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夢の話Ⅳ
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「続けますね。
私は、子供が2歳になったときに、アンバー公爵家の本宅から出て、領地で暮らします。
そうですね……
子供が5歳になったころには、1度公都に戻りますが、心を病んでしまったので療養のため領地に
引っ込むことになっています。
仮病なのですけど……公都の煩わしさから逃げた形ですね。
正直、領地の収益も芳しくなくなってくるので、領主代行の役をもらって、
自由に改革することになるのですが、その事業を子供に見せて、今後に活かせるように
したいと考えています。
ちなみに、私の子供は、外見はジョージア様そっくりですが、中身は私に似るようです。
そのように育てますし……たくましくないと生きていけませんからね!」
3人のため息が重なる。
私、そんなにダメな子なのかしら……そう思ってしまう。
「一応、夢の中では10歳までは男の子として育てるつもりです。
ダメでしょうか?
教育は、両方の性別で同時にするつもりなのですが……」
さらにため息が深くなった気がする。
「そうね。できれば、きちんとした教育はしていった方がいいわ。
でも、規格外の話になっているから、どちらの基礎も必要ね。
男としての強さ、女としての強かさ。
品位、身振り、礼儀作法。
どれをとっても男女違うのだけど、両方うまくできるに越したことはないわ。
私もあなたもどちらかといえば、はねっかえりとはいえ女性よりですからね。
当然女性なので、当たり前ですけど……」
今後のことは、母にもきちんと相談しながら考えていこうと思う。
なんせ出産まで5年はあるのだから、焦る必要もない。
うまくいかないことがあれば、その都度修正すればいいだけのことだ。
「剣も武術もそれなりには使えるようにしようと思っています。
自分の身は自分で守ってほしいですからね。
あとは、そうですね、側近の話もしておきますね。
側近は全部で13人できるようです。
まずは、侍女として私が拾う子供と領地視察で誘拐されそうになった子供4人。
私を害そうとしているダドリー男爵家の二男と長女。
ちなみにダドリー男爵家はソフィアの生家で、のちに一族郎党死罪になりますが、
離縁させたこの2人の子供とその母は私の庇護下にいます。
あとは、ローズディア公国の第二王子。
トワイス国の第一王子。
エルドア国の第一王女と第二王子。
戦争孤児として、あの子自身が拾う子供ですが、エルドア国の子供が1人と
トワイス国の公爵令嬢ですね。
爵位がないものや低いものが多いのですよね。
側近たちは……ただし、一人大きな存在がいます。
公には側近として扱われませんが、トワイス国宰相ヘンリー・クリス・サンストーン。
ハリーが、私の子供の後ろ盾となります。
そして、国王になる殿下も彼女の見方となります」
そこまで話すと、父が休憩を求める。
ことが大きいのだ。
仕方がない。
かいつまんで話してもここまで広がると……整理していかないとおいついてこない。
さらに夜も深くなってきている。
少し疲れが表に出てきているが最後まできちんと聞こうとしてくれる両親と兄に感謝する。
「では、最後に王になるきっかけですが、ローズディア公国の第一王子とトワイス国
第二王子そしてエルドア国の第一王子が同時にクーデターを起こします。
それぞれ外部の国と共謀してです。
気を付けていても必ず起こります。
他国はわかりませんが、トワイス国の第二王子は自分が王になるよう育てられます
から……仕方がないこと。
ちなみに第二妃の子です。
一応、気を付けておいてください!」
「それは、トワイス国の第一王子が冷遇されていることに起因するのか?
生母もいなければ後ろ盾もないから……」
「そうです。
後ろ盾のない王子に誰が手を差し伸べますか?
お父様にもお兄様にもそのことを念頭においてほしいのです。
殿下が選ぶ未来の王太子はジルアートですから。
それに異を唱えるのが第二妃であり、第二王子です」
重い沈黙は仕方がない。
この国の未来だ。
大人がどれだけ頑張って修正しようと戦争にクーデターに揺るがずに進むだろう。
「始まりは、ローズディア公国の外から宣戦布告があります。
アンバー公爵領とはちょうど逆側になるので、領地は安全でそのまま大丈夫ですね。
そして、そのクーデターは、第二王子であるプラムにまで刃が届くことになります。
それを救うのはうちの子なんですがね……
ちょっと間に合わないようです。
でも、命は救われますし、その後もちゃんと軍部の幹部になっているので大丈夫でしょう。
そのあと、一週間もしないうちにエルドア国で内乱が起こります。
第一王子が先導します。
上位貴族を味方につけているようです。
内側から外側に広がるように焼かれて、国力はそれまでの半分にも落ちてしまいます。
さらに同時期にトワイス国も起こります。
トワイス国は、ローズディア公国より救援要請を受けて向かった兵が、第二王子に
唆されてそのまま王宮に攻めてくると考えてください。
それらの陣頭指揮をとり、それぞれの王や王族を守り、民への救援をするのが、
私の子供なのです。
そのころには、トワイス国第一王子の婚約者になると噂されているところですが、
領主になるためにいろいろと頑張っているので、お断りしているところです。
私がまいた種が少しずつ花を咲かせるころなので、犠牲はどうしても出ますが
それほど苦労もなく戦争も内乱も納められるはずです。
別に王族が、無能なわけではないのです。
うちの子が優秀なだけで……
そこで、民からと貴族からの要望でアンバーが取り上げられます。
そして、語るのがハリー。
本来の王家の形に戻しましょう、三国が一国となり、難局を支えおうではないかということで、
いただく冠となります。
そこからは、私は夢は見れませんでした。
でも、私の娘ですからね……わかると思います」
話終えると、3人からため息が漏れる。
ため息しかでないのであろうことはわかる。
私もここ何年もいろいろなシーンを見ては書き綴り、夢はどんどん膨大なものになっていった。
ただ、これがこれから現実に起こるのなら、なるべく犠牲は少なくしたい。
「私が、トワイス国で結婚した場合も夢は、告げてくれています。
幸せな結婚と引き換えに先ほど言ったように、私の家族や友人は殺されてしまいます。
そして、この国を含めこの3国はなくなります。
それは、内乱から始まり帝国の侵略によりなくなってしまいます。
なすすべもなく、女子供は、売られたり奴隷にされ、男は強制労働や戦で無駄死に
させられると……それだけは、私は避けたい。
この2つ目の選択により、全部は救えない……でも、救える命もあるのだと信じたいのです。
どうか、お父様、お母様、お兄様、私に力を貸してください。
夢の続きを……あるべき姿に……」
涙ながら訴えることしか、私にはできない。
途中で退場してしまう私は、子供を産み、育てることが定めだが、死もまた定めとなっている。
最後まで見届けてあげられないのであれば、私の味方となってくれる人が、我が子を正しき道を選べるように導いてほしい。
父になるジョージアには、それは難しいと夢では告げられているのだから……
私は、子供が2歳になったときに、アンバー公爵家の本宅から出て、領地で暮らします。
そうですね……
子供が5歳になったころには、1度公都に戻りますが、心を病んでしまったので療養のため領地に
引っ込むことになっています。
仮病なのですけど……公都の煩わしさから逃げた形ですね。
正直、領地の収益も芳しくなくなってくるので、領主代行の役をもらって、
自由に改革することになるのですが、その事業を子供に見せて、今後に活かせるように
したいと考えています。
ちなみに、私の子供は、外見はジョージア様そっくりですが、中身は私に似るようです。
そのように育てますし……たくましくないと生きていけませんからね!」
3人のため息が重なる。
私、そんなにダメな子なのかしら……そう思ってしまう。
「一応、夢の中では10歳までは男の子として育てるつもりです。
ダメでしょうか?
教育は、両方の性別で同時にするつもりなのですが……」
さらにため息が深くなった気がする。
「そうね。できれば、きちんとした教育はしていった方がいいわ。
でも、規格外の話になっているから、どちらの基礎も必要ね。
男としての強さ、女としての強かさ。
品位、身振り、礼儀作法。
どれをとっても男女違うのだけど、両方うまくできるに越したことはないわ。
私もあなたもどちらかといえば、はねっかえりとはいえ女性よりですからね。
当然女性なので、当たり前ですけど……」
今後のことは、母にもきちんと相談しながら考えていこうと思う。
なんせ出産まで5年はあるのだから、焦る必要もない。
うまくいかないことがあれば、その都度修正すればいいだけのことだ。
「剣も武術もそれなりには使えるようにしようと思っています。
自分の身は自分で守ってほしいですからね。
あとは、そうですね、側近の話もしておきますね。
側近は全部で13人できるようです。
まずは、侍女として私が拾う子供と領地視察で誘拐されそうになった子供4人。
私を害そうとしているダドリー男爵家の二男と長女。
ちなみにダドリー男爵家はソフィアの生家で、のちに一族郎党死罪になりますが、
離縁させたこの2人の子供とその母は私の庇護下にいます。
あとは、ローズディア公国の第二王子。
トワイス国の第一王子。
エルドア国の第一王女と第二王子。
戦争孤児として、あの子自身が拾う子供ですが、エルドア国の子供が1人と
トワイス国の公爵令嬢ですね。
爵位がないものや低いものが多いのですよね。
側近たちは……ただし、一人大きな存在がいます。
公には側近として扱われませんが、トワイス国宰相ヘンリー・クリス・サンストーン。
ハリーが、私の子供の後ろ盾となります。
そして、国王になる殿下も彼女の見方となります」
そこまで話すと、父が休憩を求める。
ことが大きいのだ。
仕方がない。
かいつまんで話してもここまで広がると……整理していかないとおいついてこない。
さらに夜も深くなってきている。
少し疲れが表に出てきているが最後まできちんと聞こうとしてくれる両親と兄に感謝する。
「では、最後に王になるきっかけですが、ローズディア公国の第一王子とトワイス国
第二王子そしてエルドア国の第一王子が同時にクーデターを起こします。
それぞれ外部の国と共謀してです。
気を付けていても必ず起こります。
他国はわかりませんが、トワイス国の第二王子は自分が王になるよう育てられます
から……仕方がないこと。
ちなみに第二妃の子です。
一応、気を付けておいてください!」
「それは、トワイス国の第一王子が冷遇されていることに起因するのか?
