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二人だけのお茶会Ⅲ
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兄の部屋の扉をノックする。
当然部屋の主は、今私の部屋に置いてきたのでいない。
部屋にいるのは、隣国ローズディア公国アンバー公爵家のジョージアだけだ。
「アンナリーゼです。入りますね」
一呼吸おいて、扉を開くと部屋の応接セットにゆったりと座っているジョージアの姿が目に入った。
こちらを振り返っている。
「ジョージア様、ようこそ我が家においでくださいました」
私は、扉の前で一礼してジョージアの座っている正面のソファに腰掛ける。
「アンナリーゼ嬢、今日は時間を作ってもらいありがとう」
ジョージアの落ち着いた声が、私にとってとても心地よい。
思わずといった笑みがこぼれてしまう。
「こちらこそ、兄と入れ替わりなんて失礼なことをしてしまい、申し訳ございません。
私のことは、どうかアンナとお呼びください」
この交換お茶会は、明らかに招待者に対し失礼になるので謝っておく。
そして、こんなときにしか呼び方なんてお願いできないので、アンナと呼んでもらえるようお願いしておくことにした。
正面のジョージアが、何故か面白そうに笑っているのだ……
「えっ? どこかおかしなところがありましたか? 」
変なこと言った覚えもないので、訝しむしかない。
「いや、兄妹だなと思って。
先ほどサシャにも同じようなことを言われたよ。
気にすることはない。
君のことを大切に思う兄の気持ちが少しわかった気がするよ」
「あの……兄が、私想いってことですか?
それなら、私も、兄のことが好きですよ。
伺っているかもしれませんが、今日はジョージア様を招待するにあたって、
兄にも協力してもらわないといけなかったので、その代りというと相手の方に
失礼ですが、私のお友達を紹介させてもらいました。
兄の人柄にはもちろん太鼓判押しますが、私の友人も兄とならとてもお似合いの方
だと私思ってます。
そういえば、ジョージア様は一人っ子でしたよね?」
今日の招待についても、当事者であるジョージアには、話しておかなければいけないなと思い補足しておくことにする。
「そうだね。
でも、サシャとアンナの話をしていると俺にも妹ができたような気持ちになったよ。
君のクラスの子がサシャを呼びにくると、サシャと一緒にハラハラしたり、浮かれたりしているよ。
それと、敬語もなし、ジョージアと呼んで構わない」
早速、アンナと呼んでくれるようだ。なんだか、照れくさい。
ジョージアには、呼び捨てにと言われるが、私の中ではやはり「様」とつけておきたい。
「いえ、ジョージア様と呼ばせてください。
敬語は……すぐには難しいので、おいおい直していきます……」
「なんだか、様と呼ばれると距離が……君は、もう俺の……」
なんだろう? もう俺の……? どういうことなんだろうか?
次の言葉を待つことにして、視線で促してみることにした。
「あ……いや……俺の妹みたいなものだと言いたくて」
私は、なるほどと納得した。
今さっき、言われたばかりだもの。
自分にも妹ができたようだと。
それでは、そうなんだろう。
兄から聞かされている限りは、本当に兄になったかのように心配してくれているらしい。
でも、きっと自覚のある恋心というものもしっかりもっているのはなんとなく反応でわかったので……他にも考えていたのかもしれない。
その後は、普通に学園の中庭にある花について話をした。
私も秘密のお茶会に出かける関係でそこそこ通っているのだが、それ以上にジョージアも通っているらしい。
なのに、一度も中庭で会ったことない。
もしかしたら、私が知らないだけでジョージアは見かけていたのかもしれない。
なんせ、私の周りには常に人だかり……身動きがとれないでいるのが現状だ。
廊下を歩くと渋滞になるので、なるべく自席にいるか、中庭にいるかなのだが……
それでも、人の輪はすごいことになっている。
たまにこっそり図書館の誰も来ないようなところで本を読んだりしているのだが、そこの窓から中庭が一望できる。
それでも、ジョージアを見かけたことはなかった。
時間のずれからなのだろう。
私は、ジョージアに図書館での行動は、把握されているとは思っていないのだが……
それは、またのお話。
「そうそう。
最近、兄と私の話をするそうですが、兄の話は、話半分で聞いてくださいね。
本当、話を盛られるので否定するのも大変なんです!
まぁ、でも大筋は合っているのでなかなか否定しきれないところもあるのですけど……」
私は、最近の兄とのお茶会で報告されたことをジョージアにも釘を打っておこうと考えた。
「わかった。そのように思っておこう。
ただ、俺も聞く限りでは、結構なお転婆が聞こえてくるようだけど……」
あはははは……と、から笑いして誤魔化すしかない。
聞こえていくものは、ほとんど正解なのだから……
母にも言われていたが、本当に自重した方がよさそうだ。
これは、かなり反省である。
「俺は、それもいいと思うよ。
それも含めてアンナだし、突き詰めるといい話も多い。
上級貴族として下級貴族を導くのも立派な行いだからね。
俺なんて、何もしていないのだから、それに比べればアンナは貴族令嬢として立派だよ」
反省モードに入るところだった私に、そのままでいいと言ってくれたことがとても嬉しかった。
大体揉め事があるときって、上級貴族が下級貴族に無茶難題を吹っかけていることが多い。
そこを勇ましく……いや、華麗に解決しようとするのだが、失敗する。
結局、殿下やハリーが表に立ち大事になってしまい、聞こえめでたいことになっているのが現状。
一人で片付けられるのに、過保護な幼馴染たちのおかげで、私も困っているのだ。
でも、お転婆評価と同じように立派だと言ってくれるのはとても嬉しい。
「そんなことないです。
ジョージア様がいるだけで抑止力になっているところが、ローズディア側にはあるのです。
私たち自国は、殿下がいらっしゃいますが、恥ずかしいことに学校内でも派閥があり何かと
争っているのです。
恥ずかしい話ではありますが……私たちフレイゼンも一応、殿下の派閥らしいのです。
最近困ったことに第3の勢力として、私が頭にされてしまっています。
否定してもなかなか。
最悪なことに、将来の王妃派閥なんて不名誉な言われようですよ」
「王妃派閥と言われるのが、不名誉というのは、アンナぐらいだと思うけど……
なんとなく、担ぎ上げたいのはわかる気がするよ」
ジョージアの優しいほほ笑みも聞いてくれる安心感に負けて、愚痴を言ってしまう。
まずかった……
「それは、王子も君を手に入れるのに必死ということじゃないのかな?
気づいていないとは言わないよね?」
そして、確信を言われ思わず、はぁ……と大きくため息をつく。
「失礼しました。やはり、そうなのでしょうか……
ジョージア様にこんな話してもいいのか分かりませんが、派閥・国内外関係なく
今現在ものすごい縁談の申し込みがあるのです。
筆頭は、殿下なのですが……私にはそんな気は全くないのでお断りし続けているのです。
幼馴染としていつも近くにいるせいか、もう婚約したと周知の事実になっています。
実際は、断り続けているのにですよ?
それでも縁談話が尽きないのは、私を王妃に据えたくない派閥からの申し出のようですね。
まだ、サンストーン家からの申し出がないだけマシだと思っているのですが、
もう好きなように思いこませておくことにしています」
「聞いてもいいかい?
アンナは、王妃にと望まれているのに嫌なのかい?
他に何かあるのかい?」
兄に色恋沙汰の相談をしてもさっぱりなのに対し、銀髪の君は学園の人気者。
ひっそり佇んでいることもあるが、好意の目で見られることは私以上に多いのだ。
他人に聞いてほしい衝動にかられたことと、ジョージアの聞いてくれるという雰囲気が、いろいろと話してしまう所以だろう。
「そうですね。そんな風に望まれることは、私自身とても光栄に思います。
ただ、私はその器ではございません。
幼馴染だからと、その地位に納まるのも嫌なのです。
確かに名誉も贅も欲しいままでしょうが、私、そういったものには興味がないのです。
名誉も増えれば、義務も増えますしね」
「アンナは、しっかりしているんだね。
自分の器まで把握しているなんて。
でも、俺から言わせれば、君ほど王妃が似合う人はいないと思うんだけど?」
ジョージアに、王妃推薦される。
でも、私はあなたの奥さんになって、あなたとの子供を産むことを既に選んでいるのですよ。
そういえれば楽なのだが、そういうわけにはいかないのではぐらかして逃げることにする。
「ジョージア様にそう言ってもられるのなら、そうなのかもしれません。
でも、私、やりたいことがあるので、決して王室に入ったりはしませんよ。
やりたいことは、ジョージア様に問われたとしても何かと申せません。
でも、王室に入ってしまえば、私の望むものも未来も閉ざされてしまいますとだけ……
それ以上は聞かないでください」
