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両親がやってきた!

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 結婚式の日取りや今後の準備、顔合わせなどなど目白押しになってきた夏の終わり、公都の屋敷に両親が訪ねてきてくれた。

 父は、一応、国の重鎮としてこの時期は予算関係で忙しいはずなのに、わざわざやってきたのだ。
 母は、父にそこそこ甘いので、今回の顔合わせへの同行を許可したらしい。
 代わりに兄を財務大臣の席に座らせてきたとか、冗談でもやめてほしい話をしている。


「アンナ!変わりはないか?元気にしていたかい?」


 体中をべたべたと触って確認をしてくる父。
 まぁ、私はいつものことなので全く気にしていなかったが、母に叱られていた。


「娘とはいえ、よそ様へ嫁に行く子をむやみやたらと触らない!」


 母に言われれば、しゅんとしながら父は大人しくなっていく。



「どうもすみません。うちの人、娘がとても大事で……」
「いえいえ、こんな素敵なお嬢さんなら仕方ありませんよ!うちでも、似たようなものですから……
 なぁ?ジョージア」
「ち……父上!何を言い出すんですか!!」
「何って、本当のことよね……アンナリーゼ。嫌なら、はっきり言った方がいいわよ!」


 義父にも義母にもうちの父と似たようなことをジョージアがしていると言われれば、少し可哀想だ。
 そこまで……ん?結構きわどいところまで、うちの父と同じようなことをしてくるな……と、思いなおす。


「嫌ではありませんけど、ちょっと……」
「ア……アンナさん?」
「なんですか?ジョージア様」
「……いや、なんでもないです」


 このやり取り聞くだけでも、仲良くなったもんだと私の両親たちは大きく頷いている。
 私たち、一応政略結婚という形になっている。
 ここまで、仲良くなるのは珍しいとか……なんとか。
 でも、両親も一応政略結婚となっているが、母が父を見初めたから始まっているので、恋愛結婚と言ってもいいだろう。


「本日は、ディナーを共にして、話し合いは明日にしましょう。アンナリーゼ、ご両親を客室にお願い
 できるかしら?あなたもそちらで家族水入らず、ゆっくり過ごすといいわ!」


 義母のすすめで、私は両親と一緒に過ごすことにした。


「ありがとうございます!両親とゆっくり過ごさせていただきますね!」


 ニッコリ笑うと、ジョージアも混ざろうとしていたのか、義母に今日はやめておきなさいと袖を引っ張られていた。
 どこの家庭でも、妻や母は、影の権力者だ。私はいまだに母にも義母にも頭が上がらない。
 そのうち私もジョージアに、アンナには頭が上がらないよ……なんて言われる日が……
 ……来ないわね。私たち、あと1年もすれば別居生活ですもんね!なんて、ことを考えていた。



 ◇◆◇◆◇



「お母様!!」


 客室に入ると久しぶりに母が恋しくなり抱きついた。今まで、こんなことってなかったのにだ。
 これもそれも義母に甘やかされているせいなのかもしれない。


「なんです?アンナ」
「恋しくなりまして……」
「まったくもう……」


 呆れながらも私を抱きしめてくれる母。珍しい私の様子に気づいてくれたのだろう。
 あぁ、お母様の匂いだ。


「あ……アンナ?」


 呼ばれたのでチラッと父の方を見る。
 寂しそうにソワソワしていたので、私は片方の手を父に向けて差し出すと、母も父に向けて差し出した。
 ニコニコと父も混ざり、三人で抱き合った。

 はぁ……落ち着く。


「それで、アンナ。こっちの生活はどう?」
「ありがたいことに、とても大切に、甘やかされているわ!」
「なら、よかったわ。辛くて、泣いていたら……と思うと、いたたまれなかったのよ」


 両親は、私のことをとても気にしてくれていたようで、それだけで胸がいっぱいになる。


「サシャが、ちょっと情緒不安定なのよね……あなた、何か知っていて?」
「お兄様ですか?責任感に押しつぶされそうなんじゃないですか?エリザベスの方が肝が据わってます
 から……」
「なるほどね……あの子、意外と心がメレンゲみたいだものね……」
「メレンゲってかわいそうじゃないか!せめて、ケーキくらいに……」
「どっちも変わらないですよ。柔らかすぎます……」


 ここにいない兄のことで三人は笑いあうと、今頃、兄はきっとくしゃみをしているんじゃないだろうか?とさらにクスクスと笑った。


「そういえば、エリザベスは大丈夫なのですか?そろそろ生まれるのではないですか?」
「えぇ、大丈夫よ。エリーゼが来てくれているから、私たち別にいてもいなくても……」
「そんなことないと思いますけど?」
「サシャがなんとかするでしょう。あの子も父親になるんですから私たちがいないからといって
 右往左往しているようじゃねぇ……?」


 三人は思い浮かべる。あぁ、右往左往してる……と、想像した兄が同じだったのか、ため息を同時にはく。


「や……やっぱり、早く帰った方がよさそうね……?」
「そうですね。そのほうがいいと思いますよ。それに、お兄様、私がいないとダメだって、泣いてました
 から……」


 両親は、そんな兄の心内までは知らなかったようだ。
 話してしまった手前、もう仕方がないけど、両親は驚いていた。


「お兄様の結婚式の夜に偶然厨房で会って、話をしたの。ちょっと、弱気になってたんだけど……
 まだ、不安なのかな……?」
「そうだったのね……普段、あの子は、私たちには弱いところを見せないのよ。エリザベスに対しても
 らしいわ。どこで弱音を吐いていたのかしらと思っていたら……」


 母は、私の話を聞きどうしたものかとこめかみを押さえている。


「違いますよ。私の前でも、お兄様は弱音なんて吐いたことないもの。だから、びっくりしたくらい。
 エリザベスなら、どんなお兄様も支えてくれると思うから、エリザベスが、お兄様に向き合えるまで、
 少しの間、お父様とお母様で支えてあげてください」


 わかったと請け負ってくれる両親に頷く。


「アンナ様、もうすぐディナーの時間ですのでご案内します」


 デリアが客間に入ってきて夕食の準備が整ったことを伝えにきた。私たちは、ジョージアたちの待つ食堂へ向かったのである。
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