生母もいなければ後ろ盾もないから……」
「そうです。
後ろ盾のない王子に誰が手を差し伸べますか?
お父様にもお兄様にもそのことを念頭においてほしいのです。
殿下が選ぶ未来の王太子はジルアートですから。
それに異を唱えるのが第二妃であり、第二王子です」
重い沈黙は仕方がない。
この国の未来だ。
大人がどれだけ頑張って修正しようと戦争にクーデターに揺るがずに進むだろう。
「始まりは、ローズディア公国の外から宣戦布告があります。
アンバー公爵領とはちょうど逆側になるので、領地は安全でそのまま大丈夫ですね。
そして、そのクーデターは、第二王子であるプラムにまで刃が届くことになります。
それを救うのはうちの子なんですがね……
ちょっと間に合わないようです。
でも、命は救われますし、その後もちゃんと軍部の幹部になっているので大丈夫でしょう。
そのあと、一週間もしないうちにエルドア国で内乱が起こります。
第一王子が先導します。
上位貴族を味方につけているようです。
内側から外側に広がるように焼かれて、国力はそれまでの半分にも落ちてしまいます。
さらに同時期にトワイス国も起こります。
トワイス国は、ローズディア公国より救援要請を受けて向かった兵が、第二王子に
唆されてそのまま王宮に攻めてくると考えてください。
それらの陣頭指揮をとり、それぞれの王や王族を守り、民への救援をするのが、
私の子供なのです。
そのころには、トワイス国第一王子の婚約者になると噂されているところですが、
領主になるためにいろいろと頑張っているので、お断りしているところです。
私がまいた種が少しずつ花を咲かせるころなので、犠牲はどうしても出ますが
それほど苦労もなく戦争も内乱も納められるはずです。
別に王族が、無能なわけではないのです。
うちの子が優秀なだけで……
そこで、民からと貴族からの要望でアンバーが取り上げられます。
そして、語るのがハリー。
本来の王家の形に戻しましょう、三国が一国となり、難局を支えおうではないかということで、
いただく冠となります。
そこからは、私は夢は見れませんでした。
でも、私の娘ですからね……わかると思います」
話終えると、3人からため息が漏れる。
ため息しかでないのであろうことはわかる。
私もここ何年もいろいろなシーンを見ては書き綴り、夢はどんどん膨大なものになっていった。
ただ、これがこれから現実に起こるのなら、なるべく犠牲は少なくしたい。
「私が、トワイス国で結婚した場合も夢は、告げてくれています。
幸せな結婚と引き換えに先ほど言ったように、私の家族や友人は殺されてしまいます。
そして、この国を含めこの3国はなくなります。
それは、内乱から始まり帝国の侵略によりなくなってしまいます。
なすすべもなく、女子供は、売られたり奴隷にされ、男は強制労働や戦で無駄死に
させられると……それだけは、私は避けたい。
この2つ目の選択により、全部は救えない……でも、救える命もあるのだと信じたいのです。
どうか、お父様、お母様、お兄様、私に力を貸してください。
夢の続きを……あるべき姿に……」
涙ながら訴えることしか、私にはできない。
途中で退場してしまう私は、子供を産み、育てることが定めだが、死もまた定めとなっている。
最後まで見届けてあげられないのであれば、私の味方となってくれる人が、我が子を正しき道を選べるように導いてほしい。
父になるジョージアには、それは難しいと夢では告げられているのだから……
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