これは、恋ではない。
政略結婚のようなものだ。
でも、小さい頃から見続けている夢のおかげか、すでにジョージアへ愛情を抱いている。
夢の結末は最悪なものだが、それでも愛情を惜しみなくジョージアに注ぎたいという欲求は、私の中で育っているようだ。
当然部屋の主は、今私の部屋に置いてきたのでいない。
部屋にいるのは、隣国ローズディア公国アンバー公爵家のジョージアだけだ。
「アンナリーゼです。入りますね」
一呼吸おいて、扉を開くと部屋の応接セットにゆったりと座っているジョージアの姿が目に入った。
こちらを振り返っている。
「ジョージア様、ようこそ我が家においでくださいました」
私は、扉の前で一礼してジョージアの座っている正面のソファに腰掛ける。
「アンナリーゼ嬢、今日は時間を作ってもらいありがとう」
ジョージアの落ち着いた声が、私にとってとても心地よい。
思わずといった笑みがこぼれてしまう。
「こちらこそ、兄と入れ替わりなんて失礼なことをしてしまい、申し訳ございません。
私のことは、どうかアンナとお呼びください」
この交換お茶会は、明らかに招待者に対し失礼になるので謝っておく。
そして、こんなときにしか呼び方なんてお願いできないので、アンナと呼んでもらえるようお願いしておくことにした。
正面のジョージアが、何故か面白そうに笑っているのだ……
「えっ? どこかおかしなところがありましたか? 」
変なこと言った覚えもないので、訝しむしかない。
「いや、兄妹だなと思って。
先ほどサシャにも同じようなことを言われたよ。
気にすることはない。
君のことを大切に思う兄の気持ちが少しわかった気がするよ」
「あの……兄が、私想いってことですか?
それなら、私も、兄のことが好きですよ。
伺っているかもしれませんが、今日はジョージア様を招待するにあたって、
兄にも協力してもらわないといけなかったので、その代りというと相手の方に
失礼ですが、私のお友達を紹介させてもらいました。
兄の人柄にはもちろん太鼓判押しますが、私の友人も兄とならとてもお似合いの方
だと私思ってます。
そういえば、ジョージア様は一人っ子でしたよね?」
今日の招待についても、当事者であるジョージアには、話しておかなければいけないなと思い補足しておくことにする。
「そうだね。
でも、サシャとアンナの話をしていると俺にも妹ができたような気持ちになったよ。
君のクラスの子がサシャを呼びにくると、サシャと一緒にハラハラしたり、浮かれたりしているよ。
それと、敬語もなし、ジョージアと呼んで構わない」
早速、アンナと呼んでくれるようだ。なんだか、照れくさい。
ジョージアには、呼び捨てにと言われるが、私の中ではやはり「様」とつけておきたい。
「いえ、ジョージア様と呼ばせてください。
敬語は……すぐには難しいので、おいおい直していきます……」
「なんだか、様と呼ばれると距離が……君は、もう俺の……」
なんだろう? もう俺の……? どういうことなんだろうか?
次の言葉を待つことにして、視線で促してみることにした。
「あ……いや……俺の妹みたいなものだと言いたくて」
私は、なるほどと納得した。
今さっき、言われたばかりだもの。
自分にも妹ができたようだと。
それでは、そうなんだろう。
兄から聞かされている限りは、本当に兄になったかのように心配してくれているらしい。
でも、きっと自覚のある恋心というものもしっかりもっているのはなんとなく反応でわかったので……他にも考えていたのかもしれない。
その後は、普通に学園の中庭にある花について話をした。
私も秘密のお茶会に出かける関係でそこそこ通っているのだが、それ以上にジョージアも通っているらしい。
なのに、一度も中庭で会ったことない。
もしかしたら、私が知らないだけでジョージアは見かけていたのかもしれない。
なんせ、私の周りには常に人だかり……身動きがとれないでいるのが現状だ。
廊下を歩くと渋滞になるので、なるべく自席にいるか、中庭にいるかなのだが……
それでも、人の輪はすごいことになっている。
たまにこっそり図書館の誰も来ないようなところで本を読んだりしているのだが、そこの窓から中庭が一望できる。
それでも、ジョージアを見かけたことはなかった。
時間のずれからなのだろう。
私は、ジョージアに図書館での行動は、把握されているとは思っていないのだが……
それは、またのお話。
「そうそう。
最近、兄と私の話をするそうですが、兄の話は、話半分で聞いてくださいね。
本当、話を盛られるので否定するのも大変なんです!
