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一緒に行く?
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私は馬車に乗り込もうと玄関に出た。
馬に跨ったウィルと私を待っていてくれたイチアが扉の前で待つ。
今日は、デリアに夏のお嬢さんよろしくと汚せない服を着せられ日に焼けないように麦わら帽子を持たされた。
春だというのに、ここ1週間程、真夏のような暑さであり、天候が変だ。
種は昨日まいただけなので大丈夫だと思うけど、こんなに暑い日が続くと、旱が続くのではないかと少々心配になる。
「姫さんは、今日は馬車だな。残念だな!」
全然残念そうに言ってくれないことに私は拗ね、ウィルを睨む。
怖い怖いとお道化ているのが、また、腹が立つがいつものことではあるので、言葉にはしなかった。
私たちのそんな様子を見て、イチアはクスっと笑う。
「仲がいいのですね。いつもそのように二人は茶化しあっていますけど……」
「何もないぜ?姫さんは、俺の友人以上はないな」
「お淑やかな女性がいいんだもね!ウィルは」
「ほぅ、それは初めて知りました。とて……」
「ちょ……ちょっと、イチアさん、どういうこと!」
慌てるウィルをからかうイチア。なかなか珍しい光景に、今度は私がクスっと笑ってしまう。
ウィルもイチアもアンバーにとって、なくてはならない存在だ。
そんな二人が笑いあう姿は嬉しい。
「あっ!スキナさん!」
イチアが声をかけた先に朝早くから来ていたようだ。
「これは、お早いことで……おはようございます!」
「おはよう!スキナ」
「アンナリーゼ様もいらっしゃいましたか?あんまり、朝が早かったので、まだご就寝だったかと
思っていたんですけどね?」
「もう、起きてるよ!朝から、稽古にスキナたちの住んでる屋敷まで行っていたわよ?」
「えっ?本当ですか?」
「えぇ、私朝方だから、早く起きて体を動かしに行ってたのよ!」
「それは……」
「剣の稽古だったり、ダンスの練習だったりかな?」
なるほどと呟いていたが、こんな時間から来ていたということは何かあったのだろうか?
「特に何かあるわけではありませんが、少し話をしたくなりまして……」
「それは、私と?」
「誰でもいいのです。領地に住まう人であれば。アンナリーゼ様は忙しいでしょ?」
「うーん、わりと動き回っているけど、休息も取っているから大丈夫だよ?今から時間あるなら、
一緒に出かける?お願いしたいこともあるし」
何ですか?とスキナの目が光った。私は昨日の作業を思い出し、そのときに感じた話をしたかったのだ。
ちょうど、今日、帰った頃に手紙を書いて試作品を作ってもらえないかお願いするつもりだったのだ。
馬車に乗ってと促すと素直に乗ってくれる。行先くらいは聞いてから乗った方がいいのでは?と思わなくもないが、領主に言われて乗らないわけもないだろう。
馬車に乗り込み、ゆっくり走り出す。
「それで、どこに向かうのですか?」
「石切りの町よ!街道整備が始まるからどんな具合かなって思って。後は、砂糖畑かな?ヨハンに
手伝ってもらって、去年作ってみたの。今年は本格稼働させるから、見ておきたくて!」
「砂糖を作っているんですか?確かに、この国では育たないのではないですか?」
「それがね、成功したの!だから、本格稼働出来るようになったのが嬉しいの!」
なるほどと頷くと、凄いなとスキナは呟いた。
「それで、頼みたいということは、それに関することですか?」
「いいえ、私が頼みたいのは、種まきをするときの道具かな」
「どういうことですか?」
「昨日、種まきに参加したんだけどね?」
「えぇ、それで?」
「一列に種をまくことになったの。棒で筋を引いて、そこに種を蒔いて、土を被せる。例えばね?」
「はい、線を引くのですか」
「うん、それを等間隔の棒で線を引けたらいいなって思って」
馬車の窓に息を吹きかけ曇らせ、私が思い描いている絵を描いてみた。それをじっくり見つめるスキナは、何事か考えている。
もしかしたら、こんな道具は既にあるのかもしれないが、アンバーにはない。
ないのなら、作ってしまえばいいので、農耕器具を研究しているスキナに話したのだった。
「スキナ、そういう器具ってもうあったりする?」
「今、考えていましたが……思い至りませんね。なるほど、これはおもしろいです。もちろん、
引くのは、人が一人でですよね?」
「そうね、それを想定しているわ!」
「例えば何ですけど……牛飼えませんかね?」
「牛?」
「えぇ、そうです。牛にそれをひかせるのです。畑を耕すにも便利ですし……そういう農耕器具を
作ってみたいと思い至りました!」
なるほどなるほどと感心しきりのスキナに私はどうしたら?とイチアへ視線を向ける。
すると、仕方ありませんから好きなだけ考えさせてあげてくださいと返ってきた。
達観したようなイチアに私は小首を傾げる。
「アンナ様もあんな感じですよ?何か、おもしろいことを見つけたときは、目を輝かせて口角上げ
ながら、難しい顔しながらときたまふふっと笑う」
「えっ?その……恐怖な感じ何?すごい怖いんだけど……怖すぎる……」
「普段から、そんな感じですから、みんな微笑んで見守っていますよ」
「そんなときは、声かけてね……今、聞いていても震えるくらい怖いから……」
「おっと……すみません。自分の世界に入ってしまいました……」
「いいのよ。それで、いいの、できそう?」
「えぇ、おかげさまで!」
いい笑顔のスキナに私もにこりと笑いかけておく。
屋敷に帰ったら牛の手配をヤイコに相談の手紙を書くことにしたのであった。
馬に跨ったウィルと私を待っていてくれたイチアが扉の前で待つ。
今日は、デリアに夏のお嬢さんよろしくと汚せない服を着せられ日に焼けないように麦わら帽子を持たされた。
春だというのに、ここ1週間程、真夏のような暑さであり、天候が変だ。
種は昨日まいただけなので大丈夫だと思うけど、こんなに暑い日が続くと、旱が続くのではないかと少々心配になる。
「姫さんは、今日は馬車だな。残念だな!」
全然残念そうに言ってくれないことに私は拗ね、ウィルを睨む。
怖い怖いとお道化ているのが、また、腹が立つがいつものことではあるので、言葉にはしなかった。
私たちのそんな様子を見て、イチアはクスっと笑う。
「仲がいいのですね。いつもそのように二人は茶化しあっていますけど……」
「何もないぜ?姫さんは、俺の友人以上はないな」
「お淑やかな女性がいいんだもね!ウィルは」
「ほぅ、それは初めて知りました。とて……」
「ちょ……ちょっと、イチアさん、どういうこと!」
慌てるウィルをからかうイチア。なかなか珍しい光景に、今度は私がクスっと笑ってしまう。
ウィルもイチアもアンバーにとって、なくてはならない存在だ。
そんな二人が笑いあう姿は嬉しい。
「あっ!スキナさん!」
イチアが声をかけた先に朝早くから来ていたようだ。
「これは、お早いことで……おはようございます!」
「おはよう!スキナ」
「アンナリーゼ様もいらっしゃいましたか?あんまり、朝が早かったので、まだご就寝だったかと
思っていたんですけどね?」
「もう、起きてるよ!朝から、稽古にスキナたちの住んでる屋敷まで行っていたわよ?」
「えっ?本当ですか?」
「えぇ、私朝方だから、早く起きて体を動かしに行ってたのよ!」
「それは……」
「剣の稽古だったり、ダンスの練習だったりかな?」
なるほどと呟いていたが、こんな時間から来ていたということは何かあったのだろうか?
「特に何かあるわけではありませんが、少し話をしたくなりまして……」
「それは、私と?」
「誰でもいいのです。領地に住まう人であれば。アンナリーゼ様は忙しいでしょ?」
「うーん、わりと動き回っているけど、休息も取っているから大丈夫だよ?今から時間あるなら、
一緒に出かける?お願いしたいこともあるし」
何ですか?とスキナの目が光った。私は昨日の作業を思い出し、そのときに感じた話をしたかったのだ。
ちょうど、今日、帰った頃に手紙を書いて試作品を作ってもらえないかお願いするつもりだったのだ。
馬車に乗ってと促すと素直に乗ってくれる。行先くらいは聞いてから乗った方がいいのでは?と思わなくもないが、領主に言われて乗らないわけもないだろう。
馬車に乗り込み、ゆっくり走り出す。
「それで、どこに向かうのですか?」
「石切りの町よ!街道整備が始まるからどんな具合かなって思って。後は、砂糖畑かな?ヨハンに
手伝ってもらって、去年作ってみたの。今年は本格稼働させるから、見ておきたくて!」
「砂糖を作っているんですか?確かに、この国では育たないのではないですか?」
「それがね、成功したの!だから、本格稼働出来るようになったのが嬉しいの!」
なるほどと頷くと、凄いなとスキナは呟いた。
「それで、頼みたいということは、それに関することですか?」
「いいえ、私が頼みたいのは、種まきをするときの道具かな」
「どういうことですか?」
「昨日、種まきに参加したんだけどね?」
「えぇ、それで?」
「一列に種をまくことになったの。棒で筋を引いて、そこに種を蒔いて、土を被せる。例えばね?」
「はい、線を引くのですか」
「うん、それを等間隔の棒で線を引けたらいいなって思って」
馬車の窓に息を吹きかけ曇らせ、私が思い描いている絵を描いてみた。それをじっくり見つめるスキナは、何事か考えている。
もしかしたら、こんな道具は既にあるのかもしれないが、アンバーにはない。
ないのなら、作ってしまえばいいので、農耕器具を研究しているスキナに話したのだった。
「スキナ、そういう器具ってもうあったりする?」
「今、考えていましたが……思い至りませんね。なるほど、これはおもしろいです。もちろん、
引くのは、人が一人でですよね?」
「そうね、それを想定しているわ!」
「例えば何ですけど……牛飼えませんかね?」
「牛?」
「えぇ、そうです。牛にそれをひかせるのです。畑を耕すにも便利ですし……そういう農耕器具を
作ってみたいと思い至りました!」
なるほどなるほどと感心しきりのスキナに私はどうしたら?とイチアへ視線を向ける。
すると、仕方ありませんから好きなだけ考えさせてあげてくださいと返ってきた。
達観したようなイチアに私は小首を傾げる。
「アンナ様もあんな感じですよ?何か、おもしろいことを見つけたときは、目を輝かせて口角上げ
ながら、難しい顔しながらときたまふふっと笑う」
「えっ?その……恐怖な感じ何?すごい怖いんだけど……怖すぎる……」
「普段から、そんな感じですから、みんな微笑んで見守っていますよ」
「そんなときは、声かけてね……今、聞いていても震えるくらい怖いから……」
「おっと……すみません。自分の世界に入ってしまいました……」
「いいのよ。それで、いいの、できそう?」
「えぇ、おかげさまで!」
いい笑顔のスキナに私もにこりと笑いかけておく。
屋敷に帰ったら牛の手配をヤイコに相談の手紙を書くことにしたのであった。
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