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こうやって街道ってできるのね!
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私たちは、話し合いの場から抜け出してくる。
人手が足りないと言われ、考えてみるが、まだ、領地に有り余るほどの食料があるわけではない。
これ以上、食料確保ができず、人を増やすことができない。できることなら……私も、それは考えていた。
私たちが考えていたより、作業が多いので人手がどうしてもいる。
みなは、せっせと働いてくれてはいるけど……まだまだ、石切りの町も終わっていない状態である。
これは、なかなか厳しいように思えた。
農家に回している班をこちらに戻すことを考えても……少ないなと、私は街道を歩き始める。
「へぇーこうやって街道ってできるのね!」
話し合いに行く前にちらっと見たが、じっくり見るとなかなか重労働なのがわかる。
掘り起こして、そこの土を堅めてその上に石畳を置いて行く。
その街道の両端を見ると、側溝となるコンクリートを置いていた。
最初、石畳だけしか考えてなかったからか、見るからに人が足りないなという感じがする。
「やっぱり人が足りないなぁ……そうすると、食料なんだけど……備蓄を出すのはね……
どうしたものかしら?」
「春の収穫次第ってところですね。こればかりは、天気と麦の成長に寄りますから」
「そうよね……春の収穫が良かったらって条件で、公に進言してみるわ!100人ならって言ってたけど、
それじゃ全然たりないのね……食料も込みで100人追加とか言ったら、頷いてくれないかしら?」
「あぁ、それは、とりあえず言ってみてはいかがです?」
「そうね!言ってダメ元。言わないと、何を求めているかわからないものね!今度の社交で言って
みるわ!色よい返事をくれたらいいけど……どうなのかしらね?」
「もしかしたら、文官もつけてくれるなら……と言われるかもしれませんね。まぁ、そうしたら、
鍛えるしかありませんから……それは、セバスと私の方でなんとかしてみます」
イチアが横に並び、私の考えていることを次から次へと言い当てていく。
受入れるのはいいんだけど……住むところも作らないとと思っていると、ボソッと話すイチア。
聞き取れなくて、聞き返すと、まだブツブツと言っていた。何事か考えてくれているようだ。
私と一緒で考え出すと見境なく考え続ける傾向があるようなので、私はほっておくことにした。
心配しなくても、イチアなら、何かしら答えを掴んでくれるので、任せておく。
「ウィル、少し歩くわよ!」
「あぁ、イチアは?」
「ほっておいても、ついてくるから大丈夫。転ばないかだけ、見ていてあげて!」
あぁと言って歩き始めると、近衛や石切り町の男性たちが、声をかけてくれる。
手を振りながらゆっくり見ていく。
「作業はどう?きつい?」
「えぇ、まぁ、きついですけど、そこは仕事ですからね。きつくて当然です」
「そうだよね……」
「楽な仕事なんてないですよ!アンナリーゼ様もただ机に齧りついているだけとか、思ってませんから。
領地のことを考えて、いろいろ手を打ってくれていることを、みなが知っています。
これは、私たちの仕事。アンナリーゼ様にはアンナリーゼ様の仕事があって、戦う相手が違うのです
からね!」
そういって笑うのは石切りの町の住人であった。ピュールの下で働いているらしく、今回の街道作りにも手をあげてくれたらしい。
こうやって、名も知らない領民たちのひとつひとつの協力があって進んでいるのだと思うと感謝しかない。
私だけでは、領地改革は出来ない。領地視察へ出るのは、父にも言われたことがある。
領地の誰かが協力してくれていることを忘れないためにも、領地には頻繁に足を運びなさいと。
名前は知らないかもしれないけど、ふとしたときにあの人があんなことをしてくれた、この人がこんなことをしてくれた。あの人はあんなことに困っていた、この人はこんなことに困っていないだろうか?
領民の誰かが領地を治める上で、政策を考える上で浮かぶようになると言っていた。
まさにそうだろう。私は、名も知らない彼らが、汗を流し、泥だらけになりながら作業をしてくれているこの光景は、もう、忘れることはないだろう。
彼らがいるからこそ、この領地の繁栄に繋がる。道は、領地だけを豊かにするために作ったわけではない。
ゆくゆくは、領地外の公都までの街道を作る予定になっている。
そのとき、今手伝ってくれている石切りの町の住人にも手を貸してもらいたいのだ。
良好な関係は続けて行きたいと思っている。
「そうだ、今日は差し入れ持ってきたの!多くはないのだけど……葡萄酒とリンゴ酒、あとは蒸留酒を。
みんなで、作業後に飲んで!あっ!でも、あんまり飲みすぎたら明日の仕事に響くからね!
みんな何気なく仕事をしているけど……十分危ないんだから、しっかり気を付けて!
家族に心配かけるようなこと、しないでちょうだいね!」
私は叫ぶと、遠くの人まで応えてくれた。
みんなにも大切な家族が待つ家があるのだ。
今日の作業も、明日の作業も無事に1日が終わることを毎日祈っている。
それをいうと、ありがとうとあちこちから聞こえてきた。
私はそれだけで、嬉しい。
もうすぐ始まる社交界でも、アンバー領の宣伝活動をしないといけないが、街道整備もそろそろ公開してもいいだろうか?
