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ウエディングドレス
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ウエディングドレスのデザインをジョージアがしてから4か月くらいたっただろうか?
「どうですか?」
私は、仮縫いされたウエディングドレスを着て鏡の前に立つ。
自分でも鏡で右に左にひねって見てみる。
最初は、女性陣だ。母と義母が、出来上がりをじっくり見ていく。
「アンナのドレスは、斬新ね。中が総レースになっていて、外側がふわっとして透けているのね。
素敵だわ!」
「うちのジョージアが、アンナリーゼをイメージしてデザインを描いたのですよ!」
「まぁ、ジョージア様が、アンナのために?」
「そうなのよ。もう、アンナリーゼのことが可愛くて可愛くてしかたないようなの!」
母が、私をみて柔らかく微笑んでいる。
『予知夢』の話を知っている母にとって、ジョージアはあまりいいお婿さんではなかったはずだ。
でも、『ジョージアの母』から、娘が可愛くて仕方がないと聞けば、とても満足そうである。
「アンナは、ジョージア様だけでなく、ご両親にも可愛がってもらっているようで何よりですわ。
こんな娘ですけど、よろしくお願いします!」
「いえいえ、うちの愚息のお嫁にこんな素敵なお嬢さんが来てくれるなんて!こちらこそ、末永く、
よろしくお願いしますね!」
女王様(母)と王妃様(義母)が笑っている……異様な雰囲気に私はどきどきと動機を覚え、和やかな中にも緊張感が走ってしまう。
この母親どおし二人は、意気投合しているらしくとても仲良しである。
結構な頻度で、手紙のやり取りしていると昨日、母からきいて驚いた。
「そろそろ、男性陣も呼びましょうか?外で、ソワソワと待っているんじゃないかしら?」
二人が笑っている。なんか、さっきまでと打って変わって、女の子みたいだ。
実のところ、この女性陣、いまだに二人共が夫に恋愛真っ只中なのだ。なんとも、可愛らしい。
私には……無理だな……と、二人を見て苦笑いする。
そうなれれば幸せだろうけど、そんな未来は、待っていないだろう。
「あなた、どうぞ入って!」
それぞれのパートナーを呼んで、私を見ている。
私は言われるがままに、あっち向いたりこっち向いたりドレスをフワフワと四人に見せている。
「レースは、やはり薔薇か!アンナには薔薇がよく似合っているよ!」
「もう!私も薔薇は似合うと思うんだけど……」
「もちろんだとも!でも、今日は……アンナのドレスを……」
お、お父様、頑張って!お母様のご機嫌はしっかりとって!今、すごく機嫌が悪くなってきてるよ!
ほらほら、頑張って!
心の中で大応援する。チラッと隣を見ると、義父も同じ状態だった。
お母様たちって……娘にまで嫉妬するの……?心配しなくても取ったりしないよ!
本当に両親たちのその光景が微笑ましくて、優しい家族に囲まれて幸せだなぁ……と優しく微笑んだ。
「アンナ、背中見せて!」
今まで黙っていたジョージアが、話しかけてくる。
「はい、後ろですね!」
そういってクルっと回り、ジョージアに後ろを見せる。
結婚式は、基本的に背中を来客たちが見ることになるので、気にしているのだろう。
あの、視線が…………何とか言って?
「デザイナーさん!」
「は……はい!」
ジョージアがデザイナーに話かけ、部屋中に緊張が走っている。
鏡越しに私が目をみはる。母たちは、ジョージアに注目する。父たちは、ゴクリと唾をのんでいた。
みんなが、ジョージアの次の言葉を待っている。
「なんでしょうか……ジョージア様」
「この背中のレース、いいね!見せないでとは言ったけど、こういう見せ方はいいね!
アンナの背中、綺麗だからね!透け感があるのが気に入ったよ!」
さも見たかのいいようだけど……ジョージア様、いつ見せましたか?
私、背中なんて、見せたことないと思いますけど……?
思わずツッコミを入れたくなったが、黙っておく。
ジョージアは、自分の描いたデザインにデザイナーがより手直ししてくれた部分が気に入ったようで、かなり満足そうだ。
まずは、及第点ってことかしらね?
