122 / 1,513
アンバーの秘宝
しおりを挟む
アンバー家には、代々伝わる国宝がある。
アンバー女王ことハニーローズがつけていたと言われるアンバーの秘宝だ。
これらは、ローズディアの歴史書にも載っているらしい。
「アンナリーゼ、これをあなたに」
義母が宝石箱をくれる。
その中に入っているのは、アンバーの秘宝たちだった。
アンバーって実際は、宝石とは少し違うため、同じくらいの大きさのサファイアに比べてもかなり軽い。
ジョージアの瞳の色と似たその大きなアンバーには、中に蜂がきれいな状態で入っている。
アンバー家の紋章である蜂はこのアンバーの秘宝からきているのだろう。
こっちのピアスには、花が入っている。
蜂や花たちの時間が、止まっているのだ。
それは、とても綺麗だった。
「どう?気に入ってくれたかしら?」
「はい、お義母様。
とっても素敵ですね!」
「これは、アンバー家公爵夫人に代々渡されるものよ。
結婚式には、この宝飾品をつけるの」
義母に渡されたこれこそが、アンバー公爵夫人として扱われる証なのだ。
夜会に行くときや公式な式典では、必ずアンバーの秘宝をどれか一つでも身につけなくてはならない。
アンバー家の子供であれば、これに準じたアンバーを準備されるが、その中で特別な子供は、その限りではない。
『蜂蜜色の瞳』を持つ子供は、瞳こそが秘宝となるので、わざわざアンバーを身に着ける必要はないのだ。
ジョージアもとろっとした蜂蜜色の瞳をもつため、普段からアンバーは身に着けてはいない。
むしろ、宝石類は、サファイアのピアスと私が贈った懐中時計くらいなのだ。
宝飾品などなくても、人物そのものが宝飾品なのだから……
羨ましい限りだ。
「そうそう、ウエディングドレスのデザインに描きこまれていたけど、
そのまま採用かしら?」
「そうですね……ジョージア様とも話はしたのですが、
しっくりくるので、そうさせてもらおうと思っています」
「確かに、あのフリルの真ん中にこのブローチだと、お花の芯のようで
可愛らしいわよね!」
思い浮かべているのか、義母の口角はあがっている。
「お義母様、この秘宝のお話を聞いてもいいですか?」
「えぇ、いいわよ。
昔話になるのだけど、聞いてくれるかしら?」
「もちろん!」
義母と午後のお茶を一緒に楽しむことになった。
「このアンバーは、ハニーローズの持ち物だったの」
「ハニーローズ?」
「そうよ。元々ローズディア、トワイス、エルドアの3国は1つの国だった。
そのことは知っているかしら?」
「はい、もちろんです」
「初代王は、アンバーと名前をもつ蜂蜜色の瞳の女王だったの。
王配が、彼女のことをハニーローズと呼んでいたのよ!」
うんうん、その辺は、『王配の手記』の記述を夢みたところだった。
「アンバーって、玉じゃないの。
樹脂の化石なのよ」
「軽いですよね。
他の宝石に比べて、ちょっと特殊な気はします」
「そうね。
女王アンバーも元々は王族でありながら、他の王族には、その蜂蜜色の瞳のせいで
軽く扱われていたらしいの。
当時は、蜂蜜色の瞳は、あまりいい意味を持たなかったって手記に書いてあったわ。
どんな意味なのかは、記されていなかったけど……
だから、アンバーは、適齢期がきても降嫁されることもなく、王家に縛られていたと
記録が残っているわ。
だから、彼女は市井に出て民の声を聞き、自分の掌に乗る分だけの人を助けていたのよ」
私の知らない女王アンバーの話だった。
王家の一員でありながらか……
「アンバーが、市井に出て出会ったのが、ウイリアムという青年だった。
このウイリアムという青年こそが、のちの王配なのだけど、
貧乏貴族の嫡男だったそうよ。
お金がない二人は、手を取り合って市井の民を助けていったと言われているわ。
ある日ね、ウイリアムがアンバーにプロポーズをしたの。
そのときに渡したと言われているのが、このアンバーの秘宝。
『君の瞳の色と同じもので、僕に手に入れられるのは、これしかなかった』と
いったらしいわね!
