133 / 1,510
結婚式 ~ 結婚式直前の控室 ~
しおりを挟む
「綺麗だね……」
涙ながら、鏡越しに私を見ているのは、父である。
「感慨深いよ……ホント、アンナは綺麗だ……」
さっきから、ずっとこの調子だ。
そろそろ、お母様帰ってきてくれないかしら……
母は、義母とおしゃべりに夢中で、しばらく帰ってきていない。
さすがにお父様に優しくしてあげる余裕は、今ないわ……
本日、主役である私。
先日、義母から継承されたアンバーの秘宝を見ている。
ジョージアの瞳を連想させるようなトロッとした蜂蜜のようなそれらは、出番はまだかと問いかけてくるようだった。
アンバーの中には、蜂が入っているものと花が入っているものがある。
アンバー公爵家を象徴するアンバーの秘宝を結婚式では、必ずつけることになるので、机の上に並べているところた。
どれもこれも、大きい……
アンバーは正確にいえば、宝石ではない。
だから、とても軽いので、大ぶりの宝飾品だとしてもそれほどつけていることには気にならないはずだ。
それに秘宝っていうだけあって、アンバーの秘宝は、最高級のアンバーのため太陽の光を浴びると青く光ると義母に教えてもらった。
太陽の光がさんさんと入る大聖堂での結婚式には持って来いなのかもしれない。
いつもはデリアが手伝ってくれるのだが、今日は来客対応に借りだされているため、ここで私を手伝ってくれる人はいない。
父は、見ているだけなのだ。
私は、自分で身につけられるところは、つけることにした。
大振りのピアスをまずつけた。
ネックレスは……ちょっと無理そうなので、母が帰ってくるのを、待つことにした。
髪飾りは一人ではつけられないので、手伝ってもらってすでについている。
手袋の上からブレスレットを両腕につけた。
あとは、ブローチ。
悩んだ末、左腰のドレープの端にアクセントとしてつけてみた。
あのデザイナーの描いた通りの位置だ。
白い花の芯になったかのようで、可愛らしい。
ちなみにこのブローチが、家紋である蜂の入っているアンバーだ。
これでいいかしら?と鏡の前で眺めている。
このウェディングドレス、お金が……だいぶかかっているので、ものすごく着心地がいい。
それに、みんなが褒めてくれるし、私もこのウエディングドレスを着ると『可愛らしい花嫁さん』になっている気持ちで、嬉しいような少し気恥ずかしいような感じだ。
せっかくなので、私は、サムシングフォーにもあやかることにした。
サムシングオールドは、母が父からもらって大事にしていたリボンだ。
髪飾りとは別に結んでもらった。
母にねだると、ちょっと嫌そうだったけど、結婚式だけなら……と、渋々貸してくれたのだ。
リボン1つでもわかるように、母は、本当に父への愛情深く大好きで仲がとってもいい。
サムシングニューは、このドレス。
この日のためだけのものだ。
総レースの柄はもちろん、薔薇である。
ジョージアが、こだわりにこだわった逸品だ。
サムシングボローは、エリザベスが結婚式で使ったグローブ。
エリザベスにも貸してとねだったら、私のを使ってくれるの?とふたつ返事だった。
実は、イリアも私より先に結婚したのだけど、ハリーとのことを考えると……
うん、みなまで言うまい……
エリザベスは、快く貸してくれるって言ったのに、兄が何故か女々しかった。
そのあと、めちゃくちゃエリザベスに叱られていたっけ……
何が、ダメだったのだろうか?
私とエリザベスは、義姉妹であるが、仲の良い友人でもあるのだ。
有無を言わさず、エリザベスは兄をはねのけ貸してくれたのだろう。
我が家の女性陣は、強い傾向があるようだ。
衣装合わせのときに母が預かってきてくれていた。
サムシングブルーは、青薔薇のピアス。
ジョージアの卒業式でもらった想い出深いピアスだ。
新しいのをと言ってくれたが、私は想い出と共に……と言うと、ジョージアの方が、嬉しそうだったのを思い出す。
きっと、ジョージアも、あの卒業式は特別に思ってくれているのだろう。
それが、また、私の恋心をくすぐるようで嬉しい。
なんだかんだといいながら、この1年、ジョージアとは仲良く暮らして来れたと思う。
私、相当、ジョージア様に甘やかられてたのよね……なんて思っていると、やっと母が部屋に戻ってきた。
「お母様、ネックレスつけてくれますか?」
「えぇ……いいわよ!」
ほとんど完成した花嫁衣装の私を見て、母も感激してくれているのだろうか?
「はい、できた!」
「ありがとう!」
少し、親子3人で談笑していると兄とエリザベス、クリスが入ってきた。
クリスは、また、少し大きくなったようだ。
兄に抱かれてスヤスヤと眠っている。
もう、そろそろ時間だと父が結婚式の会場に向かおうとする。
今日は、式場までとジョージアの元までは、父のエスコートだ。
母は、羨ましいそうにしているが……
そこは、娘に「あえて」譲ってほしい。
「お父様、お母様、そしてお兄様……」
呼びかけられた3人は、私の方を注目する。
ふぅ……と、1つ息を吐く。
「お父様、お母様。
今日まで、育ててくれてありがとう。
何より、お父様とお母様の子供として生まれて、私は本当に幸せでした。
まだまだ、至らない娘ですが、これからもどうぞ、ご指導の程よろしくお願いします」
両親は、お互いの顔を見合わせてから、私に微笑んでくれる。
「当たり前でしょ?アンナ」
私も両親にニッコリ笑顔を返す。
「お兄様。
お兄様の妹で、本当によかった。
いつも、いつも支えてくれてありがとう」
兄の目には、涙が浮かんでいる。
「アンナ……」
3人の顔を見て、私は微笑む。
「私、お話した通り、私の人生を進めていきます。
わがままを聞いてくれて、ありがとう!
ただ、あの頃、見た『予知夢』とは、違う出来事もたくさん起こっているの……
だから、私、決して生きることを諦めていないわ!
今まで、こんな私を信じて、導いてくれて、本当にありがとう!」
「そして、エリザベス!
これからも、友人として、義姉として、どうぞよろしくね!
お兄様も、フレイゼンもお願いします!」
「任せておいて!」
もうすっかり侯爵夫人らしく、エリザベスは返事をしてくれる。
「お父様、お母様、お兄様、そして、エリザベス。
本当にありがとう!!」
再度、家族にお礼を言うと、とうとう兄が泣き始めた。
「サシャ、涙はまだ少し早いんじゃない?」
クリスを抱いている兄の代わりにエリザベスが自分のハンカチで兄の涙を拭っていく。
本当にお似合いの夫婦になったなと、私は、嬉しく思うのであった。
涙ながら、鏡越しに私を見ているのは、父である。
「感慨深いよ……ホント、アンナは綺麗だ……」
さっきから、ずっとこの調子だ。
そろそろ、お母様帰ってきてくれないかしら……
母は、義母とおしゃべりに夢中で、しばらく帰ってきていない。
さすがにお父様に優しくしてあげる余裕は、今ないわ……
本日、主役である私。
先日、義母から継承されたアンバーの秘宝を見ている。
ジョージアの瞳を連想させるようなトロッとした蜂蜜のようなそれらは、出番はまだかと問いかけてくるようだった。
アンバーの中には、蜂が入っているものと花が入っているものがある。
アンバー公爵家を象徴するアンバーの秘宝を結婚式では、必ずつけることになるので、机の上に並べているところた。
どれもこれも、大きい……
アンバーは正確にいえば、宝石ではない。
だから、とても軽いので、大ぶりの宝飾品だとしてもそれほどつけていることには気にならないはずだ。
それに秘宝っていうだけあって、アンバーの秘宝は、最高級のアンバーのため太陽の光を浴びると青く光ると義母に教えてもらった。
太陽の光がさんさんと入る大聖堂での結婚式には持って来いなのかもしれない。
いつもはデリアが手伝ってくれるのだが、今日は来客対応に借りだされているため、ここで私を手伝ってくれる人はいない。
父は、見ているだけなのだ。
私は、自分で身につけられるところは、つけることにした。
大振りのピアスをまずつけた。
ネックレスは……ちょっと無理そうなので、母が帰ってくるのを、待つことにした。
髪飾りは一人ではつけられないので、手伝ってもらってすでについている。
手袋の上からブレスレットを両腕につけた。
あとは、ブローチ。
悩んだ末、左腰のドレープの端にアクセントとしてつけてみた。
あのデザイナーの描いた通りの位置だ。
白い花の芯になったかのようで、可愛らしい。
ちなみにこのブローチが、家紋である蜂の入っているアンバーだ。
これでいいかしら?と鏡の前で眺めている。
このウェディングドレス、お金が……だいぶかかっているので、ものすごく着心地がいい。
それに、みんなが褒めてくれるし、私もこのウエディングドレスを着ると『可愛らしい花嫁さん』になっている気持ちで、嬉しいような少し気恥ずかしいような感じだ。
せっかくなので、私は、サムシングフォーにもあやかることにした。
サムシングオールドは、母が父からもらって大事にしていたリボンだ。
髪飾りとは別に結んでもらった。
母にねだると、ちょっと嫌そうだったけど、結婚式だけなら……と、渋々貸してくれたのだ。
リボン1つでもわかるように、母は、本当に父への愛情深く大好きで仲がとってもいい。
サムシングニューは、このドレス。
この日のためだけのものだ。
総レースの柄はもちろん、薔薇である。
ジョージアが、こだわりにこだわった逸品だ。
サムシングボローは、エリザベスが結婚式で使ったグローブ。
エリザベスにも貸してとねだったら、私のを使ってくれるの?とふたつ返事だった。
実は、イリアも私より先に結婚したのだけど、ハリーとのことを考えると……
うん、みなまで言うまい……
エリザベスは、快く貸してくれるって言ったのに、兄が何故か女々しかった。
そのあと、めちゃくちゃエリザベスに叱られていたっけ……
何が、ダメだったのだろうか?
私とエリザベスは、義姉妹であるが、仲の良い友人でもあるのだ。
有無を言わさず、エリザベスは兄をはねのけ貸してくれたのだろう。
我が家の女性陣は、強い傾向があるようだ。
衣装合わせのときに母が預かってきてくれていた。
サムシングブルーは、青薔薇のピアス。
ジョージアの卒業式でもらった想い出深いピアスだ。
新しいのをと言ってくれたが、私は想い出と共に……と言うと、ジョージアの方が、嬉しそうだったのを思い出す。
きっと、ジョージアも、あの卒業式は特別に思ってくれているのだろう。
それが、また、私の恋心をくすぐるようで嬉しい。
なんだかんだといいながら、この1年、ジョージアとは仲良く暮らして来れたと思う。
私、相当、ジョージア様に甘やかられてたのよね……なんて思っていると、やっと母が部屋に戻ってきた。
「お母様、ネックレスつけてくれますか?」
「えぇ……いいわよ!」
ほとんど完成した花嫁衣装の私を見て、母も感激してくれているのだろうか?
「はい、できた!」
「ありがとう!」
少し、親子3人で談笑していると兄とエリザベス、クリスが入ってきた。
クリスは、また、少し大きくなったようだ。
兄に抱かれてスヤスヤと眠っている。
もう、そろそろ時間だと父が結婚式の会場に向かおうとする。
今日は、式場までとジョージアの元までは、父のエスコートだ。
母は、羨ましいそうにしているが……
そこは、娘に「あえて」譲ってほしい。
「お父様、お母様、そしてお兄様……」
呼びかけられた3人は、私の方を注目する。
ふぅ……と、1つ息を吐く。
「お父様、お母様。
今日まで、育ててくれてありがとう。
何より、お父様とお母様の子供として生まれて、私は本当に幸せでした。
まだまだ、至らない娘ですが、これからもどうぞ、ご指導の程よろしくお願いします」
両親は、お互いの顔を見合わせてから、私に微笑んでくれる。
「当たり前でしょ?アンナ」
私も両親にニッコリ笑顔を返す。
「お兄様。
お兄様の妹で、本当によかった。
いつも、いつも支えてくれてありがとう」
兄の目には、涙が浮かんでいる。
「アンナ……」
3人の顔を見て、私は微笑む。
「私、お話した通り、私の人生を進めていきます。
わがままを聞いてくれて、ありがとう!
ただ、あの頃、見た『予知夢』とは、違う出来事もたくさん起こっているの……
だから、私、決して生きることを諦めていないわ!
今まで、こんな私を信じて、導いてくれて、本当にありがとう!」
「そして、エリザベス!
これからも、友人として、義姉として、どうぞよろしくね!
お兄様も、フレイゼンもお願いします!」
「任せておいて!」
もうすっかり侯爵夫人らしく、エリザベスは返事をしてくれる。
「お父様、お母様、お兄様、そして、エリザベス。
本当にありがとう!!」
再度、家族にお礼を言うと、とうとう兄が泣き始めた。
「サシャ、涙はまだ少し早いんじゃない?」
クリスを抱いている兄の代わりにエリザベスが自分のハンカチで兄の涙を拭っていく。
本当にお似合いの夫婦になったなと、私は、嬉しく思うのであった。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる