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座って話す、これからの話
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今回の謁見で話すつもりのことを話そうとやっと場が落ち着いた。
パルマを横に座らせ、私が話している間に当分の引継ぎ書を書かせる。
「それで、今回の謁見だが、アンバー領の実情を教えてくれ。変わったところはあるか?」
「うーん、そうですね……少しずつですが、私が思い描く改革の一端が進み始めました。こればっかり
は、一日や数日で終わるものばかりではなく、年単位での作業もありますから、今はそれを進めて
行っています」
「人手は、足りているか?石畳の街道を作るのであったな」
「まだ、始めたばかりで、そこに治水工事を含めていろいろとすすめ始めたので、人手は足りない気は
しています。ただ、それに伴って、金銭も足りていないのもあるので、他に雇うお金を工面するのが
先かなと考えています」
なるほど……と頷きながら、空を見ていた。きっとアンバー領の地図を思い浮かべているのだろう。やっと、石切りの町が終わった頃なのだ。人手はまだまだたくさんいる。
1年ごとに近衛は変わるので、作業が慣れた頃には公都に帰ってしまうので、一定期間作業が遅れることも考えられる。
「そういえば、お願いしたいことがあったのです」
「アンナリーゼからのお願いなんて、怖くて聞けないんだけど?」
宰相の方へ目配せをした公は大きくため息をついた。
「いいですよ!使えない文官を全てお返ししても」
「それは、困る。追加分出来れば再追加をお願いしたいくらいだ」
「頭でっかちばっかりで、本当に使えないんですからね!なんで、あんなプライドばかり高い文官を
連れてくるのですか?大変なんですよ!まずは、幼気な町娘に変装して文官たちの心をおったり、
できもしないのに大見え切られるから、本当にどこまで仕事が出来るかわからないし……私のところに
送りこんでくるのは、出来ない人ばかりなんですよね?あれが、城での普通の文官であれば、この国が
傾いていないのが不思議なくらいですよ?セバスやパルマのような本当に出来る文官や宰相がこの国を
かなりの部分、支えているんじゃないかと勘ぐりたくなりますよね?」
胡乱な目で対面の公を見ると、いや、どうだろう?かなり優秀な人材をだな……とぶつくさ言っている。これは、本当に人を見る目がないか、賄賂でももらって使えない文官ばかりを取り込んでいるのかわからないぞ?とさらに疑いの目を向けた。
「もし、優秀な方の人材を私に回してくれているというなら、評価方法を変えるべきです。あまりにも
仕事ができない上に、上司であるはずのセバスやイチアにとても反抗的。確かに爵位もちの子も来て
いますが、アンバーでは爵位ではなく仕事が出来る人を重宝しています。
例えば、セバスは男爵位ですから?子爵位の子や伯爵位の子なんかは、セバスのいうことを聞きま
せん。さらに、イチアはインゼロでは、公爵の軍師であり一目置かれる存在ではありましたが、
この国ではいち領民でしかありません。そんな人物のいうことを聞かないといけないのかと、蔑む
わけですよ!基本的に仕事は、してもしなくてもいい仕事をさせているので、育つどころかって言う
のが現状ですけど!」
「すまぬ。どうか、使えるようにしてほしい。若い者を育てなければならぬのだ」
「ご自身の側に置いてみてください。きっと、彼らがどんな人物かわかります。私にだけへりくだった
としても、何の意味もありませんから」
「……」
不満ではあった。近衛と一緒に送られてきた文官たちは、傲慢であり領民に対しても腹立たしい程の態度を取る。
私が目指している領地運営にどう考えても必要のないものなのだ。今回、イチアが使えるようにしておきますと言ってくれたが……たぶん、私がやった事よりもっと心を折るのであろう。傲慢である彼らをどのようにするのか、イチアの手腕に興味があったので何でもしていいと言ってきたのだ。
ただ飯食らいに、少々のことはしても私は何も言わずに目を瞑るつもりでいた。
「あぁ、言っておきますけど、私、今度の人選もそんな人ばかりだった場合、本気で心を折りに行き
ますから!私は、爵位がある文官が欲しいわけではなく、セバスやイチアを手助けしてくれる人が
欲しいのですよ!勘違いしないでくださいね?」
ニコリと笑いかけ、その後考え込む。腕を組み、何かいい案を……と言うところで思いついた。
セバスが2ヶ月くらいの間、城に戻るのだ。それなら、スカウトしてきてもらったらいい。
そういう人選でもいいだろう。
「公、セバスに人選させてもらえるなら、十人受入れましょう!」
「んぐ……そ……」
「いいでしょう!できれば、1年と言わず、3年の間アンバーにお貸しします。帰ってきたときに彼らに
役職を与えましょう。
そして、彼らがアンナリーゼ様の理想を叶えるために役に立たないと言うのであれば、人員交代で
大丈夫です。その後は、こちらでどんな扱いになるのかはしっかり議論した上で、残ってもらうのか
どうするかは決めます!」
「……宰相!」
「いいではないですか!アンナリーゼ様が使えると判断した人物は、優秀だと思います。
パルマを見てください。書ききれない程の引き継ぎ書を見てください。私たちが、見えない闇はこう
して若い文官を病ませてしまっているのですよ」
「すみません、あの……紙をいただけますか?続きを書きたいのですけど……」
パルマの書く手が止まったかと思ったら、真っ黒だ。まだ書くのか……と思わずにはいられない。
こんなふうに国を支えている人がいるから、この国はまだ、正常でいられるのではないだろうか。
ただ、国は正常でも人が正常じゃなくなったら、悲しいことである。
そんな国の頂にいる人物は、土台で頑張っているものにもう少し目を向けるべきだろう。
パルマに新しい紙を渡す代わりに書いた紙を見て、公も宰相も目を見開き言葉を失ったのであった。
パルマを横に座らせ、私が話している間に当分の引継ぎ書を書かせる。
「それで、今回の謁見だが、アンバー領の実情を教えてくれ。変わったところはあるか?」
「うーん、そうですね……少しずつですが、私が思い描く改革の一端が進み始めました。こればっかり
は、一日や数日で終わるものばかりではなく、年単位での作業もありますから、今はそれを進めて
行っています」
「人手は、足りているか?石畳の街道を作るのであったな」
「まだ、始めたばかりで、そこに治水工事を含めていろいろとすすめ始めたので、人手は足りない気は
しています。ただ、それに伴って、金銭も足りていないのもあるので、他に雇うお金を工面するのが
先かなと考えています」
なるほど……と頷きながら、空を見ていた。きっとアンバー領の地図を思い浮かべているのだろう。やっと、石切りの町が終わった頃なのだ。人手はまだまだたくさんいる。
1年ごとに近衛は変わるので、作業が慣れた頃には公都に帰ってしまうので、一定期間作業が遅れることも考えられる。
「そういえば、お願いしたいことがあったのです」
「アンナリーゼからのお願いなんて、怖くて聞けないんだけど?」
宰相の方へ目配せをした公は大きくため息をついた。
「いいですよ!使えない文官を全てお返ししても」
「それは、困る。追加分出来れば再追加をお願いしたいくらいだ」
「頭でっかちばっかりで、本当に使えないんですからね!なんで、あんなプライドばかり高い文官を
連れてくるのですか?大変なんですよ!まずは、幼気な町娘に変装して文官たちの心をおったり、
できもしないのに大見え切られるから、本当にどこまで仕事が出来るかわからないし……私のところに
送りこんでくるのは、出来ない人ばかりなんですよね?あれが、城での普通の文官であれば、この国が
傾いていないのが不思議なくらいですよ?セバスやパルマのような本当に出来る文官や宰相がこの国を
かなりの部分、支えているんじゃないかと勘ぐりたくなりますよね?」
胡乱な目で対面の公を見ると、いや、どうだろう?かなり優秀な人材をだな……とぶつくさ言っている。これは、本当に人を見る目がないか、賄賂でももらって使えない文官ばかりを取り込んでいるのかわからないぞ?とさらに疑いの目を向けた。
「もし、優秀な方の人材を私に回してくれているというなら、評価方法を変えるべきです。あまりにも
仕事ができない上に、上司であるはずのセバスやイチアにとても反抗的。確かに爵位もちの子も来て
いますが、アンバーでは爵位ではなく仕事が出来る人を重宝しています。
例えば、セバスは男爵位ですから?子爵位の子や伯爵位の子なんかは、セバスのいうことを聞きま
せん。さらに、イチアはインゼロでは、公爵の軍師であり一目置かれる存在ではありましたが、
この国ではいち領民でしかありません。そんな人物のいうことを聞かないといけないのかと、蔑む
わけですよ!基本的に仕事は、してもしなくてもいい仕事をさせているので、育つどころかって言う
のが現状ですけど!」
「すまぬ。どうか、使えるようにしてほしい。若い者を育てなければならぬのだ」
「ご自身の側に置いてみてください。きっと、彼らがどんな人物かわかります。私にだけへりくだった
としても、何の意味もありませんから」
「……」
不満ではあった。近衛と一緒に送られてきた文官たちは、傲慢であり領民に対しても腹立たしい程の態度を取る。
私が目指している領地運営にどう考えても必要のないものなのだ。今回、イチアが使えるようにしておきますと言ってくれたが……たぶん、私がやった事よりもっと心を折るのであろう。傲慢である彼らをどのようにするのか、イチアの手腕に興味があったので何でもしていいと言ってきたのだ。
ただ飯食らいに、少々のことはしても私は何も言わずに目を瞑るつもりでいた。
「あぁ、言っておきますけど、私、今度の人選もそんな人ばかりだった場合、本気で心を折りに行き
ますから!私は、爵位がある文官が欲しいわけではなく、セバスやイチアを手助けしてくれる人が
欲しいのですよ!勘違いしないでくださいね?」
ニコリと笑いかけ、その後考え込む。腕を組み、何かいい案を……と言うところで思いついた。
セバスが2ヶ月くらいの間、城に戻るのだ。それなら、スカウトしてきてもらったらいい。
そういう人選でもいいだろう。
「公、セバスに人選させてもらえるなら、十人受入れましょう!」
「んぐ……そ……」
「いいでしょう!できれば、1年と言わず、3年の間アンバーにお貸しします。帰ってきたときに彼らに
役職を与えましょう。
そして、彼らがアンナリーゼ様の理想を叶えるために役に立たないと言うのであれば、人員交代で
大丈夫です。その後は、こちらでどんな扱いになるのかはしっかり議論した上で、残ってもらうのか
どうするかは決めます!」
「……宰相!」
「いいではないですか!アンナリーゼ様が使えると判断した人物は、優秀だと思います。
パルマを見てください。書ききれない程の引き継ぎ書を見てください。私たちが、見えない闇はこう
して若い文官を病ませてしまっているのですよ」
「すみません、あの……紙をいただけますか?続きを書きたいのですけど……」
パルマの書く手が止まったかと思ったら、真っ黒だ。まだ書くのか……と思わずにはいられない。
こんなふうに国を支えている人がいるから、この国はまだ、正常でいられるのではないだろうか。
ただ、国は正常でも人が正常じゃなくなったら、悲しいことである。
そんな国の頂にいる人物は、土台で頑張っているものにもう少し目を向けるべきだろう。
パルマに新しい紙を渡す代わりに書いた紙を見て、公も宰相も目を見開き言葉を失ったのであった。
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