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屋敷までに
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4日後に大店の店主を集めてもらう予定を頭に入れ、私は、情報の整理を始める。
アンバー領に起こっている状況、消えた資金のありか、今後の計画をだ。
まずは、領地全体を見てみないと何とも言えないが、ビルやニコライの話では、きっとどこもかしこも似たり寄ったりなのだろう。
ヨハンが何も言ってこなかったのは、これが常でアンバー領はこういうものだと思っていたからだろうか?
それとも、あの偏屈な教授は、領地のどこにも出歩いていなかったということなのだろうか?
かなりあり得る。
なんせ、山の中に居住しているのだ。
食事の用意などは、全部助手がしているはずだ。
研究さえできれば、領地運営に興味も示さないだろうから、ありあなくはない。
ディルにしても、ずっと領地へは行っていないと話していたことを聞いたことがある。
こんな状態なのは知らないのだろうか……
とにかく、明日から3日かけて領地を回らないといけない。
その前に、領地のお屋敷に帰る。
「みんな聞いて。
今日、ビルから聞いた話で、資金がどこかに消えているの。
それとなく探ってほしいのと、まずは、管理簿の確保。
あと、今日聞いたことは悟られないで!
ちなみに今日は、かねてからの領地の紅茶農家へ行ったことにしてくれる?」
私を見て、みんなが頷く。
「で、どうするんだ?」
「どうもこうも、調べてみないとなんとも……
あと3日間で領地全部回るわ!
潤っているところなんてどこにもなさそうね……」
思わずため息が出そうになる。
でも、私がため息をついても仕方ない。
領民の方が、領主に対して三行半を叩きたいだろうに……
ジョージア様……領地の現状を知っているのかしら……?
このままじゃ、あなたの領地は死んでしまう。
何とか、しなくちゃいけないけど、今は、箱庭計画よりもっと根本的なことから始めないといけない。
段々、自信がなくなってきた。
私、やっていける?
見まわす景色は、どこまでものどかである。
人の生活圏だけが、腐っていたのだ。
思い出すだけで、背中に冷たいものが、胃からこみあげてくるものがある。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ!
セバスも驚いたでしょ?」
「はい、正直、惨状だと思いました……
僕の住む領地は、まだ、人が人らしく生活できてますから……」
周りを見るとだいたい同じような顔をしている。
軽口をたたくウィルでさえ無口で口を一文字に結んでいる。
「アンナリーゼ様、フレイゼンの学都に何度かサシャ様に連れて行ってもらいましたが、
全く違うんですね……
僕の住んでいたところも、そんなに裕福ではなかったですけど、それなりの生活は
していました」
「そうね……
私は、フレイゼンやおじい様のところしかしらないから……
今回の訪問は驚きしかないの。
領主の頑張りで、全く違うものになるのよ!!
私、3年近くアンバーにいるけど、現状を全く知らなかった。
多分、ジョージア様も私に見せたくなかったのだと思う。
でも、おかげで、しないといけないことは、決まったわ!
手助け、してくるかしら……?」
周りにいるみんなを一人一人見つめる。
みんな、なんとも心情がそのまま顔に出ている。
ニッコリ笑う私。
「俺は、いいぜ!
驚いたし、あれを立て直すとなると相当だと思うけどよ、手伝う」
ウィルの決意の籠った声に呼応するように応えてくれる。
「僕は、アンナリーゼ様の相談役だからね。
難しいことは、任せて!
そのために、僕を引き抜いたんだよね?」
「セバス……」
「大丈夫、アンナリーゼ様一人なら無理でも、僕も知恵を貸すから!」
セバスは、私に笑いかけてくれた。
「アンナリーゼ様、アンバー領は……よくなりますか?」
「わからないわ……
私も、今自信を無くしているもの。
でも、ウィルやセバスが、手を貸してくれるなら、できる気がする。
もう、ニコライに出身地を言えないようなことはしたくないの!」
「うん、わかった。
元々、アンナリーゼ様の力が欲しかったんだ。
同等の対価は支払うよ!」
「さすが、商人ね!
私は、ニコライの気概も商売上手も買っているのだから!
一緒にアンバー領を売り出しましょう!
パルマ、あなたは、まだ学生よ。
好きにしたらいいわ!
私は、縛ることはしませんから」
「いえ、僕も一緒に頑張らせてください!
セバスやニコライに負けないようがんばりますから!」
さっきの諦めたような顔をしていた面々は、私を見つめ返して手伝ってくれるという。
なら、私は、力を借りて改革を推し進めるしかない。
失敗はできない!
領民の命が、対価なのだから……
一刻も早く改革を進めないといけないことはわかっている。
ただ、それにもそれなりの根回しもいれば、お金に人手もいる。
第一一番必要なものは「領主代行権」だ。
領主は、ジョージアであり私ではない。
何をするにも領主の承認がいるのだ。
代行権さえとってしまえば、いちいち承認を得なくても進められる。
明日の様子を見て、まずは、公都に帰ってから「領主代行権」取得から始めよう。
「屋敷についたら、明日行くところを決めるわ!
大きな地図が必要ね。
あと、今日のことを記録にとって、必要な支援やどういう改革をしないといけないか
考えましょう。
私の私室へ食事が終わったら来てくれる?
あと、毒には気を付けて!
