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告白

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「あなたたちには、教えておくわ。
 この子の名前は、『アンジェラ・ジョー・アンバー』
 女の子よ!」
「「「えぇー!」!」?」



 3人とも驚いている。
 私はしめしめと思っているのだが、ナタリーに叱られることになる。



「女の子なら、なおさらアンジェラ様とお呼びした方がよろしいではないですか!?」
「ナタリーのいうことは、もっともね!」



 さっき、三人が騒いだせいか、目を覚ましたジョー。


「ちょうど、起きたわね。瞳が見えるかしら?」



 抱きおこして、ジョーの瞳を見せる。
 ジョージアと同じ、トロっとした蜂蜜色の瞳を。



「アンバー家次期当主……」
「そうね、それもあるけど……」



 言葉をきったところで、セバスが何かに気付いたのだろう。



「ハニーローズ?
 もう、何百年って生まれてないはずだよ?」
「ハニーローズって……何?」



 ウィルとナタリーは、顔を合わせて知らないと首を横に振っている。
 セバスだけが、驚愕しているところだった。



「何か厄災が起こるってこと?」



 すかさず聞いてくるセバス。



「スーザン、悪いんだけど、デリアを呼んできてくれる?
 そのあとは、部屋にいて頂戴」



 かしこまりましたとスーザンは部屋を出ていく。
 しばらくすると、飲み物を用意してくれたデリアが入ってくる。



「まずは、座って。
 デリアのお茶はおいしいから!」
「アンナリーゼ様!」
「セバス……焦っても仕方がないでしょ?」



 その一言で落ち着いたのか、三人ともそれぞれ用意された席に座る。


 じーっと見上げてくる我が子をあやしながら、語ろうかと思ったが、先にセバスに取られてしまった。



「『ハニーローズ』は、この国の初代女王の愛称だよ。
 この国って言っても、ローズディアとトワイス、エルドアが三国に分かれる前の
 だけどね……
 その女王は、蜂蜜色の瞳を持っていて、女王の愛称である『ハニーローズ』は、
 厄災と繁栄を意味する言葉になっているんだ」


 私も知らないハニーローズの話が始まった。


「3国に別れてからは、公国のしかも決まった公爵家にだけ
 生まれ変わりと言われる子が生まれる。
 アンバー家にしか代々蜂蜜色の瞳の子供は生まれないんだ。
 その中でも女の子にその瞳が受け継がれることは、稀なんだ。
 そして、その蜂蜜色の瞳を持つ女の子のことを総じて『ハニーローズ』と
 いっているんだよ」
「その『ハニーローズ』っていうのは、なんで厄災と繁栄なんだ?」


 ウィルの疑問はもっともだろう……


「『ハニーローズ』が生まれた時代には、必ずと言っていいほど、
 大きな厄災が起きる。
 戦争、飢饉、災害、疫病……
 そして、それを乗り越える道しるべとなるのが、『ハニーローズ』となり
 乗り越えた先に繁栄があるんだ」


 ウィルは感心しているが、もっともウィルが一番危ないところにいるのだと、気づいてほしい……


「この子が、『ハニーローズ』ってことは……
 何か起こるということなのね……?」


 セバスは、ナタリーに向かって大きく頷く。


「アンナリーゼ様は、すでにご存じなのですか?」


 セバスの質問に私は、黙ってしまう。
 知っているのだ。
『予知夢』が教えてくれる未来を。

 ただ、今、言っていいのか……阻む心がある。
 でも、少しでも排除できるなら……と、かいつまんで話をすることにした。
 協力者は、少しでも多い方がいい。


「知っているわ……」


 ポツリとこぼし、ジョーを見る。
 まだ、目で追うくらいしかできないのか、私をじーっと見つめ返してくる。


「戦争が起きる。
 それも、三国を巻き添えにして……
 でも、いつ始まるのかはわからない」


 実際、私が見ている未来は変わってきているので、本当にわからなくなってきている。


 三人とも言葉を無くしたのか、沈黙が続く。



「私、『予知夢』が見れるの……」



 これ以上、隠すことはできないと思い、『私』を話始める。



「『予知夢』だって……?」
「そう、私、この子を生むためだけにこの国やってきたのよ」



 私の言葉は、静かになった部屋に響く。



「私ね、小さな頃から夢を見るの。
 最初は、幸せな夢だった。
 ハリーと結婚して、素敵な結婚式をあげて……
 幸せな結婚生活をおくるの……」



 私の気持ちを汲んだのか、ジョーが少しぐずりはじめる。



「デリア、ごめん。
 少しだけ、ジョーを連れて私室に戻ってくれるかしら?
 スーザンもいるから……」



 ジョーを抱きかかえ、私室へと退出するデリアをぼぉーっと眺める。




「姫さん、それって……」
「そう、私の初恋の夢。
 それが、当然のように続くのだと思っていたわ!
 残念ながら、夢だった。
 戦争が始まって、ハリーも殿下も家族も友人も……
 みんな無残に殺される夢を見続けたの」



