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公都での話
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「公都に行ったら、何をされるのですか?」
「まずは、公へ挨拶に行くかな……しばらく、あってないからね。手紙でのやり取りとディルが送って
くれる情報とちゅんちゅんがくれる情報でなんとか把握しているんだけど……ちょっと、公からの
報告で抜けているところがあるのよね!」
「どんなことです?」
「ダドリー男爵を断罪したときに枝葉になっていた貴族たちもわからないようにこっそり動かしていた
のよ。役職を微妙に降格してみたり国への上納金をあげてみたり……」
「そんなことしてたのかよ?」
「そう、してたの。で、誰かがしゃべっちゃったみたいで、小さな燻りが出てるみたいなんだけど……
看過しているのか、気づいていないのかわからないのよ!」
夜中の反省会で話すような内容ではないような気がしたが、話のついでに情報公開をしておく。
「で、姫さんはそんなやつらに釘を打ちにいくわけ?」
「まさか!それは、公の仕事。それが出来ないなら見限るわよ!あと、優秀な人も見つけたらしいから、
その選定も頼まれているんだけど……公の見る目でしょ?正直たいしたことないと思うのよね……」
私はため息をつくと、ウィルは苦笑いし、公に会ったことのないスキナとロイドは困り顔である。
国の実情は、正直最悪だと。
公妃は、公の後ろ盾である筆頭侯爵の私に敵対しているし、第二妃は身分が低く後ろ盾もないので、公妃のやりたい放題である。
一新した文官たちも、機能しているかといえば、怪しいところもある。
ある程度、人は選んできたつもりなんだけど……公が、まだ……器でないのだ。
頑張れというしかないのだけど……誰か公を導いてくれる人がいないものか考えた。
「ノクトが公の教育とかしたら……脳筋とかになる……?」
「そんなことはないと思いますけど……ノクト様もどちらかといえば、戦争やら小競り合いやわらに
出張って行っていたので、運営というのは奥様の方が向いているかと。アンナリーゼ様も顔負けの
奥様ですから……」
「聞いたことある。じゃじゃ馬だって。ノクトの奥さんには内緒ね!」
しっと人差し指で口に当てると、わかっていますとイチアは頷いてくれる。
よくできた従者であることこの上ない。
「ということは、まず、公のところの綻びを整備するところから始めるのですか?」
「うん、そうなる。ニッコリ笑ってダンスするだけよ」
「そのニッコリ怖いよね……たぶん、公も怖いと思うよ?うん……姫さんに微笑まれたら、背筋が凍る
よね?」
「……どういう意味かしら?ウィル」
私がニコッと微笑むと、ほらそれ!とウィルに指摘される。
「それより、こちらの要求もありますから……」
「うん、わかってる。人手よね……でも、それって、食料を確保出来ないと難しいからすぐにとは
無理だよ?」
「早くて、夏過ぎくらいですか?」
「そうだね!そのつもりで話をしてみるわ!」
私たちは、今回の視察で浮き彫りになった人手の足りなさを確認する。
見切り発車で計画をたてているわけではないのだが……なかなか、上手く回っていない感じは今回の視察で受けた印象だ。
「何がダメなのかしら?」
「元々考えていなかった治水工事も一緒に始めましたからね……コンクリートを作る、側溝を作ると
いうのが、余分な作業なっていますからね。
でも、それを怠ったら、結局再工事になるのですから……農家の種まきが終わるまで人が戻りません
からね……」
「農家さんも手伝ってくれることにはなっているけど……他の作物も作ることにしているから、そっち
も怪しいんだよね……」
「なんだか、手一杯の様ですね?隣の領地から、人は借りられないのですか?」
ロイドが提案してくれたことは、私もイチアも頭にはあった。ただ、みなが底辺だと思っているアンバー領のそれもかなりの重労働を手伝ってくれるのだろうかという疑問があったのだ。
それに、食料問題は、やはり付いて回る。
「アンナリーゼ様、例えばなんですけど……」
「何?隣の領地に求人を出すとします」
「うん、するとして……」
「住む場所は、かろうじで空いている家を貸し与えます」
「うんうん、それから?」
「食料についてですが、コーコナから持ってきたらいいのではないですか?」
「イチア、コーコナから食料を持ってくるなら、近衛を連れてきた方がいいわ!給金を払うのは国
だもの。隣の領民だと、こちらでお給金を払わないといけなくなるから……まだまだ、アンバーに
そんな余裕はないよ?」
「じゃあ、食住の確保が出来ることがわかりましたから、近衛をもう百人を追加して、こちらに来て
いただきましょう!本格的に街道を作るとなると、人はたくさんいりますからね!今、領地内で
仕事についていない人はあまりいませんからね……アンナリーゼ様のおかげで就職率も高いし、
離職率も低いので、領民で手伝ってくれる人は少ないはずです」
「では、まず、もぎ取ってくる!近衛百人!」
そのいきです!とイチアにおだてられ、私はホクホクしているとみながポカンとしていた。
真夜中で若干の疲れもありおかしくなっている私を見て困ったなというところだろう。
「そろそろ、寝ましょうか?このまま起きて語ってもいいけど……さすがに、明日もあるから……」
時計は午前2時半を過ぎようとしていた。
1日馬車に揺られたり歩き回ったので疲れていないわけはない。近衛であっても元従軍であったとしても、疲れるし、疲れれば判断が鈍る。
さてとっと立ち上がるとみんなも立ち上がり、それぞれの部屋へと帰っていく。
デリアとリアンも残ってくれていたのだが、片づけは明日にしてもう休むように声をかけ、私もベッドへ向かう。
デリアは一瞬むっとしたけど、お構いなしでベッドへ潜り込む。