多分、なにかしらの間者いてもおかしくないと思う」
私達は、気を引き締めながら屋敷の門をくぐるのであった。
アンバー領に起こっている状況、消えた資金のありか、今後の計画をだ。
まずは、領地全体を見てみないと何とも言えないが、ビルやニコライの話では、きっとどこもかしこも似たり寄ったりなのだろう。
ヨハンが何も言ってこなかったのは、これが常でアンバー領はこういうものだと思っていたからだろうか?
それとも、あの偏屈な教授は、領地のどこにも出歩いていなかったということなのだろうか?
かなりあり得る。
なんせ、山の中に居住しているのだ。
食事の用意などは、全部助手がしているはずだ。
研究さえできれば、領地運営に興味も示さないだろうから、ありあなくはない。
ディルにしても、ずっと領地へは行っていないと話していたことを聞いたことがある。
こんな状態なのは知らないのだろうか……
とにかく、明日から3日かけて領地を回らないといけない。
その前に、領地のお屋敷に帰る。
「みんな聞いて。
今日、ビルから聞いた話で、資金がどこかに消えているの。
それとなく探ってほしいのと、まずは、管理簿の確保。
あと、今日聞いたことは悟られないで!
ちなみに今日は、かねてからの領地の紅茶農家へ行ったことにしてくれる?」
私を見て、みんなが頷く。
「で、どうするんだ?」
「どうもこうも、調べてみないとなんとも……
あと3日間で領地全部回るわ!
潤っているところなんてどこにもなさそうね……」
思わずため息が出そうになる。
でも、私がため息をついても仕方ない。
領民の方が、領主に対して三行半を叩きたいだろうに……
ジョージア様……領地の現状を知っているのかしら……?
このままじゃ、あなたの領地は死んでしまう。
何とか、しなくちゃいけないけど、今は、箱庭計画よりもっと根本的なことから始めないといけない。
段々、自信がなくなってきた。
私、やっていける?
見まわす景色は、どこまでものどかである。
人の生活圏だけが、腐っていたのだ。
思い出すだけで、背中に冷たいものが、胃からこみあげてくるものがある。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ!
セバスも驚いたでしょ?」
「はい、正直、惨状だと思いました……
僕の住む領地は、まだ、人が人らしく生活できてますから……」
周りを見るとだいたい同じような顔をしている。
軽口をたたくウィルでさえ無口で口を一文字に結んでいる。
「アンナリーゼ様、フレイゼンの学都に何度かサシャ様に連れて行ってもらいましたが、
全く違うんですね……
僕の住んでいたところも、そんなに裕福ではなかったですけど、それなりの生活は
していました」
「そうね……
私は、フレイゼンやおじい様のところしかしらないから……
今回の訪問は驚きしかないの。
領主の頑張りで、全く違うものになるのよ!!
私、3年近くアンバーにいるけど、現状を全く知らなかった。
多分、ジョージア様も私に見せたくなかったのだと思う。
でも、おかげで、しないといけないことは、決まったわ!
手助け、してくるかしら……?」
周りにいるみんなを一人一人見つめる。
みんな、なんとも心情がそのまま顔に出ている。
ニッコリ笑う私。
「俺は、いいぜ!
驚いたし、あれを立て直すとなると相当だと思うけどよ、手伝う」
ウィルの決意の籠った声に呼応するように応えてくれる。
「僕は、アンナリーゼ様の相談役だからね。
難しいことは、任せて!
そのために、僕を引き抜いたんだよね?」
「セバス……」
「大丈夫、アンナリーゼ様一人なら無理でも、僕も知恵を貸すから!」
セバスは、私に笑いかけてくれた。
「アンナリーゼ様、アンバー領は……よくなりますか?」
「わからないわ……
私も、今自信を無くしているもの。
でも、ウィルやセバスが、手を貸してくれるなら、できる気がする。
もう、ニコライに出身地を言えないようなことはしたくないの!」
「うん、わかった。
元々、アンナリーゼ様の力が欲しかったんだ。
同等の対価は支払うよ!」
「さすが、商人ね!
私は、ニコライの気概も商売上手も買っているのだから!
一緒にアンバー領を売り出しましょう!
パルマ、あなたは、まだ学生よ。
好きにしたらいいわ!
私は、縛ることはしませんから」
「いえ、僕も一緒に頑張らせてください!
セバスやニコライに負けないようがんばりますから!」
さっきの諦めたような顔をしていた面々は、私を見つめ返して手伝ってくれるという。
なら、私は、力を借りて改革を推し進めるしかない。
失敗はできない!
領民の命が、対価なのだから……
一刻も早く改革を進めないといけないことはわかっている。
ただ、それにもそれなりの根回しもいれば、お金に人手もいる。
第一一番必要なものは「領主代行権」だ。
領主は、ジョージアであり私ではない。
何をするにも領主の承認がいるのだ。
代行権さえとってしまえば、いちいち承認を得なくても進められる。
明日の様子を見て、まずは、公都に帰ってから「領主代行権」取得から始めよう。
「屋敷についたら、明日行くところを決めるわ!
大きな地図が必要ね。
あと、今日のことを記録にとって、必要な支援やどういう改革をしないといけないか
考えましょう。
私の私室へ食事が終わったら来てくれる?
あと、毒には気を付けて!
多分、なにかしらの間者いてもおかしくないと思う」
私達は、気を引き締めながら屋敷の門をくぐるのであった。
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