ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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誕生日会に目を輝かせるのは……

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 当日の朝……私とジョージアは領主の屋敷の中から露店が並ぶ様をみていた。
 今日は、他領からも露店が来ているので、いつも領内だけにいる領民も楽しめるだろう。
 トラブル回避を考え、そこかしこに警備隊は立ってくれているもののお祭り騒ぎに私もワクワクと浮き足立っている。


「アンナがそれじゃあ、示しがつかないよね?」
「そんなことないと思いますよ?みんな、この日を心待ちにしてくれていたはずですから!」
「それにしたって、この規模で去年もしたのかと思うと……はぁ……なんで呼んでくれなかったわけ?」
「ジョージア様、言っておきますが、去年は領地内だけだったのでもっと規模が小さかったですよ!
 その分、領主側が全面的に飲み食いする物のお金も出しましたし……結構、やりくりが大変だったん
 ですから!去年は、まだ……ソフィアもいましたから……ジョージア様が動くことで、あの情報が
 広がると困りましたし!」
「それはわかっているさ。のけ者にされて、拗ねただけだ。それにしたって、アンナは少々朝から興奮
 しすぎじゃないか?」


 呆れ気味に私を見ているジョージアだが、ジョージアもソワソワとしているように見えなくもない。


「見てくださいよ!この賑やかさ!領地にやっと活気が戻りつつあるからこそ、他領の商人も来てくれ
 たんだと思いますよ!あぁ、金ズルたちが……あんなにいっぱい……」
「アンナさん?その、金ズルとは……?」


 ジョージアはひきつった顔をこちらに向けてきたが、私は満面の笑みで準備をしている他領の露店を指さした。


「何って、決まっているではないですか!出店するには、お金が必要なのですよ!
 売り上げの30%。ちょろまかしたら60%に跳ね上がります。帰る前に申告してお金を置いて行く……
 そんなふうに説明してあります。なんでちょろまかしたかわかるかというと……何人かお店に張り
 付いているんですよ。揉めないために。単一商品しか売らない露店は計算がしやすくて、楽でいい
 ですね!」


 ニコニコと悪い笑みを浮かべながら、私は再度窓の外をみていた。


「話を聞いた後、窓の外を眺めるアンナは……悪徳公爵にしか見えないな」
「失礼ですね!これでも良心的ですよ!領民も露店は出しているんですけど、25%に場所代も下げて
 ますし!税金の支払いもきちんとおしえながら、申告してもらって納付してもらうんですもの。
 こんな良心的な領地はありませんよ!それを領地改革に反映させるのですから!」


 うっとり外を眺めていたら、セバスが入って来た。


「準備が整いましたって、アンナリーゼ様?」
「何かしら?」
「顔が怖いですよ?」
「ジョージア様もセバスも失礼よね!」
「悪徳公爵にしか見えないので、くれぐれも露店を回るときにはその顔はやめてくださいね?」
「セバスまでいうの?悪徳公爵って!そんな悪そうな顔してる?」


 ジョージアとセバスを交互に見るが二人ともが頷いている。
 おかなしいなと思い、顔をムニムニっととしていつものよそ行きアンナに変えた。


「これならよくって?」
「えぇ、それならいいです!そろそろ、挨拶に来てほしいので、おりてきてください!」
「挨拶か……ジョージア様されます?」
「いや、アンナがした方が、領民は喜ぶだろう?」
「わかりました。じゃあ、デリア、リアンに子どもたちを連れてきてもらうよう言いますね。みんな
 アンジェラに会うのを楽しみにしてくれているのですよ!」
「そういえば、棟梁が乳母車を作ってくれたらしいので、五人で回られたらいかがですか?」
「えっ!本当に?嬉しいわ!早速使わせていただきましょう!」


