123 / 1,516
主治医
しおりを挟む
兼ねてから話があがっていた主治医もといヨハン教授をアンバー領に迎え入れる準備が完了したため今日は引っ越しだった。
お供としてニコライが、フレイゼン領からアンバー領へついて行くことになっていた。
ニコライがヨハン教授の引っ越し当たり、荷物を運ぶ手配から新しい研究所兼住居で住めるように品物を入れてくれたりと奔走してくれたのだ。
まったくもって、ありがたい話だ。
アンバー領へ向かう途中、私への挨拶として公都にある屋敷に寄ってくれたのだが、私の引っ越しにくらべ、5倍以上ある荷物に驚いた。
しかも、これでもこちらに持ってくるものを削ったというのだから言葉にならない。
「ヨハン、久しぶりね!」
「アンナリーゼ様もおかわり……なくはないのか?」
ん?何?私変わったの?
「どうしました?」
「あぁ、まぁ、多少大人になったのかな?と……」
そこは返答せず、私は、にこやかにしておくことにした。
なんか、バカにされてるような気がするのよね。
「そういえば、早速、解毒剤の出番があったとかなんとか……
どうでしたか?」
えっと……久しぶりにあったのだから、世間話でもしないのか……
まぁ、研究バカだから、これが世間話なのだろう。
仕方ないのか……
思うところはあったけど……
「解毒剤は、かなり効いたわ!
どれだけ盛られたかはわからないけど、一本では足りなかったみたいだけど、
おかげで、命は取り留められたし、そのあともケロッとしてたかな?」
「そりゃ、致死量盛られたんだろ?
脅しくらいの量なら、1本で十分効きすぎなぐらいだ。
もしかしたら、常日頃から盛られていたのかもしれないな」
「耐性があったから、気づかなかったということかしら?」
「その可能性もある。
なんでも素直にバクバク食べすぎなんですよ、アンナリーゼ様は」
なんだか、それって、拾い食いでもしているかの言い草なのだけど、私、そこまで食い意地は張っていないつもりだ。
今度、デリアに食べる量について聞いてみよう……
「今は、ジョージア様が、食べた物しか食べさせてもらえないから、
毒を盛られる心配もないから大丈夫よ」
「それはそれは、いい旦那に恵まれたもんだ」
話ながら、ヨハンの目が私を上から下まで見ていく。
「一応、寄ったから、軽く健康診断と行こうか?
これでも主治医として呼ばれたからね」
「はぁーい、どうしたらいい?」
「そのままでいい」
そういって、ヨハンは私の首筋の脈を取り始める。
普通、手首だと思うんだけど……
ちょうど、そのときにディルが入ってきた。
「アンナリーゼ様!何を!!」
「ん?ディル?脈取ってるの」
「やかましい!動くな!」
「「すみません」」
私とディルは、ヨハンに怒られて謝る。
「脈拍は正常だし、目もいいし、どっこも悪いところなんてないな!」
「ありがとう!」
「そろそろ、行ってもいいか?」
なんてそっけない主治医だろう……
研究がしたいから、早く新しい研究所へ行きたいと言い始める。
新しい研究所兼住まいには、すでに先にニコライと助手の2人が向かっている。
助手に言わせると、着いた瞬間から研究するに決まっているから、先に整えておかないといけないとかなんとか……
助手は、大事にするべきだと、思う。
でも、こんなヨハンに付き従いたい助手は、たくさんいたようで、1人の古株の助手以外は、3ヶ月に1回交代制となっているそうだ。
「アンバー領の少し奥地にしましたから、薬草とかいろいろ取れるみたいですよ!」
「さすが、アンナリーゼ様!
わかってらっしゃる!」
別にわかりたくはないが、せっかくアンバー領まで来てもらうのだ。
それなりに、ヨハンが住みやすいもとい研究しやすいような環境は整えないといけないと思っていた。
フレイゼンの学都に比べれば、全然満足のいくところではないのかもしれないが、気に入ってくれると私も、用意してくれたニコライやディルも嬉しい。
いつか、ヨハンの研究室も行ってみたいなと思う。
私、アンバー領にすらまだ、行ったことがないのだから……
「なんか、久しぶりに大事にされていない感じだわね……」
「あ、そうだ。解毒剤置いてくわ。あと、これ!」
「何?これ……?」
ガサガサと箱を漁っているヨハン。
もう少し、片づけて入れた方がいいんじゃないかと思う。
「アロマだよ。
東の方では、お香と呼ばれているらしいんだけどね……
アンナリーゼ様、普段は気丈に振る舞えるけど、煮詰まるときも多いだろう?
