上 下
121 / 1,458

さっぱり

しおりを挟む
 お風呂できれいさっぱり私は、ソフィアのことをすべて流してきた。
 もう、2度と会うことはない。



 それよりもだ!



 あんなバカな女にみすみす殺されるのかと思うと腹立たしい。
 もちろん、男爵家を潰すことになるのだが、それだけでは、私の気持ちがおさまらない。



「デリア、今、動かせる人ってどれくらいいるかしら?」
「どのような御用向ですか?」
「ジョージア様とソフィアが結婚したら、ソフィアが別宅に住むことになるから、
 そこの情報源が欲しいのと、あとは、今の身辺が知りたいわ。
 イロイロきいているけどね。
 隣の国の領主様とか……」


 ただで殺されてはあげないわ。
 あなたのお家丸ごと道連れだけでは、私は気が済まないもの。


「かしこまりました。
 すぐに手配しましょう。
 こちらにいる間者は、まだ、泳がせて置いて大丈夫ですか?」
「うん。まだいい。
 しばらくは、ジョージア様が毒味をかってくれてるから、盛らないでしょ?
 直接攻撃はしてこないはずだし」



 さて、次はなんの嫌がらせかしらね?



 私とデリアは、ニコニコとしている。
 うちにくすぼった黒いドロっとした気持ちは、もう少し横に置いておく。



「ねぇ?デリア。
 ディルは、私の味方になってくれたの?
 それとも中立?」
「ディルは、旦那様に忠誠を誓っております。
 旦那様より、アンナ様の後ろを守るよう言われているのですよ!」
「ジョージア様でなくて?
 私の?」
「そうです。
 旦那様も奥様もアンナ様のことがとても気に入ってらっしゃるのです!
 ジョージア様の卒業式から帰ってからは、もうずっと!
 なので、大層この婚約を喜ばれていると伺ってます!」



 部屋に戻ると、そこにはジョージアが待っていた。
 さっきと服が変わっているということは、気を使ってくれたのだろう。


「ジョージア様、どうかされましたか?」


 お湯上りのホクホクした私は、さっきのことなど全て忘れてしまったので、首をかしげる。


「アンナ……
 その……すまない……」
「何がですか……?
 あぁ、ソフィアのことですか?」


 あぁ……と、ジョージアはふさぎ気味に私に返事してくれる。
 私は、興味なさそうにしている。



「気にもしていません。
 もう、2度とお会いすることもないでしょうから!」


 私は、ニッコリ笑っておく。
 裏では、向こうもいろいろ動いているのだから、何をしても許されるわよね!
 なんて思っているとは、露知らずって感じだ。


「そ……そうか。
 その、悪いんだが、男爵も……アンナに会いたいと言ってきていてな?」
「いいですよ!
 会って差し上げます。
 でも、これっきりです!」


 ホッと胸を撫で下ろしたジョージアには追い討ちをかける。


「ジョージア様もソフィアにだけ愛情を注いでもらってもかまいませんよ?
 かなり、ソフィアは、ジョージア様にご執心みたいでしたし……
 噂ではいろいろ聞いていましたが、なんだか、怖いくらいですね。
 私なんて、公爵夫人のお飾りでじゅうぶんですから!」
「いや、アンナをお飾りになんて、できないよ?」
「怖いからですか?」


 ジョージアを、軽く睨んでみた。


「いえ、そういうわけでは……」
「ほら、私の目見て言ってもらえますか?
 私、ジョージア様のトロッとした蜂蜜色の瞳で見られるとなんでも
 許してさしあげられるので!」


 なんて、冗談交じりにいうと本気で返される。


「今日のアンナは、少し怖かったかなぁ……
 でも、それだけのことをしているのかと思うと……」
「いいですよ。
 ジョージア様には、ジョージア様の都合がありますからね……
 ただし、今日言ったように、ソフィアは、この屋敷には入れませんから。
 そこは、ご了承ください!」
「はい……
 さすがに、それは、しんどいです……」


 ふふふ……


「何笑ってるの?」
「いや、ジョージア様って、本音駄々洩れなんですねと思って」
「だってねぇ……アンナ、ホントに怖かったよ……
 冗談抜きで……もう、立派な公爵夫人だよ……」


 あんまり嬉しくない言われようだ。
 ジョージアも別に悪いことしているわけではないので、あんまり責めないでおこうと思っている。
 貴族なんて……そういうものだ。
 うちの両親が仲が良すぎただけで、政略結婚をしたとこなんてひどいものなのだから……


 でも、仕返しは、したいわよねと思う。


「ジョージア様、私、死ぬまでに何かしらお返しはさせてもらいますからね!
 覚悟はしておいてくださいね!!」
「ハハハ……怖すぎるんだけど……」


 とりあえず、まだ、何にもおもしろいネタはあがってきてないので、私はニッコリ笑うだけで終わらせた。



「あの、それで……今晩なんだけど……」
「なんですか?今晩、何かありましたか?」
「雪も降ってくるようだし、一緒に……」
「まぁ!雪ですか?それは、寒いですね。
 デリア、毛布を出しておいてくれるかしら?」
「かしこまりました!
 暖かい毛布をご用意しますね!!」



 私は大げさに驚いて、デリアに毛布を出してもらえるよう指示をだす。
 デリアもわかっているようだ。
 そして、ジョージアも。


 今晩は、ジョージアには一人で寂しく寝てもらおうと思う。
 どうせ、すぐ私のベッドにもぐりこんでくるだろうけど、立場としてここは知らん顔しておくのが一番だ。


「では、私、お義母様に報告しないといけませんので……
 退出していただけますか?」


 優しく微笑んで、ジョージアを追い出した。





 そのあと、私は、事の顛末を義母に報告に行く。
 そこには義父もディルもいて、すでに報告はされているようだ。



「アンナリーゼ……
 私の可愛い娘。
 可哀そうに……あんな、男爵の娘ごときに……」


 義母は、本当に私を可愛がってくれる。
 義父も、もちろんのことだ。


「今度、男爵もジョージアもぎゃふんと言わせてあげますわ!」
「お義母様にそのようなことは……
 ジョージア様もあまりにもかわいそうです」
「心優しいな、アンナリーゼは……
 息子にはもったいない。
 今からでも、他にいい縁談がないか探してあげたいくらいだ……」
「お義父さまったら……
 ジョージア様がいいのです。
 他は探さないでくださいね!」


 ニコニコと笑うと、両親も一緒に笑ってくれる。
 ホントに大切にされていて、本当の両親と同等のようにしてくれる。
 それが私にとって、とてもとても嬉しいことだ。





 そんなつもりで私は、報告したつもりはなかったのだが……



 このあと、ジョージアは、両親にこってり絞られたらしい。




 ご愁傷様。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,337pt お気に入り:3,689

あなたは知らなくていいのです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:82,737pt お気に入り:3,878

恋人契約~愛を知らないΩがαの愛に気づくまで~

BL / 完結 24h.ポイント:7,682pt お気に入り:826

浮気αと絶許Ω~裏切りに激怒したオメガの復讐~

BL / 連載中 24h.ポイント:28,367pt お気に入り:1,812

偽りオメガの虚構世界

BL / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:215

満員電車でうばわれて、はじまる 

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:362pt お気に入り:152

妹に婚約者を奪われましたが今は幸せです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:38,937pt お気に入り:2,223

推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,792pt お気に入り:445

魔術師セナリアンの憂いごと

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,647pt お気に入り:1,019

番から逃げる事にしました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:24,061pt お気に入り:2,188

処理中です...