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でかした? 

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 トワイス国から帰ってきてから、悪阻に苦しむ私。
 今度は、一般的な吐き気をもよおす悪阻のようで、絶賛絶不調。
 盥を持って、屋敷を歩いているところだ。
 そして、無理をしないという約束をさせられた上で執務をしてもよいと、ヨハンとデリアの師弟より許可が下りたことで、私は久しぶりに執務室へと向かう。


 トワイス国に行っている間に悪阻が来なくて……本当によかった。
 こんな状態だったら、移動も考えることも難しい。
 ただ、今からは、そういう執務が続くのであるが、この気持ち悪さで大丈夫だろうかと不安さえある。
 あぁ、食べ悪阻が恋しい……いや、あれはあれで大変なのだが……ずっと、むかむかするよりかは、絶対いい。
 口に食べ物を入れたら落ち着くし、食事も普通にできたからだ。
 食べられないし、ずっと気持ち悪いし……最悪だった。
 うぅ……ネイトくんや……私を殺す気かい?
 生まれくるはずの、息子の名前を呼び、私はいつもの倍以上の時間をかけ執務室の扉を開くのであった。


「えらく、調子悪そうだな?姫さん、大丈夫なのか?」
「大丈夫……うん、大丈夫。お水飲むから少し待って!」


 水すら気持ち悪いのだが……飲まないわけにもいかないので飲む。


 体に流れる水が、気持ち悪さを胃に流してくれたのかのように少しだけ回復する。
 ふぅっと一息いれ、打ち合わせ机に私もつく。
 すでに、そこには、ウィル、セバス、ナタリー、ニコライ、ノクト、イチア、ビル、テクト、ユービスがそれぞれ自分の席についている。
 左隣の1席だけ空いているのだが、ここは、ジョージアの席なのでいつも空いている。


「さて、私がいなかった3週間の間にあったことを教えてちょうだい。
 まず、私が知っているのは、予定してた説明会ね!」
「あぁ、それは、私から……」


 ビルが挙手をしてくれて、私がするはずであった演説の話から始める。


「ニコライが、アンナリーゼ様の代わりにさせていただいた演説ですが、大盛況でした。
 元々公爵夫人アンナリーゼ様に興味を持っている領民には、これ以上ない挨拶だったのでしょう。
 アンナちゃんが来るんじゃないかと、みんな期待してたらしく、そこだけは残念そうにしており
 ましたがね……なんだ、マーラ商会の末っ子かと。
 それについては、ニコライが商会の顔となるのであれば、今後の課題となりましょう」


 ビルに言われ、ニコライはばつの悪そうな顔をしている。
 商人らしくなってきたといえ、まだまだ20代の若造だと思われている節があるのだ。
 その払拭は、ビルの言う通り、本人の努力しかないので、父や他の商人を見習って、もっと頑張ってもらわないといけない。
 ただ、顔を見る限り、大丈夫だと確信はしている。
 元々、この領地を一つの店とすることへの気合の入りようもニコライは違うのだ。
 それに、手本はたくさん目の前にいるのだから、向上心があるいや向上心しかないニコライなら、やってのけるだろう。
 それこそ、ビルの年になることには、きっと三国一の大商人になっているに違いない。


「職人と商会への提案なのですが、9割方が賛成をしてくれており、小さい商店などはすぐにでもと
 いうふうな形でした。
 なので、商人や商会に関しては、教育課程を今早急に作っております。
 店が終わった夕方からになりますが、少しずつ私たちが僭越ながら教鞭をとらせていただき、
 大商店の心構えと商売のやり方を教えて行こうと思っております。
 職人に関しては、まだ、浸透しない感じですね。元々頭の固いものもいますから……
 ただ、若いものたちは、おもしろそうだというのと一定の安定収入となることを考え、傘下に入る
 よう申出がありました」


 ふむふむ。私がいなくても、公爵夫人アンナリーゼという名前で商人商会は話がまとまりそうでなんとかなりそうだと感じた。
 職人に関しては、今後の動向次第でって感じではないだろうか?
 確かに、まだ、これと言って提示できるものがないのだ。
 1つコンテストをしようと思っているのだが……とりあえず、報告が残っているので今は黙っておく。


「他に報告はあるかしら?」
「工場とそこで働く農民や工員の住む家のことですが、設計図ができました。
 後でお渡ししますが、これで、進めて行きたいと思っています。
 予算については、セバスと話し合っており、もう少し、削れそうなところがないのか考えている
 ところです」


 イチアに任せてあった砂糖工場と農民たちの住居について、こちらも協力できているようだ。
 なんとか、なっているのであれば、私の裁可で事業が進む。


「アンナリーゼ様、その件で1つ話があるのですが?」
「セバス、何かしら?」
「砂糖工場を作る前に、砂糖を作るための道具が必要だって話だけど、それってもう進めていっても
 いいのかな?」
「うーん、いいと思うけど。ノクト、砂糖の苗って今、どうなっているの?」
「あぁ、今、20㎝くらいになったと報告を受けている。
 熱帯気候でないと育たないはずなのがなぁ……肥料がいいようで、このまま順調なら秋には作れる
 ようになる!」


 ニヤッと笑うノクトに、私も微笑み返す。
 念願の砂糖が、アンバー領で出来そうなことを心待ちにしている。
 それは、今では私だけではなく、ここに集まっているものの中でも同じ思いの人も多いだろう。


「セバス、もう進めていいようね!
 予算と含めて裁可するから、書類、持ってきてくれるかしら?」
「わかりました。では、そちらは準備します。
 あと、チラッと聞いたんだけど、砂糖の売り方、おもしろいね。
 僕も考えもしなかったよ!あとは、容器をどうするかって言う話が残っているんだけど、その顔なら、
 もう考えているようだね」
「えぇ、考えているわ!陶器職人に容器を作ってもらおうと思っているの。
 運ぶのは、葡萄酒用より大き目の瓶に入れて運ぶのはどうかと思っているわ!
 口はコックのようなもので開閉できるようにしたらどうかしら?」
「へぇーそれは、職人泣かせの仕事になりそうな話だな」


 ノクトもおもしろそうにしている。


「例えばなんだけど……そういうものを作るにあたっては、職人さんたちに競わせてはダメかしら?
 原価と売値、さらにアイデアで値段をつけてもらって、よりおもしろいもの、価格と釣り合う出来の
 ものを採用したり……」
「なるほどね。それで、姫さんの考えは、領地内で職人同士競わせてより良いものをおもしろいものを
 作らせるってことか?」
「そうね。そうやって、創意工夫したものは、ハニーアンバーにしか売れない専売特許としてしまえば、
 利益はアンバーに恒常的に入ってくる。
 もし違反者を見つけたら、徹底的に負かしましょ!
 領地内で作るのであれば、他の工房で作るのも可能とする。
 新しいものを作るのが得意な職人さんと模倣を得意とする職人さんみたいに得意不得意はあると
 思うのよね!
 だから、コンテストをしようと思うのだけど……どう思う?」


 私の提案は、また、なんか言い始めた……とみなが呆れかえっている。
 いや、呆れかえられると、困るのだけど。
 私、これ言うのすごく楽しみしてたのだ。
 まずは、葡萄酒のボトルや砂糖の入れものの設計をいろいろと作ってもらおうとおもっていたのだから……


「まぁ、いいんじゃないか?
 姫さんがやりたいって言うんだったら、職人も納得するだろう?」
「どうだかね……わかんないけど、おもしろそうなことだと思うのよ。
 早速、考えているのがあるの。トワイスから職人を連れ帰ってきているのよ!」
「はぁ?もう、姫さん、引き抜きしてきたのかよ!」
「えぇ、してきたわ!だって……一目見たときから、興味がとっても惹かれたのよ!
 まぁ、こんなの集めるのは公世子様くらいしか思い至らなかったんだけどね……」


 私が王都から持ってきた箱の1つを開く。
 これは、買ったものなのだが……なかなか、インパクトはあるだろう。


「これに蒸留酒を入れたら、ちょっと高い値段でも売れると思うんだけど!」


 机の上に置いたのは、ラズが作った女性の裸体瓶である。
 興味を引かれたのか、ノクトはわざわざ席を立ってこちらまで見に来た。
 それに倣って、商人たちも見に来る。


「これは……なんともまぁ……」
「精緻にできてますね……」
「これ、ガラスですか?」
「わ……これは、確かに公世子様が喜びそうなものですね!」


 最初は、商人たちが見ていたが、そのうちセバスやイチアもその輪に加わる。


「蒸留酒のほうからも、葡萄酒同様に領地主導で売ってほしいという打診があったので、
 これは、提案してみてもいいかもしれませんね。
 ただ、これは、人を選びますよ?」
「そうね、だから、シリアルナンバーを入れて限定10個しか作らない。
 売り出した年とシリアルナンバーを入れれば、特別感ないかしら?
 例え、中身に興味なくても瓶が欲しいっていうコレクターとか出てきそうじゃない?」
「なるほど、それは……一理ありますね!」


 向こうで職人を見つけてから、考えていたことを話す。
 いや、本来なら、もっと話したいこともあるのだが……とりあえず、コンテストの話となりそうだった。
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