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10人の魔法使いⅦ

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「だいたいですね?アンナ様が、クレア様を敷かれる立場だとは、思わないでください。
 お二人とも似たり寄ったりなのですから!」


 デリアによって、私とクレアはつまみだされることになった。
 こんなことなら、デリアに私ついてこなくてもよかったんじゃなかろうか?と思わなくもない。


「デリア、失礼ね!私、そこまで、迷惑かけていないと思うわ!」


 抗議の声をあげてみたが、デリアによって一蹴されてしまう。


「それは、アンナ様の見解であって、料理長も強くは言えないのですから、少し自重してください」
「アンナリーゼ様も厨房には迷惑かけておられるのですね。一緒ですね!」
「クレアと一緒にしないで……私、全然迷惑なんてかけていないもの!」
「まぁ、そういうことにしておきましょう。アンナ様は執務室へ戻られるのでしょ?
 クレア様はどうされますか?」
「私もアンナリーゼ様について行きます!どうせ戻ったところで部屋にいるだけですから」


 いいですよね?というクレアに対し、デリアは厳しい視線でこちらを見てくる。
 きっと、訳すとこうだとう。
 クレアを放っておくとろくなことがないから、執務室へ連れて行って面倒をみろ!といいたいに違いない。
 この残念な彼女を連れていくのは、気が引けるが、仕方あるまい。
 文句のひとつでも言えば……今日のデリアなら返り討ちにあうだろう。


 私は、クレアだけを引き連れて、執務室に戻ることになった。


「ただいま……」


 どんよりした私の声とは裏腹に、元気に挨拶するクレア。
 その声に驚いてしまった、クーヘンが先程より小さくなった。


「やあ、クレア。久しぶりじゃないか!こっちに着ていたんだな?」
「あら、スキナじゃない!あたなもこっちに来たのね!」
「お二人は知り合いなのですか?」
「えぇ、イチア様。私とスキナの関係は仕事柄、切っても切れない間柄ですから」
「おいしい作物とその作物を作るための農耕器具ですか……なるほど」
「明日って誰か空いている人いないかな?クレアに領地案内してあげて欲しいんだよね。要望があれば、
 他の人もだけど……」
「あぁ、それな……アデルとか、どう?」
「アデル?」
「俺、公都に行くのに荷物纏めるのにしばらくこっちにいるからさ?」
「なるほどね……領地をといっても距離的にサラおばさんの村辺りかなって思っているからそうしま
 しょう。あの辺なら、アデルでも案内できるね!」


 あとでアデルに話しましょうとここで話は終える。
 それより中断していたクーヘンについて、私は知りたかった。


「クーヘンのことって、もうみんな聞いたの?」
「あぁ、いや、待ってた。ヤローばかりになったから、余計緊張しちゃったみたいで、震えて、話を
 しなくなったんだよね」


 私は、自席には座らず、クーヘンの隣に座ると、こちらを遠慮がちに見てきた。


「まずは、自己紹介するわ!私の名前は、アンナリーゼ。公爵位を拝命しているわ。いつもは、ここの
 領主としてだいたい領地で暮らしているの」
「アンナリーゼ様は、領主様でしたか……フレイゼン様の娘様都しか知らず……」
「うぅん、そんなのどうでもいいわ!私、基本的には、この領地にいる間は、アンナちゃんって呼ばれて
 いるから、そこまで畏まらなくていいの」
「畏まりました……」


 消え入りそうな声で、こちらが心配になる。


「クーヘンは何が得意なの?」
「わ……私は、刺繍や編み物、レース編みなどが得意です……」
「なるほどね!もしかしてこの襟のレースは、クーヘンが作ったの?」


 私は、クーヘンの服の襟の部分にあるレースが気になっていたのだ。
 ナタリーがいたら、いのいちばんに飛びついていただろう。


「素敵レース編みね!」
「私が一番得意なのは、毛糸編みなのですが……こちらでは、羊毛は扱ってらっしゃらないと伺って
 いましたので、少しだけ残念です」


 得意な話になったので、少しだけはきはきと話すクーヘンにホッとしながら、これだったら、コーコナ領の方が、周りと話も合っていいんじゃないだろうか?とあたりをつける。


「そうね、ここは畜産系は何もしていないから……隣の領から仕入れていたはずよ!」
「そうですよね……残念です」
「でも、これほどの物が作れるなら、アンバー領より、コーコナ領での方が力を発揮出来るかもしれ
 ないわね!」
「コーコナ領ですか?」
「私に与えれれている領地は、離れているのだけど、アンバー領以外に、コーコナ領があるの。
 そこは、ハニーアンバー店ってお店に卸している貴族用のドレスや庶民でも手に取りやすい価格の服
 とか、布を作っているの。蚕も飼っているから生糸も作っているわ!」
「そうなのですね!私は、こちらにと言われ来たのですが、もしかしたら、そちらの領地の方が、お役に
 立てるかもしれません!せっかく、選ばれて来たのです。私が得意なものを何かに活かしたいです
 から!」
「ふふっ、そのいきよ!私の友人がコーコナでドレスのデザインとか布製品の話はまとめているから、
 そこに混ざってもらえると嬉しいわ!」
「ナタリーのあの熱量に火傷しないようにな?クーヘンさん」
「あっ…………はい……」


 ウィルが話しかけると、いきなり元のクーヘンに戻ってしまう。


「もしかしなくても、男性が苦手だったりする?そうすると、さっきはかなり酷なことしちゃった
 けど……」
「あ……えっ……と、ちょっと苦手です……」
「ごめんね、さっき……こんなむさいところに……」
「アンナリーゼ様いらっしゃいますか?」


 そこにワンピースをヒラヒラさせた、ガタイのいいお兄さんが部屋を覗くのであった。
 クーヘンは、その容姿を見るなり、頬を染めそわそわし始める。
 男性が苦手……なのでは?と私は首を傾げたが、クーヘンの視線の先がワンピースであることに納得したのである。
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