 廊下に出ると、デリアがいたので、今から子ども部屋に行くと伝えると一緒に来てくれた。
 後ろにジョージアとセバスも続いて歩く。


 子ども部屋に入るとアンジェラとジョージ、ネイトがリアンに見守られていた。


「リアン、これから外にでるのだけど……一緒に来てくれる?挨拶して、そのまま露店を回ることに
 しているけど、レオたちもどうかしらね?」
「レオ様とミア様ならもうウィル様に連れられて出かけましたよ!二人とも公都以外では初めての
 お祭りだそうで、楽しみだと、ウィル様の手を引いて」
「えっ?先こされたの?」
「うん、ウィルは結構朝早く準備してたよ!楽しみなんだって」
「そうなんだ……まぁいいわ。アンジェラ、ジョージ。今から外へ行くわよ!ママの手離しちゃダメ
 だよ?」


 私は両手に華の状態で、小さな男の子と女の子をエスコートする。
 本日の主役を連れ、挨拶する台まで行くと、すでにたくさんの人が集まっている。


「あっ!アンナちゃん!」
「アンナさん!」


 台に登ると、領民のあちこちから声がかかる。その様子にアンジェラやジョージは何が怒っているのかわからず、一歩引くが、大丈夫よと声をかけたら、アンジェラは堂々と私の横に並び立った。
 生まれながらにして王なのだろう。こういう人が集まるところの方がしっかりするような気がする。
 ジョージは、たくさんの人に見られ、怖いのか私のスカートを握って後ろに隠れてしまった。
 仕方がないなぁ……と思っても、こればっかりは慣れてもらわないといけない。
 ジョージアが、アンバー家の一員としてジョージも家族なのだとしているからだ。

 私はしゃがみこみジョージと目線を合わせた。


「ジョージ、こっちを見て?」
「……ママ」
「いいこね、ジョージ。でもね、ジョージもアンバー家の一員なのよ!いつまでも私の後ろに隠れて
 いてはダメよ!
 ほら、今日の主役が、そんなに怯えてちゃダメよ!領民のみんなにおめでとうって言ってもら
 いましょ?」


 ニコッと笑いかけると頷くが、前を見るとたくさんの人にやっぱり怯える。
 仕方がないなと、頭を撫でてあげる。


「アンナ、ジョージは俺が見てるからいいよ!」


 ネイトを抱いたジョージアは、ジョージの手を握っていた。
 私は頷くと前を見る。そして、今日のお祭りの開始を合図する挨拶をする。


「おはようございます!今日は、私の娘アンジェラと息子ジョージの誕生日会に参加していただき
 ありがとうございます!」


 私はワンピースを少しつまみペコっと頭を下げる。


「アンジェラも、ジョージも挨拶しなさい」


 促してやると、アンジェラは私の真似をしてペコっとしていた。
 ジョージもよくわからずにペコっとしてそそくさと後ろに下がっていく。


「あと、アンバー家に新しい家族が増えました。お祝いの言葉やお手紙をもらっていたけど、紹介でき
 ていなかったから今、させてもらうわ!ジョージア様……」


 振り返ると、ジョージアが前に出てネイトをみなに見えるようにしてくれる。


「ネイトと名付けました。また、一緒に領地にでるかもなのでそのときはよろしくね!
 今日のお誕生日会に領地のみんなに参加してもらえて嬉しいとともに、他領からも参加
 していただいて、とっても嬉しいわ!
 年に1度のお祭り……みんな、それぞれ楽しんでちょうだい!
 私からはおいしいボンゴレを1コインで販売しているの!絶品だから、食べてみてね!
 あと、露店をしているみなさん!後で伺いますからね!
 お薦めしてちょうだい!」


 私の挨拶が終わると、拍手が起こった。
 他の町や村でもお祭りをしているのだが、こちらにアンジェラたちのお祝いに駆けつけてくれた人も多いようだった。


「あなたたちは、領民に愛されているわね!羨ましいわ!」
「アンナもだろ?」


 ジョージアが羨ましいよって苦笑いするので、家族で領民に愛されてるから大丈夫ですよと笑いかけておいた。
 さて、どこから回ろうか?楽しみで仕方がない!
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