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ジョージアの憎悪
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「何故、ソフィアがそれらをつけている?」
本宅にある私の部屋に1人、ひっそりと座っていたジョージアは、アンバーの秘宝をつけたソフィアがここにいることに驚いた。
「だって、私が第一夫人になったのですもの!
私が、アンバーの秘宝をつけて当然じゃないですか!」
悪びれることなく、自分が第一夫人であると主張するソフィア。
私は、その言葉を考える。
これ、『予知夢』ね。
私からアンバーの秘宝たちをソフィアに託すことだけは、決してない。
アンバー公爵夫人ではなくなり、ジョージアの妻ではなくなることを意味するからだ。
それにしても、私の部屋だと思われるところは、とても荒れていた。
不思議なことが起こっていることに私は戸惑う。
ジョージアの気持ちと同化しているのではないだろうか?
視線が、ジョージアと同じなのだ。
感情もジョージアのが溢れてくるようで、渦巻いている気持ちを感じてなんだか少し怖くなる。
ジョージアからの情報が私にも流れてくる。
私の部屋は、葬儀の日に誰かに荒らされたらしい。
取られたものは、アンバーの秘宝と青薔薇の宝石たち。
「ジョージア様の瞳の色と一緒ですね!」
アンバーの秘宝を結婚式の前日、私が優しく微笑んでジョージアに言ったことだ。
寝っ転がって、一緒に見ていた光景を思い出す。
特にアンバーの秘宝に思い入れがあるわけではなかったようで、初めて私に会ったときに言われた言葉を思い出し恥ずかしくなったことを思い出しているようだ。
そういえば、私は、ジョージアに宝石が欲しいとせがんだことはなかった。
ことさら、卒業式に贈ったサファイアの青薔薇を気に入っていたし大切にしていた。
公爵家の懐事情も知っていたのもあるが、何よりジョージアが選んでくれたものを側に置きたいと常々思っているからだ。
ジョージアは、それを不思議がっていた。
「私には、この青薔薇が1番似合いますから!」
私を思い出すだけで、ジョージアの目頭が熱くなるを感じる。
「アンナリーゼ以外を第一夫人にするつもりはない!
アンバーの秘宝を置いて、この部屋から出て行け!」
「ジョージア!あんまりよ!」
「あんまりなのは、ソフィアのほうだ!俺からアンナを奪っておいて……!」
ソフィアは驚愕し、そのあと仄暗い瞳でジョージアを見ていた。
私が死んだという喪失感が、ジョージアの中でどんどん満たされていく。
ソフィアへのダドリー男爵家への憎悪もはらんで。
私は、ジョージアにそんな風になってほしいわけではない。
感情が流れてくるたびに、苦しくなって泣きたくなる。
でも、これは、『予知夢』であって、今は、実際に起こっているわけではない。
未来に起こるであろうことがらを夢見ているわけで、この体も私のものではない。
「ディル!」
「はい、旦那様。
アンバーの秘宝を奪い返し、今すぐ追い出せ!」
いつも物静かで大人しいジョージアが、感情剥き出しに怒鳴ったのを見たのは、私は後にも先にもこのときだけであった。
怒っていても、こんな風に声を荒げたことなかった。
ディルもそんなジョージアにとても驚いていた。
どっと私の中に流れてくるジョージアの感情。
寂しい、辛い、憎い、苦しい、腹立たしい、会いたい……負の感情がごちゃ混ぜになって私を駆け巡る。
会いたい、会いたい、抱きしめたいと……ジョージアの心の中で嘆いている。
私がいなくなったこの屋敷は、火の消えたように静まり返ってるらしい。
葬儀が終わったあと、時間を見つけてはこの部屋に入り浸っているという情景が浮かぶ。
ここまでジョージアの感情や見たものが、私への想いで溢れかえっていることに苦しく思う。
「ジョージア!酷いわ!私を見捨てるの?ねぇ!ジョージア!!」
ソフィアが必死で呼んでいるのに、目に映そうとしないジョージア。
想像できないほど、深く深く自分を責め、ソフィアやダドリー男爵を責め、置いて行った私をなじっている。
「触らないで!ジョージア!!」
ディルに追い出されまいと必死に抵抗をするソフィアに呼びかけられ、寂しげな、悲しげな瞳をソフィアに向ける。
「ソフィアは、アンナに勝てる何かがあったのか?
公爵家の一員として、何をした?
