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林業という仕事

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 私とウィルとアデル、リアノ、アルカの五人は、客間をそのまま借り、打ち合わせをすることにした。
 明日の朝には、ここをたたないと間に合わないので出来ることならと進めることにした。


「えっと、山を整えるのよね?」
「そうですね。それには、林業が出来る人間がいるって話なんだけど……アルカ、あてがあるのか?」
「ありますよ!林業を生業にしている助手がいますからね。今は、調査へ行っていますから話は通して
 おきますよ」
「ありがとう!さっきのおじいさんたちのところから人手も借りられそうだし、近衛も近いうちに呼ぶ
 から、それでできるかな?」
「大丈夫だと思います。相当な手入れが必要となる予定ですが、いいんですか?」
「うん、災害が起こらないようにしてほしいから、そこらへんはちゃんと考えて」


 わかりましたと少しだけ口角をあげているアルカが気になった。何か考えているのだろう。


「アンナリーゼ様。アンバーにあるコンクリートを作る材料をもらうことは出来ませんか?」
「何か考えているの?リアノ」
「えぇ、高さ3メートルの壁を作ってしまおうかと思うのですけど、どうでしょうか?」
「それは?」
「簡単にいうと、崩れてくる土を止めるための壁ですね」
「それなら、高さもだけど、厚みもないとダメだよね?」
「そうですね。材料としては、今用意しているコンクリートの材料を殆ど使ってしまう可能性もあり
 ます。範囲も広いですから……」


 私は、リアノの話を聞いて考える。
 毎週バニッシュ領から貝殻を譲ってもらって、コンクリートの材料である石灰を作っていた。
 この春には、近衛たちの協力のもと、極寒の海に入ってもらい貝を採って、貝殻集めをしたのは、まだ、記憶に新しい。


「うーん、そうね……必要な分は使ってくれたらいいけど……街道のことも考えると、難しい話ね?」
「それならさ、明後日の謁見で、公にお願いしたら?」
「お城で使い終わった貝殻よこせって?」
「そう。あの城ひとつで、アンバー領ひとつぶんだしさ?やらないで嘆くより、やってみて、公にため息
 つかせておいた方が姫さんぽいぞ?」
「何それ……なんか、納得いかないけど……言ってみる価値はあるわよね?明後日の謁見で言ってみる
 わ!ウィルは、近衛の宿舎に行って、貝殻の回収を頼んでくれる?」
「いいぞ?必要なことならいくらでも」


 ウィルと私は頷きあい、次の予定に詰め込む。
 その様子を見て、三人がなんとも不思議そうな顔をしていた。


「どうしたの?」
「いや、二人共貴族ですよね?」
「そうだけど?」


 何が問題?と三人に言うと、私たちみたいな貴族を見たことがないということだった。
 ただ、フレイゼン侯爵は似たような感じだったなとリアノが呟くと、そりゃ親子ですからねと笑いかける。
 そうでしたねと、すっかり忘れていたらしくリアノは苦笑いをしていた。


「なんとか、なるかもしれないわね!アンバー領のものを使わなくても。公のランチをボンゴレにして
 しまいましょ!いい案よね!今、ちょうど旬だからおいしいし!屋敷でも貝を使った料理を作って
 もらいましょう!」


 私の提案で頷くのはウィルだけであったが、気にしないでおく。目的あらば、出来る限りの努力をするのは私の仕事だ。
 ウィルのおかげで、突破口が見えたように感じる。


「砂に関しては、川のを使わせていただきます。それも、ちゃんと地形を考えたうえでしますから、
 心配は無用です。そういうの得意なヤツがいますからね?」


 チラッとリアノがアルカの方を向いていうと、ふんっと鼻を鳴らしているアルカ。
 しかし、このコンビ、なかなかいいんじゃないかと思える。
 自然の節理に則って出来る湧き水が小川になり川になりとなるそうだ。
 その大元を整えることは、川の水の維持にも井戸や飲み水の維持にも回りまわって必要なことだとアルカは教えてくれた。


「それで、あなたたちに伝えていないことを今から伝えるわ!私たち、公都で話し合ったんだけど、
 近衛の受入れ場所として、領地の屋敷を使おうと思っているの。整うまでは、野宿になるんだけど
 ね……」
「領地の屋敷からでしたら、距離がありませんか?」
「そこを補うのが、輸送業よ!私の友人にお願いしして毎朝毎夕の送り迎えをしてもらおうと思って
 いるわ!貝殻輸送の話もあるから、少し多めに荷馬車を借りないといけなくなるけど……」
「なるほど……切った木の輸送も手伝ってもらえますか?」
「交渉次第ね。お金もそこそこ用意しないといけないから、これから公都に帰って試算ね」


 私たちが考えてきたことに頷き、領地の屋敷で受入れの準備を手伝って欲しいことを伝えると、三人とも頷いてくれた。
 そこに、コットンが部屋に入ってきたので、今後の話をすると、この辺の人にも伝えてくれることになる。


「食べ物に関しては、コーコナ領で備蓄している分を出すことになる。もし、炊き出しとか手伝って
 もらえる人がいると助かるのだけど……」
「それも含めて、聞いてみますよ。まぁ、さっきの話をまともに聞いて、考えも改まったところだから、
 何人かは手伝ってくれると思いますよ」
「食事は、領地の人も食べていいし、炊き出しに来てくれた人も食べてもらって構わないわ」
「そりゃ、ありがたい!そうすりゃ、手伝ってくれる人も増えそうです。でも、そんなに備蓄を出して
 大丈夫なんですか?」
「うん、それは……机上の空論では、大丈夫だった……ダメだったら、アンバーの分もこちらに回すわ!
 アンバーもコーコナも私の治める領地だから」


 そういうと、あと数ヶ月しかないですけど、頑張りましょう!とコットンが言えば、リアノとアデルも頷く。
 それぞれ、自分たちがしないといけないことに動き始める。
 私は、領地の屋敷に少し寄っていかないとね……と、ウィルを見ると、レナンテへ跨るのであった。
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