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私は何もしてはいけないので集計をする、そして、遊ぶ。

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 ジョーの生誕祭が無事に終わり、領地の真ん中に建っている別荘への引っ越しも無事に終えた。
 これから、ここがアンバー領地のお屋敷となる。
 住み心地は……デリアのおかげで申し分なし!
 配置も寸分たがわず、公都の別宅と同じようになっている。
 いつも思うが、うちの侍女、出来すぎだ。


 さて、この屋敷に引越しするまでの話をしよう。
 私、結構忙しくしていたのだから……聞いてほしい。


 私がこの2週間でしたことは、誕生祭で配るようのクッキー作りを手伝ったことと内職として作ったクッキーの袋詰めをした。
 あのクッキー配りも領民がもらって嬉しいで1度目、セバスとイチアが考えた住民票作成をするための名簿作りに役立ち2度目、ビルたちの職業確認に役立ったことで3度おいしい工夫になった。
 さらに、ゴミ回収と名を打って、5種類のクッキーの中で1番おいしかったものに、クッキーの入っていた袋を投票してもらうことにしたのだ。
 ゴミも回収できた上に、人気投票をすることで公都で喫茶をするのに役にたつのではないかと私は発案した。
 1度で4度おいしいことになり、この発案をした時点で、感心された。
 ただ、色々手間はかかるし、準備もしてもらったりとウィルたちがさらに動き回ってくれたのだが、私は、クッキー作りと内職以外、ただそれを見守るだけとなった。


 この2週間、私は、まず、引っ越しが終わるまでデリアに仕事しないようにと完全にストップさせられた。
 何故なら……思いついたことをまとめるのに、本やら書類やらを引っ張り出しては見直すために開きっぱなしにして整理整頓ができないうえに、せっかく引越しするのに詰めた書類をバンバン散らかすから引っ越しが遅れるという理由と、単純に思い付きから始まる話し合いも始まったら本格的になり、テコでもみなが動かないで話し合いをやり遂げてしまうので、やっぱり引っ越しが遅れて効率が悪い上に侍従たちに仕事が増えるから辞めてくれとデリアに言われたからだ。


 デリアに言われたら、私はそれに従う以外ない。
 全く正しすぎるので言い返すこともできず、おとなしくしているしかなった。


 そして、引越しまで2週間もあった。
 2週間で改装が終わるのかと思っていたけど、なんともまぁ……成し遂げてしまった。
 さすが、お掃除隊の面々と大工のおじさんたち。
 手抜きでないことを祈るばかりだ。
 短期間で改装を仕上げてしまったそれもすごいなと思うのだが、とにかく私は何もすることがなかったのだ。

 なので、執務室でおとなしく、クッキーの袋の数を数えていた。
 配っただけでも、8000枚ある……目の前に回収箱が積まれて気が遠くなる。


 そうは言っても、引越しでみんなが忙しくしているので手伝えとは言いにくい。
 私だけが、何もすることがないのだ。
 それに、デリアに言われたように邪魔はするべきでない。
 このクッキーの調査だって、元はと言えば私が興味あっただけなのだ。


「はぁ……結構大変ね……」


 ざっとみた感じ、結構な数を回収できたようだ。
 なかなか、反応がいいのではないだろうか?
 5つに分けた箱は50ありその中身は、まちまちだ。
 すごい少ないのから溢れかえっているのもある。

 それぞれの箱に詰めてあるものは、クッキーの味別に入っているので、まとめて再度分けて箱に詰めなおした。
 少ないものから、まず手をつける。

 今回、用意ししたクッキーの味は、プレーン、砂糖ミルク多め、紅茶茶葉、葡萄ジャム、コーヒーを混ぜたものを用意した。

 砂糖が高価すぎて、ほぼ消費皆無の領地だ。
 素朴なプレーンと砂糖とミルクたっぷりのクッキーが特に人気があるようだった。


「やっぱり、ほどほどに甘いものが人気なのね。
 味見もしたけど、おいしかったものね……いくらでも食べられそうなくらい。
 キティの砂糖加減は最高だったわ!
 デリアが一緒に作業していなかったら、私、配っていたものまで食べてしまってたかも……」


 内職の日のことを思い出すと、反省を込めてため息をつく。


 3番目に人気だったのは、甘みを抑えた紅茶茶葉入りで、男性陣から好評だったのか、それっぽい字で感想が書かれていた。


「甘すぎないのも必要っと。
 確かに、お酒と一緒に食べるかはわからないけど……
 甘い葡萄酒との相性を考えると甘さ控えめのものも必要なのね。
 でも、葡萄酒の肴だと……葡萄酒の甘い香りと紅茶の香りが喧嘩しそうだから、
 プレーンでも甘さ控えめのものを作るといいかもしれないわね!」

 あとは、葡萄酒を作ったときのあまりの葡萄を煮詰めてジャムにしたものを挟んだもの、コーヒーを混ぜたものを用意してあった。


 私は、どれもこれもおいしかったのだけど……ジャムは少し甘すぎたのか人気がなく、コーヒーはなじみがないのか、3枚しか入っていなかった。


「よし!集計終わり!」


 5日かけて、袋を数え続けた結果……全体で6798袋が投票されていた。
 それぞれみていくと、プレーンが1番多く3958票あった。
 次に砂糖とミルクたっぷりのクッキーが1429票、紅茶茶葉が1264票、葡萄ジャムが144票、コーヒーが3票であった。


「うーん、やっぱりプレーンが人気ね。
 サクサクと何枚でも食べられそうだものね!
 砂糖とミルクは、プレーンよりかは、少し甘めになっているけど、これも多いわね。
 意外と健闘しているのが紅茶茶葉ね。
 紅茶の匂いが、クッキーを噛んだときに口の中で広がって鼻に抜ける香りがとてもよかったわ!
 今回は、高級茶葉を使っていないけど……手土産用に高級茶葉を使えば……アンバーの高級茶葉
 自体も売れるんじゃないかしら?店頭には、一緒に置くべきね!
 ジャムが意外と人気なかったなぁ……甘すぎたのかしら?
 私は、食べなれているけど甘味の少ないここでは、人気ないのね。
 そして、コーヒー!全然ダメじゃない!癖のある匂いがダメなのかしら?
 義姉のエリザベスは好んで飲んでいたし、好きな人も領地にいたからいけるかと思ったけど、
 全然ダメね……
 公都なら、売れるのかしらね?これは、また、公世子様に実験台になってもらうしかないわね!!」


 執務室で、床に座りながら、私はブツブツと次の計画を練っていく。


「オレンジの皮とか入れたら……どうなのかしら?
 腐るかしら?でも、マーマレードもあるから……大丈夫?」
「アンナリ……!!何をなさっているのですか?」
「あら、リアン!ねぇ、クッキーにオレンジの皮とか入っててもいいものかしら?」
「えっ?えぇ、いいと思いますけど……あの、床に……」
「あぁ、ついね……集計をしてたものだから」
「リアン、アンナ様は?」


 床に座る私を見てリアンは固まっていたが、デリアに呼ばれて驚いていた。
 そして、私の今の状況を見てデリアの目が吊り上がった。


 あぁ……ヤバイ……お説教だ……公爵になっても、これだけは変わらない。
 いつの間にか、デリアには頭の上がらないようになった私は項垂れるのであった。



 ◇◆◇◆◇



 その後、もちろん、デリアにこってり絞られた。
 2週間何もするなと言われたので、すぐに片づけられる集計をしていたのだが、公爵で夫人で妊婦が床に直接座るなど、言語道断だと……
 もっともすぎてぐぅの根も出ない。


 それからは、本当に何もせず、ただただ、せわしなく動くみんなをご苦労様!と声をかけながら見ていた。
 座りっぱなしも大変だったので、敷地内をフラフラ歩いたりもしたが、のどかなアンバー領の空気が開放的になり、レオやミアとはしゃいでデリアに叱られるを繰り返す。
 私、何歳になっても、子どもなのね……反省もしつつ、自分に呆れる。
 暇で仕方がなかったので、ジョーとレオとミアを連れ、中庭でレオに剣術を教えたりしていた。
 まぁ、それもデリアに見つかったのだけど、無理をしない程度に、子どもたちを見てくれるのは助かるので、しばらく子守をしてください!と言われたので引っ越しするまでの4日間は、ずっと付きっ切りで遊んでいたのである。

 引っ越しをして、やっと、みんなと一緒に机を囲み領地の話ができるかと思うとわくわくして、どんな話をみんながしてくれるのか楽しみで仕方がなかった。
 いつまでたっても、アンバー領には興味が尽きることはなさそうだ。
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