ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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私の真実Ⅱ

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「ジョージア様の言う通りかもしれません。
 私の初恋は、ハリーですよ。
 彼も私との結婚を望んでくれていました。
 私は、大切な人を守るために『予知夢』の話をした上で、別々の道を歩むことを決めたのです。
 私にとって、ハリーは、今でも大好きな友人の一人ですよ」



 やはりそうだったのか……と、ジョージアは苦々しそうに呟いている。



「続けてもいいですかぁ?」



 あぁと返事は返ってくるが、たぶん、心ここにあらずだろう。



「入学式の前日、兄にジョージア様を紹介されたときは、正直ビックリしました。
 入学式の後に出会うはずだったのに……それより、前に出会ったので。
 この頃には、ジョージア様に嫁ぐと、心はすでに決めていましたから、
 実物は、どんな人なのだろう?ととっても興味があったのです。
 夢では、とても冷たい人でしたし、冷え切った結婚生活でしたからね……
 覚えていますか?出会った日のこと」



 私はジョージアに質問すると、もちろんと返してくれる。



「なんていうか、もっと可愛らしい感じだったよね。
 ニコッと笑って話しかけてきたし、そのときにアンナに惹かれたんだよ」
「ふふっもちろん、知ってますよ!
 ハリーに言われたのですけど……初めて会った日に、心を奪われたのは、
 ジョージア様だけでは、無かったらしいですけどね!
 私も、ジョージア様に心を奪われていたんですって!」



 私は、ふふっと笑うと、ジョージアは、そんなバカな……と言っている。



「一度もそんなそぶりなかったじゃないか?
 いや、そうでもなかったのか……?」



 何やら、学生の頃を思い浮かべているのか、私との思い出を探っているようだ。



「一番の予定外は、ジョージア様の卒業式のエスコートに、私の卒業式のときの
 プロポーズですね……あぁ、あと、結婚生活。
 夢にも思わないとは、このことですよね……『予知夢』でも見ていないのですから……
 とっても大事にされて、いっぱい愛情をもらって、楽しいこともたくさんしましたね?」



 こっちを見ている視線が気になったので、膝を抱えて俯いていた私は、チラッとジョージアの方を見る。



「なんだか、予知夢?を裏切ってしまって申し訳ないね?」
「いいえ、嬉しい誤算ってやつですよ!
 両方の卒業式は、私にとって、とってもとっても大切な想い出ですし、
 結婚式は、幸せすぎて忘れられません!
 一緒に暮らした2年は、とても楽しかったし大事にされていたことも身に染みてます。
 婚約がきちんと決まったときは、私、本当に嬉しかったのですよ?
 まぁ、自分で決めに、お城に直談判に行きましたけど!
 ソフィアに毒を盛られたり、堕胎薬を飲まされそうになったこともありました。
 それでも、ジョージア様といられて幸せでしたから、今まで我慢もしました。
 夢で見た結婚生活は、冷え切っていましたから……温かなジョージア様の隣は、
 とても居心地がよかったのです。」



 ニッコリ、ジョージアへ笑いを向けると、温かく微笑んでくれる。



「この3年間は、色々とありました。
 侍従たちが、友人たちが、何より我が子が慰めてくれたおかげで私も頑張れました。
 大事に大事に慈しんでいけば、周りも私を慈しんでくれました。
 そうすると、頑張れるのです、力が湧いてくるのです。……でも、寂しいのです。
 こっそり、ソフィアに嫉妬もしました……ずっと、寂しかったから」



 小さくなっている私を、ジョージアはぎゅっと抱きしめてくれる。
 たったそれだけで、ホッとした。



「アンナは、自分がいつ死ぬかしっているのか……?」



 私の話を信じてくれたのだろうか……?
 ジョージアは、私が亡くなる日を聞いてくれる。



「死ぬ日は……定かではありません。
 ただ、あの子が11歳なる前に死にます。
 毒を盛られ、解毒の薬がなく、飲んだ2日後に急にです。
 私に盛られたのは、毒なのですけど、ただの毒ではないようで……
 元々は、ジョーに盛られたものを代わりに飲みます。
 私には、毒耐性がありますし、解毒剤も作れます。
 ただ、トワイス国にもローズディア公国にもない毒をあおった結果、死ぬだけです。
 その後は、申し訳ありませんが、夢では見れなかったのです。
 昨日までは……」
「昨日までとはどういうことだ……?何か未来が、変わったのか?」



