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アンジェラ・ジョー・アンバー
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「アンナリーゼ様、今、旦那様にお子様が生まれたことをお伝えしてきましたが……」
「戻ってこないんでしょ?」
ディルに対して私が発した言葉に、侍従たちが驚く。
「どうしたの……?」
「いえ、何故わかったのかと……
大変申しにくいのですが、旦那様は、あちらでお子様と過ごすと……」
申し訳なさげにディルは言ってくれるが、私にしては予定通りに事が進んでしまっただけの話だ。
といっても、寂しさで泣いてしまっていたのだが……
「いいのよ!
気にしないで!
私には、この子がいるから……」
眠ってしまった子の頬を撫でるとむにゃむにゃっとしている。
それが、可愛くて仕方がない。
「そうだ、名前なんだけど……」
静まり返った部屋に、私の明るすぎる声だけが響く。
「アンジェラって名前にしようと思うのだけど……どうかしら?
ジョージア様もアンジェラがいいとおっしゃてたし」
「それは、かまいませんが……アンナリーゼ様は、その……」
心配してくれるディルやデリア、侍従たちに私はニッコリ笑う。
「うん。ディル、心配してくれてありがとう。
デリアや他の子たちもありがとう。
でも、心配はいらないよ!
それに、あなたたちも私がちゃんと養うから、大丈夫!
それでも心配なら、屋敷は辞めてもらっても構わないよ」
皆、それぞれの顔を見比べている。
心配なのはわかる。
生活がかかっているからだ。
仕送りしている子もいるだろう……
だから、私は、この屋敷に縛らないと宣言した。
しかし、デリアはいち早く申出てくれる。
「私デリアは、あのときより、アンナリーゼ様と共にあることを誓っております。
アンナリーゼ様が、手放すと言っても私は、あなた様の側を離れるわけには
いきません。
あなた様こそが、私の主であり、親であり、私の全てです。
アメジストに誓い、私は、あなた様以外と共に歩む未来などありません!」
「デリア……」
「それに一緒にアンジェラ様を育てるって約束したじゃありませんか?」
「ありがとう……」
私は、デリアの優しさに涙が溢れてくる。
「泣かないでください。
アンジェラ様が起きてしまいますよ!」
デリアは、私に駆け寄り涙を拭ってくれる。
「アンナリーゼ様……
私は、筆頭執事として、あなた様にアンバー家を託そうと思っております。
どうか、私達を導きください」
ディルが、私に膝をおる。
すると、そこにいた侍従が、すべて膝を折ってくれた。
私は、その姿に驚くばかりである。
「まずは、お子様のお名前ですね。
アンジェラ様でよろしいですか?
アンバー家の筆頭執事に代々伝わる手記に記さねばなりません」
「うん。
アンジェラ・ジョー・アンバーがこの子の名前。
そして、この子が、ハニーローズよ!」
ディルは、顔を上げ驚いている。
ここ何百年と生まれてこなかった女王の生まれ変わり。
蜂蜜色の瞳を持つ女の子の誕生に、ディルは、声を無くした。
「あの……アンナリーゼ様、お話する許可を……」
「どうぞ!」
「ハニーローズとは、なんでしょうか?」
私が話始めようとしたとき、ディルがポツポツと話始める。
ハニーローズとは、と……
その場にいた侍従は、驚き、へたり込んでしまったものもいた。
証拠となるのは、性別と瞳の色だ。
アンバー家にしか生まれないとろっとした蜂蜜色の瞳の子供。
ちょうど、アンジェラが目を覚ました。
私が抱き方を変えてみんなに見えるように瞳を見せる。
すると、膝まづく侍従たち。
「アンナリーゼ様、おめでとうございます!
アンジェラ様、おめでとうございます!」
私は、ここに集まった侍従たちが祝ってくれたのがとても嬉しくて、ニッコリ笑う。
「ありがとう!!
これから、母娘ともども、よろしくお願いね!!」
かしこまりましたと返してくれる。
一人の退職者も出ずに済んだことをまずは、私は喜んだ。
「それから、今日、女の子が生まれたことは内密にお願いします。
名前は、ジョーと呼んであげてほしいの。
そうね……この子の10歳の誕生日まで」
私は、その場に立つとアンジェラを抱いたまま侍従たちに頭を下げる。
「ローズディアにも知っている人はいると思うの。
ハニーローズのことを。
だから、この子が力をつけるまでは、けして女の子だと気づかれては困るのよ」
「かしこまりました。
ジョー様とお呼びしましょう。
そうすると、男の子として育てるということですか?」
「そうする予定。
私でも教えられることもあるし、お勉強は……私が苦手だから、セバスや
ニコライにパルマが見てくれるでしょ?
女性としての礼儀作法については、同時に教えるわ。
お母様にも相談しながら、育てたいと思っているの。
だから、皆に手伝ってほしいのよ……
私とジョーのために手を貸してください!!」
アンジェラのことは、屋敷全体の秘密となった。
これからが、大変なのだ。
でも、皆が協力してくれると言ってくれるので、私は、安心して子育てができる。
それからは、私の部屋に侍女やメイドが1人付き添うことになった。
ジョーのことを手伝うためにだ。
協力体制をディルが敷いてくれたおかげで、私は、苦労することなく子育てができそうだ。
乳母に任せればいいのだろうけど、1日1日成長するこの子を自分で見ていられることがとても嬉しかった。
みんなに可愛い可愛いと言われ育つこの子は、本当にかわいく育っていくだろう。
将来は、ものすごく美人さんだね!なんてメイドたちが言っているのを聞いたこともあるくらいだ。
そんなメイドたちの話を聞いては、本当に美人さんになるんだからね!と心の中で私は、自慢するのであった。
「戻ってこないんでしょ?」
ディルに対して私が発した言葉に、侍従たちが驚く。
「どうしたの……?」
「いえ、何故わかったのかと……
大変申しにくいのですが、旦那様は、あちらでお子様と過ごすと……」
申し訳なさげにディルは言ってくれるが、私にしては予定通りに事が進んでしまっただけの話だ。
といっても、寂しさで泣いてしまっていたのだが……
「いいのよ!
