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本格的に

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 拝命され、私たちは公都の屋敷に戻ることにした。
 こちらに戻って2日だ。
 さすがに、いつもは平気な私でも、今回ばかりは疲れてしまった。


「アンナ、大丈夫?顔色、良くないよ?」
「えぇ、少しだるいです。屋敷に戻ったら休ませてもらいますね……」


 ジョージアによっかかって歩いていたが、後ろでウィルとセバス、ノクトが話していることも気にはなる。
 無理はしてはいけないと思いつつも、混ざりたい気持ちでいっぱいだった。
 馬車の前につき、先に放りこまれる。
 そのまま、ジョージアが乗り込むのだと思っていたら、ウィルが乗ってきた。


「姫さん、顔色悪いけど大丈夫か?」
「えぇ、休めば……
 それよ……」


 ウィルに引越しの話をしようとした瞬間に、手で制してそれ以上はしゃべらせてくれなかった。


「俺とセバスは、今晩屋敷に行くから、それまでに体調整えておいて。
 あっちこっちと姫さんのことだから、短い期間にもかかわらず欲張りに動き回ってたんだろ?
 少し、自分の身も大事にした方がいい。
 生き急ぎることはないんだ。俺もいるしセバスもいる。
 ナタリーなんて早く役に立ちたいって息巻いてる。
 大丈夫。姫さんは、一人じゃない。
 俺たちが、必ず支えるから、お山のてっぺんでふんぞり返っていればいいんだ。わかった?」


 ウィルに手を握られ温かな体温を感じると、少しホッとする。
 こうやって私の暴走を止めるのはウィルだ。
 いち早く、私の不調を気付いてくれ、止めてくれる。
 そして、みんながいるから大丈夫だと諭してくれる。
 自分では、気付ききれない不調も焦りも何もかもを見透かされるので、逆らうことはできない。


「心配しなくても、領民は待ってくれるさ。
 ジョージア様には悪いけど、今まで待ってたんだから、もう少しくらい大した時間じゃない。
 まずは、体調を整える。指示を出す人間がヘタっていたら、実働部隊は好き勝手動くぞ?」


 私はコクコクと頷くと馬車の壁にべたっと背中を預ける。
 まだ、外でセバスとノクトが話しているのが聞こえてきていた。


「ウィル、少しだけ話してもいい?」
「あぁ、何?」
「今日、引き受けてくれてありがとう。セバスにも伝えてくれる?」
「そんなこと?
 俺らは、姫さんと関わった日から望んでいたって言ってるだろ?
 今回の話は、こっちが願ったり叶ったりだから、お礼は言う必要はねぇよ!
 むしろ、俺を選んでくれて、ありがとう」


 ニカッと笑うウィル。
 学生の頃から変わらず私と接してくれる。
 もう、6年の付き合いになるのかと思うと、時間の流れは早いものだとごちる。


「ウィル……」
「ん?」
「私ね、二人目ができたの……」
「あぁ、それで体調悪いのか。
 少々のことで、へこたれないからちょっと変だなとは思ってたんだ。
 なら、なおさら、無理をする必要はないな。
 領地に行っても、部屋で大人しく指示を出していればいいさ。
 俺やセバス、ナタリーが、このアメジストにかけて、姫さんの望みを叶えてやるよ。
 それに、元気な子どもを生めよ!そしたら、子どもも一緒に領地を飛び回れるんだ。
 どうせ、姫さんに似た子どもばかりだから、嬉々として領地を駆け巡ってそうだ!」


 私の性格をよくわかっているからこその話だ。
 馬車からウィルが降りる。


「んじゃ、夜にな!
 俺もこっち片付けてくるからさ!おっさんたち呼んでくるわ!」


 馬車に一人取り残され、ぼぉーっと天井を眺める。
 自分でも、自覚できるくらいには、ここしばらく動きすぎた。
 目まぐるしく変わる目の前の景色に、私自身が焦りすぎていたのかもしれない。


「ちょっと、休憩ね……1週間くらい休んでもいいかしら?」
「おう!休んでもいいぞ?
 ウィルとセバス連れて、俺たちは一足早く馬で領地に向かうし。
 アンナが来るまでに、領地のことを見て回って、下準備始めておくからさ!」
「そうだよ。そんな顔色悪いのに無理したら、子どもにもよくない。
 アンナは、もうお母さんになったんだからわかっているよね?」
「わかっていますよ。
 命の重さも……これから、奪う命のこともちゃんと受け止めてます」


 ジョージアとノクトは、私を見て頷く。


「まぁ、奪った命が山ほどある俺が言うのはなんだが……孫が生まれるかと思うと嬉しいぞ?」
「誰が誰の孫?ジョージア様と私の子どもです!」


 ムスッとしていうと、二人が笑う。
 張りつめていすぎた自分の中のものを少しだけウィルに緩めてもらったばかりだったが、
 二人の顔を見ていると、もう少し気持ちを柔らかくゆったりとさせてもいいのだと思えてくる。


「じゃあ、屋敷に帰ろうか。
 帰ってゆっくり休みなさい。1週間は、屋敷から出ることも禁止だから!
 引っ越しの準備もリアンに任せなさい!」


 やたら、頼もしく言うジョージアがおかしい。
 私、みんなに心配してもらって、幸せだなぁ……と涙が出てくる。
 隣に座ったジョージアに寄りかかり、屋敷まで短い距離を少しだけ眠る。


 目を開けると本宅に戻っていた。
 ノクトが私を抱きかかえてくれて部屋に向かうところのようだ。


「ん……ノクト、ごめんね……」
「気にするな。部屋に入ったら、とにかくゆっくり眠れ。
 デリア、今日はアンナの方についてやってくれ、疲れすぎている」
「かしこまりました。
 アンナ様、ドレスだけ脱いだらゆっくりなさってください……
 ほっておくと、アンナ様は無理ばかりするんですから!」


 少し怒っているデリアに、私は苦笑いをする。
 デリアが今日は側にいてくれるなら、何もかも任せて安心して寝られる。
 そうするねと言ってベッドまで運んでもらい、着替えさせてもらってベッドに潜り込む。
 すると、瞼を閉じた瞬間に夢も見ずにぐっすり眠ってしまった。
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