ただただ、贅沢をして、男爵家へ資金を横流ししていただけじゃないか!
そのお金は、誰のお金だ?」
「それは、ジョージアの……」
「俺のものではない!アンバー領の民のお金だ!
その領民もアンナが、導いてきた。
ソフィアは、一体アンバーのために何をしたのだ!」
心の中のから絞り出すように、ソフィアを責めていく。
そうすることで、少しでも、絶望の淵からとどまろうとしているのだろう。
「ハニーローズを知っているか?」
ジョージアの唐突な問いかけに、訳のわからないことをとソフィアが言う。
「ソフィア、あなたが殺そうとした俺とアンナの子どものことだ。
アンジェラは、この国の法によって守られる存在。
ソフィア、あなたは……いいや、あなた方男爵家は、ハニーローズ殺人未遂により、一族郎党死罪と
なるだろう。
公爵家から、これ以上死人は出せない。
今をもって、離婚する。
ジョージとジャンヌも連れて出ていけ!」
ジョージアの瞳が、ソフィアを突き放すように蔑み、怒りに満ちていた。
「そ……そんな……そんなこと!!!」
「あるんだ!アンジェラは、この国が、守るべき人物なんだ。
我が家は、始まりの女王に連なる系譜。
それをアンナは知っていた。
アンジェラを生むことも含め、アンジェラが毒殺されることも。
だから、自らの命を持ってアンジェラを守った。
そなたの罪を一切合切置いてな。いや、俺とそなたの罪をだな……」
ソフィアに向けて皮肉るように笑うジョージア。
優しく温かく微笑むジョージアではなく、私の知らない氷のように冷たい背筋の凍るかのようなジョージアの微笑みである。
「ジョージとジャンヌは、俺の子供ではないな」
青ざめるソフィア。
ディルは、ジョージアが責める姿をずっと見ていた。
床に落ちている私が残した手紙は、ジョージアにとって苦しいものとなっているだろう。
しかし、先日それらはジョージアに全て打ち明けた。
今、まさに苦しんでいるだろうジョージアに思いを馳せながら、今目の前の辛くしているジョージアの心に寄り添ってあげたいのにできないのが悔しい。
「隣国の伯爵の子だろ?」
……
「……ンナ……アンナ!アンナ!!」
名前を呼ばれ、揺さぶられる。
うっすら目を開けると、目の前にジョージアがいた。
3日ぶりに部屋から出てきたようで、私を覗き込む。
その瞳は、とても心配してくれているようで、不安そうであった。
「ジョー……ジアさ……ま……?」
「あぁ、わかるか?」
「えぇ……私は……?」
「うなされていたから、起こしたんだ。大丈夫か?」
私は、大丈夫と答えたが、涙を流していたらしく、ジョージアに両方の親指の腹で拭われる。
「怖い夢を見たのです。
ジョージア様でも、声を荒げて怒ったり、感情をむき出しにしたりすることもあるのですね?」
意図を得ないジョージアは、困惑している。
まだ、寝起きの私はぼんやりしているのでその顔をみていつものジョージアであることに安心した。
今見た『予知夢』は、起こりえないだろうと私は回らない頭で考える。
ジョージアとソフィアの離婚を今、進めようとしているのだ。
もうしばらくぼんやりしていたが、隣にジョージアが寝そべったのをいいことに私はぎゅっと抱きつく。
「俺だって、怒ることもあるさ。
アンナが、いなくなることを想像するだけでゾッとするし、アンジェラが傷つけられたら怒るし、
相手を罵る。
アンナもアンジェラも俺にとって、とても大事なんだ」
私は何も答えず、ジョージアに甘えるように胸に顔を埋める。
ジョージアの気に入っている香水の匂いがほんわりしてきて心地いい。
「ジョージア様、私は、ジョージア様より、先に死ぬと思います。
でも、決して憎しみや怒りに取りつかれないで……
ジョーを生まれてくるネイトを愛しみ大切にしてください」
「あぁ、わかった。アンナには、愛しみはいらない?」
「私ですか?」
そうそうと、優しい表情で頷いている。
「今甘えられるのでいいです」
「そう……」
柔らかく微笑むジョージア。
「まだ、起きるには早いから、もう少し寝なさい」
優しく髪を撫でられると、怖い夢を見たときに兄と一緒に寝ていたことを思い出す。
さっきまでの逆立った気持ちがゆっくり和らいで、トロンと眠りにつくのであった。
本宅にある私の部屋に1人、ひっそりと座っていたジョージアは、アンバーの秘宝をつけたソフィアがここにいることに驚いた。
「だって、私が第一夫人になったのですもの!