気にしないで!
私には、この子がいるから……」
眠ってしまった子の頬を撫でるとむにゃむにゃっとしている。
それが、可愛くて仕方がない。
「そうだ、名前なんだけど……」
静まり返った部屋に、私の明るすぎる声だけが響く。
「アンジェラって名前にしようと思うのだけど……どうかしら?
ジョージア様もアンジェラがいいとおっしゃてたし」
「それは、かまいませんが……アンナリーゼ様は、その……」
心配してくれるディルやデリア、侍従たちに私はニッコリ笑う。
「うん。ディル、心配してくれてありがとう。
デリアや他の子たちもありがとう。
でも、心配はいらないよ!
それに、あなたたちも私がちゃんと養うから、大丈夫!
それでも心配なら、屋敷は辞めてもらっても構わないよ」
皆、それぞれの顔を見比べている。
心配なのはわかる。
生活がかかっているからだ。
仕送りしている子もいるだろう……
だから、私は、この屋敷に縛らないと宣言した。
しかし、デリアはいち早く申出てくれる。
「私デリアは、あのときより、アンナリーゼ様と共にあることを誓っております。
アンナリーゼ様が、手放すと言っても私は、あなた様の側を離れるわけには
いきません。
あなた様こそが、私の主であり、親であり、私の全てです。
アメジストに誓い、私は、あなた様以外と共に歩む未来などありません!」
「デリア……」
「それに一緒にアンジェラ様を育てるって約束したじゃありませんか?」
「ありがとう……」
私は、デリアの優しさに涙が溢れてくる。
「泣かないでください。
アンジェラ様が起きてしまいますよ!」
デリアは、私に駆け寄り涙を拭ってくれる。
「アンナリーゼ様……
私は、筆頭執事として、あなた様にアンバー家を託そうと思っております。
どうか、私達を導きください」
ディルが、私に膝をおる。
すると、そこにいた侍従が、すべて膝を折ってくれた。
私は、その姿に驚くばかりである。
「まずは、お子様のお名前ですね。
アンジェラ様でよろしいですか?
アンバー家の筆頭執事に代々伝わる手記に記さねばなりません」
「うん。
アンジェラ・ジョー・アンバーがこの子の名前。
そして、この子が、ハニーローズよ!」
ディルは、顔を上げ驚いている。
ここ何百年と生まれてこなかった女王の生まれ変わり。
蜂蜜色の瞳を持つ女の子の誕生に、ディルは、声を無くした。
「あの……アンナリーゼ様、お話する許可を……」
「どうぞ!」
「ハニーローズとは、なんでしょうか?」
私が話始めようとしたとき、ディルがポツポツと話始める。
ハニーローズとは、と……
その場にいた侍従は、驚き、へたり込んでしまったものもいた。
証拠となるのは、性別と瞳の色だ。
アンバー家にしか生まれないとろっとした蜂蜜色の瞳の子供。
ちょうど、アンジェラが目を覚ました。
私が抱き方を変えてみんなに見えるように瞳を見せる。
すると、膝まづく侍従たち。
「アンナリーゼ様、おめでとうございます!
アンジェラ様、おめでとうございます!」
私は、ここに集まった侍従たちが祝ってくれたのがとても嬉しくて、ニッコリ笑う。
「ありがとう!!
これから、母娘ともども、よろしくお願いね!!」
かしこまりましたと返してくれる。
一人の退職者も出ずに済んだことをまずは、私は喜んだ。
「それから、今日、女の子が生まれたことは内密にお願いします。
名前は、ジョーと呼んであげてほしいの。
そうね……この子の10歳の誕生日まで」
私は、その場に立つとアンジェラを抱いたまま侍従たちに頭を下げる。
「ローズディアにも知っている人はいると思うの。
ハニーローズのことを。
だから、この子が力をつけるまでは、けして女の子だと気づかれては困るのよ」
「かしこまりました。
ジョー様とお呼びしましょう。
そうすると、男の子として育てるということですか?」
「そうする予定。
私でも教えられることもあるし、お勉強は……私が苦手だから、セバスや
ニコライにパルマが見てくれるでしょ?
女性としての礼儀作法については、同時に教えるわ。
お母様にも相談しながら、育てたいと思っているの。
だから、皆に手伝ってほしいのよ……
私とジョーのために手を貸してください!!」
アンジェラのことは、屋敷全体の秘密となった。
これからが、大変なのだ。
でも、皆が協力してくれると言ってくれるので、私は、安心して子育てができる。
それからは、私の部屋に侍女やメイドが1人付き添うことになった。
ジョーのことを手伝うためにだ。
協力体制をディルが敷いてくれたおかげで、私は、苦労することなく子育てができそうだ。
乳母に任せればいいのだろうけど、1日1日成長するこの子を自分で見ていられることがとても嬉しかった。
みんなに可愛い可愛いと言われ育つこの子は、本当にかわいく育っていくだろう。
将来は、ものすごく美人さんだね!なんてメイドたちが言っているのを聞いたこともあるくらいだ。
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