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チャリンチャリンと音が鳴る
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お誕生日会というお祭りが終わる。
片付けは、明日にしてもいいということを通達してあったので、露店だけ残っているところもちらほらあった。
私は、屋敷の前に広がっている露店の通りを一人歩く。
今歩いているところは、今朝から人がたくさんいてとても賑やかだったのに、今はもう私しかいない。
春の風は、まだ冬の残りを含み冷たい。
一応、露店の全部回ったわよね?
今日は、お客も多く、子どもたちも一緒に回ってたりと慌ただしくしていたため、ちゃんと全部回れただろうかと少し心配になった。
今、一人歩いて、ここは何の店だった、どんな店主だったかと覚えている限り考えていた。
今回、私が目をひいたのは、香水だった。瓶も可愛らしく香りも良かった。
そういえば、ヨハンが言っていたけど、フレイゼンから来る教授たちの中に香水作りが趣味の人がいると言う話を聞いたことを思い出す。
「そっか、そろそろ受入れの時期なのね……すっかり忘れていたけど……公都へ戻る前くらいには
こちらに来るって話だったから、近いうちにって感じね。リリーに家具とかの搬入も頼まないといけ
ないのかな?」
ぐるっと一周回って、屋敷に戻る。
この1年のことを思い出す。やはり他領からこんなふうに人の出入りがあるのはいいものだ。
経済的にというのもあるが、何より、他領からの人が来るということが領民にとって誇れる領地へと変わるきっかけとなるからだ。
他領からきた商売人たちと話すと、やはりアンバー領が見違えるほどになっていることに驚いていた。
明日は、変わった領地をぐるっと見てから帰るとみな口を揃えて言う。
それを聞くだけで、領地が変わったんだと思え嬉しくなる。
領地内では、領民がいろいろと私の意見を取り入れ、取り組んでくれていることがある。
それを見れば、あの商人たちもきっと驚くだろう。
そして、また、アンバー領へ来たいと思ってくれれば……私の思惑ははまるのにと考えていた。
人口を増やすことも、アンバー領にとって必要なことだ。
他領からの流入や出産に伴う人口増加ももくろんではいる。それには、働き口となる産業の樹立も必要であるし、農家が悲鳴をあげていた今まででは、無理な話ではあったが……農家が今、軌道に乗りつつある上に、人手が足りないと言い始めている。
収穫量も上がってきているので、収入増加にも繋がっている。
1次産業と言われる作る人口を圧倒的に増やしたい私としては……そういう農業をしたいとかモノ作りがしたい人が入ってきてくれる魅力ある領地にしたい。
農家でいえば、アンバー領は、麦、葡萄、砂糖を三本柱で作っているし、コーコナ領で綿花と養蚕が主体となっている。
あとは、酒蔵であったり、ガラス細工職人、裁縫に機織り、活気づいて欲しいものは、意外とアンバー領に溢れている。
あとは、今準備期間を終え、やっと作業に入っていく街道整備。
街道が整備されれば、たぶん、一気に領地も栄えるように思う。なんたって公都とアンバーを繋ぐ街道の整備をするのだ。
そうすれば、圧倒的に行き来しやすくなるので楽しみにしている。
領地改革に想いを馳せ、私は屋敷へと戻った。
次なる仕事が、待っているのだ。
執務室に入ると、セバスとイチア、三商人が目の色を変えて作業に取り掛かってくれている。
そこにはたくさんのお金が散らばっているのだが……現在、1店舗当たりに収めてもらう計算を五人がかりでしているところだ。
私は、そこには加わらないことになっている。
どんな順番に計算をするかと言うと、まずは、今日出していた店舗から売上の合計をだしてもらい、そこから5%を場所代ととして支払ってもらうことにしている。
次に提出してもらったものと、金額があっているかチェックをするのが三商人で、更に金額が間違っていないか検算をするのがセバスとイチアだった。
「結構、間違えてますね……」
「そうですね……これは、請求しないと……領地以外の方の分を先に仕上げてください。
明日の朝、間違えている方については、取り立てに行きます。
領地内の分については、明日の夕方までにできればいいので……あと1時間程にしましょうか?
