21 / 1,480
招待状Ⅱ
しおりを挟む
アンナリーゼの部屋を出てから、しばらく歩くとまた、一人で出歩いているジョージアと出会った。
僕は、結構な頻度でジョージアと出くわすような気がする。
「ジョージア様、先日はご招待していただきありがとうございまた」
まずは、挨拶がてら先日のお礼から話し始めることにした。
「あぁ、サシャ殿か。こちらこそ、話ができてよかった!」
「ところで、どこかに出かけられますか?
これから、伺おうとしていたのですが、お邪魔でしたら、また改めて……」
そう言ったところで、ジョージアに遮られる。
「いや、ちょっと息抜きに出てきただけだから、よかったら一緒に散歩にいかないか?」
特にこれからの用事もなかったので、僕は一緒に行くと返事をする。
なぜか、ジョージアが嬉しそうにしている。
ん? と思ったが、気にせず、一緒に中庭に向かうことにした。
「そういえば、チューリップの見ごろはもう終わりだと聞いていますが、また、
新しい花でも咲くのですか?」
聞いてみるものだ。
こんな質問でも、きちんと答えてくれる。
「今度は、東の端にある国にある「ハス」という花が咲くそうだ。
ちょうどこれくらいのピンクの花が咲くとか。
まだ、見ていないけど、水の中で咲くと聞いて見に行こうとしているんだ。
珍しいと思わないかい?」
ジョージアに言われ、ちょっと想像をしてみるが、イメージが全くわかない。
あれから、花の図鑑など見漁ってみたけれど、東の端の国のものまではなかった。
「水の中に咲く花ですか? 不思議なものですね……想像がつきませんよ」
そうこう話しているうちに中庭についた。
でも、どこに咲いているのか見当がつかなかったため、ぶらぶらしていると池にポコッと浮いているピンク色のものが見える。
「あれ、ですかね……? 」
恐る恐るジョージアを見てみると、うんうんと頷いている。
先ほど、話していたくらいの大きさのピンクの花が何個か浮いている。
「上からみてみようか? 」
池を見渡せるように東屋が設置してあるので、二人でそこへ足を運ぶ。
かわいい女の子とならいざしらず……妹の未来の旦那だと思うと、せつない。
そして、かなり美人なのだ。
下手に女の子と一緒にいるより、なぜかぐっと緊張した。
対面に優雅に座るジョージアは、先ほどの花を指さし、なかなかのものだと満足そうにしている。
僕もそちらに視線をうつすと、ジョージアのいうとおり見事な花であった。
「美しいですね。今度、妹にも教えてあげます」
「そうしてあげてくれ。去年はなかった花だ。気に入ってもらえるといいがな」
一通り目で楽しんだわけだが、そろそろ本題を伝えてもいいころじゃないだろうか?
「ジョージア様、我が家への招待状をお渡ししたく……今でもいいでしょうか? 」
そういって先ほど書いたばかりの招待状をポケットより出す。
なんだか、雰囲気のある東屋のおかげで、ラブレターでも渡しているようである。
僕は、そんな気は、全くないのだけど……
「そういえば、日にちは決まったの?」
「はい。そうですね。翌週の休日にさせていただきました。
一応妹の外聞もかんがみさせていただいて、ジョージア様へは僕からの招待状ということに
なっています。
ですが、我が家にいらしたら妹と話ができるように用意させていただいてます。
隠れ蓑というわけではないのですが、実は当日もう一方呼ぶことになっています。
アンナの友人なのですが、誰かまでは聞かされていません。
こちらの方は、私のほうで対応させていただくことになっています」
ほぅという言葉と面白いという顔でこちらをじっくり見られ、僕は少し恥ずかしくなった。
「それは、どちらが言い出したのだ? 」
「どちらと言いますと?
あえて言うなら二人でってところでしょうか?
妹は、何せものすごい縁談の数を受けていますからね。
特定の方と会っているとなると外聞がよくないですし、私はこのとおりモテませんから……
妹にあやかることになりました」
なるほどと頷いている。
納得しているらしい。
それはそれでちょっと! と思うが、事実、妹の縁談話はすさまじい。
それに比べ、全く何もないのは僕だ。
それを妹がなんとかしてくれると言ってくれるのだ。
すがれるものにはすがる。
ジョージアみたいにわらわら言い寄られるのも大変だが、全くないのも大変なのだ!
そして、卒業式のエスコートも控えている今現在、大変困っているのも事実。
今から打てる手は打っておかないと当日、泣くのは僕自身なのだ……
あぁ……妹よ……僕の天使!
いつもは、あれだけど……と、一人の世界に入っていった僕はジョージアに不思議そうに見つめられていた。
「サシャ殿? 戻ってきてくれ……」
「あ……はい、ただいま戻りました、ジョージア様。
と、いうことでですね、当日、妹のこと、よろしくお願いします」
そこまで言うと、僕は楽しみすぎて、また向こうの世界に戻りそうである。
「そうだ、家に招待してもらう仲になるのだ。
そろそろ、ジョージアと呼んでほしいのだが……
あと、もう少し砕けた話方で……」
目を明後日の方に泳がせたいが、この蜂蜜の瞳には何か特別な魔法でもかかっているのか……逸らせない。
「滅相もないですよ。と言いたいとこだけど、いいんで? そんなこと言っても」
「あぁ、構わない。正直、誰も彼もがかしこまって寄ってくるのはちょっと窮屈なんだ。
その方がありがたい。できれば、教室でもそうしてほしい」
そこで、ジョージアは、ほんのり微笑。
落ちない令嬢はいないだろう……何その笑顔……僕、恋に落ちそうですけど……ちょっと赤面。
「わかった。これからは、そのように。では、僕からも。サシャと呼んで」
こちらは、妹と同じ土台のはずなのだが、なぜか平凡な顔立ちになっている自分の最高の笑顔でお願いしておく。
「ん。サシャ、今度の招待、楽しみにしている! 」
そこで話は終わり、寮までまた一緒に歩く。
ちらほら、カップルが中庭の散策をしているのが見えていた。
男二人で中庭を散歩していることが、恥ずかしくなり二人とも赤面だ。
お互いの顔をみて指摘し合って、大きな声で笑ってしまう。
なんだ、ジョージアってかなりいいやつじゃん! 僕、かなり気に入ったかもしれない。
今日のひと時を両親への報告として書くことに決めたところだった。
僕は、結構な頻度でジョージアと出くわすような気がする。
「ジョージア様、先日はご招待していただきありがとうございまた」
まずは、挨拶がてら先日のお礼から話し始めることにした。
「あぁ、サシャ殿か。こちらこそ、話ができてよかった!」
「ところで、どこかに出かけられますか?
これから、伺おうとしていたのですが、お邪魔でしたら、また改めて……」
そう言ったところで、ジョージアに遮られる。
「いや、ちょっと息抜きに出てきただけだから、よかったら一緒に散歩にいかないか?」
特にこれからの用事もなかったので、僕は一緒に行くと返事をする。
なぜか、ジョージアが嬉しそうにしている。
ん? と思ったが、気にせず、一緒に中庭に向かうことにした。
「そういえば、チューリップの見ごろはもう終わりだと聞いていますが、また、
新しい花でも咲くのですか?」
聞いてみるものだ。
こんな質問でも、きちんと答えてくれる。
「今度は、東の端にある国にある「ハス」という花が咲くそうだ。
ちょうどこれくらいのピンクの花が咲くとか。
まだ、見ていないけど、水の中で咲くと聞いて見に行こうとしているんだ。
珍しいと思わないかい?」
ジョージアに言われ、ちょっと想像をしてみるが、イメージが全くわかない。
あれから、花の図鑑など見漁ってみたけれど、東の端の国のものまではなかった。
「水の中に咲く花ですか? 不思議なものですね……想像がつきませんよ」
そうこう話しているうちに中庭についた。
でも、どこに咲いているのか見当がつかなかったため、ぶらぶらしていると池にポコッと浮いているピンク色のものが見える。
「あれ、ですかね……? 」
恐る恐るジョージアを見てみると、うんうんと頷いている。
先ほど、話していたくらいの大きさのピンクの花が何個か浮いている。
「上からみてみようか? 」
池を見渡せるように東屋が設置してあるので、二人でそこへ足を運ぶ。
かわいい女の子とならいざしらず……妹の未来の旦那だと思うと、せつない。
そして、かなり美人なのだ。
下手に女の子と一緒にいるより、なぜかぐっと緊張した。
対面に優雅に座るジョージアは、先ほどの花を指さし、なかなかのものだと満足そうにしている。
僕もそちらに視線をうつすと、ジョージアのいうとおり見事な花であった。
「美しいですね。今度、妹にも教えてあげます」
「そうしてあげてくれ。去年はなかった花だ。気に入ってもらえるといいがな」
一通り目で楽しんだわけだが、そろそろ本題を伝えてもいいころじゃないだろうか?
