422 / 1,513
僕らのトイレ事情Ⅲ
しおりを挟む
さっそく屋敷に戻ったところで、話をしようとしたところでデリアに捕まった。
「アンナ様!」
「は……はい……」
そろーっとそちらを向くとかなり御立腹のようで、視線が痛い。
「検診ならヨハン教授を呼べばいいと申したはずですけど?どこに行ってらっしゃったんですか?」
「……ヨハンの研究所」
はぁ……と盛大なため息とともにあぁ、お説教されると怯える私。
デリアの方は、毎度のことでもう諦めたといい、とにかく部屋に戻るように言われる。
デリアも忙しいのだ……私の無断お出かけにいちいち物申したいのだが、その時間があまりないようだ。
なんせ、もうすぐ生まれるのだから……
「あっ!デリア」
「なんですか?」
「ヨハンの話だとね、ちょっと早まるかもしれないって……そんなことあるのかしらね?」
「早産ってことですか?」
「違うようだけど……予定日から前後10日はするかもしれないからとは言ってた。
その頃には、ヨハンも助手もこちらに泊まりこむことになるから……」
「客間の用意ですね!畏まりまりました!旦那様にもその旨伝えないといけませんね。
後でお手紙を書いておいてください。公都の屋敷に送るので!」
「わかったわ!よろしくね!」
そういうと、デリアは忙しそうに去っていく。
なんだか、勝手に出歩いている私が申し訳なく思ってしまう。
でも、私にも執務の連絡という面もあったし、何より今日は収穫があったのだから許してほしい。
その足で、セバスとイチアが普段使っている執務室へと入ると、ノクトもそこにいた。
「よぉ!アンナ、一体どうした?さっきデリアがものすごい形相で怒っていたぞ?」
「うん……今、会ったところ。怖かった……」
「そう思うなら、デリアに逆らわないことだな。ただでさえ、そんな体しているんだから、
デリアも神経質になっているんだ。わかったら、あまり心配はかけるな!」
「反省はしてるけど……性分だから、どうしようもないかな?」
「あと2ヶ月くらい我慢しろ!」
「……はい」
珍しくノクトにまで叱られ、私はしゅんと肩を落とした。
そんな私を不憫に思ったのか、セバスが話題を変えてくれる。
「アンナリーゼ様、どうかされたのですか?」
「あっ!そうそう……意見が聞きたいの!」
「なんでしょう?」
そう言って、イチアが椅子を用意してくれ私はそこに座る。
イチアの左耳には、アメジストで出来た薔薇がキラリと光った。
「さっきまで検診でヨハンの研究所に行ってたの!
そこでね?すごい画期的なトイレ事情に遭遇して……領地全体に広げたいんだけど、どうすれば
いいのか、知恵を貸してほしいの!」
私は、先程ヨハンの研究所に行ったときの話を三人に聞かせた。
説明が下手なのか、理解に及ばない出来事なのかわからないけど、三人ともがわかっていなかった。
「えっと、アンナリーゼ様。それは、地底湖の水の中に汚物を分解する細菌がいるってことであって
いますか?」
「そう、そうなの!それを使って綺麗な水に変えて地底湖に戻し、更に地底湖からは山向こうの海に
流れていっているんだって!
その地底湖も汚れているとかじゃなくて、ものすごく綺麗なの!そこまで透き通っているのよ!」
「なんといいますか……アンナリーゼ様が言っていることがイマイチ理解できないです。
一度現地に行くべきですね。それから考えてもいいかもしれません。
ただ、それが可能なら……それは、いいことですね!浄化されたものであれば、川に流してもいいって
ことですものね」
「それより、アンナ。何故、そんな話になったんだ?」
「えっと……ヨハンのトイレに……」
三人ともが頭を抱え、可哀想にとヨハンを憐れむ。
「近くまでついて行っただけだから!遠くで出てくるのを待っていただけよ?
それに、私がついて行ったことも知らなかったから……そんなにヨハンを憐れむことないわよ!」
「そういうことではないんだがな……まぁ、済んだことは仕方ない」
「誰も好き好んでトイレなんてついて行かないわよ!大体、ヨハンが逃げなければ、こんなことには
ならなかったのよ!おかげで、いい情報は得て帰ってきたからいいでしょ?
