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事業の再開

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 アンバー領内と公都までの道を石畳の街道とするための話をするために、石切の町のワンダとピュール、カノタを領地屋敷に呼んでもらった。
 一緒にノクト、セバス、イチアが並んで執務室にある机につく。


「アンナちゃん、久しぶりだね!
 お腹もずいぶん大きくなって……いつ生まれてもおかしくないくらいじゃないか?」
「久しぶりね、ワンダ!えぇ、そうなの。もう近いうちに生まれる予定なんだけど……
 まだ、お腹の中が居心地いいみたいで……それでも、そろそろね!」


 臨月を迎え、大きなお腹をさすりながら、ワンダたちを迎え入れる。
 石切の町へは、私しか行ったことがなく、誰も知らないようだったので、私は、まず、ノクト達をワンダたちへと紹介することにした。


「こちら、アンバー領で副官をお願いしているノクトです。
 インゼロ帝国の軍人で、インゼロでは公爵家の領地運営にも関わっていたのよ。
 次にセバスチャン。ローズディア公国の文官よ!城勤ではあるんだけど、アンバー領再興に向けて力を
 貸してもらっているの!
 最後にイチア。インゼロ帝国の軍人で、ノクトの参謀なの。幅広い知識量を誇っていてね、アンバー
 領に知恵を貸してくれてるのよ」
「あの……アンナちゃん?」
「何かしら?」
「さっきから、インゼロ帝国の軍人って……聞こえた気がしたんだけど……」
「あっているわ!この領地で、新しいことを始めるきっかけに携わってくれたんだけどね……いらない
 って言ったのに砂糖のおまけに付いてきたのよ!仕方がないよね……
 でもね、敵国だと言われているインゼロから受入れているから何かしら思うこともあると思うんだけ
 ど、今は、私たちアンバー領地再興になくてはならない存在なの」


 私は、ため息をつくが本人たちは知らん顔しているのが、また、憎たらしい。
 ワンダたちも事情があまり飲み込めていなく、曖昧に笑う。


「それから、石切の町のピュール。採掘場のまとめ役ね!」


 ピュールは、みなにペコっと頭を下げる。


「その隣がワンダ。元採掘場のまとめ役。領地のゴミ拾いとか手伝ってくれた人よ!
 ワンダとピュールは親子だから……!!
 あとは、カノタ。採掘場で働いているのだけどね、土木工事とか治水工事を勉強していてね?
 今回の街道整備の前に治水関係の整備をしたいと思っていたから、今日は来てもらったの」
「初めまして……カナタと申します。公爵ふじ……公爵様と同じフレイゼンで勉強をしてこちらでお世話
 になっています。師匠もこちらでしばらく厄介になると話があったので、是非今回の整備に参加させて
 ください」
「させてくださいっていうより、カノタの参加はもう決定事項ね!」


 私がニッコリとカノタに笑いかけると、ノクトを始めセバス、イチアが苦笑いする。


「カノタと言ったか?妙なのに好かれたな……?」


 ノクトの言葉にきょとんとなったカノタだったが、視線の先に私がいるのに気づいて曖昧に笑っている。
 妙なのって失礼よね?私、これでも、しっかり人は吟味して集めているつもりなのだから……


「それで、どんなふうに考えているんだ?」
「えっと、まず、治水工事を先にしたいなって思っているの。雨が降ったら、ぬかるみになったりする
 でしょ?道を水はけのいいようにしたいの」
「下水ってやつですか?」
「ごめん、思いついたことを好きなように言っているから……私に答えは求めないで。
 カノタのいうところの、そういうことね!
 雨水を道にためずにすんで、川に流れるようにしたわ!雨が降れば川も増水するから、逆流は絶対
 させちゃダメだよ?あと、川に流す前に農業・火災用の池ってできないかしら?」
「なるほど、溜めておいて日照りのときや火事のときにはそこから水が取れるようにするということです
 ね!」
「そうなの!そうすると人があやまって落ちたりしないようにしないといけなかったりもするのだけど……」
「その辺はやりようがあるので何とでも……なるほど、貯水池か……」


 今、アンバーには貯水池はどの町にも村にもない。
 いざというときは、川から引き上げるらしいのだが……それよりかは、何かしら目的のある貯水池を作っておくのもいいと思い提案した。
 それも、雨水を町や村から流してしまえばいいだろうと安易な考えであった。


「ただ、町や村からの雨水回収でってなると、水が汚くないですか?」
「たしかに……」


 ノクトは、顎を撫でながら唸っている。
 私も指摘され、ぐうの音も出ないでいたのだが……救世主あらわる!


「アンナリーゼ様、いいですか?」
「えぇ、いいわよ!何かしら?セバス」
「この前、アンナリーゼ様に言われてヨハン教授の研究所に行ってきたんですよ!」
「さっそく行ってくれたのね!」
「今日、それも提案しようと思っていたのですが、まず、雨水が汚水になるんじゃないかって話なら……
 ヨハン教授のとこで使っているあの地底湖の水を混ぜれば大丈夫じゃないですか?」
「確かに、あれなら、人には無害だと言っていたから、汚水にも効果があるのか確認後、培養した細菌を
 入れてしまえば、汚水ではなくなる……そういうことですね!」
「その手があったのね!さすが、セバスにイチアね!」
「あの、盛り上がっているところ悪いんですけど?」


 カノタが私たち三人で盛り上がっているところに割って入ってくる。
 そう、まだ、これはごく一部の人しか知らない情報なので、共有するべきだろう。
 そして、カノタに共有したら、とても驚いていた。


「なんですか?その便利そうなものは!もし、それが可能なら、綺麗な貯水池ができます!
 あと、そのトイレ事情も……こちらで考慮しましょう。各町や村に1つ設置すればいいでしょう!」
「なんだか、トイレの話もまとまりそうな予感ね!ヨハンのいうところには、放置された糞尿から病気に
 発展することもあるってことなの。
 できることなら、集めて綺麗にしてしまえば……一石二鳥だし……私たちが直接何かをしなくても、
 殆どが自然のものでできてしまう。
 そう考えると、手間はそんなにかからないと思うの。領地のルールを少し変えないといけないけど……
 綺麗にすることを考えてくれている今の領民なら、きっと理解してくれると思うのよね!」


 私はノクトに目配せをして、領地のルールを後で話し合う事にした。
 カノタは、その間にいろいろと考えているようで、まずは、雨水を快適に回収して、貯める場所を考えなければと呟いている。


「カノタ、これは一人ででもできるかしら?人が必要なら、お掃除隊もつけるから、どういうふうにする
 のがいいのか、教えてちょうだい」
「わかりました。少しだけお時間ください」
「えぇ、今日明日の話ではないと思うの……領地全体に石畳にするのだって、年単位になるでしょう
 から……それほどいそがないわ!」
「あの、ひとつ」
「何かしら?」
「ヨハン教授?の家に伺いたいのですが……」
「わかった、手配しましょう!セバスかイチアを一緒に連れて行って!その方が話がまとまりやすいと
 思うから!いいかしら?」


 頷いてくれる二人に笑いかければ、請け負ってくれた。
 領地の雨水回収作戦について、まだまだ、話は続きそうだ。
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