アンバー女王は、このアンバーの秘宝を大切に使っていたと言われているのよ。
二人の仲の良さがわかるわね!」
義母は、うっとり話している。
確かに素敵な話だが……
私は、お金って……大事よねと心の中では頷いている。
「でも、決していい話ばかりではないのよ……
民たちは、王族に強い不満を抱いていた。
生活は困窮していたから……
そこで、旗頭としてアンバーを担ぎ上げ、反旗を翻したのよ。
血の上になった女王でもあるの。
でも、彼女は、女王になったとしても奢ることなく市井に降りていたころと
変わらず、民を愛し、国を愛し、民に愛された女王となったの。
そのころからの言い伝えの流れで、蜂蜜色の瞳を持つ女の子がアンバー家に
生まれると、女王の生まれ変わりとして扱われるのよ。
その子は、ハニーローズと呼ばれるの。
ずいぶん女の子が生まれていないから、古い法律になっているけど、
アンバーの子と言われる蜂蜜色の瞳を持つ子供は、法によって守られているのよ。
ジョージアはともかく、ハニーローズは、とっても優秀らしいわね……
どの世代に生まれたハニーローズも、国の危機を救ったりしているらしいから」
義母の話を聞いて改めて思う。
私の『予知夢』に登場する子供を……
一体どうなっていくのだろうと、不安もある。
でも、このアンバーの秘宝を託された以上、きっちり公爵夫人としての役目は果たさないとと気持ちも引き締まるのだった。
相変わらず神出鬼没なジョージアは、フラッと私たちのお茶会にあらわれた。
「何してたの?」
「お義母様から、アンバーの秘宝をいただいたの」
「あぁ、公爵夫人の証ね」
「ジョージア!あなたが思っているほど、軽いものではないのよ!
私もアンナリーゼもこの秘宝によって、アンバーの一員となるのよ!
お嫁になるのは、本当に大変なんだから!」
ジョージアは、義母の話に肩をすくめるだけである。
実際、経験したが、アンバー公爵家の看板は伊達ではない……
結構、あれやこれやと覚えることも多く大変なのだ……
他にも、ジョージアに群がる令嬢たちを蹴散ら……えーっと……
上手に諦めてもらうこと?は……とかね。
「ジョージアは、分かっているのかしらね……
アンナリーゼをしっかり支えてあるのよ!
わかっているのかしら?」
「あぁ、わかっているよ!!」
珍しくジョージアが、ちょっと反抗的だ。
母親との会話を私に聞かれるのが、照れくさいのだろうか?
ふふっと笑ってしまう。
「ジョージア様、よろしくお願いしますね!」
「奥様の言うことなら、なんなりと」
穏やかな午後のお茶会は、これにて終わったのである。
アンバー女王ことハニーローズがつけていたと言われるアンバーの秘宝だ。
これらは、ローズディアの歴史書にも載っているらしい。
「アンナリーゼ、これをあなたに」
義母が宝石箱をくれる。
その中に入っているのは、アンバーの秘宝たちだった。
アンバーって実際は、宝石とは少し違うため、同じくらいの大きさのサファイアに比べてもかなり軽い。
ジョージアの瞳の色と似たその大きなアンバーには、中に蜂がきれいな状態で入っている。
アンバー家の紋章である蜂はこのアンバーの秘宝からきているのだろう。
こっちのピアスには、花が入っている。
蜂や花たちの時間が、止まっているのだ。
それは、とても綺麗だった。
「どう?気に入ってくれたかしら?」
「はい、お義母様。
とっても素敵ですね!」
「これは、アンバー家公爵夫人に代々渡されるものよ。
結婚式には、この宝飾品をつけるの」
義母に渡されたこれこそが、アンバー公爵夫人として扱われる証なのだ。
夜会に行くときや公式な式典では、必ずアンバーの秘宝をどれか一つでも身につけなくてはならない。
アンバー家の子供であれば、これに準じたアンバーを準備されるが、その中で特別な子供は、その限りではない。
『蜂蜜色の瞳』を持つ子供は、瞳こそが秘宝となるので、わざわざアンバーを身に着ける必要はないのだ。
ジョージアもとろっとした蜂蜜色の瞳をもつため、普段からアンバーは身に着けてはいない。
むしろ、宝石類は、サファイアのピアスと私が贈った懐中時計くらいなのだ。
宝飾品などなくても、人物そのものが宝飾品なのだから……
羨ましい限りだ。
「そうそう、ウエディングドレスのデザインに描きこまれていたけど、
そのまま採用かしら?」
「そうですね……ジョージア様とも話はしたのですが、
しっくりくるので、そうさせてもらおうと思っています」
「確かに、あのフリルの真ん中にこのブローチだと、お花の芯のようで
可愛らしいわよね!」
思い浮かべているのか、義母の口角はあがっている。