まぁ、でも大筋は合っているのでなかなか否定しきれないところもあるのですけど……」
私は、最近の兄とのお茶会で報告されたことをジョージアにも釘を打っておこうと考えた。
「わかった。そのように思っておこう。
ただ、俺も聞く限りでは、結構なお転婆が聞こえてくるようだけど……」
あはははは……と、から笑いして誤魔化すしかない。
聞こえていくものは、ほとんど正解なのだから……
母にも言われていたが、本当に自重した方がよさそうだ。
これは、かなり反省である。
「俺は、それもいいと思うよ。
それも含めてアンナだし、突き詰めるといい話も多い。
上級貴族として下級貴族を導くのも立派な行いだからね。
俺なんて、何もしていないのだから、それに比べればアンナは貴族令嬢として立派だよ」
反省モードに入るところだった私に、そのままでいいと言ってくれたことがとても嬉しかった。
大体揉め事があるときって、上級貴族が下級貴族に無茶難題を吹っかけていることが多い。
そこを勇ましく……いや、華麗に解決しようとするのだが、失敗する。
結局、殿下やハリーが表に立ち大事になってしまい、聞こえめでたいことになっているのが現状。
一人で片付けられるのに、過保護な幼馴染たちのおかげで、私も困っているのだ。
でも、お転婆評価と同じように立派だと言ってくれるのはとても嬉しい。
「そんなことないです。
ジョージア様がいるだけで抑止力になっているところが、ローズディア側にはあるのです。
私たち自国は、殿下がいらっしゃいますが、恥ずかしいことに学校内でも派閥があり何かと
争っているのです。
恥ずかしい話ではありますが……私たちフレイゼンも一応、殿下の派閥らしいのです。
最近困ったことに第3の勢力として、私が頭にされてしまっています。
否定してもなかなか。
最悪なことに、将来の王妃派閥なんて不名誉な言われようですよ」
「王妃派閥と言われるのが、不名誉というのは、アンナぐらいだと思うけど……
なんとなく、担ぎ上げたいのはわかる気がするよ」
ジョージアの優しいほほ笑みも聞いてくれる安心感に負けて、愚痴を言ってしまう。
まずかった……
「それは、王子も君を手に入れるのに必死ということじゃないのかな?
気づいていないとは言わないよね?」
そして、確信を言われ思わず、はぁ……と大きくため息をつく。
「失礼しました。やはり、そうなのでしょうか……
ジョージア様にこんな話してもいいのか分かりませんが、派閥・国内外関係なく
今現在ものすごい縁談の申し込みがあるのです。
筆頭は、殿下なのですが……私にはそんな気は全くないのでお断りし続けているのです。
幼馴染としていつも近くにいるせいか、もう婚約したと周知の事実になっています。
実際は、断り続けているのにですよ?
それでも縁談話が尽きないのは、私を王妃に据えたくない派閥からの申し出のようですね。
まだ、サンストーン家からの申し出がないだけマシだと思っているのですが、
もう好きなように思いこませておくことにしています」
「聞いてもいいかい?
アンナは、王妃にと望まれているのに嫌なのかい?
他に何かあるのかい?」
兄に色恋沙汰の相談をしてもさっぱりなのに対し、銀髪の君は学園の人気者。
ひっそり佇んでいることもあるが、好意の目で見られることは私以上に多いのだ。
他人に聞いてほしい衝動にかられたことと、ジョージアの聞いてくれるという雰囲気が、いろいろと話してしまう所以だろう。
「そうですね。そんな風に望まれることは、私自身とても光栄に思います。
ただ、私はその器ではございません。
幼馴染だからと、その地位に納まるのも嫌なのです。
確かに名誉も贅も欲しいままでしょうが、私、そういったものには興味がないのです。
名誉も増えれば、義務も増えますしね」
「アンナは、しっかりしているんだね。
自分の器まで把握しているなんて。
でも、俺から言わせれば、君ほど王妃が似合う人はいないと思うんだけど?」
ジョージアに、王妃推薦される。
でも、私はあなたの奥さんになって、あなたとの子供を産むことを既に選んでいるのですよ。
そういえれば楽なのだが、そういうわけにはいかないのではぐらかして逃げることにする。
「ジョージア様にそう言ってもられるのなら、そうなのかもしれません。
でも、私、やりたいことがあるので、決して王室に入ったりはしませんよ。
やりたいことは、ジョージア様に問われたとしても何かと申せません。
でも、王室に入ってしまえば、私の望むものも未来も閉ざされてしまいますとだけ……
それ以上は聞かないでください」
これは、恋ではない。
政略結婚のようなものだ。
でも、小さい頃から見続けている夢のおかげか、すでにジョージアへ愛情を抱いている。
夢の結末は最悪なものだが、それでも愛情を惜しみなくジョージアに注ぎたいという欲求は、私の中で育っているようだ。
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