あまり、遅くまでしても効率が悪いので……」
「わかりました、では、もう少しだけ頑張りましょう!」
五人がそれぞれに声をかけ上手く作業を進めてくれていた。
「アンナリーゼ様、こちらが検算の終わっている分です。明日、取り立てに幾分は、少しだけ預から
せていただきます」
「えぇ、お願い。私は検算の終わった分を集計していくわ!ありがとう」
イチアがまとめてくれた分を今度は私がちゃんとあるか数えていく。
最終の金額については、一人で数えて言った方が効率がいい。
チャリンチャリンとお金の音がする。
こんなに扱ったことがなかったので、正直変な気分だ。
貴族は、基本的にお金を持つことをしないので、直にお金を扱うのは、お忍びで遊びに行くときくらいだ。
なので、箱一杯に入っているお金を見ると、なんだか胸躍る気分だ。
「アンナリーゼ様、目がお金になっていますよ!」
「えっ?本当?」
私は目をぱちくりさせ、セバスの方に視線を向けると、からかわれたのがわかる。
でも、実際は、珍しいので、何だが変な気分ではあった。
今月のお給料に少しだけ上乗せするんだけど……これだと十分たりそうね!
あとは、いろいろな事業に回そうと私はほくそ笑む。
「それにしても、ここだけでもボンゴレの売れ行きはすさまじいですね?売上が1番多いですよ!
それと、貝殻回収もちゃんとできていますから!」
「ふふっ、すごく売れたよね。美味しいものね!料理長のひと手間のおかげで、アサリもぷっくり
してて、美味しかったもの!貝殻も集まって、もう一石二鳥どころか、三鳥よ!」
「資金も集まったってことですか?」
「うん、臨時給金をみなに配ったとしても……結構いい具合の収入ね!来年もしようかな……
お誕生日会」
「味をしめすぎではないですか?」
「そうなのよね……でも、他領から商人も呼べるから、結構おもしろいのよ!」
「確かに、見ない商人もちらほら居ましたね?そのおかげか、領地の商人たちにも熱が伝わったのか、
いい具合に商売しておりました」
「若干、ぼったくり感がなくもなかったけど……でも、まぁ、お祭りだからよっぽどで無ければその
ままでいいかしらね。お祭りなんだから、もっと値段は安くしてほしいところではあるのだけどね。
彼らにも生活があるから……」
私は、また、お金を数え始め、セバスも検算へと戻っていく。
なかなかの確認作業に時間をとられ、日が変わるまで頑張るのであった。
片付けは、明日にしてもいいということを通達してあったので、露店だけ残っているところもちらほらあった。
私は、屋敷の前に広がっている露店の通りを一人歩く。
今歩いているところは、今朝から人がたくさんいてとても賑やかだったのに、今はもう私しかいない。
春の風は、まだ冬の残りを含み冷たい。
一応、露店の全部回ったわよね?
今日は、お客も多く、子どもたちも一緒に回ってたりと慌ただしくしていたため、ちゃんと全部回れただろうかと少し心配になった。
今、一人歩いて、ここは何の店だった、どんな店主だったかと覚えている限り考えていた。
今回、私が目をひいたのは、香水だった。瓶も可愛らしく香りも良かった。
そういえば、ヨハンが言っていたけど、フレイゼンから来る教授たちの中に香水作りが趣味の人がいると言う話を聞いたことを思い出す。
「そっか、そろそろ受入れの時期なのね……すっかり忘れていたけど……公都へ戻る前くらいには
こちらに来るって話だったから、近いうちにって感じね。リリーに家具とかの搬入も頼まないといけ
ないのかな?」
ぐるっと一周回って、屋敷に戻る。
この1年のことを思い出す。やはり他領からこんなふうに人の出入りがあるのはいいものだ。
経済的にというのもあるが、何より、他領からの人が来るということが領民にとって誇れる領地へと変わるきっかけとなるからだ。
他領からきた商売人たちと話すと、やはりアンバー領が見違えるほどになっていることに驚いていた。
明日は、変わった領地をぐるっと見てから帰るとみな口を揃えて言う。
それを聞くだけで、領地が変わったんだと思え嬉しくなる。
領地内では、領民がいろいろと私の意見を取り入れ、取り組んでくれていることがある。
それを見れば、あの商人たちもきっと驚くだろう。
そして、また、アンバー領へ来たいと思ってくれれば……私の思惑ははまるのにと考えていた。
人口を増やすことも、アンバー領にとって必要なことだ。
