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アンナちゃんこちら!手の鳴る方へ!

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 始まりの挨拶も終わると、私たちも歩き始める。
 アンジェラとジョージの手を握り、私は露店の並ぶ方へと歩く。
 元々近場の領地だけを呼んでいたのだが……どうも、噂が噂を呼んだようで、もう少し遠くの領地やコーコナ領からもきているようだった。
 なぜわかるか。必ず、どこの領地からきたお店か申請をさせることにしたのだ。
 よくよく見ると、商魂たくましいトワイスからのも来ているようだった。


「ママ……お腹すいた……」


 アンジェラがしょんぼりしながらお腹をさすっている。
 今日は、露店が並ぶからと朝ごはんを抜いていたので、もうぺこぺこらしい。
 お腹をすかせたら、お腹をさすると実にわかりやすいことをするようになったアンジェラ。


「行きましょうか!美味しいものたくさんあるから!」
「本当?」
「えぇ、今日は二人の誕生日だし、お祭りだからね!たくさんあるはずよ!」


 お腹がすきすぎてしょんぼりしすぎて歩けそうにないアンジェラを抱きかかえた。
 改めてジョージの手を握ると、羨ましそうにしていたので、後でねと微笑むと嬉しそうにしている。


「アンナちゃーん!こっちこっち!」


 呼び込みの声がする方へと私は向かう。
 そこにはいつも見かけるおばさんたちが、領地で採れたジャガイモを蒸かしていた。去年は確かヨハンがどうしてもって言ったところだけお願いした実験畑のところだ。
 私は、後から聞かされたので、植えていいも悪いも言えなかった。


「食べていっておくれ!ヨハン教授に騙されたと思っていたけど、本当に美味しいから!」
「わぁ!本当?私、実は興味あったの!ジョージア様、お金お金!」
「あぁ、ちょっと待って……」


 乳母車を押しながらついてくるジョージアは、お財布がかりでもある。なかなか出てこないお財布に、リアンがこそっと私が……と言っているのが聞こえる。


「リアン、ジョージア様を甘やかしたらダメよ!ほら!」
「……ハハハ。できれば手伝ってくれると嬉しいけど、ダメだって」
「四人分いただける?」
「あいよ!四人分だね。おまけだ。じょーちゃん口開けな!」
「あーん」
「詰まらせるんじゃないよ?」


 おばさんはアンジェラにニッコリ笑いかけるとホクホクとお芋を食べるアンジェラ。
ジョージも口開けてと言われどうしたら?というふうにこちらを見てくる。


「おばさん、私も欲しい!」
「アンナちゃんもかい?じゃあ、先に!」


 私の口の中に切ったお芋を入れてくれる。芋の甘味に塩だけのシンプルな味付けだが、とっても美味しい!


「何、美味しい!塩だけの味なのに、こんなに甘いの?」
「塩だけだから、余計に芋の味が感じられるんだろう。ほら、お母さんも食べたよ?」


 私をまた見上げていたので、うんと頷くと口を開けておばさんに芋をほりこんでもらうジョージ。


「はふぅ!!!」


 熱かったのだろうか?頬を少しだけ上気させモゴモゴと食べている。


「おばさん、四人分」
「まいどあり!」


 おばさんにお金を渡し、紙袋をもらうジョージア。
 アンジェラがもっと欲しいとねだったので、ジョージアが割って半分を渡してやると、嬉しそうにかぶりついていた。
 残った半分をジョージにも渡していた。こちらも満足そうにホクホクと食べている。


「あっという間に食べちゃったね?」
「美味しかったってことだね!子どもは美味しいものはよく知っているから!」
「そうみたい!おばさん、ありがとう!とっても美味しかったわ、ごちそうさま!」


 お芋の前を通り過ぎ次なる私を呼ぶ声のところへと、向かう。


「ジョージア様、遅いですよ?」
「待って……食べながら乳母車押すのって大変なんだよ……?」
「変わります?」
「では、私がリアカーを押しますので、お子様を一人ずつにされたらいいのでは?」
「そうだね、その方がいいな……ジョージ、お父さんのところへおいで!」
「やー!」


