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アンバーの秘宝
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アンバー家には、代々伝わる国宝がある。
アンバー女王ことハニーローズがつけていたと言われるアンバーの秘宝だ。
これらは、ローズディアの歴史書にも載っているらしい。
「アンナリーゼ、これをあなたに」
義母が宝石箱をくれる。
その中に入っているのは、アンバーの秘宝たちだった。
アンバーって実際は、宝石とは少し違うため、同じくらいの大きさのサファイアに比べてもかなり軽い。
ジョージアの瞳の色と似たその大きなアンバーには、中に蜂がきれいな状態で入っている。
アンバー家の紋章である蜂はこのアンバーの秘宝からきているのだろう。
こっちのピアスには、花が入っている。
蜂や花たちの時間が、止まっているのだ。
それは、とても綺麗だった。
「どう?気に入ってくれたかしら?」
「はい、お義母様。
とっても素敵ですね!」
「これは、アンバー家公爵夫人に代々渡されるものよ。
結婚式には、この宝飾品をつけるの」
義母に渡されたこれこそが、アンバー公爵夫人として扱われる証なのだ。
夜会に行くときや公式な式典では、必ずアンバーの秘宝をどれか一つでも身につけなくてはならない。
アンバー家の子供であれば、これに準じたアンバーを準備されるが、その中で特別な子供は、その限りではない。
『蜂蜜色の瞳』を持つ子供は、瞳こそが秘宝となるので、わざわざアンバーを身に着ける必要はないのだ。
ジョージアもとろっとした蜂蜜色の瞳をもつため、普段からアンバーは身に着けてはいない。
むしろ、宝石類は、サファイアのピアスと私が贈った懐中時計くらいなのだ。
宝飾品などなくても、人物そのものが宝飾品なのだから……
羨ましい限りだ。
「そうそう、ウエディングドレスのデザインに描きこまれていたけど、
そのまま採用かしら?」
「そうですね……ジョージア様とも話はしたのですが、
しっくりくるので、そうさせてもらおうと思っています」
「確かに、あのフリルの真ん中にこのブローチだと、お花の芯のようで
可愛らしいわよね!」
思い浮かべているのか、義母の口角はあがっている。
「お義母様、この秘宝のお話を聞いてもいいですか?」
「えぇ、いいわよ。
昔話になるのだけど、聞いてくれるかしら?」
「もちろん!」
義母と午後のお茶を一緒に楽しむことになった。
「このアンバーは、ハニーローズの持ち物だったの」
「ハニーローズ?」
「そうよ。元々ローズディア、トワイス、エルドアの3国は1つの国だった。
そのことは知っているかしら?」
「はい、もちろんです」
「初代王は、アンバーと名前をもつ蜂蜜色の瞳の女王だったの。
王配が、彼女のことをハニーローズと呼んでいたのよ!」
うんうん、その辺は、『王配の手記』の記述を夢みたところだった。
「アンバーって、玉じゃないの。
樹脂の化石なのよ」
「軽いですよね。
他の宝石に比べて、ちょっと特殊な気はします」
「そうね。
女王アンバーも元々は王族でありながら、他の王族には、その蜂蜜色の瞳のせいで
軽く扱われていたらしいの。
当時は、蜂蜜色の瞳は、あまりいい意味を持たなかったって手記に書いてあったわ。
どんな意味なのかは、記されていなかったけど……
だから、アンバーは、適齢期がきても降嫁されることもなく、王家に縛られていたと
記録が残っているわ。
だから、彼女は市井に出て民の声を聞き、自分の掌に乗る分だけの人を助けていたのよ」
私の知らない女王アンバーの話だった。
王家の一員でありながらか……
「アンバーが、市井に出て出会ったのが、ウイリアムという青年だった。
このウイリアムという青年こそが、のちの王配なのだけど、
貧乏貴族の嫡男だったそうよ。
お金がない二人は、手を取り合って市井の民を助けていったと言われているわ。
ある日ね、ウイリアムがアンバーにプロポーズをしたの。
そのときに渡したと言われているのが、このアンバーの秘宝。
『君の瞳の色と同じもので、僕に手に入れられるのは、これしかなかった』と
いったらしいわね!