私が、アンバーの秘宝をつけて当然じゃないですか!」
悪びれることなく、自分が第一夫人であると主張するソフィア。
私は、その言葉を考える。
これ、『予知夢』ね。
私からアンバーの秘宝たちをソフィアに託すことだけは、決してない。
アンバー公爵夫人ではなくなり、ジョージアの妻ではなくなることを意味するからだ。
それにしても、私の部屋だと思われるところは、とても荒れていた。
不思議なことが起こっていることに私は戸惑う。
ジョージアの気持ちと同化しているのではないだろうか?
視線が、ジョージアと同じなのだ。
感情もジョージアのが溢れてくるようで、渦巻いている気持ちを感じてなんだか少し怖くなる。
ジョージアからの情報が私にも流れてくる。
私の部屋は、葬儀の日に誰かに荒らされたらしい。
取られたものは、アンバーの秘宝と青薔薇の宝石たち。
「ジョージア様の瞳の色と一緒ですね!」
アンバーの秘宝を結婚式の前日、私が優しく微笑んでジョージアに言ったことだ。
寝っ転がって、一緒に見ていた光景を思い出す。
特にアンバーの秘宝に思い入れがあるわけではなかったようで、初めて私に会ったときに言われた言葉を思い出し恥ずかしくなったことを思い出しているようだ。
そういえば、私は、ジョージアに宝石が欲しいとせがんだことはなかった。
ことさら、卒業式に贈ったサファイアの青薔薇を気に入っていたし大切にしていた。
公爵家の懐事情も知っていたのもあるが、何よりジョージアが選んでくれたものを側に置きたいと常々思っているからだ。
ジョージアは、それを不思議がっていた。
「私には、この青薔薇が1番似合いますから!」
私を思い出すだけで、ジョージアの目頭が熱くなるを感じる。
「アンナリーゼ以外を第一夫人にするつもりはない!
アンバーの秘宝を置いて、この部屋から出て行け!」
「ジョージア!あんまりよ!」
「あんまりなのは、ソフィアのほうだ!俺からアンナを奪っておいて……!」
ソフィアは驚愕し、そのあと仄暗い瞳でジョージアを見ていた。
私が死んだという喪失感が、ジョージアの中でどんどん満たされていく。
ソフィアへのダドリー男爵家への憎悪もはらんで。
私は、ジョージアにそんな風になってほしいわけではない。
感情が流れてくるたびに、苦しくなって泣きたくなる。
でも、これは、『予知夢』であって、今は、実際に起こっているわけではない。
未来に起こるであろうことがらを夢見ているわけで、この体も私のものではない。
「ディル!」
「はい、旦那様。
アンバーの秘宝を奪い返し、今すぐ追い出せ!」
いつも物静かで大人しいジョージアが、感情剥き出しに怒鳴ったのを見たのは、私は後にも先にもこのときだけであった。
怒っていても、こんな風に声を荒げたことなかった。
ディルもそんなジョージアにとても驚いていた。
どっと私の中に流れてくるジョージアの感情。
寂しい、辛い、憎い、苦しい、腹立たしい、会いたい……負の感情がごちゃ混ぜになって私を駆け巡る。
会いたい、会いたい、抱きしめたいと……ジョージアの心の中で嘆いている。
私がいなくなったこの屋敷は、火の消えたように静まり返ってるらしい。
葬儀が終わったあと、時間を見つけてはこの部屋に入り浸っているという情景が浮かぶ。
ここまでジョージアの感情や見たものが、私への想いで溢れかえっていることに苦しく思う。
「ジョージア!酷いわ!私を見捨てるの?ねぇ!ジョージア!!」
ソフィアが必死で呼んでいるのに、目に映そうとしないジョージア。
想像できないほど、深く深く自分を責め、ソフィアやダドリー男爵を責め、置いて行った私をなじっている。
「触らないで!ジョージア!!」
ディルに追い出されまいと必死に抵抗をするソフィアに呼びかけられ、寂しげな、悲しげな瞳をソフィアに向ける。
「ソフィアは、アンナに勝てる何かがあったのか?
公爵家の一員として、何をした?
