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一緒にでかけないか?

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 トワイスへ向かうパルマを見送った翌日、ウィルから手紙が届いた。



「姫さん、久しぶりに一緒にでかけないか?セバスと3人で!」



 私は、その手紙を見て、もしかして……?と、思った。
 こんなに早く、目的の者と連絡が取れたのか……正直びっくりしているくらいだった。



「ナタリー……ウィルから手紙来ているけど、一緒に行く?」
「でも、私の名前はありませんよね?」
「うん、でも、いいと思う」



 私は、行ってもらった方が、正直助かるのだ。
 出かける先で、きっと、公爵夫人にならないといけないはずだから……
 私一人では、どうもうまくできないのだ。



「わかりました。
 ジョー様も一緒ですから、馬車で移動になりますけど……」
「うん、それで大丈夫。
 私はレナンテに乗っていくけど、セバスは、馬車の方がいいと思うし……
 ニコライも誘ってみるかな……?」



 また、段々とひとが増える傾向にあるのが、ちょっと心配だったけど、領地にとって大切な商談になるはずだ。
 頭脳派であるセバス、商談のニコライは、今回必須な気がしてならない。
 ウィルも頭はいいけど……そういう頭のいいとは違うので、お役は回ってこないはずだ。
 そして、ナタリーの直感は、恐ろしい。
 何か意見があれば聞きたいと思っている。


 私としては、久しぶりにみんなでお出かけしたいってだけなのだが……ウィルに返事を書くのと同時にニコライにも手紙を書いた。
 パルマが今まで側にいてくれこういう雑務をしてくれていたのに帰してしまったので、自分でそれをディルに渡しに行く。
 ディルから、ウィルとニコライに送ってくれるはずだ。



 屋敷にいると、実はあんまりすることがない。
 領地のお仕事は、別宅でジョージアが励んでいるだろうし、ジョーと日長1日遊んでいるしかないのだ。
 それも、母親としては、立派な仕事ではあるのだけど……どうにも出歩き対傾構にある私。



「しかし、大きくなったわね……
 ジョーは、ちょこんと座れるようになったのねぇ……私の知らぬ間に……」
「アンナリーゼ様、忙しかったので仕方ありませんが、もう少しジョー様のことも
 きちんと見てあげてくださいね?
 ハイハイだってできるようになったし、ちゃんと感情も出てきていますよ!
 嬉しいこと悲しいこと楽しいこと嫌なこともわかるようになってます。
 たまに、お話もできますよ!」



 ナタリーの話を聞けば聞くほど、自分がどれだけダメな母親なのか、身に染みてくる。



「ごめんなさい……」



 しょぼけていると、はいはいして私の元にやってきた。
 ソファの上をはいはいしているので落ちないかヒヤヒヤしたが、うまいもので私の膝の上までたどり着くと嬉しそうに笑っている。



 頭を撫でると、さっきよりも嬉しいのかきゃっきゃっと声を出して喜んでいる。
 よいっしょっと抱き上げると、やっぱり重くなったし、ぷにぷにっとしてた体もだんだん締まってきているように思う。



「もう少ししたらつかまり立ちもできるようになると思いますよ!
 歯ももう少ししたら生えてくるころですし、これからの成長が楽しみですね!」



 私が本来言うべき言葉だろうが、ナタリーに任せっきりだったので仕方ない。
 ナタリーのおかげで、ジョーも健やかに育っているのだ。
 ナタリーとデリアには、感謝こそすれど、妬むことはしてはいけない。
 さらには、頭があがらない……



「ナタリー、いつもありがとう。
 私の代わりに、大事に育ててくれて……本当に嬉しいわ!」
「アンナリーゼ様、私は、あくまで代わりです。
 ジョー様にとって、アンナリーゼ様が唯一なんですから、笑ってください。
 感謝は嬉しいですけど、私もジョー様に関われたことが嬉しいのです。
 それに、アンバー領のこともありますから……
 みんなでジョー様を育てていけば、いいではないですか?
 ウィルもセバスもジョー様のこと大好きですよ?」
「そうね!特にウィルは、どっちもの両想いよね……」



 そうですねとナタリーは笑う。
 それを見て私も笑う。
 私達を見て、ジョーも笑っている。


 私は、こんな日穏やかな日が続くことを願っている。
 この子が大きくなったとしても……私がいなくなったとしても……
 ゆったりと笑いのある日常が続くことを願っているのだ。



「あなたは、人に恵まれたわね……」



 ジョーを膝に乗せゆらゆらっと揺らしていると、ナタリーもぽつっと言う。



「アンナリーゼ様も人に恵まれてますよ。
 だから、ジョー様も恵まれるのです」
「そうかしら?」
「そうです、私にしたって、ウィルやセバスにしたって、今頃、腐っててもいいものです。
 今があるのは、アンナリーゼ様に出会えて、それぞれ目標ができたからですよ!
 私、たまに思うのですけど……」
「なぁに?」
「歴史の転換点にいるんじゃないかと思っています。
 ハニーローズももちろんですが、アンナリーゼ様を起点にどんどん動いていると
 感じることがあります。
 アンナリーゼ様が動いたからこそ、変わったこともあるのではないですか?」
「そうだといいわね……
 『予知夢』が、どのように変化していっているのかも分からないし……
 正直、少し怖いの……よ。
 もし、何かあっても、この子だけは、ちゃんと守らないと!」
「そのときは、私も側にいさせてくださいね!」



 ありがとうとナタリーに言うと、優しく微笑んでくれる。



『予知夢』が変わってきていることは、肌で感じている。
 私が、歪めていっているのだろうか……?
 でも、『予知夢』が歪もうがどうでもいいと思う。
 1日でも長く生きて、この子の手本となれるようにしたい。
 アンバー領民に少しでも笑顔を誇りを取り戻したい。

 やりたいことは、たくさんあるのだ。
 少しでも、いい未来をみんなに残してあげられるように頑張るだけだ。
 残り9年という期間の中で、どれだけできるのだろう……それだけが不安であった。
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