ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

文字の大きさ
上 下
484 / 1,513

10人の魔法使いⅩ

しおりを挟む
 六人になったが、夕飯は昨日に引き続き執務室で取ることにした。
 揃うとわかる……奇人変人のあつ……コホン。教授と呼ばれる人たちの集まりは、実に奇妙なものであった。
 話題の提供をとも思ったが、共通する話題はみつけにくそうだった。
 だからと言って何も言わないのも変だったので、とりあえず、明日の話をすることにした。


「あの、聞いてほしいのだけど……」


 話を切り出せば、みなが食事を取っている手をとめ私の方に注目する。その奇人変人たちの視線を集めるのは、かなり心労があるが、明日は10人揃った上で、今後の話をしないといけないので、練習だと思い我慢する。


「明日、最後の受け入れをします。その後、晩餐を開くのだけど、そのときに、この領地でのあなた
 たちの在り方や手伝って欲しいことをお願いしようと思っているわ!
 みんな頭のいい人ばかりだから、自分の役割はわかってここに着ているのでしょうけど、フレイゼンと
 ここでの在り方は違うと先に認識だけしておいて」
「どういうふうにって言うのは、明日聞かせてもらうとして……研究するものが何もない1日を過ごすと
 いうのは、実につまらない」
「そこで、提案があるわ。この屋敷から程近い場所に村があるの。麦畑を主にしてくれている場所では
 あるのだけど、そこを案内しようと思っているわ。行きたい人がいれば、申し出てくれると嬉しい
 のだけど!」
「そこの水質調査をしてもいいですか?」
「えぇ、もちろん。この領地だけでなく、私はもうひとつ領地を賜っているから、まずは、近場を小手
 調べに調査してもらって構わないわ!ただし、この領地では、あなたたちはよそ者よ!
 だから、まずは住民に礼を尽くすこと。それを怠るような研究者がここに集まったとは思っていない
 けど、出来ないようなら、私の判断でフレイゼンへ帰します。ただし、ただ、帰すだけなら……
 ダメだと思うから」


 私は六人に笑いかけ、次の言葉を発するのに少しだけ溜める。
 すると、聞く耳を持ってくれるかもしれないからだ。


「何かあるのですか?」
「フレイゼンの学都へは帰れない、資金の提供は打ち切ると思ってちょうだい。
 私は元々フレイゼンの人間。その一員として、学都に領民への礼も尽くせないような学者はいらない
 し、お金の提供をするだなんて勿体ないことしたくないわ!」
「それは、フレイゼン侯爵の決めることだと思うけど……?」
「これで、いいかしら?」


 私は兄から届いた書状を皆に見せると、クーヘン以外の口元が動いた。
 おもしろいと口角が上がる。
 同じように見えて、その目を見ればわかる。そんな制約必要ないと笑うもの。自分の行動だけで、抱える助手たちをどんな目に合わすことになるのか考えているもの。何も考えず、ただ笑ったもの。

 六者六様に私も微笑む。
 普通にしていれば、そういうことは起こらない。
 そして、ここにいるという時点で、私の領地改革に賛同した上で、私のやり方に口出ししないということに他ならないからだ。

 思うところもあるだろうが、それでも、研究には莫大なお金もいるし、雇う人数にもそれ相応のお金を渡すことにんるのだ。貧乏なアンバー領から……
 まだまだ、苦しいアンバー領民たちのことも考えておいて欲しかった。
 彼らの協力無くしては、ここに研究者を集めることも出来ないし、研究も彼らが手伝ってくれないとできないこともあるのだ。そういうことを知っていると知らないでは、やはり、考え方や態度も変わるのだ。


「明日、出かけたい人っている?」
「私、行きたいです!もちろんタガヤも!」
「えぇーいかないよぉ!」
「ダメ、行くの!農耕の研究者にとって、土を知るところからでしょ?もう、そんな体になったから、
 そんなことも忘れたの?肌で感じることを研究に活かさないと!」
「それはそうだけどぉ……」
「つべこべ言わない!」


 クレアの勢いに負けたタガヤは、決定のようだ。しょぼくれているけど、逆らわない方がいいよと心の中で呟いておく。


「もちろん、私は行きますよ!」
「アルカがいくなら、私もよね?」


 アルカの隣に座るリアノは、すかさず腕を取る。服装だけ見ると仲のよさげなカップルに見えるけど、その腕は逞しく顔は静観な青年のリアノをみれば、うん……と頷きたくなる。
 この二人のコンビも一緒に行ってくれると助かるので、ニコニコと返事の代わりに笑っておく。
 明らかにアルカは嫌な顔をしていてもそれはそれ。
 仕事とするなら一緒に動いてもらうことになるのだから、我慢も必要だ。


「お世話になっているのはサラさんって方ね。その村のことなら、だいたい知っていると思うし、わか
 らないことがあれば、誰に聞いたらわかるか教えてくれるわ!失礼のないようにね!」
「あの……」
「クーヘン、何かしら?」
「私は、町に行ってみたいのですけど……どんな服が売られているのかとか、実際見てみたいです。
 アンバー領のお店は、先程イチアさんから殆どをハニーアンバー店の傘下だと聞いたのですけど……
 その……」
「えぇ、そうね。商売をするにあたって、経営は全て私の元でって感じ。お給金を払う形で雇っている
 のよ」
「それで、服とかも……」
「そうね!クーヘンについては、服飾に携わることになるから、この領地でなく、コーコナに行くことに
 なると思うから……お店を見てくるといいわ。そっちは、誰か手配しておくわね!」
「それなら、ワシもそっちに混ぜておくんな。使っている農機具も気になるが……まずは、どんなものが
 売られているのか確認したい」
「わかった。じゃあ、クーヘンとスキナは、町へ市場調査へ行って来てちょうだい。
 各々明日の予定が決まったわね。明日はお昼はお弁当を渡すからそれぞれ食べてちょうだい。
 お兄様にどんなふうにアンバー領のことを聞いているか知らないけど……その目で確かめてきて!」


 夕飯も終わり、それぞれに用意された部屋へと帰っていく。
 私は、そこから仕事が始まるのだが……セバスがいない今、あまりすすめられなかったりもするので、イチアと軽く打ち合わせをして、現状維持の指示だけだすことにした。
 明日も受入れる四人について、事前情報をイチアとすり合わせて、明日も大変そうねと苦笑いするのであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

わがままな妹が何もかも奪って行きます

拓海のり
恋愛
妹に何でもかんでも持って行かれるヘレナは、妹が結婚してくれてやっと解放されたと思ったのだが金持ちの結婚相手を押し付けられて。7000字くらいのショートショートです。

悲恋を気取った侯爵夫人の末路

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。 順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。 悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──? カクヨムにも公開してます。

処理中です...