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公都へ行く前に
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私が予定していたより、10日程早く領地掃除も終わってしまった。
そして、今後の収入源となる予定の葡萄酒についても試作にこぎつけられた。
葡萄酒については、いわゆる悪酒を造るので、それほど期待もしていないが、これが領地改革の起爆剤となるのであれば、おいしいものになってほしいと願わずにはいられない。
葡萄畑の手入れには、何人かの人がいるな……と、人の割り方を考えるが、領主主導になれば手伝ってくれる人なんてたくさんいるだろうとそれほど深く考えなかった。
それより、作物改革の方が急務なのだが……それにもやはり、領主代行権がいる。
そろそろ、公都に帰って領主代行権を取得できるようジョージアを説得しなければならない。
気が重いのである。
日も高かったため、私達はユービスの町からビルの町まで歩くことにした。
やはり、リリーという存在が、領地お掃除を早く終わらせた功労者だと思える。
ちなみに、お掃除隊については、各地に散らばっていった。
それは、お掃除隊として行った町や村で気に入ったところに居を構えるためのようだ。
私が買い取ってある家を元に生活をするのだが、各地で大工仕事をしたり、葡萄畑を始め農家を手伝ったりするようである。
それは、それで、いいことなので止めなかった。
まだまだ、領地改革には人手がいるので、また招集に応じてほしいとお願いはしておく。
それには、もちろんですと応えてくれ、私は嬉しく思う。
私が始めたことではあるが、お掃除隊の面々は、それぞれの生きがいを見つけられた人もいるようで、出会った頃に比べてとてもいい笑顔であった。
ビルの町へ着いたところでみんなと別れ、私は、ナタリーと共にビルの家に寄った。
「アンナリーゼ様、ようこそおいでくださいました!」
「ちょっと、寄らせてもらったの。
少し話をしていってもいいかしら?」
「えぇ、構いませんよ!ニコライも呼んできましょう!」
ビルとニコライを前に、今までのお掃除隊の話をする。
なかなか濃い日程を過ごしたため、ビルもニコライも苦笑いだ。
「アンナリーゼ様、こちらは掃除も終わり、通常生活に戻りつつあります。
ただ、やはり仕事がないものも多くて……」
「そうね、それも考えないといけないことね。
私、一旦公都に戻ろうと思うの。
その間、そういう仕事がない人や子供を集めて、学校って開けないかしら?」
「学校ですか?何をさせるのですか?」
「読み書きそろばんを……次の領地改革のステップには必要だと思って……
あとは、体動かすのが好きな人は、石切りの町へ派遣してもいいかな?
ピュールっていう石切の現場監督とカノタっていう治水工事の設計をしてもらおうと
している子がいるのよ!
その人達から、石畳の街道を作るために学んでほしいのよ。
そうすれば、すぐにはモノにできなくても、ゆくゆくは領地のために働いてもらえる
から、私が領地に戻るまでは準備期間ね!」
なるほどと頷く。
「ビルは、そういう人たちの調整役をしてもらえる?」
「かしこまりました。そのお役目、承りました」
「できれば、リリーと一緒にやってほしいのだけどいいかしら?
人を見る目は、リリーも確かよ!」
私の言葉に頷くと、早速リリーと話をしてくれるということになった。
「あとね……ビル」
「なんでしょうか?」
とても言いにくい……でも、言わずにはいられない。
そろそろ、いいだろう。
「ビルとニコライ。
そろそろ、私に引き抜かれてくれるかしら?」
大店の店主であるビルとその息子であるニコライ。
今は、まだ、どちらもマーラ商会の一員だ。
「アンナリーゼ様、僕は、もう配下だと思ってますよ!
そうは、思ってもらってなかったのですか?」
「うん、そうなの……まだ、ニコライは、マーラ商会の一員だよ。
ビルは、どうかな?」
ビルは、腕を組んで考え込んでいる。
「ニコライの件は、息子が考えていくことなので了承いたしました。
私については、少しお時間をください」
そう……と暗い顔をする私に、ビルは笑いかける。
「配下になるのが嫌なのではありません。
マーラ商会を息子に渡して身ぎれいにしてからと思いまして。
息子共々、お願いしてもよろしいのですか?」
「うん、むしろ、ずっとお願いしたかったくらいだから、これから領地のために
本格的に力を貸してほしいの。
まず、前も話したけど、領地で商会や職人、農家たちをまとめる仕事をしてほしいの。
ありがたいことに、テクトやユービスも乗り気になってくれたから、3人をトップに
条例の整備やもめごとの調停、ゆくゆくは税の納付方法も変えていきたいから
それらの音頭も取ってほしのよ」
私の考えに頷いてくれ、私も頷き返す。
「そして、ニコライ。 あなたには、新しい商売の仕方をしてほしいの。
エレーナのところの運輸業は、使い勝手どう?」
「はい、エレーナ様のところの運輸業は、とてもいいですね!
信用も置けますし、きちんとお願いしたところに届けてくれますから」
「それは、よかった。
エレーナのところと協力して、3国をまたいだ商会を立ち上げてほしいの。
店をたてるのは難しいから、例えば、その土地土地にある店と連携して商品を
売買できる仕組みを作って、そこから、利益ができるようにしてほしいよ。
3国の商品を1つの店で扱うって、かなり大変だと思うけど、その店に行けば
なんでもそろうっていうようなお店は、どこにもないからチャンスだと思うの!
商会名は、『ハニーアンバー』。私が全面的に後ろ盾するわ!
大変だけど……ニコライは、頑張ってくれるかしら?」
私の問いかけに、ニコライは力強く頷いてくれる。
「アンナリーゼ様、それでしたら、まず、エレーナ様も含め一度話をしたいです」
「わかったわ!調整してみましょう!
そのときは、トワイスからも兄を呼び寄せましょう!
兄も巻き込んでおいて損はないはずだから!」
私達3人は、それぞれ立場を整えるためにそれぞれ公都に向かう話となった。
ニコライは、早速向かってくれるようだし、ビルはリリーとの話をしてからだと言っている。
私も、そろそろ公世子様と面会予約を取りたいし、殿下への贈り物の用意も必要だ。
さてさて、帰っても忙しくなりそうだと、私は領地改革の次を考えるのであった。
そして、今後の収入源となる予定の葡萄酒についても試作にこぎつけられた。
葡萄酒については、いわゆる悪酒を造るので、それほど期待もしていないが、これが領地改革の起爆剤となるのであれば、おいしいものになってほしいと願わずにはいられない。
葡萄畑の手入れには、何人かの人がいるな……と、人の割り方を考えるが、領主主導になれば手伝ってくれる人なんてたくさんいるだろうとそれほど深く考えなかった。
それより、作物改革の方が急務なのだが……それにもやはり、領主代行権がいる。
そろそろ、公都に帰って領主代行権を取得できるようジョージアを説得しなければならない。
気が重いのである。
日も高かったため、私達はユービスの町からビルの町まで歩くことにした。
やはり、リリーという存在が、領地お掃除を早く終わらせた功労者だと思える。
ちなみに、お掃除隊については、各地に散らばっていった。
それは、お掃除隊として行った町や村で気に入ったところに居を構えるためのようだ。
私が買い取ってある家を元に生活をするのだが、各地で大工仕事をしたり、葡萄畑を始め農家を手伝ったりするようである。
それは、それで、いいことなので止めなかった。
まだまだ、領地改革には人手がいるので、また招集に応じてほしいとお願いはしておく。
それには、もちろんですと応えてくれ、私は嬉しく思う。
私が始めたことではあるが、お掃除隊の面々は、それぞれの生きがいを見つけられた人もいるようで、出会った頃に比べてとてもいい笑顔であった。
ビルの町へ着いたところでみんなと別れ、私は、ナタリーと共にビルの家に寄った。
「アンナリーゼ様、ようこそおいでくださいました!」
「ちょっと、寄らせてもらったの。
少し話をしていってもいいかしら?」
「えぇ、構いませんよ!ニコライも呼んできましょう!」
ビルとニコライを前に、今までのお掃除隊の話をする。
なかなか濃い日程を過ごしたため、ビルもニコライも苦笑いだ。
「アンナリーゼ様、こちらは掃除も終わり、通常生活に戻りつつあります。
ただ、やはり仕事がないものも多くて……」
「そうね、それも考えないといけないことね。
私、一旦公都に戻ろうと思うの。
その間、そういう仕事がない人や子供を集めて、学校って開けないかしら?」
「学校ですか?何をさせるのですか?」
「読み書きそろばんを……次の領地改革のステップには必要だと思って……
あとは、体動かすのが好きな人は、石切りの町へ派遣してもいいかな?