私は、次の社交界で、領民自慢をしたくて仕方がない。
「次の社交界は、楽しみに!私、いろいろ頑張ってくるよ!」
応えてくれたみなのために、大きく手を振り、完成した後の夢物語を誰かに話したくなった。
でも、その夢物語は、みなの頑張りで、夢物語では終わらない。
歩みは少しずつでも、進んでいることに胸が熱くなり嬉しいのであった。
人手が足りないと言われ、考えてみるが、まだ、領地に有り余るほどの食料があるわけではない。
これ以上、食料確保ができず、人を増やすことができない。できることなら……私も、それは考えていた。
私たちが考えていたより、作業が多いので人手がどうしてもいる。
みなは、せっせと働いてくれてはいるけど……まだまだ、石切りの町も終わっていない状態である。
これは、なかなか厳しいように思えた。
農家に回している班をこちらに戻すことを考えても……少ないなと、私は街道を歩き始める。
「へぇーこうやって街道ってできるのね!」
話し合いに行く前にちらっと見たが、じっくり見るとなかなか重労働なのがわかる。
掘り起こして、そこの土を堅めてその上に石畳を置いて行く。
その街道の両端を見ると、側溝となるコンクリートを置いていた。
最初、石畳だけしか考えてなかったからか、見るからに人が足りないなという感じがする。
「やっぱり人が足りないなぁ……そうすると、食料なんだけど……備蓄を出すのはね……
どうしたものかしら?」
「春の収穫次第ってところですね。こればかりは、天気と麦の成長に寄りますから」
「そうよね……春の収穫が良かったらって条件で、公に進言してみるわ!100人ならって言ってたけど、
それじゃ全然たりないのね……食料も込みで100人追加とか言ったら、頷いてくれないかしら?」
「あぁ、それは、とりあえず言ってみてはいかがです?」
「そうね!言ってダメ元。言わないと、何を求めているかわからないものね!今度の社交で言って
みるわ!色よい返事をくれたらいいけど……どうなのかしらね?」
「もしかしたら、文官もつけてくれるなら……と言われるかもしれませんね。まぁ、そうしたら、
鍛えるしかありませんから……それは、セバスと私の方でなんとかしてみます」
イチアが横に並び、私の考えていることを次から次へと言い当てていく。
受入れるのはいいんだけど……住むところも作らないとと思っていると、ボソッと話すイチア。
聞き取れなくて、聞き返すと、まだブツブツと言っていた。何事か考えてくれているようだ。
私と一緒で考え出すと見境なく考え続ける傾向があるようなので、私はほっておくことにした。
心配しなくても、イチアなら、何かしら答えを掴んでくれるので、任せておく。
「ウィル、少し歩くわよ!」
「あぁ、イチアは?」
「ほっておいても、ついてくるから大丈夫。転ばないかだけ、見ていてあげて!」
あぁと言って歩き始めると、近衛や石切り町の男性たちが、声をかけてくれる。
手を振りながらゆっくり見ていく。
「作業はどう?きつい?」
「えぇ、まぁ、きついですけど、そこは仕事ですからね。きつくて当然です」
「そうだよね……」
「楽な仕事なんてないですよ!アンナリーゼ様もただ机に齧りついているだけとか、思ってませんから。
領地のことを考えて、いろいろ手を打ってくれていることを、みなが知っています。
これは、私たちの仕事。アンナリーゼ様にはアンナリーゼ様の仕事があって、戦う相手が違うのです
からね!」
そういって笑うのは石切りの町の住人であった。ピュールの下で働いているらしく、今回の街道作りにも手をあげてくれたらしい。
こうやって、名も知らない領民たちのひとつひとつの協力があって進んでいるのだと思うと感謝しかない。
私だけでは、領地改革は出来ない。領地視察へ出るのは、父にも言われたことがある。
領地の誰かが協力してくれていることを忘れないためにも、領地には頻繁に足を運びなさいと。
名前は知らないかもしれないけど、ふとしたときにあの人があんなことをしてくれた、この人がこんなことをしてくれた。あの人はあんなことに困っていた、この人はこんなことに困っていないだろうか?
領民の誰かが領地を治める上で、政策を考える上で浮かぶようになると言っていた。
まさにそうだろう。私は、名も知らない彼らが、汗を流し、泥だらけになりながら作業をしてくれているこの光景は、もう、忘れることはないだろう。
彼らがいるからこそ、この領地の繁栄に繋がる。道は、領地だけを豊かにするために作ったわけではない。
ゆくゆくは、領地外の公都までの街道を作る予定になっている。
そのとき、今手伝ってくれている石切りの町の住人にも手を貸してもらいたいのだ。
良好な関係は続けて行きたいと思っている。
「そうだ、今日は差し入れ持ってきたの!多くはないのだけど……葡萄酒とリンゴ酒、あとは蒸留酒を。
みんなで、作業後に飲んで!あっ!でも、あんまり飲みすぎたら明日の仕事に響くからね!
みんな何気なく仕事をしているけど……十分危ないんだから、しっかり気を付けて!
家族に心配かけるようなこと、しないでちょうだいね!」
私は叫ぶと、遠くの人まで応えてくれた。
みんなにも大切な家族が待つ家があるのだ。
今日の作業も、明日の作業も無事に1日が終わることを毎日祈っている。
それをいうと、ありがとうとあちこちから聞こえてきた。
私はそれだけで、嬉しい。
もうすぐ始まる社交界でも、アンバー領の宣伝活動をしないといけないが、街道整備もそろそろ公開してもいいだろうか?
私は、次の社交界で、領民自慢をしたくて仕方がない。
「次の社交界は、楽しみに!私、いろいろ頑張ってくるよ!」
応えてくれたみなのために、大きく手を振り、完成した後の夢物語を誰かに話したくなった。
でも、その夢物語は、みなの頑張りで、夢物語では終わらない。
歩みは少しずつでも、進んでいることに胸が熱くなり嬉しいのであった。
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