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もうすぐだね?

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 じぃーっとジョージアは、私の横顔を見ている。

 暇なのか……

 いや、決して暇じゃない!

 でも、たまには、こうしてのんびり横顔を眺められているのもいいものだと思ってしまうくらい、私は真剣に領地の管理本を読んでいた。



「ジョージア様、そんなに見つめられると穴があきます」
「そんなわけがないだろう?
 それにしたって、アンナに穴があくのは困る……」



 冗談めかして私に話しかけてくる。
 朝からずっと執務をしていたので、集中力がきれたのだろうか?



「管理本は、そんなに興味がそそるもの?」
「はい。おもしろいですよ?
 お嫌いですか?」


 私は、ジョージアにチラリとも目をくれずにページを巡っている。
 管理本になりたいとか羨ましいとかジョージアがブツブツ言っているのが聞こえてくる。
 休憩がてら、構ってほしいようだ。




「私、今、どこにも行けないから、こうやって読んでると、旅に出ているみたいで、
 管理本を読むだけで、ワクワクしてしまいます!
 まだ、領地に行ったことないんですよね……
 ジョージア様の話は聞きますけど、やっぱり、自分の足で見て回りたいです!!」



 今、臨月だ。
 そのため、どこにも行けず、日長1日ずっと部屋に篭っている。
 その前からずっとジョージアにとめられていたので、ずっと屋敷に籠っている。



 私にとってかなりの苦痛だ。
 何より外で飛び跳ねているような令嬢だったのだから……





「そういえば、名前はどうする?」



 ジョージアの問いに私は、小首をかしげ、変ですね?という雰囲気を出す。



「名前は、もう決めてますよ!」
「えっ?」
「生まれた日に教えてさしあげます!」
「もう決めたの?」
「ダメでしたか?」
「いや、いいけど……」



 なんだか、とても残念そうにしているジョージア。
 もしかして、考えてくれていたのだろうか?



「ジョージア様も名前、考えてくれていたんですか?」
「も……もちろん!」



 何故か、ジョージアは、焦っているような雰囲気だが……大丈夫だろうか?



「どんな名前ですか?」
「うーん、男の子だったら、ジョアン。
 女の子だったら、アンジェラ!」



 アンジェラ?
 ジョージア様は、この子の名前、そのように考えていたの?
 私は、ジョージアの提案に大げさに驚いてあげる。



「うわぁー!運命的ですね!」
「何が?」



 私の中では完結している話なので、大げさに運命なんて騒ぐ私にわけもわからないジョージアは、問うてくる。



「アンジェラって名前!」
「もしかして、アンジェラ?」
「ふふふ、私、アンジェラって名前に決めてたんです!」



 私は優しく笑い、お腹をさする。



「おぉ?動いた!」
「アンジェラが、気に入ったのかな?」




 お腹に向かって話しかけている私は、ジョージアにとって可愛いらしい。
 でも、すっかりお母さんの顔をしているとも言ってくれる。
 それが、何より嬉しい。




「どれどれ?
 触ると蹴飛ばしているのか叩いているのか、ぼんぼんと振動がくるね?」
「でしょ?
 あぁー生きてるって感じしますね……
 それにしても不思議ですね!」



 ふふっと笑うとジョージアも微笑み返してくれる。



「アンジェラは、どんな風に育てるの?」
「うーん、あんまり考えてないですけど……
 ジョージア様みたいに頭のいい子だといいですね……」
「俺は、アンナみたいなお転婆も可愛いと思うよ。
 なぁ、アンジェラ?
 お母さんみたいに飛び跳ねたり木に登ったりお転婆になるんだよ!」



 お腹を触って話しかけるジョージアは愛おしい。
 思わず、私は、ジョージアの頭を自分に引き寄せて撫で始める。
 ジョージアも私の肩に頭をのせて甘えてくれる。



「ジョージア様」
「なんだい?」
「私、幸せですよ!」
「あぁ、俺も幸せだよ……
 アンナがいてくれて、アンジェラがいてくれれば……他は何もいらないよ」



 そんな風に言って私に甘えてくる。



「あらあら、そんなこと言ってると、第二夫人に叱られますよ!」
「うぅ……言わないで……
 アンナといるときは、アンナのことだけを考えていたい!」
「ソフィアといるときは、ソフィアのことだけ?」
「いや、ソフィアといてもアンナのことばかり……」
「それで、ソフィアに叱られるんですか……?」



 あはは……と空笑いのジョージア。



 何が、どうなって、この幸せな時間は、消えてなくなるのだろう……
 考えても仕方がないが……それでも、考えずにはいられない。



「アンナ?
 難しい顔してるよ?
 ほら、アンジェラも、ママ笑って!って言ってることだし、笑って」



 笑わずにはいられない。
 愛しい旦那様と子供のお願いなのだから。



 ジョージアにニッコリと笑顔を向けると、体勢を変えて私にキスをする。



「こんな日が、ずっと、続くといいな」
「そうですね……」



 私は、ジョージアに甘えるようジョージアの背中に腕を回す。
 大きくなったお腹があるのでギュっとはできないが、ジョージアはちゃんと支えてくれる。



「お?
 今、蹴られた……
 あーんじぇーらー!!」



 ジョージアが、お腹を撫で始める。
 すると、それに応えるように、暴れはじめる。



「いたたた……
 あんまり、暴れないで……」
「痛いの?
 ほらほら、アンジェラ、お母さんが痛いって言ってるから優しくね!」




 そのやり取りも、思わずふふっと笑ってしまう。



「でもさ、さっきから、ずっと、アンジェラって言ってるけど……
 男の子って可能性はないの?」
「さぁ?生まれないとわかりませんけど、女の子のような気がします」
「このあばれ様……
 女の子だとアンナそっくりになりそうだね!
 可愛いアンナが二人か!
 いいなぁー可愛いアンナが二人」
「なんか、それ、嬉しいですか?」
「嬉しいに決まってるよ!
 アンナが二人だよ?
 二倍嬉しいってことでしょ?
 大きくなったら……変なのがついてこないか心配。
 アンナの場合は、ヘンリー殿が側にいたからよかったけど……」
「私、ジョージア様に似ると思うんですよね。
 そうしたら、めっちゃくちゃ美人……
 心配ですね……」


 二人でまだ見ぬ我が子の心配をするのである。
 今のところ、変なのが周りをうろついている『予知夢』は見ていないから、大丈夫だけど……


 きっと、素敵な女の子になりますよ!
 私は心の中でアンジェラに太鼓判を押しておく。
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