アンバー女王は、このアンバーの秘宝を大切に使っていたと言われているのよ。
二人の仲の良さがわかるわね!」
義母は、うっとり話している。
確かに素敵な話だが……
私は、お金って……大事よねと心の中では頷いている。
「でも、決していい話ばかりではないのよ……
民たちは、王族に強い不満を抱いていた。
生活は困窮していたから……
そこで、旗頭としてアンバーを担ぎ上げ、反旗を翻したのよ。
血の上になった女王でもあるの。
でも、彼女は、女王になったとしても奢ることなく市井に降りていたころと
変わらず、民を愛し、国を愛し、民に愛された女王となったの。
そのころからの言い伝えの流れで、蜂蜜色の瞳を持つ女の子がアンバー家に
生まれると、女王の生まれ変わりとして扱われるのよ。
その子は、ハニーローズと呼ばれるの。
ずいぶん女の子が生まれていないから、古い法律になっているけど、
アンバーの子と言われる蜂蜜色の瞳を持つ子供は、法によって守られているのよ。
ジョージアはともかく、ハニーローズは、とっても優秀らしいわね……
どの世代に生まれたハニーローズも、国の危機を救ったりしているらしいから」
義母の話を聞いて改めて思う。
私の『予知夢』に登場する子供を……
一体どうなっていくのだろうと、不安もある。
でも、このアンバーの秘宝を託された以上、きっちり公爵夫人としての役目は果たさないとと気持ちも引き締まるのだった。
相変わらず神出鬼没なジョージアは、フラッと私たちのお茶会にあらわれた。
「何してたの?」
「お義母様から、アンバーの秘宝をいただいたの」
「あぁ、公爵夫人の証ね」
「ジョージア!あなたが思っているほど、軽いものではないのよ!
私もアンナリーゼもこの秘宝によって、アンバーの一員となるのよ!
お嫁になるのは、本当に大変なんだから!」
ジョージアは、義母の話に肩をすくめるだけである。
実際、経験したが、アンバー公爵家の看板は伊達ではない……
結構、あれやこれやと覚えることも多く大変なのだ……
他にも、ジョージアに群がる令嬢たちを蹴散ら……えーっと……
上手に諦めてもらうこと?は……とかね。
「ジョージアは、分かっているのかしらね……
アンナリーゼをしっかり支えてあるのよ!
わかっているのかしら?」
「あぁ、わかっているよ!!」
珍しくジョージアが、ちょっと反抗的だ。
母親との会話を私に聞かれるのが、照れくさいのだろうか?
ふふっと笑ってしまう。
「ジョージア様、よろしくお願いしますね!」
「奥様の言うことなら、なんなりと」
穏やかな午後のお茶会は、これにて終わったのである。
アンバー女王ことハニーローズがつけていたと言われるアンバーの秘宝だ。
これらは、ローズディアの歴史書にも載っているらしい。
「アンナリーゼ、これをあなたに」
義母が宝石箱をくれる。
その中に入っているのは、アンバーの秘宝たちだった。
アンバーって実際は、宝石とは少し違うため、同じくらいの大きさのサファイアに比べてもかなり軽い。
ジョージアの瞳の色と似たその大きなアンバーには、中に蜂がきれいな状態で入っている。
アンバー家の紋章である蜂はこのアンバーの秘宝からきているのだろう。
こっちのピアスには、花が入っている。
蜂や花たちの時間が、止まっているのだ。
それは、とても綺麗だった。
「どう?気に入ってくれたかしら?」
「はい、お義母様。
とっても素敵ですね!」
「これは、アンバー家公爵夫人に代々渡されるものよ。
結婚式には、この宝飾品をつけるの」
義母に渡されたこれこそが、アンバー公爵夫人として扱われる証なのだ。
夜会に行くときや公式な式典では、必ずアンバーの秘宝をどれか一つでも身につけなくてはならない。
アンバー家の子供であれば、これに準じたアンバーを準備されるが、その中で特別な子供は、その限りではない。
『蜂蜜色の瞳』を持つ子供は、瞳こそが秘宝となるので、わざわざアンバーを身に着ける必要はないのだ。
ジョージアもとろっとした蜂蜜色の瞳をもつため、普段からアンバーは身に着けてはいない。
むしろ、宝石類は、サファイアのピアスと私が贈った懐中時計くらいなのだ。
宝飾品などなくても、人物そのものが宝飾品なのだから……
羨ましい限りだ。
「そうそう、ウエディングドレスのデザインに描きこまれていたけど、
そのまま採用かしら?」
「そうですね……ジョージア様とも話はしたのですが、
しっくりくるので、そうさせてもらおうと思っています」
「確かに、あのフリルの真ん中にこのブローチだと、お花の芯のようで
可愛らしいわよね!」
思い浮かべているのか、義母の口角はあがっている。
「お義母様、この秘宝のお話を聞いてもいいですか?」
「えぇ、いいわよ。
昔話になるのだけど、聞いてくれるかしら?」
「もちろん!」
義母と午後のお茶を一緒に楽しむことになった。
「このアンバーは、ハニーローズの持ち物だったの」
「ハニーローズ?」
「そうよ。元々ローズディア、トワイス、エルドアの3国は1つの国だった。
そのことは知っているかしら?」
「はい、もちろんです」
「初代王は、アンバーと名前をもつ蜂蜜色の瞳の女王だったの。
王配が、彼女のことをハニーローズと呼んでいたのよ!」
うんうん、その辺は、『王配の手記』の記述を夢みたところだった。
「アンバーって、玉じゃないの。
樹脂の化石なのよ」
「軽いですよね。
他の宝石に比べて、ちょっと特殊な気はします」
「そうね。
女王アンバーも元々は王族でありながら、他の王族には、その蜂蜜色の瞳のせいで
軽く扱われていたらしいの。
当時は、蜂蜜色の瞳は、あまりいい意味を持たなかったって手記に書いてあったわ。
どんな意味なのかは、記されていなかったけど……
だから、アンバーは、適齢期がきても降嫁されることもなく、王家に縛られていたと
記録が残っているわ。
だから、彼女は市井に出て民の声を聞き、自分の掌に乗る分だけの人を助けていたのよ」
私の知らない女王アンバーの話だった。
王家の一員でありながらか……
「アンバーが、市井に出て出会ったのが、ウイリアムという青年だった。
このウイリアムという青年こそが、のちの王配なのだけど、
貧乏貴族の嫡男だったそうよ。
お金がない二人は、手を取り合って市井の民を助けていったと言われているわ。
ある日ね、ウイリアムがアンバーにプロポーズをしたの。
そのときに渡したと言われているのが、このアンバーの秘宝。
『君の瞳の色と同じもので、僕に手に入れられるのは、これしかなかった』と
いったらしいわね!
アンバー女王は、このアンバーの秘宝を大切に使っていたと言われているのよ。
二人の仲の良さがわかるわね!」
義母は、うっとり話している。
確かに素敵な話だが……
私は、お金って……大事よねと心の中では頷いている。
「でも、決していい話ばかりではないのよ……
民たちは、王族に強い不満を抱いていた。
生活は困窮していたから……
そこで、旗頭としてアンバーを担ぎ上げ、反旗を翻したのよ。
血の上になった女王でもあるの。
でも、彼女は、女王になったとしても奢ることなく市井に降りていたころと
変わらず、民を愛し、国を愛し、民に愛された女王となったの。
そのころからの言い伝えの流れで、蜂蜜色の瞳を持つ女の子がアンバー家に
生まれると、女王の生まれ変わりとして扱われるのよ。
その子は、ハニーローズと呼ばれるの。
ずいぶん女の子が生まれていないから、古い法律になっているけど、
アンバーの子と言われる蜂蜜色の瞳を持つ子供は、法によって守られているのよ。
ジョージアはともかく、ハニーローズは、とっても優秀らしいわね……
どの世代に生まれたハニーローズも、国の危機を救ったりしているらしいから」
義母の話を聞いて改めて思う。
私の『予知夢』に登場する子供を……
一体どうなっていくのだろうと、不安もある。
でも、このアンバーの秘宝を託された以上、きっちり公爵夫人としての役目は果たさないとと気持ちも引き締まるのだった。
相変わらず神出鬼没なジョージアは、フラッと私たちのお茶会にあらわれた。
「何してたの?」
「お義母様から、アンバーの秘宝をいただいたの」
「あぁ、公爵夫人の証ね」
「ジョージア!あなたが思っているほど、軽いものではないのよ!
私もアンナリーゼもこの秘宝によって、アンバーの一員となるのよ!
お嫁になるのは、本当に大変なんだから!」
ジョージアは、義母の話に肩をすくめるだけである。
実際、経験したが、アンバー公爵家の看板は伊達ではない……
結構、あれやこれやと覚えることも多く大変なのだ……
他にも、ジョージアに群がる令嬢たちを蹴散ら……えーっと……
上手に諦めてもらうこと?は……とかね。
「ジョージアは、分かっているのかしらね……
アンナリーゼをしっかり支えてあるのよ!
わかっているのかしら?」
「あぁ、わかっているよ!!」
珍しくジョージアが、ちょっと反抗的だ。
母親との会話を私に聞かれるのが、照れくさいのだろうか?
ふふっと笑ってしまう。
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