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もぅ、配りますよ!

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「ジョージア様って、マリッジブルーですか?」
「マリッジブルーって、マリッジブルー?」
「そうです!」
「それって、女性がなるものじゃないの?
 それに、それは、奥さんが言うものなの?」



 そういって、苦笑いを私に向けるジョージア。
 出先のカフェでのんびり過ごしているところで、いきなり旦那に「マリッジブルーですか?」はないだろう。



「その考え方は、おかしいです!
 あるらしいですよ!
 男性でもマリッジブルー!
 だって、他に誰も言ってくれないでしょ?
 私が1番長く一緒にいるから……」



 私が、ニコニコと笑うと、ジョージはさらに苦笑いがいたについてくる。




「私としては、嬉しい反応ですけどね!」
「なんで?」
「ソフィアと結婚できるんだ!わーいって言われるよりは、
 ブルーになってくれている方が、奥さんとしては、いいわけですよ!
 ざまぁーみろ!ってね!」
「アンナって、たまに、言葉遣い悪いよね……」



 ジョージアに指摘され、考える。
 うーん、うーん……思い当たることは、たくさんある。



「多分、小さい頃、街で男の子たちと遊んでいたからじゃないですかね?」
「そんなこともしてたの?」
「はい!いつも、ハリーがついてきてくれていました!!」



 ハハハ……と、空笑いするジョージア。



「マリッジブルーは、直さなくていいですからね!
 どんどん、ブルーになってください!
 でも、ため息つかれると、気になるので、そこだけ控えてくださいね!」



 ニコニコと話を終えた頃には、すっかり机の上のデザートはなくなっていたし、飲み物もなくなっていた。



「そろそろ、行きますか?」



 お勘定をしてもらい、カフェを出る。



「ケーキ、おいしかったね!
 あんまり甘くないから、ジョージア様も食べられそう!」
「そうだな、あのシフォンなら食べられそうだ。
 また、食べにこよう!」
「約束ですかね?」
「あぁ、必ずまた食べに来よう!」



 手を繋いで、2人また歩き始める。



「次は、どこにいく?」
「次は……マーラ商会!」
「何を買うんだい?」
「アメジストのピアスです」
「また、アンナの信者かい?」
「信者……?」



 首をかしげてジョージアを見上げると、困ったような顔をして見下ろしてくる。




「アメジストを持ってる人たちって、アンナのことを崇拝しているだろ?」
「あぁ……
 なるほど……
 でも、別に崇拝はされてませんよ?
 邪険に扱われてますもん!
 お兄様とか、殿下とか、ウィルとか……!」



 信じてくれていないようだが……
 別に神格化されているわけでもない。
 ただ、最初にウィルたちにお礼として渡したことから始まったのだ。
 もぅ、どうせなら、味方認定した人に配ってしまおうと思う。



「それに、ジョージア様は、何か勘違いしていると思うんですけど!
 元々は、私の用事に付き合ってくれたウィル、セバス、ナタリーへの
 お礼ですからね!
 皆が勝手に下賜品だぁーって騒いでるだけです!」
「そうなの?」
「そうですよ!
 何故か欲しがってくれるので、折をみて贈っているだけです。
 結婚祝いとか、何かお祝いごとと一緒に!」



 絶対信じてくれていない目を私に向けられても、正直困る。
 本当のことなのだから……



「ジョージア様も欲しいのですか?」
「いや、俺をイメージしてくれたブルーダイヤの方が好きだからいい」
「ジョージア様には、青が似合いますからね!」
「黒もどうだろう……?」
「確かに、イイですけど、私のイメージとは違うのですよ!
 お気に召さないですか?」
「いや、アンナが言うなら、青が1番合う色なのだろう」



 満足そうにしているジョージア。



「多分、私と並ぶって条件がつくのです。
 他の人と並ぶときは、青は着ないでほしいですね……」



 私は、ソフィアの結婚式を思ってしまう。
 実際どんな衣装で、式をするのか、わからない。
 でも、その時に青い衣装は、纏ってほしくないな……と、わがままにも思ってしまう。



「アンナの隣以外では、青は纏わないよ!」



 私の気持ちを察してか、ジョージアが言ってくれる言葉は、とても嬉しかった。
 答える代わりに、笑顔で応えておく。




 マーラ商会は、目の前だった。




「こんにちは!
 ニコライいますか?」
「これは、アンバー公爵様とご婦人様。
 どうぞ、こちらに」



 初めて来た日以来2回目だが、顔バレしてしまったようだ。
 応接室へ案内された。
 それも、店の中で最高級の応接室だ。


 座っているとすぐにニコライがやってくる。
 事情を説明して、アメジストのピアスを注文する。



「ニコライやティアも欲しいなら、言ってちょうだい!
 もぅ、配りますよ!
 信用のおける友人には!」
「私もいただけるのですか?
 ありがとうございます!」
「ただし、裏切らないでね!」



 なんて、冗談で言ったら、隣のジョージアから滅相もないことが発せられる。



「裏切ったら、地の果てでも追いかけまわされるぞ!」
「ホントですか?気をつけます!」
「どういうことよ!」



 応接室は、ジョージアとニコライの笑い声が響いたのである。



「あと、赤ちゃん用のベッドとか色々手配もお願いしたいのだけど、
 初めてのことで、何がいるかわからないの。
 詳しい人に聞いて、揃えてくれる?」
「アンナリーゼ様は、乳母は雇わないの?」
「うん。そのつもり!」



 チラッとジョージアの方を見てから、私に視線を戻したニコライ。



「もしかして、ジョージア様が手配済み?」
「あ……」
「ソフィアの分ね!」
「あの……その……ていうか、何故知っている?」
「どこからでも、情報提供者はいますから!」



 口論が始まるのかと、ニコライはヒヤヒヤしていたが、口論なんてしない。



「あの……アンナリーゼ様、いかがいたしましょうか?」
「ん?ジョージア様が頼んだ分は、そのまま手配してくれる?
 私の分は、別で手配して!
 納品は、面倒だったら同じ日で構わないわ!」
「いえ、我が家は、アンナリーゼ様あってのことですので、
 まずは、アンナリーゼ様の分を納品させていただきます。
 店主にもその話は、させていただきます」




 商人らしい顔で、私に向かう。
 私は、ニコライを見ながらニヤッと笑ってしまう。




「ニコライ、成長したわね!
 元々、商売気があっていいと思っていたけど……
 ますます、将来が楽しみだわ!!」



 よくわからないが、ほめられたのでお礼を言ってくれるニコライ。



「ジョージア様も上客ではございますが、アンナリーゼ様は、我が商会の大取引先。
 この方をないがしろにはできませんので、ご了承ください」
「アンナは、いったい何をしているのだい?」
「何も?
 ねぇ?ニコライ?」
「はい。
 ただ、アンナリーゼ様あっての私でもあるので、優先順位を僭越ながら
 つけさせていただきました……
 申し訳ございません」



 謝る必要はないよと、ジョージアはニコライに話している。



 これで、出産前には、たくさんの品物が、ニコライによって手配されるだろう。




「春の出産なのだけど、少し前に持ってきてもらえる?
 必要なものの確認もしたいから!」
「かしこまりました!
 商品が集まり次第、お屋敷へお持ちさせていただきます!」




 ありがとうと、商談の席を立つ私。




「わが家へ帰りましょうか?
 旦那様」



 手を差し伸べると、ジョージアは手を取ってくれ、また二人、屋敷までゆっくり散策しながら帰るのであった。
 もちろん、クマのぬいぐるみも一緒に。
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