ピュールっていう石切の現場監督とカノタっていう治水工事の設計をしてもらおうと
している子がいるのよ!
その人達から、石畳の街道を作るために学んでほしいのよ。
そうすれば、すぐにはモノにできなくても、ゆくゆくは領地のために働いてもらえる
から、私が領地に戻るまでは準備期間ね!」
なるほどと頷く。
「ビルは、そういう人たちの調整役をしてもらえる?」
「かしこまりました。そのお役目、承りました」
「できれば、リリーと一緒にやってほしいのだけどいいかしら?
人を見る目は、リリーも確かよ!」
私の言葉に頷くと、早速リリーと話をしてくれるということになった。
「あとね……ビル」
「なんでしょうか?」
とても言いにくい……でも、言わずにはいられない。
そろそろ、いいだろう。
「ビルとニコライ。
そろそろ、私に引き抜かれてくれるかしら?」
大店の店主であるビルとその息子であるニコライ。
今は、まだ、どちらもマーラ商会の一員だ。
「アンナリーゼ様、僕は、もう配下だと思ってますよ!
そうは、思ってもらってなかったのですか?」
「うん、そうなの……まだ、ニコライは、マーラ商会の一員だよ。
ビルは、どうかな?」
ビルは、腕を組んで考え込んでいる。
「ニコライの件は、息子が考えていくことなので了承いたしました。
私については、少しお時間をください」
そう……と暗い顔をする私に、ビルは笑いかける。
「配下になるのが嫌なのではありません。
マーラ商会を息子に渡して身ぎれいにしてからと思いまして。
息子共々、お願いしてもよろしいのですか?」
「うん、むしろ、ずっとお願いしたかったくらいだから、これから領地のために
本格的に力を貸してほしいの。
まず、前も話したけど、領地で商会や職人、農家たちをまとめる仕事をしてほしいの。
ありがたいことに、テクトやユービスも乗り気になってくれたから、3人をトップに
条例の整備やもめごとの調停、ゆくゆくは税の納付方法も変えていきたいから
それらの音頭も取ってほしのよ」
私の考えに頷いてくれ、私も頷き返す。
「そして、ニコライ。 あなたには、新しい商売の仕方をしてほしいの。
エレーナのところの運輸業は、使い勝手どう?」
「はい、エレーナ様のところの運輸業は、とてもいいですね!
信用も置けますし、きちんとお願いしたところに届けてくれますから」
「それは、よかった。
エレーナのところと協力して、3国をまたいだ商会を立ち上げてほしいの。
店をたてるのは難しいから、例えば、その土地土地にある店と連携して商品を
売買できる仕組みを作って、そこから、利益ができるようにしてほしいよ。
3国の商品を1つの店で扱うって、かなり大変だと思うけど、その店に行けば
なんでもそろうっていうようなお店は、どこにもないからチャンスだと思うの!
商会名は、『ハニーアンバー』。私が全面的に後ろ盾するわ!
大変だけど……ニコライは、頑張ってくれるかしら?」
私の問いかけに、ニコライは力強く頷いてくれる。
「アンナリーゼ様、それでしたら、まず、エレーナ様も含め一度話をしたいです」
「わかったわ!調整してみましょう!
そのときは、トワイスからも兄を呼び寄せましょう!
兄も巻き込んでおいて損はないはずだから!」
私達3人は、それぞれ立場を整えるためにそれぞれ公都に向かう話となった。
ニコライは、早速向かってくれるようだし、ビルはリリーとの話をしてからだと言っている。
私も、そろそろ公世子様と面会予約を取りたいし、殿下への贈り物の用意も必要だ。
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