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ウィルからの提案
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「姫さん!
ちょっといいか?」
最近、毎日通っているおかげか近衛の訓練所に入ったところでウィルに呼び止められた。
ジョーも毎日通っているせいか、外にでれるこの時間が好きなようで、私の腕の中で笑いながら暴れまわっている。
ちなみにジョーも生まれてから体重が順調に増えていってるので重くなってきた。
抱きかかえているだけでちょっとした運動になってくる。
ウィルに促され、私は外のベンチに腰掛けた。
「どうしたの?」
「うん、ちょっと提案があって!」
ウィルからの相談なんて珍しい。
視線で先を促すことにした。
「近衛の中で武闘大会をしたいと思うんだ。
上には、許可は取ってある。
それで、姫さんの冠大会にしたいんだけど、でてくれねぇか?」
「何……それ……」
俯く私にウィルは、ダメか……と、呟いた。
「……そのおもしろそうなの!
出たい、出たい!
私も出る!
絶対出る!!」
勢い余ってジョーを落としそうになってしまって、私は慌てて体勢を整えた。
「あぁ、ぜひ出てくれ……!」
食い気味の私にウィルは仰け反る。
「それで、まずは予選をしようって話になっていてな?
決勝トーナメントのメンバーが決まるまで、3日ほど、来ないで欲しいんだ!
聞きつけた隊長格や将軍職まで、いろめきだっていて……
すごい応募者なんだわ。
トーナメントで数を絞るから……姫さんは、もちろん、決勝トーナメントからでてくれ……」
私のキラキラしてウィルを見上げていた目は、だんだん不服そうなものになってきたので、ギョッとしている。
「…………やだ」
「はっ?」
「やだ!
私、予選トーナメントから出る!!」
一度言い始めたらテコでも動かないこと知っているウィルは、盛大にため息をついた。
しかし、それも一興かと許可を出してくれることになった。
「ねぇ?
ウィルは、私を励ますためにこんなことしてくれるの?」
「いや、毎日ぶちのめされてるやつらの底上げとその成果の確認と
たまには、お祭り気分を味わいたいって思って!
姫さんも、そういうの好きだろ?」
「うん、今までなかったから、楽しみすぎる!
明日だよね?
じゃあ、今日は、みんなと遊んでいってもいいのよね?」
「エリックが待ってるから、行ってこい!
ジョーは、預かっておくから!」
私がジョーをウィルに預ける。
むしろ、待ってましたというようにジョーがウィルに喜んで抱かれに行く。
前から思っていたが、ジョーはウィルを気に入っているのか全然泣かない。
「じゃあ、行ってきます!」
私は、ジョーに手を振って訓練所の真ん中に歩き始める。
「みんなぁー今日の相手は、誰?」
すると、100人が私の前にぞろぞろと歩いてきた。
「じゃあ、始めましょうか!」
私は、模擬剣を握りしめ優雅に一歩目を踏み出す。
それぞれ得意の得物で、私に切りかかってきた。
1つ1つ丁寧に意識を刈り取るには人数が多いので、できるところからだ。
カンカンと模擬剣と撃ち合いながら、四方八方からも私の意識を刈り取るために得物に狙われるが、倒した相手の模擬剣も使っていなしていく。
だんだん体も慣れてきたなと思っていると、エリックまで参戦してきた。
私は、思わずのけぞりそうになる。
いつもよりたくさん人数が残っているのに、もう混ざってくるのだ。
「エリックも!?まだ、早いよ!」
「アンナリーゼ様、戦場ではそんなこと言ってられませんよ!」
ドーンっと重い振りが迫ってきた。
近衛さんごめんね!
私の代わりに受けて!
手近にいた近衛を私の身代わりに引っ張って盾にした。
驚きで可哀想な近衛隊員は、エリックに1発でのされてしまう。
「エリック、怖いよ!!」
間合いをとりながら、そそくさと逃げる私。
まぁ、集団戦は、正直……対応に大変だが、さっきのこともある。
もっとも警戒すべきは、エリックなのだ。
一人孤立してしまうと、狙われやすい。
「アンナリーゼ様、近衛を盾にするなんて、ひどいじゃないですか!
僕、あとで叱られる!」
「戦場では、敵は、盾にしてもいいんですぅー!!」
「姫さん、それ、人道的によくないよ!
