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10人の魔法使いⅥ
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話をしていたところ、本日の受入れをする二人目が来たようだった。
やっと、まともな人が来てホッとしていたところだったので、次来る人を思うと、身構えてしまった。
入ってきたのは、大人しそうな、だいぶ大人しそうな女性であった。
私は身構えていたので、大きくため息をついてしまう。
そのため息に、彼女は体を大きく震えさせ、逆に私に対して身構えてしまったようだ。
「……」
「姫さんさ、怖がらせてどうするの?」
「えっ?私、怖かったかしら?」
ウィルとスキナを見て見るが、ウィルはやれやれという感じで、スキナは全くと首を振っていた。
びくつく彼女に呼びかけていいのか、迷っていると扉が開いて、扉の前に佇んでいた彼女は前のめりに倒れた。
「大丈夫!?」
私は駆け寄ったが、扉を開けた当の本人であるデリアは、こんなところに立たないでくださいと少し怒り気味である。
最近、デリアも忙しいんだよね……ごめんと心の中で謝った。
「……だ……い、じょうぶです」
のそのそと起き上がる彼女に手を貸し、立たせると、デリアが足元の誇りを叩いてくれた。
そして、さらに消え入りそうな声でありがとうというと、デリアがほんの少し微笑む。
何か用事があったのだろう。
とりあえず、大人しい彼女を席につかせ、私はデリアと向き合った。
「どうかしたの?」
「いえ、あの……クレアという人……なんとかしてくれませんか?厨房を歩き回っているので仕事に
ならないと、料理長から文句が出て……」
「わかったわ、すぐ行くから、少しだけ待っていて!」
私は、とりあえず、席に戻り、大人しい彼女に名前だけ聞くことにした。
「あの、お名前はなんていうのかしら?」
「クーヘンと申します」
か細い声で、聞き取るのがやっとであったが、名前が知れてよかった。
「クーヘンね。ちょっと、クレアが厨房で歩き回って迷惑をかけているみたいだから、
とめてくるわ!そうしたら、お話聞かせてくれるかしら?」
「はい、もちろんです!」
少しだけ、顔をあげ、私の方を見上げてくるその顔は、まるで天使のように可愛らしい。
「デリア、案内してくれるかした?」
畏まりましたと私の前を歩いて厨房へと足早に向かうデリア。
その後ろをついて行くと、厨房は、悲鳴のような声が聞こえてくる。
「どうしたの!」
私は、厨房を覗き込むと、クレアが野菜を持った料理人を追いかけまわしていた。
アンバー領地の料理人は男性だけでなく女性も少なからずいる。
野菜かごを持って歩くだけで、変人よろしくとピタッと後ろをついて歩かれたら怖いに決まっている。
私は今見た光景に、目を瞑りたくなった。
でも、そこで、料理人たちを助けず、この変人を放置することは、今日の食卓に影響を及ぼす。
子どもたちも食べるし、もちろん、皆が囲んで食事をするのだ。
クレアという変人においしい食事を邪魔されてたまるかと、声を張り上げようとした……
したのだが、先にデリアにこされてしまった。
「クレア様!いったい何事ですか!」
「これは、デリアさん!ここはとてもいい野菜を使っている……いや、食材は全ていいものを使って
いるのですね!」
「当たり前です!ここの領地の屋敷は、公爵様だけでなく他にも貴族の方々の出入りもありますし、
お子様にいいものを食べさせたいと思うのは、親であるアンナ様の考えでもあります。あなた方を
受入れるためでもありますし、ここで食べられるものは、基本的に領地で作られたものを中心に作られているので、鮮度も季節の物を使うので栄養も高いと思いますけど!
だいたい、公爵であるアンナリーゼ様や次期当主であるアンジェラ様が食べられるもの
を扱う場所で、あなたのようなものが勝手に歩かれると困ります。
毒混入の疑いで牢屋にいれますよ?」
完全に私の出る幕なく、後ろについてきただけである。
なんだか、それでは、何のためにきたのかわからないので、一言いうことにした。
「クレア、食べるものだけは、体に入るものだから、人一倍皆が気を使ってくれているの。
そんなところに、いくら私の紹介でアンバーに来たとはいえ、警戒心があって普通だと思うわ。
その辺もわかってくれるかしら?」
「そうですよね……筆頭公爵様のお口に入るものを得体の知れない私がベタベタと触るのは良くあり
ませんね……配慮が足りずに申し訳ございません。ここにいると、特にすることがなくて……」
「そうなのね。もう少しだけの辛抱だから我慢して頂戴。もし、出来ないっていうなら、明日、誰か
つけるから、この辺の村へ様子を見に行ってくるといいよ!馬でなら、それ程時間もかからないし!」
「いいのですか?」
「いいわよ!誰かに言っておくから、行きたかったら、私に声をかけてくれる。勝手に歩かれると、
また不審者として、今度は警備隊に引き渡しされるわよ?」
「……わかりました。それは困りますからね……大変なんですよ?牢屋のなかって。何もなくてぼう
っとしていないとと思っていましたが……気にかけていただけるなら、よろしくお願いします」
「……もしかして、牢屋に入ったことあるの?」
「いえ、そんなことは……あははは」
空笑いをしているので、何度もお世話になっているのだろう。経験に勝るものはない。
おかげで、これは、クレアに対して効果的であるなと気づくのであった。
しかし、昨日の今日でもう問題をおこしている。