「お義母様、この秘宝のお話を聞いてもいいですか?」
「えぇ、いいわよ。
昔話になるのだけど、聞いてくれるかしら?」
「もちろん!」
義母と午後のお茶を一緒に楽しむことになった。
「このアンバーは、ハニーローズの持ち物だったの」
「ハニーローズ?」
「そうよ。元々ローズディア、トワイス、エルドアの3国は1つの国だった。
そのことは知っているかしら?」
「はい、もちろんです」
「初代王は、アンバーと名前をもつ蜂蜜色の瞳の女王だったの。
王配が、彼女のことをハニーローズと呼んでいたのよ!」
うんうん、その辺は、『王配の手記』の記述を夢みたところだった。
「アンバーって、玉じゃないの。
樹脂の化石なのよ」
「軽いですよね。
他の宝石に比べて、ちょっと特殊な気はします」
「そうね。
女王アンバーも元々は王族でありながら、他の王族には、その蜂蜜色の瞳のせいで
軽く扱われていたらしいの。
当時は、蜂蜜色の瞳は、あまりいい意味を持たなかったって手記に書いてあったわ。
どんな意味なのかは、記されていなかったけど……
だから、アンバーは、適齢期がきても降嫁されることもなく、王家に縛られていたと
記録が残っているわ。
だから、彼女は市井に出て民の声を聞き、自分の掌に乗る分だけの人を助けていたのよ」
私の知らない女王アンバーの話だった。
王家の一員でありながらか……
「アンバーが、市井に出て出会ったのが、ウイリアムという青年だった。
このウイリアムという青年こそが、のちの王配なのだけど、
貧乏貴族の嫡男だったそうよ。
お金がない二人は、手を取り合って市井の民を助けていったと言われているわ。
ある日ね、ウイリアムがアンバーにプロポーズをしたの。
そのときに渡したと言われているのが、このアンバーの秘宝。
『君の瞳の色と同じもので、僕に手に入れられるのは、これしかなかった』と
いったらしいわね!
アンバー女王は、このアンバーの秘宝を大切に使っていたと言われているのよ。
二人の仲の良さがわかるわね!」
義母は、うっとり話している。
確かに素敵な話だが……
私は、お金って……大事よねと心の中では頷いている。
「でも、決していい話ばかりではないのよ……
民たちは、王族に強い不満を抱いていた。
生活は困窮していたから……
そこで、旗頭としてアンバーを担ぎ上げ、反旗を翻したのよ。
血の上になった女王でもあるの。
でも、彼女は、女王になったとしても奢ることなく市井に降りていたころと
変わらず、民を愛し、国を愛し、民に愛された女王となったの。
そのころからの言い伝えの流れで、蜂蜜色の瞳を持つ女の子がアンバー家に
生まれると、女王の生まれ変わりとして扱われるのよ。
その子は、ハニーローズと呼ばれるの。
ずいぶん女の子が生まれていないから、古い法律になっているけど、
アンバーの子と言われる蜂蜜色の瞳を持つ子供は、法によって守られているのよ。
ジョージアはともかく、ハニーローズは、とっても優秀らしいわね……
どの世代に生まれたハニーローズも、国の危機を救ったりしているらしいから」
義母の話を聞いて改めて思う。
私の『予知夢』に登場する子供を……
一体どうなっていくのだろうと、不安もある。
でも、このアンバーの秘宝を託された以上、きっちり公爵夫人としての役目は果たさないとと気持ちも引き締まるのだった。
相変わらず神出鬼没なジョージアは、フラッと私たちのお茶会にあらわれた。
「何してたの?」
「お義母様から、アンバーの秘宝をいただいたの」
「あぁ、公爵夫人の証ね」
「ジョージア!あなたが思っているほど、軽いものではないのよ!
私もアンナリーゼもこの秘宝によって、アンバーの一員となるのよ!
お嫁になるのは、本当に大変なんだから!」
ジョージアは、義母の話に肩をすくめるだけである。
実際、経験したが、アンバー公爵家の看板は伊達ではない……
結構、あれやこれやと覚えることも多く大変なのだ……
他にも、ジョージアに群がる令嬢たちを蹴散ら……えーっと……
上手に諦めてもらうこと?は……とかね。
「ジョージアは、分かっているのかしらね……
アンナリーゼをしっかり支えてあるのよ!
わかっているのかしら?」
「あぁ、わかっているよ!!」
珍しくジョージアが、ちょっと反抗的だ。
母親との会話を私に聞かれるのが、照れくさいのだろうか?
ふふっと笑ってしまう。
「ジョージア様、よろしくお願いしますね!」
「奥様の言うことなら、なんなりと」
穏やかな午後のお茶会は、これにて終わったのである。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる