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ダンスは、いつまで続く?
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用意のいいハリーは、今回も私たちのために飲み物を用意してくれていた。
「はぁはぁ……ありがとう、ハリー!」
「楽しそうだったな……」
「うん、すっごく楽しかった!」
ちょっとむっとしているハリー。
そこにウィルがきた。
こちらも近衛の制服を着ているので、ジョージアとはまた違うカッコよさがある。
「姫さん、俺とも踊ってくれ!」
「ウィルと?踊れるの?」
ふぅ……と息を整えた私はウィルを見る。
すると、ふっと不敵に笑うウィル。
「もちろん、嗜み程度には踊れるさ!」
「ジョージア様、行ってきても?」
「あぁ、行っておいで!ちょっと、俺は休んでいるよ!」
ジョージアは、さすがに疲れたという顔をしている。
私に合わせて踊っていたのだろう。
いつもハリーと踊るより、ずっと体を使ったなと感じているのだから、ジョージアはそれ以上に披露しているだろう。
じゃじゃ馬を振り回すのは、かなり大変なのだそうだ。
「いこう!ウィル」
「ちょ……」
私がウィルの手を取り引きずられるようにホールへでる。
ちょうど新しい曲に代わるときであったため、カウントをとり踊る始めた。
ウィルは、ダンスは苦手なのかぎこちない。
「ウィルにも苦手なものがあるのね?」
「姫さんの苦手なものは、俺、知らないな……何?」
私の弱点を聞いて、何かのときに見舞ってやろうと言う魂胆なんだろう。
ウィルに私が勝てるのは、剣を握ったときくらいなのだから……勘弁してもらおうと思っていたが、無意識にハリーの方を見ていたらしい。
「へぇーまぁ、わかっていたけど、弱点ね。でも、もう使えそうにない弱点だな……」
「弱点、弱点って……私勉強も苦手だし、ウィルに勝てるものなんて少ないわよ!」
「そう思っているのは、姫さんだけ!」
軽口を言いあいながら、踊っているとだんだん波長が合ってきたのか、リードも楽そうだ。
「ジョージア様もヘンリー様もよくこんなじゃじゃ馬と上手に踊れるよな……」
「あぁーひどい!じゃじゃ馬は、関係なくない?」
「いや、あると思うぞ……ダンスでこんなに消耗するのって、姫さんが初めてだよ……」
「そうなの?でも、確かに下級貴族の方と踊ると、私も疲れるのよね……?
ハリーもジョージア様も私に合わせて踊ってくれてたってことなのね。
お兄様なんて、いまだに足踏まれるし……」
兄と私のダンスを思い浮かべたのか、ふっと笑うウィル。
きっと、兄が私の足を踏んでフラフラしたところひっぱりあげて、ごめんごめんという兄に私がもぅ!と怒っているそんなことを想像しているのだろう。
「ありがとう……ウィル。あなたに会えてよかったわ!」
「何言ってんだ?ローズディアへ来るんだ。これからもお付き合いしてくれるんだろう?もちろん」
「えぇ、ウィルさえその気なら、これまで通りよ!」
「楽しみにしてるよ!」
ウィルの顔を見ると笑っている。
そして、耳には、あのアメジストのピアスがあった。
「俺、姫さんから『愛の守護者』とか『誠実』とか、もらっちゃったからね。
姫さんの抱えてるもの、俺たちにもいつか任せてくれ。守護者として守ってやるからさ!」
「ふふふ、頼もしいわ!ありがとう、ウィル!」
音楽がちょうど鳴りやんだ。
ウィルに抱きつくと、背中を優しくポンポンとしてくれる。
「アンナ、次は僕と……」
「お兄様とですか?足、踏みません?」
ウィルに抱きつきながら、軽く兄を睨む。
すると、さっきの話を思い出したのか、ウィルが震えながら笑っている。
ウィルからするするっと兄に向かう。
「姫さん、我が国へようこそ!」
そういってウィルはホールの端へ出て行った。
「ウィルと何を話していたんだい?」
次の曲が流れてきたので、兄と踊り始める。
練習相手だった兄も立派に踊れるようになったようだ。
エリザベスの足を踏まないために、相当練習したもんな……私の足を犠牲にして……
「今後もよろしくって。ローズディアに行くからね。あとは、私の抱えているものをいつか任せて
くれって!ほんとにいい仲間に出会えたなぁーって思って」
「たしか、ウィルもセバスもナタリーもアメジストの宝飾品をつけているけど、あれは、アンナが
渡したものかい?」
ウィルの耳にあったピアスを見ていたなと思っていたら、そんな話になった。
家で話してもいい話のような気がする。
「うん。そうね。この前、エレーナの両親に会いに行ったときのお礼で渡したの。
エレーナにせがまれたから……エレーナにもピアスを渡したのだけど……」
「なるほどね……エリーも欲しいって言ってたから、何かあるのかな?って思って……アンナからの
下賜品か」
「そんな大層なものじゃないですよ……」
このタイミングで兄とのダンスは終わった。
「大層なものになったんじゃないかな?あの子たちにとっては……」
その言葉だけを残して、私をダンスホールの真ん中に残し、兄は隅へ行く。