 私から体を離し腕をつかんで必死の形相である。



「はい、変わりました。
 今のところ2つ程、確認できています」



 寝起きでぼんやりしていた私の頭が起きたようで、『予知夢』の内容をさらっていく。



「まず、私が死ぬ時期が変わりました。
 ジョーのデビュタントは、おかげさまで見れそうです!」



 そうかと、ジョージアが少しホッとしているのがわかる。
 それでもあと12年ほどだろうか?と、私の中で思っていたが、ジョージアは、私の死期が少しでも伸びたことを喜んでくれている。



「もうひとつはなんだ?何が変わったのだ……?」



 それでも恐る恐るという感じで聞いてくるジョージアが愛おしくてたまらない。
 私、今日は感情が少し変ね、そんな風に思う。



「ネイトです」



 突然、出てきた名前にジョージアは、ビクッとしていた。



「……ネイトだと……?
 ネイトとは、一体何者なのだ……?
 アンナの死期が伸びるのであれば、浮気でも何でも構わない!」



 こらこらと心の中だけで突っ込もうと思っていたが、口に出てしまった。



「ジョージア様は、案外、私に対して失礼ですね?
 私、ジョージア様のこと好きなんですけど……まだ、わかってもらえていませんか?
 こんな仕打ちマゾなのかしら……私。
 ネイトは、ジョージア様と私の子どもです。
 来年の春、生まれますよ!
 可愛いですよージョージア様と私を混ぜ合わせたような子どもです。
 ピンクシルバーの髪にアメジストの周りに蜂蜜色の輪がある不思議な瞳、性格は、
 ほぼ私に似たそんな息子です!」



 驚きのあまり固まっているジョージアを覗き込んで揺さぶる。



「大丈夫……?」
「あ……あぁ……大丈夫だ。子どもか……息子が春に生まれるのか……それは……」



 動揺しすぎである。
 出会った頃と何も変わらないなぁ?と思うと、笑えてきた。



「それは……まさに今日ですね。未来が変わりました!」



 はっきり告げると、顔を真っ赤にして布団に埋もれて行く。
 いやいや……抱いたのあなたですから、受け入れたのは私ですけど……このタイミングで『予知夢』を見たことに驚いているのは私の方だ。
 これは本当になるのか若干心配ではあるのだが、でも、現実に生まれると私は、確信している。



「よかったですね?ジョージア様。
 息子ですよ?可愛いですよ?
 ねぇ?こっち見てくださいよ!!」



 蹲ってしまったジョージアを揺する。
 はぁ……と大きく息をはいている。
 あれ……?ジョージア様は、嬉しくなかったのかなぁ?と勘ぐってしまった。



「そうだな。きっと可愛いだろう。
 楽しみにしている!
 今度こそ、間違えたりしないから……アンナも体を大事にしてくれ!」



 隠れていたところから恥ずかしそうにして出てきて、またぎゅーっと抱きしめてきた。
 なんだか可愛らしいことをしてくれる……よしよしとまた頭を撫でてしまった。



「あっ!そうだ。ジョーのデビュタント、私見れるようになったので、是非初めての
 エスコートは、ジョージア様にしてもらいたいです!
 青バラのドレスにタキシードできめてもらいたいですね!!
 もう、さいっこうにかっこいい旦那様と可愛い我が子が見れます。
 あぁ……もう楽しみすぎます!!
 頑張って生きますよ!私。
 毒の研究もしっかり続けますよ!」
「未来を語るアンナは、嬉しそうだな。是非エスコートの役目はやらせてください。奥様」



 私は心が軽くなる。未来が変わる夢をみたお陰で……
 未来へ想いを飛ばし、そろそろ、夕飯を食べましょうかとベルをならした。
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