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領地の勉強
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アンバー公爵家に嫁いでから約2年、その前1年はこちらの公都で住んでいたので足掛け3年もの間、義父やジョージアに教えてもらいながら、領地の勉強をしてきた。
実際領地へ足を運び、現状も見てきた。
荒廃しきった領地に愕然としたのも今より少し前だ。
今、私と一緒に領地を立て直すために友人や領民が手を貸してくれている。
領地改革を進めて行きたい私達には、一つどうしても取得しないといけないものがある。
「領主代行権ね……ジョージア様が、私にそれをくれるかしら……?」
「アンナリーゼ様……そこは、粘るしかないですけど、領地に行かれたのであれば
それも簡単にもらえるのではないでしょうか?」
「そうだと、嬉しいのだけど……そうはいかないことを想定しましょう。
私の計画では、1年早く物事が動き始めたのよ……」
「1年ですか?
それは、どういう意味か伺っても……?」
ディルには、まだ、『予知夢』が見れることを言っていない。
なので、言葉に詰まってしまった。
「無理にとは申しませんから……」
「うぅん、いいの。
信じてもらえるかどうかわからないのだけど……私、『予知夢』が見れるの」
「予知夢ですか?それは……」
「小さい頃からよ!
アンバーへ嫁ぐことも、ジョーを生むこともわかっていたの。
そして、ジョージア様に見放されてしまうことも」
「だから、落ち着いていらっしゃったんですね?」
私は、ディルに対して苦笑いだ。
大いに取り乱した。
布団をかぶって、ジョーが生まれた日に大泣きしたのだから……
「でもね、ジョージア様と出会うところから、物事が少しずつずれたり変わったり
していっているのよ。
だから、今は、何が起こるのか、想像できないでいるのよ……」
「そうですか……未来は、誰もわからないものです。
アンナリーゼ様が、『予知夢』に従って生きてこられたとしても、あなた自身が
つかみ取った未来もあると思いますし、わからないからこそ、明日を向かえる
楽しみもあるというもの。
アンナリーゼ様、明日への不安は誰しもあります。
その中で、みんな足を踏ん張って生きている、それをご自身が最近体験したのでは
ないですか?」
「そうね!領民たちは、初めて会ったときは下を向いていた。
口から出る言葉も、後ろ向きな言葉が多かったけど、この1ヶ月で変わったわ!
夢を語り、やりたいことを見つけ、笑う人が増えた。
私が掴んだものは、それね!」
ディルに笑いかけると、そうですねと言ってくれる。
それは、とても心地のいい肯定の言葉だ。
「でも、こんなことで満足していてはダメなの」
「アンナリーゼ様のおっしゃることはわかりますが、生き急いでしまってはダメです。
前のめりになりすぎていませんか?
ひと呼吸おいて、それからでも大丈夫ですよ。
アンナリーゼ様を慕っている人は、私を含めたくさんいるのですから!」
今度は、ディルに嬉しいことを伝え笑いかけるのであった。
そろそろ、ジョージアに公都の屋敷で使うお金をもらいに行く時期だ。
その前に、公爵家の現状を調べたくなり、本宅にある図書館に向かうことにする。
ジョージアが、こちらで仕事をしなくなってから、執務室には領地の管理簿や公爵家の収支などの書類は、最新のものはない。
別宅の方にあるのかと思っていたが、どうやら図書館にあるのではないかという話になり現在にいたるのだ。
図書館に行くと目的のものを見つけた。
直近の公都の屋敷の収支を確認することにし、私はその支出に驚くばかりだ。
公都の屋敷、とりわけ別宅の方の支出は、目をむくほど多い。
それを見ただけで添付されている報告書の内容に私はその場に座りこみそうになる。
「クラクラもするし、吐き気もするわ……ね」
私は、胸のあたりをそっとなでる。
本宅の方が別宅に比べ使用人は多いが、別宅からは倍以上の支出が出ているのことになり、全体的に公爵家の予算的には大赤字であることがわかった。
本宅については、ジョージアから一定の金額を渡されていたため、それを私が運用して侍従の給料から私たちの生活に必要なものを買いそろえていた。
余ったお金については、ジョーの貯金に回したり、賄いを少し豪華な食事に当てたりして還元している。
きちんとお金が渡されていたため、屋敷全体の収支については気がつかなかった。
全体の収支表を見れば、あと数年で公爵家が破たんであることが容易に想像できる。
破たんしてもらっては、大変困る。
ジョーのためにも、ここで働く侍従の為にも、そして、税金としてお金を出してくれている領民の為にも。
私は、中身を精査していくことにし、1年分の収支を確認していく。
明らかに増えたのは、ジョージの予算が1人前分つけられていることだ。
乳母を雇っていると聞いているが、それにしたって、夫人並みの予算に私は、憤りを感じずにはいられない。
生まれたばかりの子どもにつけるべき予算は、もっと少なくてもいいはずだ。
宝石やドレスを買ったりするわけでもない。
ましてや、男の子だ。
どれだけいいものを与えたとしても、女の子の服に比べれば安価であろうことは言うまでもない。
「うちのジョーにこんな予算つけられたら突き返すけどね……
ソフィアは、ありがたく懐とか実家に送っているのでしょうね。
この辺の資料もまとめておきましょうか。
いつか、何かに役立つときもあるでしょう……」
くらくらする頭を振り、私は、いくらの総額が不当なのか、見積もっていく。
もちろん、自分の子どもと比較してではあるが、質素にしている自覚はあるので、他の貴族の子どものことも聞かなくてはと思う。
さて、色々と調べられたことだし、そろそろディルと話をして、ジョージア様に会いに行こうと心に決める。
でも、なかなかジョージアに会うのは、勇気がいるし重い腰を立ち上がらせるには、十分私の気持ちが落ち着くまで大変であった。
ジョージアに拒絶されるのも怖いし、たった8ヶ月会わないだけで、こんなに緊張するものなかと小さく息をはく。
新しい空気を肺に流し込むと、自然とため息が出るのであった。
実際領地へ足を運び、現状も見てきた。
荒廃しきった領地に愕然としたのも今より少し前だ。
今、私と一緒に領地を立て直すために友人や領民が手を貸してくれている。
領地改革を進めて行きたい私達には、一つどうしても取得しないといけないものがある。
「領主代行権ね……ジョージア様が、私にそれをくれるかしら……?」
「アンナリーゼ様……そこは、粘るしかないですけど、領地に行かれたのであれば
それも簡単にもらえるのではないでしょうか?」
「そうだと、嬉しいのだけど……そうはいかないことを想定しましょう。
私の計画では、1年早く物事が動き始めたのよ……」
「1年ですか?
それは、どういう意味か伺っても……?」
ディルには、まだ、『予知夢』が見れることを言っていない。
なので、言葉に詰まってしまった。
「無理にとは申しませんから……」
「うぅん、いいの。
信じてもらえるかどうかわからないのだけど……私、『予知夢』が見れるの」
「予知夢ですか?それは……」
「小さい頃からよ!
アンバーへ嫁ぐことも、ジョーを生むこともわかっていたの。
そして、ジョージア様に見放されてしまうことも」
「だから、落ち着いていらっしゃったんですね?」
私は、ディルに対して苦笑いだ。
大いに取り乱した。
布団をかぶって、ジョーが生まれた日に大泣きしたのだから……
「でもね、ジョージア様と出会うところから、物事が少しずつずれたり変わったり
していっているのよ。
だから、今は、何が起こるのか、想像できないでいるのよ……」
「そうですか……未来は、誰もわからないものです。
アンナリーゼ様が、『予知夢』に従って生きてこられたとしても、あなた自身が
つかみ取った未来もあると思いますし、わからないからこそ、明日を向かえる
楽しみもあるというもの。
アンナリーゼ様、明日への不安は誰しもあります。
その中で、みんな足を踏ん張って生きている、それをご自身が最近体験したのでは
ないですか?」
「そうね!領民たちは、初めて会ったときは下を向いていた。
口から出る言葉も、後ろ向きな言葉が多かったけど、この1ヶ月で変わったわ!
