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ガタンと馬車が止まった。
私は、重たい瞼を開けると、さびぃさびぃとウィルが馬車の中に入ってきた。
馬車の中に外気が入ってきて、寒さにブルっと震え、私は着ていたコートをかきあわせる。
「……着いたの?」
夢うつつの私は、馬車に入ってきたウィルに聞くと頷く。
「着いたけど、屋敷にはいかずに外で待機する。
こんなに寒いんだ、どうせ、あっちも夜明けにしか動かないから。
ここからなら、屋敷の入出がわかるから、見張ってるわ!」
「うん、ありがとう」
「もう少し休んでおいた方がいい。
今日、倒れたんだから……」
「わかった」
私は、素直に言うことをきき、対面に座っているウィルの横に座り直す。
この時期、1日で1番寒い夜明け前なのだ。
少しでも暖をとりたい私の意図を察したのか、座れるように席をあけてくれる。
ウィルは、首に巻いていたマフラーを外し、私のコートの上からかけてくれた。
「人ってあったかいよね……」
半分以上、眠っている私にウィルはあぁ……と返事してくれた。
そのまま、ウィルによっかかって、私は眠ってしまった。
「姫さん、朝だ。
奴らが動いたから、起きて!」
「うぅん……もう……?」
眠い目を擦りながら、ウィルに言われた通り起きる。
「馬車で屋敷に近づくとバレるから、今から一走りデリアを呼んでくる。
ここで、待っていてくれ!」
言葉と寝ぼけている私を置いて、ウィルは、屋敷まで駆けていった。
1人残された私は、大きく伸びをして、デリアとの合流を待つ。
「なんていうか、計画が杜撰ね。
私でも、もう少し考えるわよ……」
丸投げ体質の私は、1人寒い馬車の中で計画の杜撰さにゴチていると、二つの足音が聞こえてくる。
一応誰か確認のため馬車の小窓からチラッと見るとウィルとデリアであった。
「おはようございます、アンナ様。
なかなか来られないので、少しヒヤヒヤしましたが、必ず来られると信じて
おりましたわ!
ドレスは、必要ございませんでしたね」
「そうね。夜会からそのまま来たから……少し、整えてくれるかしら?」
かしこまりましたと、デリアが馬車に入ってきて、ウィルが御者台に乗る。
馬車は、一応アンバー公爵家の家紋入りを乗ってきたので、目立たないようにと思っても注目はされる。
「そういえば、何故、今日だとわかったの?」
「たまたまです。
先日、いきなり旦那様が、領地に来られまして……
そのときにお暇をいただきたいと言っていたのを聞いたのです」
「ジョージア様が、アンバー領へ来たの?」
「はい、突然の訪問で、みなが驚いていました」
ネズミ取りの計画をしていた私は、ジョージアがアンバー領へ来たことに驚いた。
そして、それが、この杜撰な計画時期を早めたのかと思うと……ちょっと口惜しい。
もう少し待ってくれていたら……もう少し、利子も上がったろうに……
あくまでも金勘定の方に私は、頭を持って行ってしまっている。
「ところで、ジョージア様はいったい何をしにきたの?」
「領地の視察をしに来たそうです。
何故こんな時期に視察なのだろうと首をかしげておりました。
共はつけますか?という問いには、一人で行くと言ってフラッと出ていかれましたよ。
それが4日前です」
そこから急いで私宛に手紙を出してくれたらしい。
どうしても、領地から公都への手紙には時間がかかる。
なので、私の手元に届いたのも前日の夜中だったのだ。
「何はともあれ、大物取りはできそうだから、良かったわ……
デリア一人でもできそうだけど……こればっかりは、ね!」
私を整えているデリアにニコッとすると、ため息が漏れてくる。
「アンナ様が、出張りたかっただけでしょう……
これしきのことなら、私のような従者や影でも十分こなせます。
あちらの命の保証は、ありませんがね」
「ほら、そういうのは、デリアの仕事じゃないから!
あなたの仕事は、私を公爵夫人として着飾ることだからね!」
「そうですね。
薄汚れた手で、アンナ様を触るなんて、失礼極まりありませんね!
気が付きませんでした……
まだ、綺麗な手だと思いますので……どうか、お側に!」
「綺麗な手ね……?
デリアの手は、常に綺麗なままじゃないとダメなのよ。
汚れ仕事は、私の仕事だから……いつまでも、綺麗な手でいて頂戴。
たまには、手が滑ってしまうことは、許可するけど、命を取るようなことは、
あなたにはさせたくないわ!」
「アンナ様は、甘いです。
私は、アンナ様とジョー様が全てなのです。
いなくなるようなことがあれば、私は、原因となるものを許しませんよ。
それが、たとえ、旦那様だったとしても……」
「怖い怖い!
私がいなくなったとしても……ジョーのことは、お願いね。
大事な私の子どもだから……」
「もちろんですよ!
