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10人の魔法使い19

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「……アンナリーゼ様」
「どうしたの?アルカ」
「あの、侍女はその……」
「デリアのこと?あまり、手を煩わせないでちょうだいね!ただでさえ、私に振り回されて大変なん
 だから、デリアのいうことは、返事1回でなんでもはいで応えないと、大変なことになるよ!」
「そういうことは……先にお願いします」
「いや、デリアに逆らう人がいるとは思わなかったから……この領地で逆らったらダメな……」


 得意げにアルカに話してたが、アルカの顔がだんだん青くなっていく。それも、私の後ろを見て。私も恐る恐る後ろを振り向くと、怖い顔をしたデリアがニッコリ笑って立っていた。


「お茶、いかがですか?アンナ様!」
「……えっと、いただこうかな?」


 有無をいわさない雰囲気が隣から伝わってきて、緊張する。


「あの、アンナリーゼ様」
「……何かしら?」
「住む場所とかの話を聞いてもいいでしょうか?」
「そう……そうね!イチア、みなに教えてあげて欲しいわ!」
「はい、では……」


 私とイチアで話し合い決めた拠点や住む場所について話してくれる。基本的に移動は馬か馬車。
 ここでの生活の仕方や担って欲しい話を次々していく。
 研究者ということで、普段指示を出す方の人間ばかりが集まっているのだが、デリアのこともあり、みなが真剣に聞いてくれる。


「というわけで、明日から移動をしてくれるかしら?それぞれ、案内人はつけるわ!ロイドは、セバスが
 帰ってくるまで、こちらでイチアを手伝ってほしいの。助手も含めてお願いできるかしら?」
「かしこまりました。イチア様、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします。あと、私は貴族ではないので、敬称は必要ではありません」
「わかりました。では、普通にしますね!」
「はい、お願いします!」


 二人で意思疎通を取り始める。ここは、問題ないだろう。


「クレアとタガヤは、ヨハンの研究所へ言って欲しいの。あそこ、実験用の畑とかもあるから、いいかな
 って。ヨハンも色々改良をしてくれているから、聞いてみてほしいわ!
 それと、スキナはちょっと離れちゃうんだけど……ビルが仕切っている町には、鍛冶師が多いから、
 農耕器具の開発や試作は作りやすいと思うわ!」
「なるほど、それで、俺だけ離れたのか……それなら、納得だ」
「僕もぉークレアからぁー離れたかった……」
「そう?そうなの?へぇー」


 こちらもなかなか強い女性のようだ。クレアに怯えるタガヤにクスっと笑ってしまった。


「私は、石切りの町って言うのは、納得ね!弟子もいるし、そこで働けるし、一石二鳥よね!
 ありがたいわ!」
「うん、お願いね!リアノ。カノタの面倒見てあげて!いいところまで、石橋の設計図が出来上がった
 のよ!だから……」
「任せておいてちょうだい!100年経っても崩れない石橋をカノタの名前をつけましょ!」
「それ、いいわね!アルカも治水工事の方手伝ってちょうだいね!地底湖の話もあるから、そちらの
 研究もしたいと思うけど……」
「畏まりました。全身全霊で頑張ります!デリアさんに褒めてもらえるように……」
「あっ!言っておくけど、デリアには、ディルっていう素敵な旦那様も私というお荷物もいるから、
 アルカに構ってられないわよ!」


 そんな……人妻でした……と残念そうにしているアルカ。どうも、デリアのことを気に入ったらしいが、ディルがしっかり見張っているだろう。
 変な虫がつかないようにと。ディルは抜かりがないのだ。遠く離れていても、それは、変わらないだろう。


「ヤイコとソメコは、さっきも言った通り、羊さんの側にいた方がいいと思うから、その近くの町を
 拠点としてもらうわ!もしかしたら、ゆくゆくはアンバーとコーコナに分かれてもらうことになる
 かもしれないわ!コーコナが基本的に布製品やドレス何かを作る領地になっているから、そちらの方が
 主流になる可能性があるわ!」
「かしこまりました。弟と二人なので、そこはなんとかやっていきます。飼料を取りに行かないと
 いけませんから、どこかないでしょうか?」
「イチア、どこかあるかしら?」
「下草だけでは、少ないですからね……それは、食事後にお知らせします!」
「ありがとうございます!多少羊たちもストレスに感じているようで、できれば柔らかい草を食べさせ
 てやりたいので……」
「そう、羊さんもこんなにヤイコやソメコに想われて幸せね!」


 そんなこと……と言いながら、照れたように話すヤイコ。羊との生活は、生き物を相手にしているから大変だろうけど、生き甲斐があるようだ。


「ポテンは、前の領地の屋敷で滞在してもらうことになります。ただ、外に研究をしに行くこともある
 のでしょうから、誰かに日程だけは教えておいてね。じゃないと、探さないといけないですからね?」
「アンナ様……それは、私が、毎日口酸っぱく言ってることです!」
「デリア、しぃー!!」


 慌てて口に人差し指を当てたが、時すでに遅かった。
 まぁ、一緒にこの領地で生活していけば、いずれわかるだろうと諦めも肝心だと開き直った。


「あの、私は……」
「クーヘンは、アンバー領ではなく、コーコナへ行ってもらいます。その前に紹介したい人がいるから、
 一緒に公都へ行ってちょうだい。この領地やコーコナ領で私のドレスや普段着を作ってくれている
 人を紹介するから!」
「畏まりました。荷ほどきはしない方がいいでしょうか?」
「そうね、最低限以外はしない方がいいわ!あと5日ほどで、公都に向かうから!」
「アンナリーゼ様、公都に向かうのです?」
「社交の時期だからね……こればかりは、外せないの!私、こう見えて、この国の筆頭公爵だからね!
 公の後ろ盾だから、それをちらつかせるために、公が主催する夜会やお茶会に参加しないといけない
 のよね」


 なるほど……みながこちらを見てくる。
 これが、私の仕事の2番目に大切なことなので、理解はしてくれているようだった。
 それじゃあ、明日から、よろしくね!と言葉をかけ解散となる。
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