 嫌われて……と肩を落とすジョージアに、アンジェラをお願いしますと渡すとお安い御用さとジョージアが受取ってくれる。
 アンジェラは、拘りがないので、私でもジョージアでもどっちでもいい。
 ウィルがいたら、絶対ウィルなのだが、いないのであれば、誰でもいいのだ。
 手が空いたのでさっきの約束と屈むと、待ってましたとジョージが私にしがみついた。


「大丈夫?最近、ジョージもだいぶ重くなったけど……」
「まだ、大丈夫ですよ!それよりさっきの、お芋……」


 両手がふさがっていて食べられなかったお芋を私は受取り、食べると欲しそうにジョージがこちらを見ていた。
 よほど気に入ったのだろう。


「ここからなら、いいよ!」


 反対側から齧らせると、ほっぺに手をあて嬉しそうに食べるジョージ。
 これは、おやつにでも出してもらおうかな?と私は考えた。


 一つ一つ見て回る。
 工芸品を売るお店、布からできた飾りを売るお店、食べ物を売るお店など、30店舗位が並んでいる。
 圧倒的に食べ物が多いのだが、見覚えのあるおじさんがいた。
 いつだったか、ジョージアと連れ立って公都を歩いていたときにお菓子をくれたお菓子屋さんだった。


「あぁ!あのときの夫婦!子ども三人も連れて……旦那さん頑張ったんだねぇ……」
「えっと、あぁ……あぁ、そうだね」


 ジョージアがたじたじしているうちに、私は注文をする。


「おじさん、3つ欲しいわ!」
「あいよ!じょーちゃん!って、じょーちゃんはないか。三人もいれば、立派な奥様だわな!」
「ふふ、うちの子たち可愛いでしょ?」
「あぁ、旦那さんが抱いてる子は、また飛び切り美人だな!そんな美人さんにおまけも入れておくよ!
 あれから、売れ行きがいいんだ。じょーいや、奥様は美人だし商売の女神だな」
「本当?ありがとう!」


 ジョージアは、財布からお金を渡すと何事か言われているのか、背中をバンバン叩かれていた。


「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫」
「何言われたの?」
「……その、もう一人……と…………」


 ごにょごにょ言っていてあまり聞き取れなかったが、もう一人子どもをって話なのだろうか?えっと……まずは、領地改革を進めたいので、今はダメだ。
 生まれたばかりのネイトもいるわけだし……と未来を当たり前のように考えている私。
 私がいなくなった後、子どもたちのめんどうをジョージアがみることになると考えても、いくら子煩悩であったとしても、大変だろう。
 今は、この三人の子どもたちに愛情をたっぷり注いでやった方がいい。


「ジョージア様。この子たちにたっぷり愛情を注いであげましょう!
 私が忙しかったり、ジョージア様も公都にいたりと離れ離れになったりしていますからその方がいい
 ですよ!」


 そうだなと納得していたので、よしよしと私も頷く。
 そうこうしていると、ネイトが泣き始めた。あちらもお腹がすいたのだろう。


「一度、屋敷に戻ろうか?食べるものもたくさん買ったことだし」
「そうですね。そうしましょう」


 ネイトが泣くので、ジョージにおりてもらい、ネイトを抱き上げる。
 少し落ち着いたのか、ネイトが泣き止んだ。かと思うと、おろしたジョージが膨れっ面になってしまう。
 こっちをたてればあっちたたず……まさにそんな感じであった。


「リアン、ネイト泣き止んだから、抱いていてくれる?」
「えぇ、ジョージ様をお願いしますね?」


 私は頷き、ジョージと視線を合わせると、また抱きかかえる。
 とても、ご機嫌が悪いようで……今にも泣きそうであった。屋敷まで抱きかかえて帰ったころには機嫌が直ったと思っていたので、食堂の前で別れた。
 ネイトにも食事の時間が必要であるので別室へと移動する。
 食堂の扉が閉まった瞬間、食堂で盛大な泣き声を出しているジョージに驚かされるのであった。
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