他領からの流入や出産に伴う人口増加ももくろんではいる。それには、働き口となる産業の樹立も必要であるし、農家が悲鳴をあげていた今まででは、無理な話ではあったが……農家が今、軌道に乗りつつある上に、人手が足りないと言い始めている。
収穫量も上がってきているので、収入増加にも繋がっている。
1次産業と言われる作る人口を圧倒的に増やしたい私としては……そういう農業をしたいとかモノ作りがしたい人が入ってきてくれる魅力ある領地にしたい。
農家でいえば、アンバー領は、麦、葡萄、砂糖を三本柱で作っているし、コーコナ領で綿花と養蚕が主体となっている。
あとは、酒蔵であったり、ガラス細工職人、裁縫に機織り、活気づいて欲しいものは、意外とアンバー領に溢れている。
あとは、今準備期間を終え、やっと作業に入っていく街道整備。
街道が整備されれば、たぶん、一気に領地も栄えるように思う。なんたって公都とアンバーを繋ぐ街道の整備をするのだ。
そうすれば、圧倒的に行き来しやすくなるので楽しみにしている。
領地改革に想いを馳せ、私は屋敷へと戻った。
次なる仕事が、待っているのだ。
執務室に入ると、セバスとイチア、三商人が目の色を変えて作業に取り掛かってくれている。
そこにはたくさんのお金が散らばっているのだが……現在、1店舗当たりに収めてもらう計算を五人がかりでしているところだ。
私は、そこには加わらないことになっている。
どんな順番に計算をするかと言うと、まずは、今日出していた店舗から売上の合計をだしてもらい、そこから5%を場所代ととして支払ってもらうことにしている。
次に提出してもらったものと、金額があっているかチェックをするのが三商人で、更に金額が間違っていないか検算をするのがセバスとイチアだった。
「結構、間違えてますね……」
「そうですね……これは、請求しないと……領地以外の方の分を先に仕上げてください。
明日の朝、間違えている方については、取り立てに行きます。
領地内の分については、明日の夕方までにできればいいので……あと1時間程にしましょうか?
あまり、遅くまでしても効率が悪いので……」
「わかりました、では、もう少しだけ頑張りましょう!」
五人がそれぞれに声をかけ上手く作業を進めてくれていた。
「アンナリーゼ様、こちらが検算の終わっている分です。明日、取り立てに幾分は、少しだけ預から
せていただきます」
「えぇ、お願い。私は検算の終わった分を集計していくわ!ありがとう」
イチアがまとめてくれた分を今度は私がちゃんとあるか数えていく。
最終の金額については、一人で数えて言った方が効率がいい。
チャリンチャリンとお金の音がする。
こんなに扱ったことがなかったので、正直変な気分だ。
貴族は、基本的にお金を持つことをしないので、直にお金を扱うのは、お忍びで遊びに行くときくらいだ。
なので、箱一杯に入っているお金を見ると、なんだか胸躍る気分だ。
「アンナリーゼ様、目がお金になっていますよ!」
「えっ?本当?」
私は目をぱちくりさせ、セバスの方に視線を向けると、からかわれたのがわかる。
でも、実際は、珍しいので、何だが変な気分ではあった。
今月のお給料に少しだけ上乗せするんだけど……これだと十分たりそうね!
あとは、いろいろな事業に回そうと私はほくそ笑む。
「それにしても、ここだけでもボンゴレの売れ行きはすさまじいですね?売上が1番多いですよ!
それと、貝殻回収もちゃんとできていますから!」
「ふふっ、すごく売れたよね。美味しいものね!料理長のひと手間のおかげで、アサリもぷっくり
してて、美味しかったもの!貝殻も集まって、もう一石二鳥どころか、三鳥よ!」
「資金も集まったってことですか?」
「うん、臨時給金をみなに配ったとしても……結構いい具合の収入ね!来年もしようかな……
お誕生日会」
「味をしめすぎではないですか?」
「そうなのよね……でも、他領から商人も呼べるから、結構おもしろいのよ!」
「確かに、見ない商人もちらほら居ましたね?そのおかげか、領地の商人たちにも熱が伝わったのか、
いい具合に商売しておりました」
「若干、ぼったくり感がなくもなかったけど……でも、まぁ、お祭りだからよっぽどで無ければその
ままでいいかしらね。お祭りなんだから、もっと値段は安くしてほしいところではあるのだけどね。
彼らにも生活があるから……」
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