ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

悠月 星花

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結婚式 ~ 大聖堂の扉前 ~

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 そろそろ時間がきたようだ。


「アンナ様、お迎えにあがりました」


 デリアたち侍女が、私を迎えにきてくれる。
 ウエディングドレスの裾をデリアが持ってくれ、カルアがベールを丁寧に持ってきてくれる。


 大きな正面扉の前には、フロックコートを着た私の旦那様が、懐中時計を見ながらそわそわしているのが見える。
 その隣で、緊張の面持ちでいるのは、父だ。
 ジョージアの元まで私のエスコートをしてくれるのだが、なんだかとても緊張している。
 母も隣にいて、声をかけているが、どうも緊張はほぐれないらしい。



「お待たせしました!」



 私が、みんなに向かって声をかけると、それぞれ思い思いの顔を向けてくれる。
 まず、ジョージアは、とても嬉しそうに笑いかけてくれる。
 次に、父は、緊張からか、苦笑いだ。
 最後に、母は、泰然としていて、女王様現在だ。


「綺麗だね……アンナ。
 聖母も聖女も思わず裸足で逃げ出すに違いない!」
「ふふふ……ジョージア様、ありがとう!
 でも、聖母や聖女は、もっと素敵なかたですよ!
 ジョージア様もとっても素敵ですね!」


 ジョージアも柔らかい笑顔を私にくれる。


「アンナのご希望通りかな?」


 茶化すジョージアに、私は自然と微笑んだ。


「もちろん、希望以上です!
 本物の王子様ですね!
 はぁ……いいですね!」


 希望を通り抜けて理想そのものとなっているジョージアに思わず、ため息が出てしまう。

 やっぱり、いいよ!
 フロックコートは、ジョージアにとても似合っていたし、皆が憧れる王子そのものだった。
 熱のこもった称賛に、ジョージアは、少し照れたようだ。



「アンナ様、そろそろベールを……」


 デリアに促され、マリアベールをかけてもらう。
 きちんと、整っているか確認は、母がしてくれた。


「お母様、ありがとう!
 もう一つ、お仕事、お願いね!」


 そういうと、デリアからブーケを渡されている。


「アンナも立派になりましたね。
 あんなにはねっかえりだったのに、とても綺麗になって……」


 母が、言葉を詰まらせる。
 そんな姿は、見たことがなかった。
 だって、いつでも泰然としていて、女王様なんだもの。
 かっこいいお母様しかしらなかったので、少し驚いてしまった。

 父が、そっと母に寄り添っている。


「お母様、まだ、涙は早くないですか?
 抱きしめさせてください!
 お父様も!」


 そういって、寄り添っている両親を抱きしめる。
 やっぱり、両親の側は、ホッとする。
 チラッとジョージアを見たが、なんだか羨ましそうにこちらをみていた。
 ジョージアも緊張しているのだろうか?


 両親を抱きしめたあと、ジョージアに近づく。
 両腕をパッと開いて、はいって恰好をすると、どうするのが正解か分かったようだ。
 抱きしめてくれる。


「ジョージア様も緊張していますか?
 私は、少し緊張しています」
「あぁ、俺も緊張しているかな?
 アンナに抱きしめてもらうと落ち着くな……」


 離れると、少し名残惜しそうにしているが、ちょっと緊張も解けたようだ。




 この大聖堂は、王族の冠婚葬祭で使われる場所である。
 荘厳な印象が、とても素敵で私は、下見に来たときに一目で気に入ったものだ。
 太陽の自然光が入ってステンドグラスもかなり趣があるし、天井が高いのでパイプオルガンの音色は、とても素晴らしい。

 なかなか、この大聖堂で結婚式はできないのだが、そこは、公爵家の力だ。
 二つ返事でこの大聖堂での結婚式が決まった。
 ただ、それを聞きつけた公世子が、招待客に入ることになったのは、秘密である。

 さらに、公世子が招待客になったということで、シルキーまでも招待客に名前を連ねた。
 シルキーの婚約者として、殿下も追加されたのだ。

 数珠繋ぎ方式で、何故か、ローズディアの公もいれば、トワイスの陛下と正妃までだ。
 なんなのだろう……

 それだけ、私達の結婚は、注目度が高いということなのだろうか?



 ベールをつけてからも、ふらふらと歩き回る私をデリアが後ろでさばいてくれている。
 ベールはとても長いので、大変なのだ。


 5歳くらいの男の子と女の子が、それぞれベールボーイ・ベールガールをしてくれるようで先ほどから、うろうろと歩き回っている。

 その姿が、私とハリーの幼い頃に見える。
 あのくらいの頃から一緒にいたのね。
 女の子が、男の子の手を引いて歩いている。



「ジョージア様、あの子たち、可愛いですね?」
「あぁ、可愛いな。
 俺たちにもあんな可愛い子が生まれるといいな?」
「気が早いですよ?
 でも、きっと、ジョージア様に似て、美人ですよ!」
「ふふ、アンナに似て、きっとワンパクかお転婆さんだな?」



 むぅっと私は膨れる。


「いいじゃないか?
 可愛いんだから、アンナは。
 俺の奥さんは、世界で一番素敵で可愛らしい女性だよ。
 そんなアンナに似るんだから、可愛いに決まっているじゃないか?」


 可愛い可愛いと何回も言われるので、照れてしまう。


「あぁ……キスしたいなぁ……
 そんな可愛い顔は、もうちょっとあとか、今晩までおいといて!」
「もぅ!ジョージア様ったら!」


 パシンと腕を軽く叩く。
 それを一部始終見ていたのだろう……


「ジョージア様、今は、ダメですからね!」


 デリアにジョージアは叱られている。




「皆様、大変お待たせいたしました。
 準備が整いましたので、まずは、ジョージア様より入場していただきます。
 そのあと、アンナリーゼ様とご両親の入場です。
 扉から1mほど進んでください。
 そちらで、お母様からブーケをお渡しいただきます。
 そのあとは、お父様とバージンロードを歩いていただき、
 ジョージア様にアンナリーゼ様を託してください」


 式場を仕切っている侍従が、私達の行動の確認をしてくれる。


 いよいよだ。
 1年、苦手な勉強も頑張ってきた。
 公爵夫人として、今日は、第一歩。


 ジョージアの隣に並ぶにふさわしいと言ってもらえるよう、最大限頑張ろうと思う。


「先に行って、待っていてくださいね!」
「あぁ、アンナを待っているよ!」


 ジョージアは、先に大聖堂に入っていく。
 一人で歩くバージンロードは、きっと寂しいんじゃないかと思う。

 でも、次は、私が一緒に歩くからね!

 そんなことを思いながら、大聖堂の大きな扉の前へと進むのであった。
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