他の二人は、何もないが、一体何をしているのだろうか?気になるがきかない方がいいかもしれないと思い、口を噤むのであった。
やっと、まともな人が来てホッとしていたところだったので、次来る人を思うと、身構えてしまった。
入ってきたのは、大人しそうな、だいぶ大人しそうな女性であった。
私は身構えていたので、大きくため息をついてしまう。
そのため息に、彼女は体を大きく震えさせ、逆に私に対して身構えてしまったようだ。
「……」
「姫さんさ、怖がらせてどうするの?」
「えっ?私、怖かったかしら?」
ウィルとスキナを見て見るが、ウィルはやれやれという感じで、スキナは全くと首を振っていた。
びくつく彼女に呼びかけていいのか、迷っていると扉が開いて、扉の前に佇んでいた彼女は前のめりに倒れた。
「大丈夫!?」
私は駆け寄ったが、扉を開けた当の本人であるデリアは、こんなところに立たないでくださいと少し怒り気味である。
最近、デリアも忙しいんだよね……ごめんと心の中で謝った。
「……だ……い、じょうぶです」
のそのそと起き上がる彼女に手を貸し、立たせると、デリアが足元の誇りを叩いてくれた。
そして、さらに消え入りそうな声でありがとうというと、デリアがほんの少し微笑む。
何か用事があったのだろう。
とりあえず、大人しい彼女を席につかせ、私はデリアと向き合った。
「どうかしたの?」
「いえ、あの……クレアという人……なんとかしてくれませんか?厨房を歩き回っているので仕事に
ならないと、料理長から文句が出て……」
「わかったわ、すぐ行くから、少しだけ待っていて!」
私は、とりあえず、席に戻り、大人しい彼女に名前だけ聞くことにした。
「あの、お名前はなんていうのかしら?」
「クーヘンと申します」
か細い声で、聞き取るのがやっとであったが、名前が知れてよかった。
「クーヘンね。ちょっと、クレアが厨房で歩き回って迷惑をかけているみたいだから、
とめてくるわ!そうしたら、お話聞かせてくれるかしら?」
「はい、もちろんです!」
少しだけ、顔をあげ、私の方を見上げてくるその顔は、まるで天使のように可愛らしい。
「デリア、案内してくれるかした?」
畏まりましたと私の前を歩いて厨房へと足早に向かうデリア。
その後ろをついて行くと、厨房は、悲鳴のような声が聞こえてくる。
「どうしたの!」
私は、厨房を覗き込むと、クレアが野菜を持った料理人を追いかけまわしていた。
アンバー領地の料理人は男性だけでなく女性も少なからずいる。
野菜かごを持って歩くだけで、変人よろしくとピタッと後ろをついて歩かれたら怖いに決まっている。
私は今見た光景に、目を瞑りたくなった。
でも、そこで、料理人たちを助けず、この変人を放置することは、今日の食卓に影響を及ぼす。
子どもたちも食べるし、もちろん、皆が囲んで食事をするのだ。
クレアという変人においしい食事を邪魔されてたまるかと、声を張り上げようとした……
したのだが、先にデリアにこされてしまった。
「クレア様!いったい何事ですか!」
「これは、デリアさん!ここはとてもいい野菜を使っている……いや、食材は全ていいものを使って
いるのですね!」
「当たり前です!ここの領地の屋敷は、公爵様だけでなく他にも貴族の方々の出入りもありますし、
お子様にいいものを食べさせたいと思うのは、親であるアンナ様の考えでもあります。あなた方を
受入れるためでもありますし、ここで食べられるものは、基本的に領地で作られたものを中心に作られているので、鮮度も季節の物を使うので栄養も高いと思いますけど!
だいたい、公爵であるアンナリーゼ様や次期当主であるアンジェラ様が食べられるもの
を扱う場所で、あなたのようなものが勝手に歩かれると困ります。
毒混入の疑いで牢屋にいれますよ?」
完全に私の出る幕なく、後ろについてきただけである。
なんだか、それでは、何のためにきたのかわからないので、一言いうことにした。
「クレア、食べるものだけは、体に入るものだから、人一倍皆が気を使ってくれているの。
そんなところに、いくら私の紹介でアンバーに来たとはいえ、警戒心があって普通だと思うわ。
その辺もわかってくれるかしら?」
「そうですよね……筆頭公爵様のお口に入るものを得体の知れない私がベタベタと触るのは良くあり
ませんね……配慮が足りずに申し訳ございません。ここにいると、特にすることがなくて……」
「そうなのね。もう少しだけの辛抱だから我慢して頂戴。もし、出来ないっていうなら、明日、誰か
つけるから、この辺の村へ様子を見に行ってくるといいよ!馬でなら、それ程時間もかからないし!」
「いいのですか?」
「いいわよ!誰かに言っておくから、行きたかったら、私に声をかけてくれる。勝手に歩かれると、
また不審者として、今度は警備隊に引き渡しされるわよ?」
「……わかりました。それは困りますからね……大変なんですよ?牢屋のなかって。何もなくてぼう
っとしていないとと思っていましたが……気にかけていただけるなら、よろしくお願いします」
「……もしかして、牢屋に入ったことあるの?」
「いえ、そんなことは……あははは」
空笑いをしているので、何度もお世話になっているのだろう。経験に勝るものはない。
おかげで、これは、クレアに対して効果的であるなと気づくのであった。
しかし、昨日の今日でもう問題をおこしている。
他の二人は、何もないが、一体何をしているのだろうか?気になるがきかない方がいいかもしれないと思い、口を噤むのであった。
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