「ジョージア様、我が家への招待状をお渡ししたく……今でもいいでしょうか? 」
そういって先ほど書いたばかりの招待状をポケットより出す。
なんだか、雰囲気のある東屋のおかげで、ラブレターでも渡しているようである。
僕は、そんな気は、全くないのだけど……
「そういえば、日にちは決まったの?」
「はい。そうですね。翌週の休日にさせていただきました。
一応妹の外聞もかんがみさせていただいて、ジョージア様へは僕からの招待状ということに
なっています。
ですが、我が家にいらしたら妹と話ができるように用意させていただいてます。
隠れ蓑というわけではないのですが、実は当日もう一方呼ぶことになっています。
アンナの友人なのですが、誰かまでは聞かされていません。
こちらの方は、私のほうで対応させていただくことになっています」
ほぅという言葉と面白いという顔でこちらをじっくり見られ、僕は少し恥ずかしくなった。
「それは、どちらが言い出したのだ? 」
「どちらと言いますと?
あえて言うなら二人でってところでしょうか?
妹は、何せものすごい縁談の数を受けていますからね。
特定の方と会っているとなると外聞がよくないですし、私はこのとおりモテませんから……
妹にあやかることになりました」
なるほどと頷いている。
納得しているらしい。
それはそれでちょっと! と思うが、事実、妹の縁談話はすさまじい。
それに比べ、全く何もないのは僕だ。
それを妹がなんとかしてくれると言ってくれるのだ。
すがれるものにはすがる。
ジョージアみたいにわらわら言い寄られるのも大変だが、全くないのも大変なのだ!
そして、卒業式のエスコートも控えている今現在、大変困っているのも事実。
今から打てる手は打っておかないと当日、泣くのは僕自身なのだ……
あぁ……妹よ……僕の天使!
いつもは、あれだけど……と、一人の世界に入っていった僕はジョージアに不思議そうに見つめられていた。
「サシャ殿? 戻ってきてくれ……」
「あ……はい、ただいま戻りました、ジョージア様。
と、いうことでですね、当日、妹のこと、よろしくお願いします」
そこまで言うと、僕は楽しみすぎて、また向こうの世界に戻りそうである。
「そうだ、家に招待してもらう仲になるのだ。
そろそろ、ジョージアと呼んでほしいのだが……
あと、もう少し砕けた話方で……」
目を明後日の方に泳がせたいが、この蜂蜜の瞳には何か特別な魔法でもかかっているのか……逸らせない。
「滅相もないですよ。と言いたいとこだけど、いいんで? そんなこと言っても」
「あぁ、構わない。正直、誰も彼もがかしこまって寄ってくるのはちょっと窮屈なんだ。
その方がありがたい。できれば、教室でもそうしてほしい」
そこで、ジョージアは、ほんのり微笑。
落ちない令嬢はいないだろう……何その笑顔……僕、恋に落ちそうですけど……ちょっと赤面。
「わかった。これからは、そのように。では、僕からも。サシャと呼んで」
こちらは、妹と同じ土台のはずなのだが、なぜか平凡な顔立ちになっている自分の最高の笑顔でお願いしておく。
「ん。サシャ、今度の招待、楽しみにしている! 」
そこで話は終わり、寮までまた一緒に歩く。
ちらほら、カップルが中庭の散策をしているのが見えていた。
男二人で中庭を散歩していることが、恥ずかしくなり二人とも赤面だ。
お互いの顔をみて指摘し合って、大きな声で笑ってしまう。
なんだ、ジョージアってかなりいいやつじゃん! 僕、かなり気に入ったかもしれない。
今日のひと時を両親への報告として書くことに決めたところだった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる