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暇なら、作ってみたら?

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「ニコライ、1つ聞いてみたいことがあるの」
「なんでしょうか?
 私で分かりますか?」
「うん、たぶん……」


 私からの相談に気持ち緊張気味のニコライ。
 私は、ニッコリ笑うと、さらに緊張が増す……
 ん?おかしいな……と、心の中では、不思議に思った。


「あのね、藤カゴって知ってる?
 カバンとか、カゴにしたりできるらしいのだけど……」
「あぁ、なんだ……」


 ものすごく、安堵したような顔になるニコライ。


「知ってますよ!
 うちもたまに扱います。
 例えば、屑籠入れとか……職人なら椅子にしたりと結構需要もあるんですよ!」


 ニコライに聞いてよかった。
 モノを知っていれば、話は早いからだ。


「それって、私でも作れたりするかしら?」
「なぜです?
 貴族夫人が触るようなものではないと思うのですけど……」
「興味があって……」
「それだけですか?」



 なかなか鋭い……



「今ね、藤つるっていうの?
 大量にアンバー領にあるらしいのよ。
 捨てるにはもったいないし……
 何かお金になったりすればいいなぁーって思って……」
「なるほど、それでカゴやカバンなんですね。
 夏になると涼し気に見えるので人気なんです!
 女性の手仕事として作っている人もいるので、手配してみましょうか?」



 ニコライのその言葉を私は、待っていた。
 しかし、デリアの視線が……痛い。





「アンナ?」



 扉の向こうからジョージアの声がする。



「どうぞぉ!」



 入室許可をだすと客間にジョージアが入ってくる。
 それをニコライとティアは、立って迎え入れている。


「あぁ、そのままで大丈夫だよ!」
「ご無沙汰してます、ジョージア様」
「あぁ、ニコライは元気にしていたかい?」
「アンナリーゼ様のおかげで、休む暇もないくらい楽しく働かせていただいてます!」



 その言葉を受け、ジョージアにジロッと私は見られてしまった。



「誤解を招く言い方でしたね……
 すみません。
 休みは、きちんといただいてますから大丈夫ですよ!」
「なら、よかった。
 それで、そちらのお嬢さんは?
 アンナの友人かなぁ?」
「え?は……はい!
 ティアと申します!」



 ティアと聞いて、ジョージアはピンときたようだ。
 さすが、だと思う。



「この懐中時計の装飾は君がしてくれたんだね。
 こんな素晴らしいものをありがとう!」



 ことっと置いた懐中時計。
 久しぶりに見たそれは、いまだとても綺麗だ。



「とても、大切にされているのですね!」
「当たり前だよ!
 アンナからの贈り物だからね!」



 そんなふうに言ってもらえると、贈ってよかったと思う。
 作ったティアも嬉しいのか、ニコライに微笑んでいる。



「それで?アンナは、ニコライに藤カゴのこときいたの?」
「はい、それを聞いていたところです」
「職人を手配はできるのですが、アンナリーゼ様が作りたいと申されて……」



 ニコライもデリアもジョージアが私の奇行を止めてくれると思って、言ったはずだ。
必ず止めてくれると、祈るような目でジョージアを見ている。




「暇なら、作ってみたら?
 アンナなら、手先が器用だから上手に作れるんじゃない?」
「ですよね!
 ニコライ、職人の手配して!」



 ニッコリ笑って、ニコライにお願いすると、ニコライもデリアも盛大にため息をつくのであった。



「デリア、大丈夫よ!
 みんなには、作れなんて言わないから!
 あくまで、私の趣味ってことで!ね?ねぇ?いいでしょ?」
「かしこまりました……」



 不服そうに返事をしてくれるデリア。


 その話が終わったことでニコライとティアは仲良く帰っていった。





 後日、ニコライは、職人と材料を手配してくれ、私の目の前には、藤ツルたちがやってくる。
 職人に言われた通り作ると、意外と上手にできた。



「ジョージア様!
 初めてにしては、上手じゃないですか?」



 わざわざ執務をしているジョージアへ見せに行くと、上手くできたじゃないかって喜んでくれた。
 これは、なかなか、はまりそうだ。


 他にもカバンの編み方とか、カゴの作り方とかを教えてもらう。
 職人が帰ってからも、ボツボツと作っていると7つくらい簡単な屑カゴができた。


 触診にきたヨハンがそれを見つけ、帰り際に、あげるとも言っていないのに3つも勝手にもって帰ってしまった。


 手本と手順書を見ながら作ったカゴバックというものは、意外とちゃんとできた。
 ところどころ大きな穴が開いているが……これもご愛敬だろう。




「ジョージア様?」



 チラッと執務室を覗くとまた難しい顔をしている。
 私が、扉から顔を出したことで、取り繕った顔をになってしまった。
 何かあったのだろうか?


「どうか、されましたか?」
「いや、たいしたことじゃないよ?
 それより、どうしたの?」



 私の登場のタイミングが悪かったのだろうか?
 ソフィアからの手紙のような気がする。



 でも、気づかないふりをして明るく振る舞う。



「じゃーん!
 できました!」
「わっ!すごい上手だね!」
「でっしょー!!」



 私は、得意げに胸を張る。
 ついでに、お腹も……出る。



 ジョージアは、よくできたカゴバックを褒めてくれた。
 これなら、領地でもお小遣い稼ぎにできるかもしれないということで、募集をかけれそうだと笑っている。



「この説明書もわかりやすいので、うつしてって……識字率が、低いのでしたか……」
「そうだね……
 それも、今後の課題だね」



 はぁ、と大きくため息をつくジョージア。



「ため息をつくと幸せが逃げるそうですよ!
 ほら、ジョージア様、早く吸ってください!!
 すぅすぅ!っと」



 冗談半分でいうと、おかしそうにジョージアは笑う。



「アンナは、俺を笑わせるのは、天才的だね!
 可愛いアンナさん、こっちに来て」



 言われるがまま、ジョージアが座っている上に腰掛ける。



「お腹、大きくなってきたね。
 もぅ、たまに蹴ったりとかわかるの?」
「まだまだですよ!
 あと5ヶ月近くありますから!」



 私のお腹をさすっているジョージア。
 愛おしそうにしてくれるのが、たまらなく嬉しい。
 なので、私もジョージアを撫でる。



「アンナは、俺の髪を撫でるのが好きなの?」
「好きですよ!
 ジョージア様本体も好きですけど……」



 お腹を撫でていた手が、私の顎にかかる。
 目をつむると、キスだ。
 唇が重なったら、どっとジョージアの体温が流れてきたのかと思うくらい熱くなった。



 ジョージア様、熱くない?



 ストップというかのようにジョージアから離れる。
 名残惜しそうにこちらを見ているのだが、先ほどは気づかなかったが顔がほんのり赤いように思う。



「ジョージア様、体調悪いの?」
「そんなこと、ないと思うけど……」
「ディル!体温計持ってきて!
 ジョージア様、とっても熱かった!」



 そこからは、慌ただしく過ぎる。
 ディルによって熱を測れば、39度の熱があり、ヨハンによって診断は、風邪だった。
 季節の変わり目で、引いたのであろう。
 あと、領地運営も頑張っていることだし、ソフィアとの結婚式やなんやかんやで忙しかった。


 疲れが出てきたのではないかと思える。



「今日の晩御飯は、脂っこいものではなく、パンがゆとかそういう消化のいいものを
 食べさせてあげて!」



 ちなみに、ジョージアは隔離され、私は、ジョージアの部屋に近づくことさえ許されなかった。
 妊婦は、体の免疫が落ちるから、風邪なんてうつったら大変らしい。


 さっき、キスしちゃったんだけどな……そんなことを思いながら、私は、ジョージアが復活する3日間、部屋に大人しくカゴバックを編むのであった。
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