ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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夜会での出来事

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 今晩は、公世子主催の夜会だ。
 公世子のお気に入りのジョージアが呼ばれている以上、公爵夫人となったばかりの私は行かないわけにはいかなかった。
 無理はしないとジョージアや侍従たちに約束をしたうえで、私も夜会に行くことになった。


「公世子様、ご無沙汰しております」
「アンナリーゼか……
 そなた、出歩いて大丈夫なのか?」
「はい、今日を最後にしばらくは、社交界もお休みです」


 ニッコリ笑うと公世子はねぎらってくれる。


 ジョージアにエスコートをされていたのだが、公世子の側にいた方がいいと判断したためジョージアをその場に残し壁際に佇んでいた。




 柱によっかかっていたら後ろから声が聞こえた。



「よっ!姫さん」
「ウィル?今日は……」
「今日は、警備の仕事」
「お勤めご苦労様です!」



 柱の向こうで笑う声が聞こえた。


「姫さんから、お勤めご苦労様ですなんて聞けるなんて思わなかった。
 ん?なんかだるそう?」
「えぇ……ちょっと立っているのがつらいかな?」
「ちょっと待ってろ!」



 夜会に来てからずっと立っていたので、だんだんだるくなってきていた。
 しばらく柱によっかかって、ダラッとしているとウィルが戻ってきたらしい。


「ほら、椅子持ってきたから座ってろ」
「ありがとう……」


 しばらく沈黙が流れる。


「姫さんさ、体調悪いのって、子供か?」


 なんでわかるのだろう……
 ウィルは、私のことは不思議となんでもわかってしまう。


「そうなの。
 来年の春に生まれるのよ!」
「そうか……
 元気な子が生まれるといいな……」


 そうね……私の返事の後は、また、沈黙が流れる。




「ジョージア様が、姫さんのところに戻ってくるまで一緒にいてやるよ。
 体、思うように動かせないだろうから、危ないだろ?」
「ふふ、ありがとう!」
「いい顔になったよな……姫さん。
 結婚式の日よりずっといい顔になった!」



 そうかしら……?
 顔をむにむにとしているところだ。



「百面相してら!」



 そういって、ウィルは笑い始める。


「今度、セバスとニコライを呼んでお茶会するんだけど、
 ウィルも非番だったらきてよ!
 日付は……」
「いいなー姫さんのお茶会、俺もいきてぇー!
 でも、俺、明後日から遠方で、初めて指揮なんだよなぁ……
 しばらく、帰ってこれない……」
「遠方って、帝国との小競り合いに行くの?」
「そう、そんなとこ
 よく知ってるなぁ?」
「うん。
 公世子からジョージア様が聞いてきていたからね。
 そうか……無理はしないで、元気に帰ってきてね!!」


 おう!と、ウィルは答えてくれる。


 心配だが、近衛にいる以上、こういう争いごとに巻き込まれるのは仕方がない。
 それが、ウィルの仕事なのだから……
 無事に帰ってきてくれることを願うばかりだ……



「そういえばさ、セバスが最近焦ってるんだよな……
 お茶会開くなら、その辺も聞いてくれると助かるんだけど?」
「わかった!
 私で力になれることなら、なんでもするわ!
 公爵夫人って、窮屈だけど、権力は……あんまりないわね……
 お話を聞くくらいなら、いくらでもできるから!
 私も相談があるから、ちょうどいいかな?」


 ぼぉーっと、会場全体を眺めている。
 ジョージアの周りは、女性が……多い。
 また、ベタベタ触られている!と見ていたら、さりげなく、ご遠慮願っているようだ。
 偉いぞ!ジョージア様!なんて、私が心の中で呟いているのは、聞こえないだろう。


「姫さんがさ、セバスに相談って珍しいな?」
「うん。
 今ね、エレーナの弟を預かっていて……
 私の配下になりたいとか……なんとか」
「それで、困っているって?
 結構な話じゃないか!」


 くっくっと笑い始める。


「あっ!
 そうそう、エリックを紹介してくれて本当にありがとう。
 まだまだ、粗削りだけど、きっといい近衛になるかなって感じ。
 俺とも相性いいみたいだしな……」
「それは、よかった!
 見た感じ、ウィルといいコンビになるような予感がしたんだよね!」
「今回の遠征には、連れていけいないけどさ、近いうちに経験積ませるよ。
 俺も、姫さんの呼び出し、いつあるかわからないからな……」


 しみじみ、私の呼び出し云々言っているが……本当に私に引き抜きされてくれるのだろうか?


「まだ、あと、3年くらいは大丈夫だよ!
 しっかり、近衛で暴れておいでよ!!」
「なぁ、そのはっきりした期間ってなんでわかんの?」
「ひーみーつー!」
「いつまで?」


 ウィルの声のトーンが変わった。
 これは、真剣に答えないといけないことだろう。


「私に引き抜きされるまで。
 まだ、ウィルたちを巻き込みたくない!
 って、十分巻き込んでしまっているのかもしれないけど、まだだよ!」
「引き抜きか……
 さっきの3年かな?
 まぁ、それくらいなら、待てそうだ!」
「それまで、五体満足、元気でいてね!!」


 はいはいと冗談ぽく言っているように聞こえるが、きっと、これから3年後に向かって準備をしてくれるのだろう。


「ウィル……」
「なんだ?」
「いつも、ありがとう!」



 なんだ、そんなことかと笑うウィル。


「これからも、よろしく頼むぜ、お姫様!」


 こちらこそというと、嬉しそうにしているのが柱越しだがなんとなくわかる。


 今後は、どんどん手を打っていかないといけないなぁーと、ぼんやり考え始めたのだった。
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