みんなの実地見聞だけしてきて、良かったらすすめたいんだけど、いいかしら?
ただ、培養ってできるのかは聞いたんだけど、専門外だからって断られたわ!
それをいうなら、砂糖も農作物も本来は専門外なのにね?
うまくあしらわれた感じかなぁ……そうそう、ヨハンがアンバーで新しい農作物をって考えている
みたいなんだけど、何がいいか相談したいんだって。時間できたら、行ってきてくれる?」
私はヨハンからの伝言をノクトに伝え、わかったと言ってくれる。ついでにさっきの提案の元となることも見に行ってくれることになった。
後は任せておいてもこの三人なら、いい案を出してくれるだろうと考えた。
「あと、フレイゼンから人を受入れるんだけど、ヨハンのところに三人受入れてくれることになったの。
その費用とかもあるのだけど……それは、裁可済み。あとは、人がくるだけね。
コーコナにも、人を割り振るから……全員ではないのだけど、その中に培養を研究してくれる人も
いるらしいわ!」
「それなら、先に繋がる事業になりそうですね。さっそく、明日にでも見に行きましょう。
早く形にしてしまう方がいいでしょう」
「ありがとう、セバス。
そろそろ、石切の町のワンダさんから連絡がきてて、予定してた石切が終わりそうだっていう話よ!」
「それで、それが街道の石畳用に作っているのは知っているけど……どうするのです?
作業員とか……何か考えているのでしたか?」
「うん、そのまま石切の町で働いている人が石畳の街道つくりも手伝ってくれることになっているの。
だから、そろそろ、相談もしたいなって思っているのだけど、それにも付き添って欲しいんだけどね?
時間あるかな?」
「わかりました、そちらは私が対応にでてもいいでしょうか?」
「イチアなら、大歓迎よ!よろしくお願いね!」
私たちは、領地改革のためにまた少しづつ動き始めるのであった。
久しぶりにワンダとピュール親子とカノタに会うのが楽しみである。
「アンナ様!」
「は……はい……」
そろーっとそちらを向くとかなり御立腹のようで、視線が痛い。
「検診ならヨハン教授を呼べばいいと申したはずですけど?どこに行ってらっしゃったんですか?」
「……ヨハンの研究所」
はぁ……と盛大なため息とともにあぁ、お説教されると怯える私。
デリアの方は、毎度のことでもう諦めたといい、とにかく部屋に戻るように言われる。
デリアも忙しいのだ……私の無断お出かけにいちいち物申したいのだが、その時間があまりないようだ。
なんせ、もうすぐ生まれるのだから……
「あっ!デリア」
「なんですか?」
「ヨハンの話だとね、ちょっと早まるかもしれないって……そんなことあるのかしらね?」
「早産ってことですか?」
「違うようだけど……予定日から前後10日はするかもしれないからとは言ってた。
その頃には、ヨハンも助手もこちらに泊まりこむことになるから……」
「客間の用意ですね!畏まりまりました!旦那様にもその旨伝えないといけませんね。
後でお手紙を書いておいてください。公都の屋敷に送るので!」
「わかったわ!よろしくね!」
そういうと、デリアは忙しそうに去っていく。
なんだか、勝手に出歩いている私が申し訳なく思ってしまう。
でも、私にも執務の連絡という面もあったし、何より今日は収穫があったのだから許してほしい。
その足で、セバスとイチアが普段使っている執務室へと入ると、ノクトもそこにいた。
「よぉ!アンナ、一体どうした?さっきデリアがものすごい形相で怒っていたぞ?」
「うん……今、会ったところ。怖かった……」
「そう思うなら、デリアに逆らわないことだな。ただでさえ、そんな体しているんだから、
デリアも神経質になっているんだ。わかったら、あまり心配はかけるな!」
「反省はしてるけど……性分だから、どうしようもないかな?」
「あと2ヶ月くらい我慢しろ!」
「……はい」
珍しくノクトにまで叱られ、私はしゅんと肩を落とした。
そんな私を不憫に思ったのか、セバスが話題を変えてくれる。
「アンナリーゼ様、どうかされたのですか?」
「あっ!そうそう……意見が聞きたいの!」
「なんでしょう?」
そう言って、イチアが椅子を用意してくれ私はそこに座る。
イチアの左耳には、アメジストで出来た薔薇がキラリと光った。
「さっきまで検診でヨハンの研究所に行ってたの!