 涙をぐっとこらえる。
 今でも鮮明に思い出せる夢だ。



「その回避方法として、『ハニーローズ』に私は縋ったのよ……
 私は、弱い人間だわ……
 強くあろうと思っていても、しょせん、誰かの側にいたいのよ。
 別の選択肢として、ジョージア様との結婚、『ハニーローズ』の出産が
 『予知夢』としてみた未来があったの」
「ソフィア様には、生まれないのか……?」



 ウィルの質問に私は首を横にふる。



「わからない。
 私が『予知』したのは、黒髪で黒目のジョージア様とは全く似ていない
 子供たちしか見ていないの……」
「黒髪で黒目の子供たち……?」
「アンバー公爵家は、アンナリーゼ様が嫁がなければ、
 子孫を残せなかったということか?」
「それもわからない。
 でも、過去から、私に宛てた手紙があるの……
 私が、この道を選ぶとわかっていないと、書けないはずよ。
 オリエンティス……女王が残した手紙があるのよ」
「ロサ・オリエンティス?」



 セバスは心配そうに驚きも隠せていない。



「そう……女王にも謁見したの。
 結婚式の日にね……夢に出てきた。
 女王には『過去見』の能力があって、私には『予知夢』の能力があった。
 アンバーの秘宝を通して、能力が繋がったのではないかって推測している」



 私の話を聞き、三人とも黙ってしまった。
 それもそうだろう……信じがたい話だ。



「それで、そのことは、ジョージア様は知っているの?」
「知らない……
 言えるわけないよ……
 あんなに大事にしてくれて、たくさんの愛情をもらっていたのに、
 そんな現実は、突きつけられない」
「それもそうか……
 でも、姫さんは、今、誰を想ってる?
 ハリー君ではないよね?
 ジョージア様がいなくて、寂しいんだよね?」



 ウィルは、どこまで私の気持ちを代弁していくのだろう……



「姫さん、始まりはどうあれ、ジョージア様を愛し愛されていただろう?」
「そうね……
 私、この選択をして1番の後悔は、ジョージア様を愛してしまったこと。
 『予知夢』ではね……冷え切った結婚生活だったの。
 だから、それなりに覚悟をしてきたのだけど……」
「あえだけの溺愛っぷりをみたらねぇ……」



 分かり合う三人は頷きあっている。



「ジョージア様がいいの!の理由は、『ハニーローズ』だけではなかったよね。
 もう、こっちがこっぱずかしいくらい二人ともベタベタと……
 ジョージア様の心配っぷりも……」
「俺、ジョージア様に牽制されたことある!
 俺のアンナにあんまりベタベタしないでって!」
「それ知らない!
 そんなことあったの?
 ウィルが、アンナリーゼ様にやらしい触り方してるからじゃない?」
「ナタリー……それは、ないぜ……
 俺、姫さんにこってんぱんにされるんだぜ……」



 私の知らないジョージアの話をし始める。
 それが、なんだか嬉しかった。



「やっと笑った……
 ジョージア様は、姫さんのことを本当に大事に思っていたんだ。
 今は、離れているかもしれないけど、その気持ちは本物だよ」
「ありがとう……」



 私は、三人に向かって微笑むと、三人ともがホッとしている。



「しっかし、姫さんの初恋は、『理想の王子様』だったなぁ……」
「両想いだったでしょ……?
 卒業式のとき、あのダンスを見せられたら、ジョージア様以外、
 誰も割り込めないわよね!」
「なんで、ジョージア様以外?」
「ジョージア様、アンナリーゼ様のことをずっと想っていたって話、
 聞いたことない?
 名前は出てなかったけど……『懐中時計の君』って噂」
「あぁー!
 あれって、アンナリーゼ様のことだったの?」



 こちらの社交界では、有名な話だったらしい。
『懐中時計の君』なんて、呼ばれていた私。
 初めて知った。



「まぁ、こっちの道選んでよかった!って思えるよう俺たちも全力で支えるよ!
 一緒に頑張ろう?」
「えぇ、ありがとう。
 私、本当にあなたたちに出会えてよかったって思っているの。
 私と娘、両方ともこれからもよろしくお願いします!」
「「「よろこんで!」」」


 私は、自分の人生に迷ったこともあった……
 でも、こうやって、友人たちが支えてくれるのだから、頑張ろうと思える。


 私には、あと10年しかない。
 でも、あと10年もあるのだ。
 皆に力を借りて、人生を全うできるようにしよう!


 今日、3人に話して、よかったと思った。
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