上 下
250 / 1,480

私の真実Ⅱ

しおりを挟む
「ジョージア様の言う通りかもしれません。
 私の初恋は、ハリーですよ。
 彼も私との結婚を望んでくれていました。
 私は、大切な人を守るために『予知夢』の話をした上で、別々の道を歩むことを決めたのです。
 私にとって、ハリーは、今でも大好きな友人の一人ですよ」



 やはりそうだったのか……と、ジョージアは苦々しそうに呟いている。



「続けてもいいですかぁ?」



 あぁと返事は返ってくるが、たぶん、心ここにあらずだろう。



「入学式の前日、兄にジョージア様を紹介されたときは、正直ビックリしました。
 入学式の後に出会うはずだったのに……それより、前に出会ったので。
 この頃には、ジョージア様に嫁ぐと、心はすでに決めていましたから、
 実物は、どんな人なのだろう?ととっても興味があったのです。
 夢では、とても冷たい人でしたし、冷え切った結婚生活でしたからね……
 覚えていますか?出会った日のこと」



 私はジョージアに質問すると、もちろんと返してくれる。



「なんていうか、もっと可愛らしい感じだったよね。
 ニコッと笑って話しかけてきたし、そのときにアンナに惹かれたんだよ」
「ふふっもちろん、知ってますよ!
 ハリーに言われたのですけど……初めて会った日に、心を奪われたのは、
 ジョージア様だけでは、無かったらしいですけどね!
 私も、ジョージア様に心を奪われていたんですって!」



 私は、ふふっと笑うと、ジョージアは、そんなバカな……と言っている。



「一度もそんなそぶりなかったじゃないか?
 いや、そうでもなかったのか……?」



 何やら、学生の頃を思い浮かべているのか、私との思い出を探っているようだ。



「一番の予定外は、ジョージア様の卒業式のエスコートに、私の卒業式のときの
 プロポーズですね……あぁ、あと、結婚生活。
 夢にも思わないとは、このことですよね……『予知夢』でも見ていないのですから……
 とっても大事にされて、いっぱい愛情をもらって、楽しいこともたくさんしましたね?」



 こっちを見ている視線が気になったので、膝を抱えて俯いていた私は、チラッとジョージアの方を見る。



「なんだか、予知夢?を裏切ってしまって申し訳ないね?」
「いいえ、嬉しい誤算ってやつですよ!
 両方の卒業式は、私にとって、とってもとっても大切な想い出ですし、
 結婚式は、幸せすぎて忘れられません!
 一緒に暮らした2年は、とても楽しかったし大事にされていたことも身に染みてます。
 婚約がきちんと決まったときは、私、本当に嬉しかったのですよ?
 まぁ、自分で決めに、お城に直談判に行きましたけど!
 ソフィアに毒を盛られたり、堕胎薬を飲まされそうになったこともありました。
 それでも、ジョージア様といられて幸せでしたから、今まで我慢もしました。
 夢で見た結婚生活は、冷え切っていましたから……温かなジョージア様の隣は、
 とても居心地がよかったのです。」



 ニッコリ、ジョージアへ笑いを向けると、温かく微笑んでくれる。



「この3年間は、色々とありました。
 侍従たちが、友人たちが、何より我が子が慰めてくれたおかげで私も頑張れました。
 大事に大事に慈しんでいけば、周りも私を慈しんでくれました。
 そうすると、頑張れるのです、力が湧いてくるのです。……でも、寂しいのです。
 こっそり、ソフィアに嫉妬もしました……ずっと、寂しかったから」



 小さくなっている私を、ジョージアはぎゅっと抱きしめてくれる。
 たったそれだけで、ホッとした。



「アンナは、自分がいつ死ぬかしっているのか……?」



 私の話を信じてくれたのだろうか……?
 ジョージアは、私が亡くなる日を聞いてくれる。



「死ぬ日は……定かではありません。
 ただ、あの子が11歳なる前に死にます。
 毒を盛られ、解毒の薬がなく、飲んだ2日後に急にです。
 私に盛られたのは、毒なのですけど、ただの毒ではないようで……
 元々は、ジョーに盛られたものを代わりに飲みます。
 私には、毒耐性がありますし、解毒剤も作れます。
 ただ、トワイス国にもローズディア公国にもない毒をあおった結果、死ぬだけです。
 その後は、申し訳ありませんが、夢では見れなかったのです。
 昨日までは……」
「昨日までとはどういうことだ……?何か未来が、変わったのか?」