あった、あった!」
そこに置かれたのは香炉である。
「東の国に伝わるものらしくて、なかなかいい匂いで、気持ちを落ち着かせて、
ゆっくり寝られるようになるって」
確かにこっちに来たときは、たいぶ気持ちも浮いたり沈んだり悩んだりと一人の時間は、百面相をしていたのだ。
ジョージアの花茶のおかげで、少しずつ気持ちも落ち着いて自分らしさを取り戻せている。
「ちょっと、焚いてみようか?」
「えぇ……」
興味で答えたが、確かにふんわり優しい香りが香ってきて気持ちが、ふわっとするようだ。
これ、ジョージア様に入れてもらった花茶と同じ匂いだわ。
「これ、ジャスミン?」
「よく知ってるね」
「ジョージア様が入れてくれた花茶と同じ匂いがしたから……」
「花茶を入れてくれる旦那さんって……相当、仲良くやっているようだね。
これは、置いていくよ。
上手に気分転換に使ってみて!」
ジャスミンのお香を置いてイソイソと出ていくヨハン。
ホクホクとした顔をして、ヨハンは、新天地へと赴いていく。
「なんと申しますか、自由な方ですね……」
「ディル……そうね。
ヨハン教授は、研究が1番ですからね……私は、二の次よ!」
「それでは、困ります!!」
デリアは、怒っているようだが……
ヨハンに普通の医者として求めるほうが難しいだろう。
でも、腕は確かなのだ。
「そういえば、いい匂いがしますね。
優しい匂いだわ!」
お茶を入れる準備のために、席を外していたデリアが、気づいたようだ。
「今、ヨハン教授が香を焚いてくれたの!」
「ジャスミンですね。
ちょっとお疲れ気味のアンナ様にちょうど良かったです。
少し、横になられてはいかがですか?」
デリアやディルから見ると、動き回っていたり、慣れない領地の資料を見たりしている私は、少し疲れているようだ。
すすめられたので、少し横になることにした。
「じゃあ、少し眠るわ」
「「おやすみなさいませ」」
ベッドに横になると、ふわっとジャスミンの香りがしてきて心地よい眠りにいざなわれるのであった。
お供としてニコライが、フレイゼン領からアンバー領へついて行くことになっていた。
ニコライがヨハン教授の引っ越し当たり、荷物を運ぶ手配から新しい研究所兼住居で住めるように品物を入れてくれたりと奔走してくれたのだ。
まったくもって、ありがたい話だ。
アンバー領へ向かう途中、私への挨拶として公都にある屋敷に寄ってくれたのだが、私の引っ越しにくらべ、5倍以上ある荷物に驚いた。
しかも、これでもこちらに持ってくるものを削ったというのだから言葉にならない。
「ヨハン、久しぶりね!」
「アンナリーゼ様もおかわり……なくはないのか?」
ん?何?私変わったの?
「どうしました?」
「あぁ、まぁ、多少大人になったのかな?と……」
そこは返答せず、私は、にこやかにしておくことにした。
なんか、バカにされてるような気がするのよね。
「そういえば、早速、解毒剤の出番があったとかなんとか……
どうでしたか?」
えっと……久しぶりにあったのだから、世間話でもしないのか……
まぁ、研究バカだから、これが世間話なのだろう。
仕方ないのか……
思うところはあったけど……
「解毒剤は、かなり効いたわ!
どれだけ盛られたかはわからないけど、一本では足りなかったみたいだけど、
おかげで、命は取り留められたし、そのあともケロッとしてたかな?」
「そりゃ、致死量盛られたんだろ?
脅しくらいの量なら、1本で十分効きすぎなぐらいだ。
もしかしたら、常日頃から盛られていたのかもしれないな」
「耐性があったから、気づかなかったということかしら?」
「その可能性もある。
なんでも素直にバクバク食べすぎなんですよ、アンナリーゼ様は」
なんだか、それって、拾い食いでもしているかの言い草なのだけど、私、そこまで食い意地は張っていないつもりだ。
今度、デリアに食べる量について聞いてみよう……
「今は、ジョージア様が、食べた物しか食べさせてもらえないから、
毒を盛られる心配もないから大丈夫よ」
「それはそれは、いい旦那に恵まれたもんだ」
話ながら、ヨハンの目が私を上から下まで見ていく。
「一応、寄ったから、軽く健康診断と行こうか?
これでも主治医として呼ばれたからね」
「はぁーい、どうしたらいい?」
「そのままでいい」
そういって、ヨハンは私の首筋の脈を取り始める。
普通、手首だと思うんだけど……
ちょうど、そのときにディルが入ってきた。
「アンナリーゼ様!何を!!」
「ん?ディル?脈取ってるの」
「やかましい!動くな!」
「「すみません」」
私とディルは、ヨハンに怒られて謝る。
「脈拍は正常だし、目もいいし、どっこも悪いところなんてないな!」
「ありがとう!」
「そろそろ、行ってもいいか?」
なんてそっけない主治医だろう……
研究がしたいから、早く新しい研究所へ行きたいと言い始める。
新しい研究所兼住まいには、すでに先にニコライと助手の2人が向かっている。
助手に言わせると、着いた瞬間から研究するに決まっているから、先に整えておかないといけないとかなんとか……
助手は、大事にするべきだと、思う。
でも、こんなヨハンに付き従いたい助手は、たくさんいたようで、1人の古株の助手以外は、3ヶ月に1回交代制となっているそうだ。
「アンバー領の少し奥地にしましたから、薬草とかいろいろ取れるみたいですよ!」
「さすが、アンナリーゼ様!
わかってらっしゃる!」
別にわかりたくはないが、せっかくアンバー領まで来てもらうのだ。
それなりに、ヨハンが住みやすいもとい研究しやすいような環境は整えないといけないと思っていた。
フレイゼンの学都に比べれば、全然満足のいくところではないのかもしれないが、気に入ってくれると私も、用意してくれたニコライやディルも嬉しい。
いつか、ヨハンの研究室も行ってみたいなと思う。
私、アンバー領にすらまだ、行ったことがないのだから……
「なんか、久しぶりに大事にされていない感じだわね……」
「あ、そうだ。解毒剤置いてくわ。あと、これ!」
「何?これ……?」
ガサガサと箱を漁っているヨハン。
もう少し、片づけて入れた方がいいんじゃないかと思う。
「アロマだよ。
東の方では、お香と呼ばれているらしいんだけどね……
アンナリーゼ様、普段は気丈に振る舞えるけど、煮詰まるときも多いだろう?
あった、あった!」
そこに置かれたのは香炉である。
「東の国に伝わるものらしくて、なかなかいい匂いで、気持ちを落ち着かせて、
ゆっくり寝られるようになるって」
確かにこっちに来たときは、たいぶ気持ちも浮いたり沈んだり悩んだりと一人の時間は、百面相をしていたのだ。
ジョージアの花茶のおかげで、少しずつ気持ちも落ち着いて自分らしさを取り戻せている。
「ちょっと、焚いてみようか?」
「えぇ……」
興味で答えたが、確かにふんわり優しい香りが香ってきて気持ちが、ふわっとするようだ。
これ、ジョージア様に入れてもらった花茶と同じ匂いだわ。
「これ、ジャスミン?」
「よく知ってるね」
「ジョージア様が入れてくれた花茶と同じ匂いがしたから……」
「花茶を入れてくれる旦那さんって……相当、仲良くやっているようだね。
これは、置いていくよ。
上手に気分転換に使ってみて!」
ジャスミンのお香を置いてイソイソと出ていくヨハン。
ホクホクとした顔をして、ヨハンは、新天地へと赴いていく。
「なんと申しますか、自由な方ですね……」
「ディル……そうね。
ヨハン教授は、研究が1番ですからね……私は、二の次よ!」
「それでは、困ります!!」
デリアは、怒っているようだが……
ヨハンに普通の医者として求めるほうが難しいだろう。
でも、腕は確かなのだ。
「そういえば、いい匂いがしますね。
優しい匂いだわ!」
お茶を入れる準備のために、席を外していたデリアが、気づいたようだ。
「今、ヨハン教授が香を焚いてくれたの!」
「ジャスミンですね。
ちょっとお疲れ気味のアンナ様にちょうど良かったです。
少し、横になられてはいかがですか?」
デリアやディルから見ると、動き回っていたり、慣れない領地の資料を見たりしている私は、少し疲れているようだ。
すすめられたので、少し横になることにした。
「じゃあ、少し眠るわ」
「「おやすみなさいませ」」
ベッドに横になると、ふわっとジャスミンの香りがしてきて心地よい眠りにいざなわれるのであった。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる