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楽園に降り立った招かざるものⅨ
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執務室には、公世子、ウィル、ノクト、エリック、そして私がそれぞれの席に着く。
公世子からは、公爵移譲の話し合い以降に独自に調べた追加資料が示され、私はそれに目を通していく。
私の方からも追加資料を公世子に渡すと、提示された倍以上の厚さにのけぞっている。
そんな公世子を私は、見て見ぬ振りをして、提示された追加資料をせっせと読み込んでいく。
所々私の調べたところと食い違うところがあったので、メモを書いて紙を挟んでいく。
「ウィル、ノクト、一度確認してみて!
私の調べたところとの食い違いがあるところがあると思うんだけど、メモを挟んでおいたから
重点的に確認してちょうだい!」
公世子からの資料を二人に渡すと、今度は二人が頭をくっつけるようにして読み込んでいく。
公世子からの追加資料の内容を私が読んでみての感想をはっきり言おう。
目新しいものは、何一つなかった。
ひと月半もあったこの期間に、いったい公世子は何を調べていたのか……もう少しまともな情報収集をできる人間が必要ではないかと、この国の行く末を案じてしまう。
資料を読み込むだけで、半日かかった。
私たちがではなく、公世子の方がだ。
追加資料として出してきた情報と齟齬があるのは、まぁ、仕方ないとして、私が差し出したもの一冊で、足りないところが全て事足りてしまったのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
私の提示した資料を一人で読み込んでいたのだ。
公世子は、目頭を押さえ、軽く頭を振っている。
「あ……あぁ……目が回りそうだが……なんとか。
アンナリーゼよ、領地にいてこれだけの情報、どうやって集めるのだ?
そなた、確か、ちょっと前まで、この国にすらいなかったであろう?」
「まぁ、そうですね。
トワイス国で殿下の第二妃とかどんくさいお嬢さんとかと遊んでいましたからね?
私のそばには、とっても優秀な人材が揃ってるってことですかね。
まだ、情報提供しようと思えばできるんですけどね……さすがに多すぎる情報は、害になると思い
ましたので、必要そうなところだけまとめました」
資料ををなぞりながら、私にできて、何故公世子である自分ができていないのかと若干嘆いているが……そんなこと知ったことじゃない。
嫌味を含めてとっても優秀な人材と言ったのだが、伝わっていたようで、舌打ちをしている。
「アンナリーゼ、捕縛者リストを見たが、78人となっているな」
「一族郎党なら、血縁者で、男爵から援助をもらっている全てをさしますよね。
親戚も多いですけど、もっと驚くべきところがありますよね?
子どもが36人いますからね……もう、男爵って、全く子だくさんすぎやしませんか?
うち、嫡男の関係も入っていて、合計で78人なんですけどね?
もう、訳がわからなくなったんで、作ったんですけど、相関図いります?
元第三夫人に書いてもらったんですけど……」
私は、大きな紙に書いてある相関図を広げる。
もちろん、最初の紙だけでは入りきらなかったので、何枚も何枚も継ぎ足してあるので不格好なものであるのだが……中心に書いてある男爵から、一体何人の女性へと線が引っ張られ、その間に何人子どもを意味する丸が書かれていることか……
ちゃんと数えたら、78あるはずだ。
もちろん、元第三夫人であるリアンとレオにミアはこの相関図からは、外してある。
私の陣営にいるので、わざわざ入れる意味がなかったから、三人の名前は書いてない。
「そういえば、そなたの手元に第三夫人がいたんだったな」
「いますよ!でも、そんなに知っていることは多くないですよね。
領民との子とか、商人との子とか、男爵令嬢の子とか、手当たり次第って感じですよね。
よく体持ちますね……公世子様でも無理でしょ?」
ジトっと公世子を見ていると、ダドリー男爵と張り合うかと思ったが、さすがにため息をついていた。
うん、張り合わないんだ……おもしろくないなとちょっと思ってしまった。
しかも、普通に会話は進んでいく。
「それで……?アンナリーゼのお気に入りはすでにここからひいてあるのだろう?」
「そうですね!ひかせてもらいました。
二人とも内々で生まれた子どもなので、記録に残っていないのです。
レオはもしかしたら、嫡男の代わりとして残っているかもしれないですけどね?」
私は何食わぬ顔で話しているが、すでにレオのあれやこれやは、全て抹消した。
残るは、レオのことを知っているものだけとなるが、メイドの子として扱われ 二人はかなり肩身の狭い生活をしていたことはわかっているので、男爵家からいなくなったとしても誰も気づかなかった。
ウィルの養子とした時点で、私の手の内にあるのだから返すつもりもないんだけど。
いくら、詰めが甘いと言われていても、今回だけは絶対ヘマはしない。
「なぁ…?」
「何ですか?」
「これだけ調べられるんだったら、俺、要らなくないか?」
「何を言ってますか!公世子様の部下があんまり優秀すぎるから、私の友人たちがお手伝いしてくれて
いるのでしょ?もっと、公世子様も優秀なお友達を作った方がいいですよ!」
ある意味、私に調べられて公世子が調べられない情報があること自体おかしい。
私はただの公爵で公世子はこの国の公世子様なのだ。
次代の公に調べられないとなると、裁可のときに困らないのだろうか?
私を見てから、ウィルやノクトを眺める公世子。
「ウィルやセバスが、これを調べたのか?」
「うーん、これだけの情報ですからね、もっと沢山の人が関わってますよ!
社交会から情報を持ってきてもらったり、商人として集めてもらったり、子飼いのちゅんちゅんが
持ってきた情報もありますからね。
私に協力してくれる人がいるのですから、公世子様にもそんな方々がいらっしゃるでしょ?
あっ!ジョージア様は、こういうのは苦手だから期待できませんけどね?」
「アンナリーゼほど、社交界で人気が有ればいいんだがな」
私は苦笑いをする。
自国であれば、私に集められない情報はないだろう。みんなこぞって私に情報提供をしてくれる。
ただ、公国となると、まだまだ手付かずの状態になっているところもたくさんある。
ここが、自国と嫁いだ先との違いで、地盤が違うからこその難しいところであるのだが、元々地盤のある公世子がこれでは困ったものだ。
「人気がないなら、頑張って人気取りしましょう!
それも、今後この国をまとめるための一つであるでしょ?」
私は提案する。次は公世子が苦笑いする番であった。
次期公妃となる今の公世子妃は、欲深い公爵家の出だそうだ。
隙あれば、何かと狙っているらしく、関わらないことがうまくコントロールする方法だと諦めている。
確かに、噂で聞くところ……ダドリー男爵以上にあまりいい噂を聞かない。
ウィルやセバスの行った小競り合いに裏から関わっているのではないかと言われているのだ。
それも、自身の利益のために、インゼロ帝国と内通しているという噂があった。
だからこそ、関わらない方がいいというが……政略結婚であるのなら、もっとマシな者を選べなかったのかと言いたくなる。
第二妃は、良心的で公世子を陰ながら支えていると言われている。
そんな人を表に出すべきなのだが、そういうわけにはいかない爵位の問題やらなんやらと貴族のしがらみで公世子自身も雁字搦めになっているのだろう。
「人気取り云々は、俺の問題だから置いておいて……捕縛計画をしていこうか。
その前に、昼食にしないか……もう、頭が動かない」
「えぇ、そうしましょう」
疲れ切った公世子の顔を見るとなんだか可哀そうになり、私はデリアを呼んで昼食の用意をしてもらう。
私は、そのまま、執務机の方へ移動して、アンバー領での裁可を進める。
「アンナリーゼが、そうやって公爵として裁可しているのを見ると、変な感じだな」
「どういうことです?私、これでも、領地では、とっても人気が高いのですよ!」
「あぁ、ジョージアからも聞いている。
確かに、アンナリーゼが動けば、何か変わるかもしれないと密かに期待してしまうな」
「期待はしないでください。努力した人にしか、その結果はついてきませんから!
働かざる者食うべからずというでしょ?
働いたからこそ、得られるものがあると、領地のみんなは再確認しただけですよ!
しっかり、私に踊らされているのですよ。
そのうち、そのことに気付いて私を避けるようになるかもしれませんね。
まぁ、その頃には、アンバー領は変わりきった後だと思いますけどね!」
私は、セバスやイチアから出てきた案件に目を通して裁可の印を押していく。
リリーや警備隊からの連絡や小さな子どもからのお手紙まで目を通す。
これが、私の日常であり、これからも続いてほしい日常である。
この日常を守るために、78人の命を奪うことになる。
アンバー領にいる領民の生活を守るため、自分の子どもを守るためとはいえ……むごいことをするのだなと我ながら虚しくなる。
それでも、すでに、領地では、この窮地から抜け出せずに死んだ者も数えきれないくらいいる。
のうのうと甘い汁だけ吸ってきたダドリー男爵を許すわけにはいかない。
目をつけられたアンバー領は可哀想だと、私は切り捨てることもできたわけだが……戦争でたくさんの命を失う未来を思えば、少数を切り捨てでも多くの人を助けたい。
小さい頃の私なら……ハリーの命だけのためにすべてを投げ出しただろう。
今は、違う。他にも、自分の命をかける理由ができたのだ。
自分が正しいとは決して思わない、見方を変えれば悪なのだから……
それでも、私を信じてくれている人を少しでも助けられるよう……努力を惜しまないでいくしかない。
小さい子からの手紙を見れば、余計に心の中に灯る私の進む道標が明るく照らされるようだ。
余計、闇が深くなり、周りが何も見えなくなる。
真っ暗闇の中を一人、明るく照らされた道沿いを、私はほてほてと歩いて行く。
それが、どこへ続く道でもかまわない。
私の命は、あと12年。後戻りはできず、やりきるしかないのだから……
公世子からは、公爵移譲の話し合い以降に独自に調べた追加資料が示され、私はそれに目を通していく。
私の方からも追加資料を公世子に渡すと、提示された倍以上の厚さにのけぞっている。
そんな公世子を私は、見て見ぬ振りをして、提示された追加資料をせっせと読み込んでいく。
所々私の調べたところと食い違うところがあったので、メモを書いて紙を挟んでいく。
「ウィル、ノクト、一度確認してみて!
私の調べたところとの食い違いがあるところがあると思うんだけど、メモを挟んでおいたから
重点的に確認してちょうだい!」
公世子からの資料を二人に渡すと、今度は二人が頭をくっつけるようにして読み込んでいく。
公世子からの追加資料の内容を私が読んでみての感想をはっきり言おう。
目新しいものは、何一つなかった。
ひと月半もあったこの期間に、いったい公世子は何を調べていたのか……もう少しまともな情報収集をできる人間が必要ではないかと、この国の行く末を案じてしまう。
資料を読み込むだけで、半日かかった。
私たちがではなく、公世子の方がだ。
追加資料として出してきた情報と齟齬があるのは、まぁ、仕方ないとして、私が差し出したもの一冊で、足りないところが全て事足りてしまったのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
私の提示した資料を一人で読み込んでいたのだ。
公世子は、目頭を押さえ、軽く頭を振っている。
「あ……あぁ……目が回りそうだが……なんとか。
アンナリーゼよ、領地にいてこれだけの情報、どうやって集めるのだ?
そなた、確か、ちょっと前まで、この国にすらいなかったであろう?」
「まぁ、そうですね。
トワイス国で殿下の第二妃とかどんくさいお嬢さんとかと遊んでいましたからね?
私のそばには、とっても優秀な人材が揃ってるってことですかね。
まだ、情報提供しようと思えばできるんですけどね……さすがに多すぎる情報は、害になると思い
ましたので、必要そうなところだけまとめました」
資料ををなぞりながら、私にできて、何故公世子である自分ができていないのかと若干嘆いているが……そんなこと知ったことじゃない。
嫌味を含めてとっても優秀な人材と言ったのだが、伝わっていたようで、舌打ちをしている。
「アンナリーゼ、捕縛者リストを見たが、78人となっているな」
「一族郎党なら、血縁者で、男爵から援助をもらっている全てをさしますよね。
親戚も多いですけど、もっと驚くべきところがありますよね?
子どもが36人いますからね……もう、男爵って、全く子だくさんすぎやしませんか?
うち、嫡男の関係も入っていて、合計で78人なんですけどね?
もう、訳がわからなくなったんで、作ったんですけど、相関図いります?
元第三夫人に書いてもらったんですけど……」
私は、大きな紙に書いてある相関図を広げる。
もちろん、最初の紙だけでは入りきらなかったので、何枚も何枚も継ぎ足してあるので不格好なものであるのだが……中心に書いてある男爵から、一体何人の女性へと線が引っ張られ、その間に何人子どもを意味する丸が書かれていることか……
ちゃんと数えたら、78あるはずだ。
もちろん、元第三夫人であるリアンとレオにミアはこの相関図からは、外してある。
私の陣営にいるので、わざわざ入れる意味がなかったから、三人の名前は書いてない。
「そういえば、そなたの手元に第三夫人がいたんだったな」
「いますよ!でも、そんなに知っていることは多くないですよね。
領民との子とか、商人との子とか、男爵令嬢の子とか、手当たり次第って感じですよね。
よく体持ちますね……公世子様でも無理でしょ?」
ジトっと公世子を見ていると、ダドリー男爵と張り合うかと思ったが、さすがにため息をついていた。
うん、張り合わないんだ……おもしろくないなとちょっと思ってしまった。
しかも、普通に会話は進んでいく。
「それで……?アンナリーゼのお気に入りはすでにここからひいてあるのだろう?」
「そうですね!ひかせてもらいました。
二人とも内々で生まれた子どもなので、記録に残っていないのです。
レオはもしかしたら、嫡男の代わりとして残っているかもしれないですけどね?」
私は何食わぬ顔で話しているが、すでにレオのあれやこれやは、全て抹消した。
残るは、レオのことを知っているものだけとなるが、メイドの子として扱われ 二人はかなり肩身の狭い生活をしていたことはわかっているので、男爵家からいなくなったとしても誰も気づかなかった。
ウィルの養子とした時点で、私の手の内にあるのだから返すつもりもないんだけど。
いくら、詰めが甘いと言われていても、今回だけは絶対ヘマはしない。
「なぁ…?」
「何ですか?」
「これだけ調べられるんだったら、俺、要らなくないか?」
「何を言ってますか!公世子様の部下があんまり優秀すぎるから、私の友人たちがお手伝いしてくれて
いるのでしょ?もっと、公世子様も優秀なお友達を作った方がいいですよ!」
ある意味、私に調べられて公世子が調べられない情報があること自体おかしい。
私はただの公爵で公世子はこの国の公世子様なのだ。
次代の公に調べられないとなると、裁可のときに困らないのだろうか?
私を見てから、ウィルやノクトを眺める公世子。
「ウィルやセバスが、これを調べたのか?」
「うーん、これだけの情報ですからね、もっと沢山の人が関わってますよ!
社交会から情報を持ってきてもらったり、商人として集めてもらったり、子飼いのちゅんちゅんが
持ってきた情報もありますからね。
私に協力してくれる人がいるのですから、公世子様にもそんな方々がいらっしゃるでしょ?