ジョーの教育上もよくないからなぁ!」
ウィルは、呑気にジョーをあやしながら、エリックとの言い合いに口を出してくる。
私は周りから、忙しなくいろんなものに狙われているのだ。
いなすだけでは、エリック参戦で正直キツくなってきた。
覚悟を決めて、目一杯、近衛さんたちには、私にぶちのめされてもらおうと思う。
ふぅーっと息はき、スッと吸ったあとは、気合いも十分、バタバタと近場の近衛隊員から倒していく。
「お前のかぁーちゃん、さすがだな?」
「キャハハ……キャハ……」
「姫さん見て喜んでるってことは、大物になるなぁ……こりゃ」
ウィルがなんか、言ってた気がするけど、私はそれどころじゃない!
エリックとの間合いは十分とりながら、また1人倒していく。
やっと90人!
今現在、私の周りを囲むように11人が立っていた。
顔をみると、いつも苦戦させられる人達ばかりが10人とエリックだ。
気持ちを切らさないよう、静かに深く息をする。
はぁはぁと荒い息をしているのは、私だけだったのだ。
普通の100人なら、ここまで追い込まれない。
エリックという最大限のプレッシャーが、いつも以上に私を追い詰めていく。
よし!
見据えたのは、エリック。
エリックも私が来るだろうと思ったのか、身構えている。
「エリック、強くなったね!」
「アンナリーゼ様には、まだまだ敵いませんけどね!」
上段から打ち込んできた。
これ、ヤバいやつ。
逃げようと思ったが、私は、無謀にも受けて立った。
背も高く、体つきもいいエリックから放たれる一撃は、相当重くダメージもグッとのしかかった。
「そろそろ、ハイヒール脱ぎたくなったんじゃないですか?」
「えぇ、そうね!
次は、男装でもしてくるわ!」
力負けはしても、ちょっとしたコツで押し返すことはできる。
拮抗していた力をわざと抜いて右側に流してやった。
するとよろけるエリック。
「悪いわね!」
そういって、エリックの首根っこを模擬剣の柄で殴る。
ドサッと音と共に最大限のプレッシャーから逃れられた。
少し緊張から解き放たれた体の中の空気を入れ替えてやる。
思いっきり吐いて思いっきり吸う。
あとの10人は、いつも苦戦させられるが、負けることはないので、1人ずつ順番に転がしていく。
101人の意識を刈り取るには、いつもの倍以上の時間がかかり、私もドッと疲れるのである。
「んもぉーダメ!!」
地べたに座り込む私。
最初の頃に昏倒させた近衛は、起き始める。
そして、座り込んでいる私を見て驚いていた。
「ウィル!」
近寄ってきて私に手を差し出し、引っ張り上げる。
左でジョーを抱き、右で私を抱きしめる。
勢い余って私は、ウィルに抱きついてしまう。
「お似合いですね!」
「バカなこと言うなって!」
ウィルは、慌てて私を剥がしてしまった。
久しぶりに誰かに抱きつくなんてことをすると、なかなか離れがたく思ってしまう。
「ほら、姫さんも、こんなとこで座らない!」
「はぁーい!」
ウィルに返事をして、ベンチに向かって歩き始める。
その後ろをジョーを抱いたウィルが、ついてきた。
「あれ、どう見ても親子だよな?」
「本当」
「あの2人、似合っているのにな」
隊員たちは、私達を見てそう囁き合っていたとか。
私たちには、聞こえない話だ。
「今日は、だいぶ苦戦してたな?」
「うん、エリックがいると、どうしてもそっちに意識が行っちゃうからね!」
団体様相手はできるか、エリック程の実力者が混じるとなかなか厳しいと感じた。
「エリック、強すぎるよ!」
「姫さんに負けた日から、毎日俺と鍛錬してるからな。
強くなるわな!」
ジョーが、ウィルにすっかり懐いている。
うりゃうりゃってほっぺを突かれて喜んでいるのだ。
「うちの子まで、誑し込まないでね!」
「それはこっちのセリフ。
うちの隊員、みんなアンナリーゼ様!って忠犬わんこのように毎日健気に待ってるぜ?」
倒れ込んだ隊員たちを眺めて、ウィルはふっと笑っている。
「今度の武闘大会の話したとき、近衛みんなが喜んだくらい姫さんの人気は高いんだよ!
まぁ、おかげで、俺もあやかってるんだけどな!
楽しみだな!」
「そうね!」
ウィルにニッコリ笑顔を返し、私は、鼻歌交じりに足をばたつかせている。
明日は、男装してもいいだろうか?
だって、やっぱり、その方が動きやすいものね!