疲れていたのと夜もかなり遅くなってしまったので、一瞬で眠ってしまうのであった。
「まずは、公へ挨拶に行くかな……しばらく、あってないからね。手紙でのやり取りとディルが送って
くれる情報とちゅんちゅんがくれる情報でなんとか把握しているんだけど……ちょっと、公からの
報告で抜けているところがあるのよね!」
「どんなことです?」
「ダドリー男爵を断罪したときに枝葉になっていた貴族たちもわからないようにこっそり動かしていた
のよ。役職を微妙に降格してみたり国への上納金をあげてみたり……」
「そんなことしてたのかよ?」
「そう、してたの。で、誰かがしゃべっちゃったみたいで、小さな燻りが出てるみたいなんだけど……
看過しているのか、気づいていないのかわからないのよ!」
夜中の反省会で話すような内容ではないような気がしたが、話のついでに情報公開をしておく。
「で、姫さんはそんなやつらに釘を打ちにいくわけ?」
「まさか!それは、公の仕事。それが出来ないなら見限るわよ!あと、優秀な人も見つけたらしいから、
その選定も頼まれているんだけど……公の見る目でしょ?正直たいしたことないと思うのよね……」
私はため息をつくと、ウィルは苦笑いし、公に会ったことのないスキナとロイドは困り顔である。
国の実情は、正直最悪だと。
公妃は、公の後ろ盾である筆頭侯爵の私に敵対しているし、第二妃は身分が低く後ろ盾もないので、公妃のやりたい放題である。
一新した文官たちも、機能しているかといえば、怪しいところもある。
ある程度、人は選んできたつもりなんだけど……公が、まだ……器でないのだ。
頑張れというしかないのだけど……誰か公を導いてくれる人がいないものか考えた。
「ノクトが公の教育とかしたら……脳筋とかになる……?」
「そんなことはないと思いますけど……ノクト様もどちらかといえば、戦争やら小競り合いやわらに
出張って行っていたので、運営というのは奥様の方が向いているかと。アンナリーゼ様も顔負けの
奥様ですから……」
「聞いたことある。じゃじゃ馬だって。ノクトの奥さんには内緒ね!」
しっと人差し指で口に当てると、わかっていますとイチアは頷いてくれる。
よくできた従者であることこの上ない。
「ということは、まず、公のところの綻びを整備するところから始めるのですか?」
「うん、そうなる。ニッコリ笑ってダンスするだけよ」
「そのニッコリ怖いよね……たぶん、公も怖いと思うよ?うん……姫さんに微笑まれたら、背筋が凍る
よね?」
「……どういう意味かしら?ウィル」
私がニコッと微笑むと、ほらそれ!とウィルに指摘される。
「それより、こちらの要求もありますから……」
「うん、わかってる。人手よね……でも、それって、食料を確保出来ないと難しいからすぐにとは
無理だよ?」
「早くて、夏過ぎくらいですか?」
「そうだね!そのつもりで話をしてみるわ!」
私たちは、今回の視察で浮き彫りになった人手の足りなさを確認する。
見切り発車で計画をたてているわけではないのだが……なかなか、上手く回っていない感じは今回の視察で受けた印象だ。
「何がダメなのかしら?」
「元々考えていなかった治水工事も一緒に始めましたからね……コンクリートを作る、側溝を作ると
いうのが、余分な作業なっていますからね。
でも、それを怠ったら、結局再工事になるのですから……農家の種まきが終わるまで人が戻りません
からね……」
「農家さんも手伝ってくれることにはなっているけど……他の作物も作ることにしているから、そっち
も怪しいんだよね……」
「なんだか、手一杯の様ですね?隣の領地から、人は借りられないのですか?」
ロイドが提案してくれたことは、私もイチアも頭にはあった。ただ、みなが底辺だと思っているアンバー領のそれもかなりの重労働を手伝ってくれるのだろうかという疑問があったのだ。
それに、食料問題は、やはり付いて回る。
「アンナリーゼ様、例えばなんですけど……」
「何?隣の領地に求人を出すとします」
「うん、するとして……」
「住む場所は、かろうじで空いている家を貸し与えます」
「うんうん、それから?」
「食料についてですが、コーコナから持ってきたらいいのではないですか?」
「イチア、コーコナから食料を持ってくるなら、近衛を連れてきた方がいいわ!給金を払うのは国
だもの。隣の領民だと、こちらでお給金を払わないといけなくなるから……まだまだ、アンバーに
そんな余裕はないよ?」
「じゃあ、食住の確保が出来ることがわかりましたから、近衛をもう百人を追加して、こちらに来て
いただきましょう!本格的に街道を作るとなると、人はたくさんいりますからね!今、領地内で
仕事についていない人はあまりいませんからね……アンナリーゼ様のおかげで就職率も高いし、
離職率も低いので、領民で手伝ってくれる人は少ないはずです」
「では、まず、もぎ取ってくる!近衛百人!」
そのいきです!とイチアにおだてられ、私はホクホクしているとみながポカンとしていた。
真夜中で若干の疲れもありおかしくなっている私を見て困ったなというところだろう。
「そろそろ、寝ましょうか?このまま起きて語ってもいいけど……さすがに、明日もあるから……」
時計は午前2時半を過ぎようとしていた。
1日馬車に揺られたり歩き回ったので疲れていないわけはない。近衛であっても元従軍であったとしても、疲れるし、疲れれば判断が鈍る。
さてとっと立ち上がるとみんなも立ち上がり、それぞれの部屋へと帰っていく。
デリアとリアンも残ってくれていたのだが、片づけは明日にしてもう休むように声をかけ、私もベッドへ向かう。
デリアは一瞬むっとしたけど、お構いなしでベッドへ潜り込む。
疲れていたのと夜もかなり遅くなってしまったので、一瞬で眠ってしまうのであった。
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