私は、その言葉の意味をかみしめ、兄の後姿を見送る。
「アンナ!次は俺だ!」
振り向くと、殿下が私を見て微笑んでいた。
「はぁはぁ……ありがとう、ハリー!」
「楽しそうだったな……」
「うん、すっごく楽しかった!」
ちょっとむっとしているハリー。
そこにウィルがきた。
こちらも近衛の制服を着ているので、ジョージアとはまた違うカッコよさがある。
「姫さん、俺とも踊ってくれ!」
「ウィルと?踊れるの?」
ふぅ……と息を整えた私はウィルを見る。
すると、ふっと不敵に笑うウィル。
「もちろん、嗜み程度には踊れるさ!」
「ジョージア様、行ってきても?」
「あぁ、行っておいで!ちょっと、俺は休んでいるよ!」
ジョージアは、さすがに疲れたという顔をしている。
私に合わせて踊っていたのだろう。
いつもハリーと踊るより、ずっと体を使ったなと感じているのだから、ジョージアはそれ以上に披露しているだろう。
じゃじゃ馬を振り回すのは、かなり大変なのだそうだ。
「いこう!ウィル」
「ちょ……」
私がウィルの手を取り引きずられるようにホールへでる。
ちょうど新しい曲に代わるときであったため、カウントをとり踊る始めた。
ウィルは、ダンスは苦手なのかぎこちない。
「ウィルにも苦手なものがあるのね?」
「姫さんの苦手なものは、俺、知らないな……何?」
私の弱点を聞いて、何かのときに見舞ってやろうと言う魂胆なんだろう。
ウィルに私が勝てるのは、剣を握ったときくらいなのだから……勘弁してもらおうと思っていたが、無意識にハリーの方を見ていたらしい。
「へぇーまぁ、わかっていたけど、弱点ね。でも、もう使えそうにない弱点だな……」
「弱点、弱点って……私勉強も苦手だし、ウィルに勝てるものなんて少ないわよ!」
「そう思っているのは、姫さんだけ!」
軽口を言いあいながら、踊っているとだんだん波長が合ってきたのか、リードも楽そうだ。
「ジョージア様もヘンリー様もよくこんなじゃじゃ馬と上手に踊れるよな……」
「あぁーひどい!じゃじゃ馬は、関係なくない?」
「いや、あると思うぞ……ダンスでこんなに消耗するのって、姫さんが初めてだよ……」
「そうなの?でも、確かに下級貴族の方と踊ると、私も疲れるのよね……?
ハリーもジョージア様も私に合わせて踊ってくれてたってことなのね。
お兄様なんて、いまだに足踏まれるし……」
兄と私のダンスを思い浮かべたのか、ふっと笑うウィル。
きっと、兄が私の足を踏んでフラフラしたところひっぱりあげて、ごめんごめんという兄に私がもぅ!と怒っているそんなことを想像しているのだろう。
「ありがとう……ウィル。あなたに会えてよかったわ!」
「何言ってんだ?ローズディアへ来るんだ。これからもお付き合いしてくれるんだろう?もちろん」
「えぇ、ウィルさえその気なら、これまで通りよ!」
「楽しみにしてるよ!」
ウィルの顔を見ると笑っている。
そして、耳には、あのアメジストのピアスがあった。
「俺、姫さんから『愛の守護者』とか『誠実』とか、もらっちゃったからね。
姫さんの抱えてるもの、俺たちにもいつか任せてくれ。守護者として守ってやるからさ!」
「ふふふ、頼もしいわ!ありがとう、ウィル!」
音楽がちょうど鳴りやんだ。
ウィルに抱きつくと、背中を優しくポンポンとしてくれる。
「アンナ、次は僕と……」
「お兄様とですか?足、踏みません?」
ウィルに抱きつきながら、軽く兄を睨む。
すると、さっきの話を思い出したのか、ウィルが震えながら笑っている。
ウィルからするするっと兄に向かう。
「姫さん、我が国へようこそ!」
そういってウィルはホールの端へ出て行った。
「ウィルと何を話していたんだい?」
次の曲が流れてきたので、兄と踊り始める。
練習相手だった兄も立派に踊れるようになったようだ。
エリザベスの足を踏まないために、相当練習したもんな……私の足を犠牲にして……
「今後もよろしくって。ローズディアに行くからね。あとは、私の抱えているものをいつか任せて
くれって!ほんとにいい仲間に出会えたなぁーって思って」
「たしか、ウィルもセバスもナタリーもアメジストの宝飾品をつけているけど、あれは、アンナが
渡したものかい?」
ウィルの耳にあったピアスを見ていたなと思っていたら、そんな話になった。
家で話してもいい話のような気がする。
「うん。そうね。この前、エレーナの両親に会いに行ったときのお礼で渡したの。
エレーナにせがまれたから……エレーナにもピアスを渡したのだけど……」
「なるほどね……エリーも欲しいって言ってたから、何かあるのかな?って思って……アンナからの
下賜品か」
「そんな大層なものじゃないですよ……」
このタイミングで兄とのダンスは終わった。
「大層なものになったんじゃないかな?あの子たちにとっては……」
その言葉だけを残して、私をダンスホールの真ん中に残し、兄は隅へ行く。
私は、その言葉の意味をかみしめ、兄の後姿を見送る。
「アンナ!次は俺だ!」
振り向くと、殿下が私を見て微笑んでいた。
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