上 下
499 / 1,480

明日はどこへいくのです?

しおりを挟む
 ただいまと屋敷に帰るとウィルが迎えに来てくれた。
 理由は、馬車で眠るお姫様たちのことを予想してくれていたようだ。


「姫さん、お帰り。ミアは寝ちゃったか」


 レオがおんぶをしているが、ミアは遊び疲れてすやすやと眠っている。
 うちのお姫様も眠ってしまっているが、私は土埃で汚れているので、リアンが抱いてくれている。
 デリアは、どうしているかというとこちらも土埃で黒いお仕着せが真っ白だ。


「レオ、ミアは俺が抱いていくよ」
「お願いします、父様」


 レオの背中に背負われていたミアをひょいっと抱き上げるとレオを引き連れ自室へ戻っていく。
 階段を登り始める頃、振り返り、ウィルは明日の話をするから執務室で待っていてと言葉を残していく。


「アンナ様は、まず着替えましょう。私も着替えないといけないので、少々お待ちください」
「わかったわ!部屋に戻っているから!」
「いえ、お風呂場に向かってください!汚いのですから、洗います!」


 まさかの洗濯を言われ、私は渋々風呂場へと向かう。
 脱ぎ着は自分でもできるので、脱衣所で作業着を脱ぎ始める。


「今日は、結構、体動かしたよね……普段使わない筋肉使ったから、筋肉痛になってしまいそうね……」
「そんな時こそ、スペシャルマッサージがあるのだと思いますよ!」
「デリア!」
「ご一緒しても?」
「えぇ、いいわよ!あなたも真っ白だったものね……何し……聞かないでおくわ!」
「そうですか?まぁ、いいです。たいした要件ではないので……」


 デリアに体中を洗ってもらいお湯に使ったあと、マッサージをしてもらってツルピカにしてもらってから執務室に向かうと、待ちくたびれたとウィルがぶつくさイチアに言っているところだった。


「ごめんね、支度遅くなって……」
「ツルピカじゃん……!」
「うん、デリアにお風呂へ行けと言われたもんで、逆らえなくて……」
「確かに……今、リアンがミアを風呂に連れてってるわ!」
「ミアも相当遊んでたからね!あまり、外に行くことないから、楽しかったみたいよ?」
「もう少し、大きくなったらって思ってんだけどね……再来年くらになったらポニーに乗れるように
 なるだろうし、そうしたら連れて行こうかなと」
「そのころには、アンジェラもポニーに乗れるかしらね?」
「嬢ちゃんも乗せるの?」
「当たり前!馬は乗れないと……」
「令嬢は馬車で移動だと思うんだよね……ミアもそう行ったんだけど、絶対乗る!って聞かないん
 だよね……」
「いいじゃない、旦那さんになる人と遠乗りとか出来るようになったら楽しいと思うよ!」
「俺、ミアを嫁に出すとか、無理……」
「レオは?」
「レオは……手放したくないな……」
「もう、二人とも本当の親子以上の存在ね!」


 私は笑いかけると、あぁと嬉しそうにしている。ウィルは二人を養子にしてから、本当に大切にしていることがわかる。

「ところで、明日も出かけるんでしょ?」
「えぇ、そのつもり!」
「明日はどこへいくのです?」
「明日は、石切りの町へ行ってから、砂糖の話を聞きに言ってこようかなって思ってる」
「じゃあ、明日は、俺がついて行くよ!」


 わかったと返事をすると、イチアも行くと言い出した。
 砂糖関係は、ノクトが連れてきてくれた農家や職人なのだ。だから、イチアが一緒に行ってくれるほうがいい。


「砂糖は、今年から本格的に作ることになってますから、足りないものがないのか確認をしたいんです
 けど、いいですか?」
「もちろん!私から逆にお願いするわ!」


 明日は三人で出かけることになった。この三人は珍しい組み合わせであるなと思うとなんだか、それだけでおもしろく感じてしまう。


「石切りの町ってさ、街道工事を始めてるんだろ?」
「うん、先に治水工事をしていると思うから、石灰作りとかを進めてくれているかな?」


 あぁ、あの……というウィルは、きっと筋肉逞しいワンピースを着た男性を思い浮かべているだろう。
 リアノとピュールがどんな関係になっているのかも気になっていた。


「そういや、教授たちも行ってるんだろ?どんな具合になっているんだろうか?」
「同でしょうね?対等に話すとそうでもありませんが、こと研究のこととなると……みなさん熱が籠り
 ますからね……揉めていないといいですけど」
「確かにそうね……職人気質のピュールに土木建築のリアノに水質研究のアルカか……どんな化学反応が
 起こっているか、想像が付かないよね……」


 なんだか、濃い面子を考えるとため息を付きたくなったが、いい方向に話が流れていっている場合もある。
 リアノのは臨機応変に対応してくれそうだけど……ピュールとアルカが衝突していないか少し不安でもあった。


「まずは、治水工事を先にするんだっけ?」
「そう、そうして、地面に水たまりが出来ないようにするのよ!」
「なるほどね。で、その水をためる池の話もあったじゃん?あれ、どうなってるの?」
「同時進行で話をしてくれていたと思うんだけど……明日行って確かめるわ!見てみないと、どうなって
 いるかわからないもの」


 私の考えていることは二人とも考えているようで、ため息をついていた。
 予想が外れて、うまく行っていることを願うばかりである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

処理中です...