あっ!ジョージア様は、こういうのは苦手だから期待できませんけどね?」
「アンナリーゼほど、社交界で人気が有ればいいんだがな」
私は苦笑いをする。
自国であれば、私に集められない情報はないだろう。みんなこぞって私に情報提供をしてくれる。
ただ、公国となると、まだまだ手付かずの状態になっているところもたくさんある。
ここが、自国と嫁いだ先との違いで、地盤が違うからこその難しいところであるのだが、元々地盤のある公世子がこれでは困ったものだ。
「人気がないなら、頑張って人気取りしましょう!
それも、今後この国をまとめるための一つであるでしょ?」
私は提案する。次は公世子が苦笑いする番であった。
次期公妃となる今の公世子妃は、欲深い公爵家の出だそうだ。
隙あれば、何かと狙っているらしく、関わらないことがうまくコントロールする方法だと諦めている。
確かに、噂で聞くところ……ダドリー男爵以上にあまりいい噂を聞かない。
ウィルやセバスの行った小競り合いに裏から関わっているのではないかと言われているのだ。
それも、自身の利益のために、インゼロ帝国と内通しているという噂があった。
だからこそ、関わらない方がいいというが……政略結婚であるのなら、もっとマシな者を選べなかったのかと言いたくなる。
第二妃は、良心的で公世子を陰ながら支えていると言われている。
そんな人を表に出すべきなのだが、そういうわけにはいかない爵位の問題やらなんやらと貴族のしがらみで公世子自身も雁字搦めになっているのだろう。
「人気取り云々は、俺の問題だから置いておいて……捕縛計画をしていこうか。
その前に、昼食にしないか……もう、頭が動かない」
「えぇ、そうしましょう」
疲れ切った公世子の顔を見るとなんだか可哀そうになり、私はデリアを呼んで昼食の用意をしてもらう。
私は、そのまま、執務机の方へ移動して、アンバー領での裁可を進める。
「アンナリーゼが、そうやって公爵として裁可しているのを見ると、変な感じだな」
「どういうことです?私、これでも、領地では、とっても人気が高いのですよ!」
「あぁ、ジョージアからも聞いている。
確かに、アンナリーゼが動けば、何か変わるかもしれないと密かに期待してしまうな」
「期待はしないでください。努力した人にしか、その結果はついてきませんから!
働かざる者食うべからずというでしょ?
働いたからこそ、得られるものがあると、領地のみんなは再確認しただけですよ!
しっかり、私に踊らされているのですよ。
そのうち、そのことに気付いて私を避けるようになるかもしれませんね。
まぁ、その頃には、アンバー領は変わりきった後だと思いますけどね!」
私は、セバスやイチアから出てきた案件に目を通して裁可の印を押していく。
リリーや警備隊からの連絡や小さな子どもからのお手紙まで目を通す。
これが、私の日常であり、これからも続いてほしい日常である。
この日常を守るために、78人の命を奪うことになる。
アンバー領にいる領民の生活を守るため、自分の子どもを守るためとはいえ……むごいことをするのだなと我ながら虚しくなる。
それでも、すでに、領地では、この窮地から抜け出せずに死んだ者も数えきれないくらいいる。
のうのうと甘い汁だけ吸ってきたダドリー男爵を許すわけにはいかない。
目をつけられたアンバー領は可哀想だと、私は切り捨てることもできたわけだが……戦争でたくさんの命を失う未来を思えば、少数を切り捨てでも多くの人を助けたい。
小さい頃の私なら……ハリーの命だけのためにすべてを投げ出しただろう。
今は、違う。他にも、自分の命をかける理由ができたのだ。
自分が正しいとは決して思わない、見方を変えれば悪なのだから……
それでも、私を信じてくれている人を少しでも助けられるよう……努力を惜しまないでいくしかない。
小さい子からの手紙を見れば、余計に心の中に灯る私の進む道標が明るく照らされるようだ。
余計、闇が深くなり、周りが何も見えなくなる。
真っ暗闇の中を一人、明るく照らされた道沿いを、私はほてほてと歩いて行く。
それが、どこへ続く道でもかまわない。
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