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王たちの会合

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「先日、息子は、アンナリーゼと婚約について話しをしたそうだ。
 アンナリーゼのことは諦めると申してきた。実に残念だ!
 それで、昨日、ローズディア公国公女と話をし、今後、公女との婚約に向けて進むと決めたそうだ」
「誠でございますか?あの子が、アンナリーゼを諦めるとは……」
「何か、心境の変化があったのだろう。成長とみて見守っていくとしよう……
 そこで、息子からだが、アンナリーゼの婚約については、彼女のしたいようにさせてあげてほしい
 とのことだった」
「彼女のしたいようにですか?それは、どんな未来なのでしょうか?」


 宰相であるサンストーン公爵が訪ねると、若干忌々し気に睨みを効かせる。


「そちの息子との婚約ではないか?学園では、かなり有名らしいな。とても仲がよいと」
「さようですか……?
 うちの息子もアンナリーゼも全く何もそのような話をしていないようですが……」
「いったい、どうなっておるのだろうな?
 まさか、息子たちの恋愛まで、心配しないといけないとは……」
「全くです……」


 国の頂にいる三人は、息子たちの恋愛事情にため息をつくばかりだ。
 引き続き、アンナリーゼの動きについては、要注意として、今日は解散とした。



 ◇◆◇◆◇



 翌日、ローズディア公国から、かねてより提案されていた両国の集団政略結婚について連絡が来ていると連絡があった。
 余は、息子が、アンナリーゼを手にできなかったことをとても残念に思っていた。
 執務を疎かにしてしまうくらいは。

 そういえば、息子のことで頭がいっぱいですっかり忘れていたが、ローズディアから受け入れる令嬢たちの方は、まだ婚約先が準備ができていないと聞いていた。
 今日は、そちらの選出の話があるということで大臣がきていたが、ローズディアへの行く令嬢の決裁も欲しいと持ってきた。


 興味があまりなかった余は、中身を確認することなく王印を押す。


 そのリストの2番目に書かれている名前を王は書類を確認しなかったことによって見落とした。


『アンナリーゼ・トロン・フレイゼン』


 独身であり、侯爵位の令嬢。


 王印が押されたことで、ローズディアへ使者が使わされた。
 翌週には、ローズディア公国より、思いもよらない連絡がきてしまう。



「アンナリーゼをローズディアの王室へ迎え入れたいとな!?いったいどうなっておる!!」
「はい……それが、先日送った独身貴族のリストに、フレイゼン大臣の令嬢が含まれて……」
「なんだって!!それは、どういうことだ!」
「余は知らぬぞ?」
「私も知りません」
「いえ、陛下には採決の王印をいただいています……こちらを……」


 そこに出てきたのは、先日、確認もせずに王印を押した書類であった。


 確かにリストにはアンナリーゼの名前がしっかりと載っている。


「陛下……やってしまいましたね……?
 王印を押して出してしまった以上、間違いでしたではなんとも……しかも、フレイゼン侯爵家です。
 あちらも手ぐすね引いて待っていたでしょうから、この書類の取り消しはできないでしょう」
「…………余のミスだ……すまぬ」
「これは、とりあえず、フレイゼンに伝えるべきだな……」
「フレイゼンをこれへ!」



 陛下の一言で、動き始める侍従たち。



「フレイゼン、陛下の召喚により、まかり越しました」
「あぁ、よく来てくれた。
 フレイゼンよ、聞き及んでいるかもしれぬが、息子はどうもそちの娘に振られたらしい。
 それは、息子の不徳の致すところだから、よい。
 ローズディア公国のシルキー公女と前向きに婚約を考えると言っておるからの」
「そうですか。アンナリーゼからは、殿下より話があったことも聞き及んでおります。
 そして、断ったことも。
 あと、伝わっているか怪しいですが、殿下には、元々シルキーをお勧めしているらしいですよ?
 とてもいい子らしいので……」


 フレイゼンの話を聞き、息子の不甲斐なさをさらに痛感した。 
 すでにアンナリーゼから、シルキーを薦められていたとは、一体どういうことなのか。
 とりあえず、その話は別とし、今のまずい状況を話すことにした。


「あぁ、それは、余も聞いていて、息子もアンナリーゼに比べると、とてもいい子だと言っていたので、
 このまま、まとめようと思っておる。賭けは、そちの勝ちじゃが、あの時の約束は覚えておろう?」
「もちろんでございます。シルキー様を全面的に後ろ盾することは、アンナリーゼからも頼まれている
 ことですので、そこは約束違わず、後見人となりましょう」



 一息置き、愛娘が隣国へ旅立つかもしれないということを伝えるため、重い口を開けた。



「それでだな……フレイゼンよ、驚くではないぞ?
 この度、未婚の物を集団政略結婚をさせることになっているのは、知っておるか?」
「はい。もちろんです。そこに、アンナリーゼの名前が入っていたこともすでに、ローズディアの
 公室より連絡をもらっており、婚約打診を受けております」


 深い深いため息を余はつくことになった。


「今更……ダメとは、言えない状況だな……」
「と、いいますと?」
「アンナリーゼは、わが国で誰かとまとめようとしておったのだ。宰相の息子でもよいしな……」
「あぁ、なるほど……ちなみですが、ローズディアの公室より打診はありましたが、本人が断って
 しまいました!」


 フレイゼンの言ったことが理解できず、素っ頓狂な声がでた。
 余だけではない。宰相も大臣もであった。


「「「は?」」」



 陛下、宰相、大臣は、フレイゼンの言葉を疑った。


「今なんといった?断った?」
「はい、断りました。アンナリーゼが自ら……しかも、正式な文書として……」



 絶句である……。
 上位の者に対し、婚約を断る……そんなことやってのけられるのだろうか?



「断っただと?トワイス国の王太子でもローズディアの公世子でもダメなのか?
 誰ならいいのだ……?」



 余は、頭を抱え、チラッと宰相を見た。
 やはり、宰相の息子しかいないのだろうか……



「直談判して、ローズディア公国アンバー公爵家、
 ジョージア様なら嫁ぎますと本人がローズディアまで行って宣言してきたらしいです。
 昨日、一報で手紙が来てましたが……」
「「「え?」」」
「ん?」
「いや、今、なんと申した?本人がローズディアまで行って……?」
「あぁ……そうです。
 しつこくなるようにと言ってきていたので、ちょっと行ってくると言って出てってしまいました。
 あの行動力は、母親似なんですかね……」



 フレイゼンは、簡単に言ってしまったが、それって……勇ましすぎやしないか?
 また、話を盛ったんではないだろうか?


「フレイゼン……」
「はい、陛下」
「それで、どうなった……?」


 もう、どうなったか答えを聞いた方が早い。


「結果は、見事ジョージア様の婚約者としてローズディアで認められたらしいです。
 時期的に、殿下と公女の婚約発表の後でないとということになり、とりあえず、保留らしいです。
 あと、ジョージア様にも確認は必要ですしね」


 余としては、一番おさまってほしくないところに、アンナリーゼはおさまってしまった。



「アンバーの倅め……」



 卒業式に続き、婚約までも……忌々しい限りであった。
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