そこでね?すごい画期的なトイレ事情に遭遇して……領地全体に広げたいんだけど、どうすれば
いいのか、知恵を貸してほしいの!」
私は、先程ヨハンの研究所に行ったときの話を三人に聞かせた。
説明が下手なのか、理解に及ばない出来事なのかわからないけど、三人ともがわかっていなかった。
「えっと、アンナリーゼ様。それは、地底湖の水の中に汚物を分解する細菌がいるってことであって
いますか?」
「そう、そうなの!それを使って綺麗な水に変えて地底湖に戻し、更に地底湖からは山向こうの海に
流れていっているんだって!
その地底湖も汚れているとかじゃなくて、ものすごく綺麗なの!そこまで透き通っているのよ!」
「なんといいますか……アンナリーゼ様が言っていることがイマイチ理解できないです。
一度現地に行くべきですね。それから考えてもいいかもしれません。
ただ、それが可能なら……それは、いいことですね!浄化されたものであれば、川に流してもいいって
ことですものね」
「それより、アンナ。何故、そんな話になったんだ?」
「えっと……ヨハンのトイレに……」
三人ともが頭を抱え、可哀想にとヨハンを憐れむ。
「近くまでついて行っただけだから!遠くで出てくるのを待っていただけよ?
それに、私がついて行ったことも知らなかったから……そんなにヨハンを憐れむことないわよ!」
「そういうことではないんだがな……まぁ、済んだことは仕方ない」
「誰も好き好んでトイレなんてついて行かないわよ!大体、ヨハンが逃げなければ、こんなことには
ならなかったのよ!おかげで、いい情報は得て帰ってきたからいいでしょ?
みんなの実地見聞だけしてきて、良かったらすすめたいんだけど、いいかしら?
ただ、培養ってできるのかは聞いたんだけど、専門外だからって断られたわ!
それをいうなら、砂糖も農作物も本来は専門外なのにね?
うまくあしらわれた感じかなぁ……そうそう、ヨハンがアンバーで新しい農作物をって考えている
みたいなんだけど、何がいいか相談したいんだって。時間できたら、行ってきてくれる?」
私はヨハンからの伝言をノクトに伝え、わかったと言ってくれる。ついでにさっきの提案の元となることも見に行ってくれることになった。
後は任せておいてもこの三人なら、いい案を出してくれるだろうと考えた。
「あと、フレイゼンから人を受入れるんだけど、ヨハンのところに三人受入れてくれることになったの。
その費用とかもあるのだけど……それは、裁可済み。あとは、人がくるだけね。
コーコナにも、人を割り振るから……全員ではないのだけど、その中に培養を研究してくれる人も
いるらしいわ!」
「それなら、先に繋がる事業になりそうですね。さっそく、明日にでも見に行きましょう。
早く形にしてしまう方がいいでしょう」
「ありがとう、セバス。
そろそろ、石切の町のワンダさんから連絡がきてて、予定してた石切が終わりそうだっていう話よ!」
「それで、それが街道の石畳用に作っているのは知っているけど……どうするのです?
作業員とか……何か考えているのでしたか?」
「うん、そのまま石切の町で働いている人が石畳の街道つくりも手伝ってくれることになっているの。
だから、そろそろ、相談もしたいなって思っているのだけど、それにも付き添って欲しいんだけどね?
時間あるかな?」
「わかりました、そちらは私が対応にでてもいいでしょうか?」
「イチアなら、大歓迎よ!よろしくお願いね!」
私たちは、領地改革のためにまた少しづつ動き始めるのであった。
久しぶりにワンダとピュール親子とカノタに会うのが楽しみである。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・


親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる