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久しぶりね!

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 レナンテに揺られ、コーコナにある領地の屋敷についた。ここまでの道のり、ウィルにボンゴレ作戦の話と間伐した木を何に使うかと話をしながら来たのであっという間だった。
 よいっしょっとレナンテから降りると、私に気づいた侍女のココナが急いで出迎えに来てくれる。


「アンナリーゼ様、おかえりなさいませ!」
「えぇ、今、帰ったわ!」


 ココナは、ディルに育てられた侍女でコーコナ領にあるこの領地の屋敷を纏めてくれている。
 久しぶりに来たコーコナの屋敷であったが、ココナの采配のおかげか、隅々まで行きわたっていた。
 ココナの後ろから何人か出迎えに来てくれたメイドや下男が頭を下げていた。


「そんなにかしこまら……」
「そういうわけには、まいりません。私たちは特に、アンナリーゼ様と関わる機会が少ないので、
 このようにお世話させていただけることを喜びと感じているのですから!」


 ココナに窘められ、私はそれ以上は何も言わなかった。それより、ココナに今後の話をしないといけないので、早速部屋を用意してもらうことにする。


「レナンテを休ませてあげて!おいしいご飯をお願いね!」
「畏まりました!アンナリーゼ様は、こちらにどうぞ!ウィル様?もどうぞ」


 ココナに連れられ、執務室へと入っていく。
 その場所は、公都やアンバー領の執務室と同じような並びに変えてある。デリアがきちんと整えてくれており、使い勝手がとてもいい。
 元々、ダドリー男爵の執務室にも関わらず、その雰囲気すら見る影もない。


「ここって、姫さんの執務室と一緒だな?」
「すごいでしょ?初めて来たときに、デリアがちゃんと整えてくれたんだよ!」
「デリアは、何でもできるんだな」
「デリアだけじゃなくて、アンバーの侍従たちはみんな優秀だよ!ビックリするくらい、優秀なんだ
 から!ねっ!ココナ」
「えぇ、とても優秀な方が多いです。その中でもデリアさんの活躍は、目に見張るものがあります!
 私の目標ですもの!」
「だそうだ、姫さん」
「デリアはね……特別だよね。事細やかになんでも器用にしちゃうんだもん。私も頭が上がらないわ!」
「それは、姫さんが怒られるようなことばかりしてるから上がらないんじゃねぇの?」
「……返す言葉もありません」


 ウィルに指摘されて私はしゅんと項垂れると、そんなやり取りが珍しいのかココナはクスっと笑う。


「仲がよろしいのですね?」
「そう?」
「そうかな?」


 私とウィルはお互いの顔を見たあと、ココナへ視線を戻すと、ほらそっくりと言われてしまう。
 そんなこと、面と向かって言われたことがなかったので、二人で苦笑いをした。
 そんな私たちをおいて、ココナは部屋から出て行こうとする。
 休憩をしによったのだと思われていたのだろう。ごゆっくりの言葉と共に扉の前で頭を下げた。


「待って、ココナ。私、今日はココナにお願いがあって、来たのよ!こっちに来て、腰をかけてくれる
 かしら?今から説明をするわ!」


 打ち合わせ用の椅子に座るようにいうと、おずおずと来てくれた。


「あの、どのような御用でしょうか?」
「うん、今ね、この領地で災害が起こるかもしれないの」
「災害ですか?」
「綿花農家さんが多く住んでいる地域で土砂崩れが起こる可能性があるのよ」


 私の言葉に、息を飲むココナ。信じられない!という感情が思わず顔に出てしまっている。


「その対策のために、この領地の屋敷で、百人の近衛を受入れて欲しいの」
「百人ですか?……無理だと思います。受入れられても、半数が限度かと」
「うーん、裏の倉庫とかは……ダメ?」
「雨風凌げても、換気ができるか?」


 近衛のことを思い、ウィルが大丈夫か?と尋ねてくる。


「そっか……眠りは快適にしてほしいわよね……やっぱり、拠点を作るかな……」
「管理が大変なんじゃないの?」
「それこそ、林業経験者を家族ごと受入れたりとか考えると、あるといいよね?家」
「確かにそうだな……アンバーのさ、砂糖農家が入っているようなのでいいんだったら、それぞれが
 管理することにしてしまえばいいんじゃないか?一応、拠点としての役割を作っておいて」
「なるほど……一部屋くらいなら……ココナ、もし、綿花農家の辺りに拠点を作った場合、掃除とか
 してくれる?」
「それは、もちろんです!」


 決まりね!と私は微笑むと、ウィルがどうするんだ?と聞いてきた。


「まずは、五十人をこの領地へ来てもらいましょう。そして、間伐の手伝いをしてもらう。その木を
 使って、砂糖農家さんたちが住んでいるような建物を作りましょう。大工が必要ね。アンバーからの
 派遣とコーコナの大工で、足りないところは……」
「近衛な……なんか、姫さんに預けられたら、一通り何でも出来る近衛が揃いそうだな」
「いいじゃない!拠点作りとか、テントだとどうしてもってときとかに役にたつよ!」
「たぶん、公が望んでる強化とは、違う気がするけど……」
「工作部隊も必要になるかもしれないから、きっと、将来、何処かで役にたって、私に感謝する日が
 くるわよ!ただで、情報提供してあげているんだから、技術を学ぶ近衛に気持ちがあれば、かなり
 強化されると思うわよ!剣を振るだけが、強さじゃないの。
 戦うより、まずは戦わない方法を考えることが大事だし、それには、ローズディアの近衛たちは、
 強固な体を持っているっていう印象付けも大事よね!それには、鍛える必要があるけど、力仕事も
 出来れば、一石二鳥ね!」
「鍛える場所が違うと思うけど……まぁ、体力だけは体を動かすことでつくから、いっか」


 そうそうと頷くと、後ろでココナが小さくため息をついている。
 私たちの話は、まとまったのでココナへ指示を伝えた。


「まず、五十人の近衛の受入れ準備を1週間以内にしてくれるかしら?まとめてというよりは、十人
 くらいずつの移動になると思うの」
「わかりました。相部屋で構いませんか?」
「もちろん、スシズメ状態にならないようにしてくれれば、少々狭くても大丈夫。
 食べ物に関しては、備蓄を出すことにするわ。遠慮なく使ってちょうだい。足りない分はアンバーで
 補填するから!」
「残りの五十人はどうされるのですか?」
「1ヶ月で、とりあえず、建物を作ることにするわ!居住出来る部屋が何個もある家を思い浮かべて
 くれれば、いいわ!アンバーも人手不足だから、あちらに回すこともあるかもだし」
「建物の管理とは、そのことを言っていらしたのですね?」


 ココナの質問に頷くと、なるほどと呟くココナ。


「アンバーから大工の受入れもしたいから、そっちは、コットンに空き家がないか聞いてみてくれる?
 派遣出来たとしても十人程ね……」


 私は、結局拠点を作らざる得なくなってしまったことに、若干の不安を考えたが、もし、間に合わなかった場合、そこで避難民を生活させることも出来るとふんで用意することにした。
 あとは、ここでも人手不足に悩みそうだが、近衛を借りれることになっているので大丈夫だろう。
 後、私が今できることとすれば、願わくは長雨による災害が起こらないようにと祈るだけであった。
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