジェラ
 が……何より愛おしいのですよ!」


 スヤスヤと眠ってしまった娘の顔を思い出すと、思わず微笑んでしまう。
 可愛い、可愛いアンジェラ。
 私の生きる理由であるが、生んでわかったことは、本当にアンジェラを愛していること。
 それだけじゃなく、今は私そっくりのネイトもソフィアの子であるジョージも私にとって大事な子どもたちだ。


「今は、俺そっくりなアンジーじゃなくて、俺がいるんだけど?」
「本当ですね?」
「はぁ……本当に奔放な奥様……」
「奥様は、いつもジョージア様を心の中で連れて歩いているんですからね!捨てないでくださいね!」
「俺のセリフ……」


 呆れながらもたれかかってきたジョージアの頭をポンポンとすると安心したよと甘えてきた。


「アンナは、疲れていない?」
「えぇ、昨日たっぷり寝ましたから……」
「そう……じゃあ、こういうのもありだよね?」


 そういった頃には、ジョージアに抱きかかえられベッドに転がされた。


「今日は、1日休暇だからゴロゴロとね?」
「……ゴロゴロとですね?そういえば、馬車からベッドまでは誰が運んでくれたのですか?起きたら、
 ジョージア様と一緒に眠っていたのですけど……」
「あぁ、俺が運んだ。他の男に触られたくないだろ?可愛らしく寝込んでいるうちの奥さんを」


 ニコッとジョージアのいい笑顔を最後に、1日ダラダラとベッドの上で過ごすこととなったのであった。
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