夢を語り、やりたいことを見つけ、笑う人が増えた。
私が掴んだものは、それね!」
ディルに笑いかけると、そうですねと言ってくれる。
それは、とても心地のいい肯定の言葉だ。
「でも、こんなことで満足していてはダメなの」
「アンナリーゼ様のおっしゃることはわかりますが、生き急いでしまってはダメです。
前のめりになりすぎていませんか?
ひと呼吸おいて、それからでも大丈夫ですよ。
アンナリーゼ様を慕っている人は、私を含めたくさんいるのですから!」
今度は、ディルに嬉しいことを伝え笑いかけるのであった。
そろそろ、ジョージアに公都の屋敷で使うお金をもらいに行く時期だ。
その前に、公爵家の現状を調べたくなり、本宅にある図書館に向かうことにする。
ジョージアが、こちらで仕事をしなくなってから、執務室には領地の管理簿や公爵家の収支などの書類は、最新のものはない。
別宅の方にあるのかと思っていたが、どうやら図書館にあるのではないかという話になり現在にいたるのだ。
図書館に行くと目的のものを見つけた。
直近の公都の屋敷の収支を確認することにし、私はその支出に驚くばかりだ。
公都の屋敷、とりわけ別宅の方の支出は、目をむくほど多い。
それを見ただけで添付されている報告書の内容に私はその場に座りこみそうになる。
「クラクラもするし、吐き気もするわ……ね」
私は、胸のあたりをそっとなでる。
本宅の方が別宅に比べ使用人は多いが、別宅からは倍以上の支出が出ているのことになり、全体的に公爵家の予算的には大赤字であることがわかった。
本宅については、ジョージアから一定の金額を渡されていたため、それを私が運用して侍従の給料から私たちの生活に必要なものを買いそろえていた。
余ったお金については、ジョーの貯金に回したり、賄いを少し豪華な食事に当てたりして還元している。
きちんとお金が渡されていたため、屋敷全体の収支については気がつかなかった。
全体の収支表を見れば、あと数年で公爵家が破たんであることが容易に想像できる。
破たんしてもらっては、大変困る。
ジョーのためにも、ここで働く侍従の為にも、そして、税金としてお金を出してくれている領民の為にも。
私は、中身を精査していくことにし、1年分の収支を確認していく。
明らかに増えたのは、ジョージの予算が1人前分つけられていることだ。
乳母を雇っていると聞いているが、それにしたって、夫人並みの予算に私は、憤りを感じずにはいられない。
生まれたばかりの子どもにつけるべき予算は、もっと少なくてもいいはずだ。
宝石やドレスを買ったりするわけでもない。
ましてや、男の子だ。
どれだけいいものを与えたとしても、女の子の服に比べれば安価であろうことは言うまでもない。
「うちのジョーにこんな予算つけられたら突き返すけどね……
ソフィアは、ありがたく懐とか実家に送っているのでしょうね。
この辺の資料もまとめておきましょうか。
いつか、何かに役立つときもあるでしょう……」
くらくらする頭を振り、私は、いくらの総額が不当なのか、見積もっていく。
もちろん、自分の子どもと比較してではあるが、質素にしている自覚はあるので、他の貴族の子どものことも聞かなくてはと思う。
さて、色々と調べられたことだし、そろそろディルと話をして、ジョージア様に会いに行こうと心に決める。
でも、なかなかジョージアに会うのは、勇気がいるし重い腰を立ち上がらせるには、十分私の気持ちが落ち着くまで大変であった。
ジョージアに拒絶されるのも怖いし、たった8ヶ月会わないだけで、こんなに緊張するものなかと小さく息をはく。
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