私は、お二人ともをお守りいたします!」
頼もしいね!と私はデリアに笑いかける。
あと、9年後……私は、たぶん、いなくなる。
そのとき、デリアが、私でなくジョーを守ってくれるそんな存在になってもらいたいな……淡い期待を込めてよろしくねと答えるのであった。
私は、重たい瞼を開けると、さびぃさびぃとウィルが馬車の中に入ってきた。
馬車の中に外気が入ってきて、寒さにブルっと震え、私は着ていたコートをかきあわせる。
「……着いたの?」
夢うつつの私は、馬車に入ってきたウィルに聞くと頷く。
「着いたけど、屋敷にはいかずに外で待機する。
こんなに寒いんだ、どうせ、あっちも夜明けにしか動かないから。
ここからなら、屋敷の入出がわかるから、見張ってるわ!」
「うん、ありがとう」
「もう少し休んでおいた方がいい。
今日、倒れたんだから……」
「わかった」
私は、素直に言うことをきき、対面に座っているウィルの横に座り直す。
この時期、1日で1番寒い夜明け前なのだ。
少しでも暖をとりたい私の意図を察したのか、座れるように席をあけてくれる。
ウィルは、首に巻いていたマフラーを外し、私のコートの上からかけてくれた。
「人ってあったかいよね……」
半分以上、眠っている私にウィルはあぁ……と返事してくれた。
そのまま、ウィルによっかかって、私は眠ってしまった。
「姫さん、朝だ。
奴らが動いたから、起きて!」
「うぅん……もう……?」
眠い目を擦りながら、ウィルに言われた通り起きる。
「馬車で屋敷に近づくとバレるから、今から一走りデリアを呼んでくる。
ここで、待っていてくれ!」
言葉と寝ぼけている私を置いて、ウィルは、屋敷まで駆けていった。
1人残された私は、大きく伸びをして、デリアとの合流を待つ。
「なんていうか、計画が杜撰ね。
私でも、もう少し考えるわよ……」
丸投げ体質の私は、1人寒い馬車の中で計画の杜撰さにゴチていると、二つの足音が聞こえてくる。
一応誰か確認のため馬車の小窓からチラッと見るとウィルとデリアであった。
「おはようございます、アンナ様。
なかなか来られないので、少しヒヤヒヤしましたが、必ず来られると信じて
おりましたわ!
ドレスは、必要ございませんでしたね」
「そうね。夜会からそのまま来たから……少し、整えてくれるかしら?」
かしこまりましたと、デリアが馬車に入ってきて、ウィルが御者台に乗る。
馬車は、一応アンバー公爵家の家紋入りを乗ってきたので、目立たないようにと思っても注目はされる。
「そういえば、何故、今日だとわかったの?」
「たまたまです。
先日、いきなり旦那様が、領地に来られまして……
そのときにお暇をいただきたいと言っていたのを聞いたのです」
「ジョージア様が、アンバー領へ来たの?」
「はい、突然の訪問で、みなが驚いていました」
ネズミ取りの計画をしていた私は、ジョージアがアンバー領へ来たことに驚いた。
そして、それが、この杜撰な計画時期を早めたのかと思うと……ちょっと口惜しい。
もう少し待ってくれていたら……もう少し、利子も上がったろうに……
あくまでも金勘定の方に私は、頭を持って行ってしまっている。
「ところで、ジョージア様はいったい何をしにきたの?」
「領地の視察をしに来たそうです。
何故こんな時期に視察なのだろうと首をかしげておりました。
共はつけますか?という問いには、一人で行くと言ってフラッと出ていかれましたよ。
それが4日前です」
そこから急いで私宛に手紙を出してくれたらしい。
どうしても、領地から公都への手紙には時間がかかる。
なので、私の手元に届いたのも前日の夜中だったのだ。
「何はともあれ、大物取りはできそうだから、良かったわ……
デリア一人でもできそうだけど……こればっかりは、ね!」
私を整えているデリアにニコッとすると、ため息が漏れてくる。
「アンナ様が、出張りたかっただけでしょう……
これしきのことなら、私のような従者や影でも十分こなせます。
あちらの命の保証は、ありませんがね」
「ほら、そういうのは、デリアの仕事じゃないから!
あなたの仕事は、私を公爵夫人として着飾ることだからね!」
「そうですね。
薄汚れた手で、アンナ様を触るなんて、失礼極まりありませんね!
気が付きませんでした……
まだ、綺麗な手だと思いますので……どうか、お側に!」
「綺麗な手ね……?
デリアの手は、常に綺麗なままじゃないとダメなのよ。
汚れ仕事は、私の仕事だから……いつまでも、綺麗な手でいて頂戴。
たまには、手が滑ってしまうことは、許可するけど、命を取るようなことは、
あなたにはさせたくないわ!」
「アンナ様は、甘いです。
私は、アンナ様とジョー様が全てなのです。
いなくなるようなことがあれば、私は、原因となるものを許しませんよ。
それが、たとえ、旦那様だったとしても……」
「怖い怖い!
私がいなくなったとしても……ジョーのことは、お願いね。
大事な私の子どもだから……」
「もちろんですよ!
私は、お二人ともをお守りいたします!」
頼もしいね!と私はデリアに笑いかける。
あと、9年後……私は、たぶん、いなくなる。
そのとき、デリアが、私でなくジョーを守ってくれるそんな存在になってもらいたいな……淡い期待を込めてよろしくねと答えるのであった。
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