私は、うきうきと明日の予選に思いを馳せるのであった。
ちょっといいか?」
最近、毎日通っているおかげか近衛の訓練所に入ったところでウィルに呼び止められた。
ジョーも毎日通っているせいか、外にでれるこの時間が好きなようで、私の腕の中で笑いながら暴れまわっている。
ちなみにジョーも生まれてから体重が順調に増えていってるので重くなってきた。
抱きかかえているだけでちょっとした運動になってくる。
ウィルに促され、私は外のベンチに腰掛けた。
「どうしたの?」
「うん、ちょっと提案があって!」
ウィルからの相談なんて珍しい。
視線で先を促すことにした。
「近衛の中で武闘大会をしたいと思うんだ。
上には、許可は取ってある。
それで、姫さんの冠大会にしたいんだけど、でてくれねぇか?」
「何……それ……」
俯く私にウィルは、ダメか……と、呟いた。
「……そのおもしろそうなの!
出たい、出たい!
私も出る!
絶対出る!!」
勢い余ってジョーを落としそうになってしまって、私は慌てて体勢を整えた。
「あぁ、ぜひ出てくれ……!」
食い気味の私にウィルは仰け反る。
「それで、まずは予選をしようって話になっていてな?
決勝トーナメントのメンバーが決まるまで、3日ほど、来ないで欲しいんだ!
聞きつけた隊長格や将軍職まで、いろめきだっていて……
すごい応募者なんだわ。
トーナメントで数を絞るから……姫さんは、もちろん、決勝トーナメントからでてくれ……」
私のキラキラしてウィルを見上げていた目は、だんだん不服そうなものになってきたので、ギョッとしている。
「…………やだ」
「はっ?」
「やだ!
私、予選トーナメントから出る!!」
一度言い始めたらテコでも動かないこと知っているウィルは、盛大にため息をついた。
しかし、それも一興かと許可を出してくれることになった。
「ねぇ?
ウィルは、私を励ますためにこんなことしてくれるの?」
「いや、毎日ぶちのめされてるやつらの底上げとその成果の確認と
たまには、お祭り気分を味わいたいって思って!
姫さんも、そういうの好きだろ?」
「うん、今までなかったから、楽しみすぎる!
明日だよね?
じゃあ、今日は、みんなと遊んでいってもいいのよね?」
「エリックが待ってるから、行ってこい!
ジョーは、預かっておくから!」
私がジョーをウィルに預ける。
むしろ、待ってましたというようにジョーがウィルに喜んで抱かれに行く。
前から思っていたが、ジョーはウィルを気に入っているのか全然泣かない。
「じゃあ、行ってきます!」
私は、ジョーに手を振って訓練所の真ん中に歩き始める。
「みんなぁー今日の相手は、誰?」
すると、100人が私の前にぞろぞろと歩いてきた。
「じゃあ、始めましょうか!」
私は、模擬剣を握りしめ優雅に一歩目を踏み出す。
それぞれ得意の得物で、私に切りかかってきた。
1つ1つ丁寧に意識を刈り取るには人数が多いので、できるところからだ。
カンカンと模擬剣と撃ち合いながら、四方八方からも私の意識を刈り取るために得物に狙われるが、倒した相手の模擬剣も使っていなしていく。
だんだん体も慣れてきたなと思っていると、エリックまで参戦してきた。
私は、思わずのけぞりそうになる。
いつもよりたくさん人数が残っているのに、もう混ざってくるのだ。
「エリックも!?まだ、早いよ!」
「アンナリーゼ様、戦場ではそんなこと言ってられませんよ!」
ドーンっと重い振りが迫ってきた。
近衛さんごめんね!
私の代わりに受けて!
手近にいた近衛を私の身代わりに引っ張って盾にした。
驚きで可哀想な近衛隊員は、エリックに1発でのされてしまう。
「エリック、怖いよ!!」
間合いをとりながら、そそくさと逃げる私。
まぁ、集団戦は、正直……対応に大変だが、さっきのこともある。
もっとも警戒すべきは、エリックなのだ。
一人孤立してしまうと、狙われやすい。
「アンナリーゼ様、近衛を盾にするなんて、ひどいじゃないですか!
僕、あとで叱られる!」
「戦場では、敵は、盾にしてもいいんですぅー!!」
「姫さん、それ、人道的によくないよ!