 私から体を離し腕をつかんで必死の形相である。



「はい、変わりました。
 今のところ2つ程、確認できています」



 寝起きでぼんやりしていた私の頭が起きたようで、『予知夢』の内容をさらっていく。



「まず、私が死ぬ時期が変わりました。
 ジョーのデビュタントは、おかげさまで見れそうです!」



 そうかと、ジョージアが少しホッとしているのがわかる。
 それでもあと12年ほどだろうか?と、私の中で思っていたが、ジョージアは、私の死期が少しでも伸びたことを喜んでくれている。



「もうひとつはなんだ?何が変わったのだ……?」



 それでも恐る恐るという感じで聞いてくるジョージアが愛おしくてたまらない。
 私、今日は感情が少し変ね、そんな風に思う。



「ネイトです」



 突然、出てきた名前にジョージアは、ビクッとしていた。



「……ネイトだと……?
 ネイトとは、一体何者なのだ……?
 アンナの死期が伸びるのであれば、浮気でも何でも構わない!」



 こらこらと心の中だけで突っ込もうと思っていたが、口に出てしまった。



「ジョージア様は、案外、私に対して失礼ですね?
 私、ジョージア様のこと好きなんですけど……まだ、わかってもらえていませんか?
 こんな仕打ちマゾなのかしら……私。
 ネイトは、ジョージア様と私の子どもです。
 来年の春、生まれますよ!
 可愛いですよージョージア様と私を混ぜ合わせたような子どもです。
 ピンクシルバーの髪にアメジストの周りに蜂蜜色の輪がある不思議な瞳、性格は、
 ほぼ私に似たそんな息子です!」



 驚きのあまり固まっているジョージアを覗き込んで揺さぶる。



「大丈夫……?」
「あ……あぁ……大丈夫だ。子どもか……息子が春に生まれるのか……それは……」



 動揺しすぎである。
 出会った頃と何も変わらないなぁ?と思うと、笑えてきた。



「それは……まさに今日ですね。未来が変わりました!」



 はっきり告げると、顔を真っ赤にして布団に埋もれて行く。
 いやいや……抱いたのあなたですから、受け入れたのは私ですけど……このタイミングで『予知夢』を見たことに驚いているのは私の方だ。
 これは本当になるのか若干心配ではあるのだが、でも、現実に生まれると私は、確信している。



「よかったですね?ジョージア様。
 息子ですよ?可愛いですよ?
 ねぇ?こっち見てくださいよ!!」



 蹲ってしまったジョージアを揺する。
 はぁ……と大きく息をはいている。
 あれ……?ジョージア様は、嬉しくなかったのかなぁ?と勘ぐってしまった。



「そうだな。きっと可愛いだろう。
 楽しみにしている!
 今度こそ、間違えたりしないから……アンナも体を大事にしてくれ!」



 隠れていたところから恥ずかしそうにして出てきて、またぎゅーっと抱きしめてきた。
 なんだか可愛らしいことをしてくれる……よしよしとまた頭を撫でてしまった。



「あっ!そうだ。ジョーのデビュタント、私見れるようになったので、是非初めての
 エスコートは、ジョージア様にしてもらいたいです!
 青バラのドレスにタキシードできめてもらいたいですね!!
 もう、さいっこうにかっこいい旦那様と可愛い我が子が見れます。
 あぁ……もう楽しみすぎます!!
 頑張って生きますよ!私。
 毒の研究もしっかり続けますよ!」
「未来を語るアンナは、嬉しそうだな。是非エスコートの役目はやらせてください。奥様」



 私は心が軽くなる。未来が変わる夢をみたお陰で……
 未来へ想いを飛ばし、そろそろ、夕飯を食べましょうかとベルをならした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【短編版】カイルとシャルロットの冒険

神谷モロ
ファンタジー
 俺の名前はカイル・ラングレン。  平民の生まれでたまたま魔力適性があったのか、魔法学院に入学することが出来た。  だが、劣等生だった俺は貴族に馬鹿にされる学生生活を送っていた。  だけど、それも、今は懐かしい、戻れるならあの日に戻りたいと思うことがある。  平和だったのだ。  ある日、突然、ドラゴンの襲撃を受けて、俺たちの王国は滅んだ。  運よく生き延びた俺と同級生で年下の少女、シャルロットは冒険者として今、生きている。

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

魔法学園の空間魔導師

ΣiGMA
ファンタジー
空間魔法を持つ主人公・忍足御影はある日、一人の天使を拾うことに。 それにより彼の日常は騒がしいものとなってゆくのだった。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...