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ダンスお誘いは、ひっきりなしです。

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「殿下!」
「俺も、いいだろ?」
「もちろんですが、ちょっと休憩を挟んでもいいですか……?」
「さすがに3曲連続か……いいだろう。少し休め。一緒に行こう」


 ダンスホールから、ジョージア達のいる場所まで移動する。
 こまめだなぁ……
 冷えたジンジャエールを手にしたハリーが、それを私に渡してくれる。


「ヘンリー殿は、気が利くのだな……」


 役目を取られたジョージアは、少し悔しそうにハリーに渡されたジンジャエールを飲んでいる私を見ていた。


「重ねた月日が違いますから……そのうち、わかりますよ。
 アンナの好きなもの、欲しいもの、どこに行きたい、何がしたいか……」


 重みのあるハリーの言葉は、私の胸を締め付ける。
 でも、聞かなかったかのようにダンスホールに目を向け、一つ息を吐く。


「では、殿下。参りましょう!」
「そなたのぞんざいな態度では、どっちが王族か、わからないぞ……」


 呆れ顔の殿下が、私の手をとりダンスホールへ歩いていく。
 殿下がホールへ踊るために歩を進めれば、自然とホールの真ん中にスペースができる。


「では……」


 ステップを踏み始め広がったダンスホールの真ん中を優雅に踊る。


「ハリーとは、話できたか?」
「……できたと言えば、できました」
「何か、あったのだな?」
「するどいですね?」
「そらそうだろう……俺も、アンナを見てきたのだからな。ハリーも俺は、親友だと思っておるぞ?
 そんな二人だ、何かあれば、どんなに隠していてもわかる」


 私は、思わず微笑んでしまう。


「殿下には、かないませんね……ハリーとは、現在進行形で、この婚約の賛否でもめてます。
 あの、石頭!わかってくれないのです!」
「そうか……ハリーの気持ちもわからぬではない。
 それだけ、そなたのことを知らず知らず想ってきたということだろう……」


 私は、少し驚いた。
 なんとなくそうなのかな?と思うときもあったが、ハリーは私に対しては幼馴染、友人として接してきたのだ。
 確かに、デビュタントでは、冗談めかして未来の旦那様、奥様と言い合っていたのだが……


「……いつからですか?」
「そなたは、気づいてなかったのか……?ハリーは、気の毒になぁ……」
「もぅ!私が鈍感なのは、殿下も知っているでしょ!?
 鈍感でなければ、ダメだったので、気づかないふりをずっとしてきたのです!!
 殿下は、分かりやすくてよかったですよ?避けやすかったですから!」


 こら!とダンス中にも関わらず、殿下に叱られる。


「多分、ハリーは、アンナが、王太子妃になると思っていたのだ。
 だから、俺に遠慮して隠していたのだろう。
 俺から言わせれば、世話焼きすぎるので、バレバレであったがな。イリアも気づいているだろ?
 それで、そなたは、しなくてもいいやけどまでおったのだから……」


 懐かしそうに目を細め、微笑む殿下に私は苦笑いを返す。
 あの背中に負ったやけどは、イリアの心そのものだっただろう。
 振り向てくれないハリーとハリーに想われている私への嫉妬であったのだから。
 

「俺が思うにハリーは小さい頃からアンナを想っておったと思うぞ。
 それが、恋だと知らずに、ただ、アンナを大事に大事に誰にも奪われないように守っていた。
 ただ、俺だけには甘かったのを考えると、俺の臣下になる覚悟と王太子妃となるアンナという
 線引きを自分の中で知らず知らずしていたのだろう。
 そんなことせずとも、アンナを愛していると言えばよかったのにな」
「そうですか……そんな前から……」


 はははと殿下がおもしろうに笑う。
 私は、殿下が笑うことに訝しんだ。


「なんです?」
「いや、そなたら両想いなのに、別の道を生きるとアンナが言い切ったときのハリーの顔を想像してな。
 最近、しかも、婚約発表されたときにでも、アンナへの恋心に気づいたんじゃないか?ハリーは」


 チラッとハリーの方を見た殿下につられ、私もチラッと見る。


「お前たち、あまりにも自然に側にいすぎたのだ。すでに、夫婦という概念でなく、いわゆる半身だな。
 双子みたいなものだ」
「……双子ですか?」
「そうだ。常にどちらかに寄り添って生きてきたということだ。
 なのに、急にそなたは、ハリーの側を離れると言い出した。
 半身を失う辛さは、半身を持たぬ俺にはわからぬことだ」
「私は……どんなことがあっても、ハリーには生きてほしいのです。
 たとえ、私が、この世からいなくなったとしても……
 そのための希望として、『ハニーローズ』を私は選んだのです。
 でも、まだ、平行線なので……これ以上は、ハリーとは分かり合えないのかもしれませんね……」


「ハニーローズ?」
「はい。私の子供です」
「そなた……」
「まだですよ?これからです!!」


 殿下も私も顔が真っ赤だ……


「殿下もどうか、いずれ生まれくる我が子の力になってください。私は、それが望みです!」
「あぁ、わかった。そなたの望みは、叶えると誓ったのだ。任せておけ!」


 ちょうど、ダンスの音楽も途切れるところであった。
 そして、殿下は私をギュっと抱きしめてくれる。


「そなたは、そなたの道を行け!俺は、応援している!アンナ!!」


 殿下の応援に私は心強くなり頷いた。


「ありがとう……殿下!」


 最後にダンスの申し込みにきたのは、先ほどまで、話題になっていたハリーだった。
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