ジョーの教育上もよくないからなぁ!」
ウィルは、呑気にジョーをあやしながら、エリックとの言い合いに口を出してくる。
私は周りから、忙しなくいろんなものに狙われているのだ。
いなすだけでは、エリック参戦で正直キツくなってきた。
覚悟を決めて、目一杯、近衛さんたちには、私にぶちのめされてもらおうと思う。
ふぅーっと息はき、スッと吸ったあとは、気合いも十分、バタバタと近場の近衛隊員から倒していく。
「お前のかぁーちゃん、さすがだな?」
「キャハハ……キャハ……」
「姫さん見て喜んでるってことは、大物になるなぁ……こりゃ」
ウィルがなんか、言ってた気がするけど、私はそれどころじゃない!
エリックとの間合いは十分とりながら、また1人倒していく。
やっと90人!
今現在、私の周りを囲むように11人が立っていた。
顔をみると、いつも苦戦させられる人達ばかりが10人とエリックだ。
気持ちを切らさないよう、静かに深く息をする。
はぁはぁと荒い息をしているのは、私だけだったのだ。
普通の100人なら、ここまで追い込まれない。
エリックという最大限のプレッシャーが、いつも以上に私を追い詰めていく。
よし!
見据えたのは、エリック。
エリックも私が来るだろうと思ったのか、身構えている。
「エリック、強くなったね!」
「アンナリーゼ様には、まだまだ敵いませんけどね!」
上段から打ち込んできた。
これ、ヤバいやつ。
逃げようと思ったが、私は、無謀にも受けて立った。
背も高く、体つきもいいエリックから放たれる一撃は、相当重くダメージもグッとのしかかった。
「そろそろ、ハイヒール脱ぎたくなったんじゃないですか?」
「えぇ、そうね!
次は、男装でもしてくるわ!」
力負けはしても、ちょっとしたコツで押し返すことはできる。
拮抗していた力をわざと抜いて右側に流してやった。
するとよろけるエリック。
「悪いわね!」
そういって、エリックの首根っこを模擬剣の柄で殴る。
ドサッと音と共に最大限のプレッシャーから逃れられた。
少し緊張から解き放たれた体の中の空気を入れ替えてやる。
思いっきり吐いて思いっきり吸う。
あとの10人は、いつも苦戦させられるが、負けることはないので、1人ずつ順番に転がしていく。
101人の意識を刈り取るには、いつもの倍以上の時間がかかり、私もドッと疲れるのである。
「んもぉーダメ!!」
地べたに座り込む私。
最初の頃に昏倒させた近衛は、起き始める。
そして、座り込んでいる私を見て驚いていた。
「ウィル!」
近寄ってきて私に手を差し出し、引っ張り上げる。
左でジョーを抱き、右で私を抱きしめる。
勢い余って私は、ウィルに抱きついてしまう。
「お似合いですね!」
「バカなこと言うなって!」
ウィルは、慌てて私を剥がしてしまった。
久しぶりに誰かに抱きつくなんてことをすると、なかなか離れがたく思ってしまう。
「ほら、姫さんも、こんなとこで座らない!」
「はぁーい!」
ウィルに返事をして、ベンチに向かって歩き始める。
その後ろをジョーを抱いたウィルが、ついてきた。
「あれ、どう見ても親子だよな?」
「本当」
「あの2人、似合っているのにな」
隊員たちは、私達を見てそう囁き合っていたとか。
私たちには、聞こえない話だ。
「今日は、だいぶ苦戦してたな?」
「うん、エリックがいると、どうしてもそっちに意識が行っちゃうからね!」
団体様相手はできるか、エリック程の実力者が混じるとなかなか厳しいと感じた。
「エリック、強すぎるよ!」
「姫さんに負けた日から、毎日俺と鍛錬してるからな。
強くなるわな!」
ジョーが、ウィルにすっかり懐いている。
うりゃうりゃってほっぺを突かれて喜んでいるのだ。
「うちの子まで、誑し込まないでね!」
「それはこっちのセリフ。
うちの隊員、みんなアンナリーゼ様!って忠犬わんこのように毎日健気に待ってるぜ?」
倒れ込んだ隊員たちを眺めて、ウィルはふっと笑っている。
「今度の武闘大会の話したとき、近衛みんなが喜んだくらい姫さんの人気は高いんだよ!
まぁ、おかげで、俺もあやかってるんだけどな!
楽しみだな!」
「そうね!」
ウィルにニッコリ笑顔を返し、私は、鼻歌交じりに足をばたつかせている。
明日は、男装してもいいだろうか?
だって、やっぱり、その方が動きやすいものね!
私は、うきうきと明日の予選に思いを馳せるのであった。
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