ジョージアがとても嬉しそうでなによりだった。
「じゃあ、マリアベールをかけてみましょうか?こちらも、薔薇をイメージさせていただきました」
「これも、エリザベスから預かってきたわ。つけてみて!」
マリアベールをつけてもらい、母から預かったエリザベスのグローブをつける。
鏡にうつる私は、花嫁そのものだ。自分でいうのもなんだが、とてもいい!
ドレスとのバランスもベールの長さもすべてが調和されている。
ほうっとため息をつくと、母たちも同じようだ。
「これは、見事だね。まさに、アンナリーゼのためだけの花嫁衣装だ!」
義父に褒められれば、父が褒める。後は、男親たちの褒め合戦である。
隣にジョージアがきた。私のリクエスト通りのジョージアはフロックコートを着ている。
これは、ヤバイ……かっこいい!!
「ジョージア様、そのフロックコート、似合いすぎます!ドキドキしますね!」
ふふっと笑って、ジョージアは私の腰を引き寄せる。
「一人で着て鏡を見ると、普通かなって思ってたけど、並ぶといいね。アンナの引き立て役になれる。
アンナもとっても似合っていて可愛いよ。あぁー自慢したいけど、誰にも見せたくないな……」
「それじゃ、結婚式の意味がないですよ!私もジョージア様を他の女性に見せたくないですけどね!」
生暖かい視線を四人が送ってきているが、さっきまで、2組の夫婦はそれぞれしていたことをこれから夫婦になる私たちが褒めあっているだけである。
「結婚式、楽しみですね!」
「そうだね。早く、こないかなぁ……?」
「すぐですよ!その前に、約束は忘れないでくださいね!」
何のことだった?とジョージアは、首をかしげている。
私は、ジョージアの耳元に背伸びして、両親たちに聞こえないように囁く。
「ソフィアに会わせてくださいね!」
ジョージアは、幸せな夢心地から一気に現実に戻ったようで可哀想であったが、敵情視察は必要だ。
結婚式も楽しみだが、そちらも私は楽しみであった。
「どうですか?」
私は、仮縫いされたウエディングドレスを着て鏡の前に立つ。
自分でも鏡で右に左にひねって見てみる。
最初は、女性陣だ。母と義母が、出来上がりをじっくり見ていく。
「アンナのドレスは、斬新ね。中が総レースになっていて、外側がふわっとして透けているのね。
素敵だわ!」
「うちのジョージアが、アンナリーゼをイメージしてデザインを描いたのですよ!」
「まぁ、ジョージア様が、アンナのために?」
「そうなのよ。もう、アンナリーゼのことが可愛くて可愛くてしかたないようなの!」
母が、私をみて柔らかく微笑んでいる。
『予知夢』の話を知っている母にとって、ジョージアはあまりいいお婿さんではなかったはずだ。
でも、『ジョージアの母』から、娘が可愛くて仕方がないと聞けば、とても満足そうである。
「アンナは、ジョージア様だけでなく、ご両親にも可愛がってもらっているようで何よりですわ。
こんな娘ですけど、よろしくお願いします!」
「いえいえ、うちの愚息のお嫁にこんな素敵なお嬢さんが来てくれるなんて!こちらこそ、末永く、
よろしくお願いしますね!」
女王様(母)と王妃様(義母)が笑っている……異様な雰囲気に私はどきどきと動機を覚え、和やかな中にも緊張感が走ってしまう。
この母親どおし二人は、意気投合しているらしくとても仲良しである。
結構な頻度で、手紙のやり取りしていると昨日、母からきいて驚いた。
「そろそろ、男性陣も呼びましょうか?外で、ソワソワと待っているんじゃないかしら?」
二人が笑っている。なんか、さっきまでと打って変わって、女の子みたいだ。
実のところ、この女性陣、いまだに二人共が夫に恋愛真っ只中なのだ。なんとも、可愛らしい。
私には……無理だな……と、二人を見て苦笑いする。
そうなれれば幸せだろうけど、そんな未来は、待っていないだろう。
「あなた、どうぞ入って!」
それぞれのパートナーを呼んで、私を見ている。
私は言われるがままに、あっち向いたりこっち向いたりドレスをフワフワと四人に見せている。
「レースは、やはり薔薇か!アンナには薔薇がよく似合っているよ!」
「もう!私も薔薇は似合うと思うんだけど……」
「もちろんだとも!でも、今日は……アンナのドレスを……」
お、お父様、頑張って!お母様のご機嫌はしっかりとって!今、すごく機嫌が悪くなってきてるよ!
ほらほら、頑張って!
心の中で大応援する。チラッと隣を見ると、義父も同じ状態だった。
お母様たちって……娘にまで嫉妬するの……?心配しなくても取ったりしないよ!
本当に両親たちのその光景が微笑ましくて、優しい家族に囲まれて幸せだなぁ……と優しく微笑んだ。
「アンナ、背中見せて!」
今まで黙っていたジョージアが、話しかけてくる。
「はい、後ろですね!」
そういってクルっと回り、ジョージアに後ろを見せる。
結婚式は、基本的に背中を来客たちが見ることになるので、気にしているのだろう。
あの、視線が…………何とか言って?
「デザイナーさん!」
「は……はい!」
ジョージアがデザイナーに話かけ、部屋中に緊張が走っている。
鏡越しに私が目をみはる。母たちは、ジョージアに注目する。父たちは、ゴクリと唾をのんでいた。
みんなが、ジョージアの次の言葉を待っている。
「なんでしょうか……ジョージア様」
「この背中のレース、いいね!見せないでとは言ったけど、こういう見せ方はいいね!
アンナの背中、綺麗だからね!透け感があるのが気に入ったよ!」
さも見たかのいいようだけど……ジョージア様、いつ見せましたか?
私、背中なんて、見せたことないと思いますけど……?
思わずツッコミを入れたくなったが、黙っておく。
ジョージアは、自分の描いたデザインにデザイナーがより手直ししてくれた部分が気に入ったようで、かなり満足そうだ。
まずは、及第点ってことかしらね?
ジョージアがとても嬉しそうでなによりだった。
「じゃあ、マリアベールをかけてみましょうか?こちらも、薔薇をイメージさせていただきました」
「これも、エリザベスから預かってきたわ。つけてみて!」
マリアベールをつけてもらい、母から預かったエリザベスのグローブをつける。
鏡にうつる私は、花嫁そのものだ。自分でいうのもなんだが、とてもいい!
ドレスとのバランスもベールの長さもすべてが調和されている。
ほうっとため息をつくと、母たちも同じようだ。
「これは、見事だね。まさに、アンナリーゼのためだけの花嫁衣装だ!」
義父に褒められれば、父が褒める。後は、男親たちの褒め合戦である。
隣にジョージアがきた。私のリクエスト通りのジョージアはフロックコートを着ている。
これは、ヤバイ……かっこいい!!
「ジョージア様、そのフロックコート、似合いすぎます!ドキドキしますね!」
ふふっと笑って、ジョージアは私の腰を引き寄せる。
「一人で着て鏡を見ると、普通かなって思ってたけど、並ぶといいね。アンナの引き立て役になれる。
アンナもとっても似合っていて可愛いよ。あぁー自慢したいけど、誰にも見せたくないな……」
「それじゃ、結婚式の意味がないですよ!私もジョージア様を他の女性に見せたくないですけどね!」
生暖かい視線を四人が送ってきているが、さっきまで、2組の夫婦はそれぞれしていたことをこれから夫婦になる私たちが褒めあっているだけである。
「結婚式、楽しみですね!」
「そうだね。早く、こないかなぁ……?」
「すぐですよ!その前に、約束は忘れないでくださいね!」
何のことだった?とジョージアは、首をかしげている。
私は、ジョージアの耳元に背伸びして、両親たちに聞こえないように囁く。
「ソフィアに会わせてくださいね!」
ジョージアは、幸せな夢心地から一気に現実に戻ったようで可哀想であったが、敵情視察は必要だ。
結婚式も楽しみだが、そちらも私は楽しみであった。
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