ただただ、贅沢をして、男爵家へ資金を横流ししていただけじゃないか!
そのお金は、誰のお金だ?」
「それは、ジョージアの……」
「俺のものではない!アンバー領の民のお金だ!
その領民もアンナが、導いてきた。
ソフィアは、一体アンバーのために何をしたのだ!」
心の中のから絞り出すように、ソフィアを責めていく。
そうすることで、少しでも、絶望の淵からとどまろうとしているのだろう。
「ハニーローズを知っているか?」
ジョージアの唐突な問いかけに、訳のわからないことをとソフィアが言う。
「ソフィア、あなたが殺そうとした俺とアンナの子どものことだ。
アンジェラは、この国の法によって守られる存在。
ソフィア、あなたは……いいや、あなた方男爵家は、ハニーローズ殺人未遂により、一族郎党死罪と
なるだろう。
公爵家から、これ以上死人は出せない。
今をもって、離婚する。
ジョージとジャンヌも連れて出ていけ!」
ジョージアの瞳が、ソフィアを突き放すように蔑み、怒りに満ちていた。
「そ……そんな……そんなこと!!!」
「あるんだ!アンジェラは、この国が、守るべき人物なんだ。
我が家は、始まりの女王に連なる系譜。
それをアンナは知っていた。
アンジェラを生むことも含め、アンジェラが毒殺されることも。
だから、自らの命を持ってアンジェラを守った。
そなたの罪を一切合切置いてな。いや、俺とそなたの罪をだな……」
ソフィアに向けて皮肉るように笑うジョージア。
優しく温かく微笑むジョージアではなく、私の知らない氷のように冷たい背筋の凍るかのようなジョージアの微笑みである。
「ジョージとジャンヌは、俺の子供ではないな」
青ざめるソフィア。
ディルは、ジョージアが責める姿をずっと見ていた。
床に落ちている私が残した手紙は、ジョージアにとって苦しいものとなっているだろう。
しかし、先日それらはジョージアに全て打ち明けた。
今、まさに苦しんでいるだろうジョージアに思いを馳せながら、今目の前の辛くしているジョージアの心に寄り添ってあげたいのにできないのが悔しい。
「隣国の伯爵の子だろ?」
……
「……ンナ……アンナ!アンナ!!」
名前を呼ばれ、揺さぶられる。
うっすら目を開けると、目の前にジョージアがいた。
3日ぶりに部屋から出てきたようで、私を覗き込む。
その瞳は、とても心配してくれているようで、不安そうであった。
「ジョー……ジアさ……ま……?」
「あぁ、わかるか?」
「えぇ……私は……?」
「うなされていたから、起こしたんだ。大丈夫か?」
私は、大丈夫と答えたが、涙を流していたらしく、ジョージアに両方の親指の腹で拭われる。
「怖い夢を見たのです。
ジョージア様でも、声を荒げて怒ったり、感情をむき出しにしたりすることもあるのですね?」
意図を得ないジョージアは、困惑している。
まだ、寝起きの私はぼんやりしているのでその顔をみていつものジョージアであることに安心した。
今見た『予知夢』は、起こりえないだろうと私は回らない頭で考える。
ジョージアとソフィアの離婚を今、進めようとしているのだ。
もうしばらくぼんやりしていたが、隣にジョージアが寝そべったのをいいことに私はぎゅっと抱きつく。
「俺だって、怒ることもあるさ。
アンナが、いなくなることを想像するだけでゾッとするし、アンジェラが傷つけられたら怒るし、
相手を罵る。
アンナもアンジェラも俺にとって、とても大事なんだ」
私は何も答えず、ジョージアに甘えるように胸に顔を埋める。
ジョージアの気に入っている香水の匂いがほんわりしてきて心地いい。
「ジョージア様、私は、ジョージア様より、先に死ぬと思います。
でも、決して憎しみや怒りに取りつかれないで……
ジョーを生まれてくるネイトを愛しみ大切にしてください」
「あぁ、わかった。アンナには、愛しみはいらない?」
「私ですか?」
そうそうと、優しい表情で頷いている。
「今甘えられるのでいいです」
「そう……」
柔らかく微笑むジョージア。
「まだ、起きるには早いから、もう少し寝なさい」
優しく髪を撫でられると、怖い夢を見たときに兄と一緒に寝ていたことを思い出す。
さっきまでの逆立った気持ちがゆっくり和らいで、トロンと眠りにつくのであった。
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