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お出かけ先は……

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「セバスは、今回のに何故ついてこようとしたの?」
「僕は、おもしろそうなことが起こるだろうと思ってね!」


 私は、セバスのついてくる理由がわからなかった。
 なので、率直に聞くことにしたのだ。


「何それ……そのために馬に乗る練習してたの?」


 ナタリーに暴露されて、慌てているセバス。
 セバスも言わずもがな、運動音痴であり、馬に乗れなかったのだ。
 ちなみに、兄は、未だに馬に嫌われるので乗れない。


「乗れるようになったの?」
「はい。乗れるようになりました。
 ちゃんとウィルやナタリーに置いて行かれることはないようになりましたから……」
「なら、よかったわ。私、本当に強行で行くつもりだから、耐えられないと厳しいのよ」
「大丈夫です。ついていきますから!!!」


 必死なセバスを私がふふふと笑うと、他の三人も笑い出す。
 私にとって、とても居心地のいい友人たちだ。



「行先で、アンナリーゼ様は一体何をされるのですか?」


 ナタリーからの質問は、当然のことだった。
 口止めをしつつ、掻い摘んでニナの話をする。


 ヒューと口笛を吹いて茶化すウィルに、さすがと笑うナタリー、内政向きのセバスはちょっと顔が青くなっている。


「それで、ニナをお嫁に出すんだけど、その時に従者として両親がついて行かないか打診しようかと
 思って。双子の弟たちは、うちでみてもいいしなって話になってるのよ」
「姫さんってさ、ホント何者?って感じだよね?」
「私は、ただの侯爵令嬢よ?」
「侯爵令嬢の枠を超えてると思うけど……」


 そうかしら?と首をひねると、セバスとナタリーはウィルに同意して頷いている。


「確かに、学校での成績は、あまりよくないものね……」
「それは、思う。セバスが企てるなら、わかるけど……手加減の知らない姫さんに目を付けられた、
 伯爵も可哀想だな」
「それをやってのけた侍女も優秀だね……僕は、そっちを褒めたいよ!」
「セバスは、わかってるわね!ウィル、私じゃなくて、デリアを褒めるべきよ!!」
「あぁ、はいはい。どっちにしろ、主従そろってすごいよ!」
「チームアンナに入ってもいいよって思わない?」


 勧誘は、大事だ。
 有益な人材は、常に勧誘しておかないといけない。
 むしろ、目の前にいる三人は、是非ともほしい人材である。


「俺、近衛が決まってるって言ってるじゃん……」
「だよね。気が向いたら、ウィルも入ってね!!今、まだ、二人しかいないから!!」


 胸を張って言うことではないが、私の元には今のところ、デリアとニナしかいない。
 兄や家族は、手伝ってくれるだろうけど、トワイス国でそれぞれ役割があるのだから、数に数えられないでいる。


「チームアンナは、私でも入れますか?」
「もちろんよ?でも、ナタリーは、政略結婚が決まっていると聞いているから、勧誘は控えていたの」
「そうでしたか……政略結婚さえなければ……」
「あ……ナタリーさん?そんな、思いつめるものでは、ないわ!
 そう、結婚してても今みたいにお茶会で私にいろいろお話してくれるだけで、十分なんだから!!」


 私の一言で、いっきにナタリーの顔は花が咲くように綻んだ。


「私も情報提供なら、お役にたてると思います!」
「それなら、僕も役に立てることもあるかな……?
 国が違うから……そんなに役に立てると思ってないんだけど……」
「いいえ、そんなことないわ。二人ともありがとう。
 でも、セバスは、守秘義務もあるでしょ?
 だから、情報提供っていうより、私の相談にのってくれると嬉しいかな?」
「サシャ様がいるのに、僕なんて……」
「お兄様では、ダメなのよ……そのうち、どういうことかわかると思うわ」
「そのうち?何かあるのか?」
「今は、秘密。それより、お出かけの話しましょ?」


 今は、私が政略結婚でローズディアへ嫁ぐことを三人には、はぐらかしておいた。
 ジョージアとのことが明らかになれば、今後は協力も仰ぎやすくなる。
 今は、ただ、友人として親交を深めるだけだ。
『チームアンナ』に興味も持ってもらえたようだし、それぞれ役職を持ってから私が引き抜きたい。


「行先は、さっきも言ったけど、ワイズ伯爵領。そこに、ニナの両親と双子の弟たちがいるの。
 隣国へ嫁がせるつもりのニナと両親を一緒にしたいのよ。
 それの説得にいくつもりなのだけど……」
「ニナっていう侍女に、そんな価値あるのか?エリザベスを裏切っていたんだろ?」
「そうなのよね。でも、手足となって動いてくれるのは、正直ありがたいの。
 しかも、エルドアの情報元になってくれるのは、本当に助かるから……
 でも、一人で行かせるのは、可哀想かなぁ?って。
 弟たちのために出稼ぎまでしてたんだし、そこは、鑑みてあげてもいいと思うの。
 それに、未来には、きっと必要なことなのよ」


 納得は、未来が現実になるまではできないだろう……少しずつ、未来への種まきはしておきたい。


「それでね、今考えてたんだけど、一時的に三人が私の従者になってくれないかしら……?」
「もちろんいいよ。俺は、護衛だな。セバスは執事?ナタリーは侍女か?」
「うん。そんな感じ。二人はいい?」


 セバスとナタリーも了承してくれたので、ニナの実家ではそのように動くこといなった。
 契約書を交わすのに下地をセバスが作ってくれ、ナタリーは私の体のケアをすることになる。


「では、金曜の朝5時にこのお屋敷を出発するから、前日からこちらにきてくれる?
 兄と一緒に帰ってきてくれれば大丈夫よ。それぞれ、護身用の武器は持ってきて。
 服装は、お忍び用のでお願いね。
 あと、最終日にお茶会をしようとしているから、その衣装は兄に渡しておいてくれる?
 お茶会は、フレイゼン領の屋敷でするつもりだから」


 そこまで話すと、それぞれ用意するものの算段しているようだ。

 その後は、学園のことを話してくれる。
 イリアは、謹慎となったようだ。
 私より長い期間となっているので、少し心配はするが、大丈夫でしょう。
 これで少ししおらしい令嬢になれば、きっとハリーも気にかけてくれるはずだ。


 少し話を聞いただけで、次に学園に行くのがものすごく楽しみになった。
 相変わらず、ウィルは、私への挑戦者を蹴散らしているらしい。
 台風の目となる私が学園にいないので、今は学園がひっそりと静からしい。


「姫さん、早く学園に出て来いよ!いないとおもしろくないから!」


 ウィルの発言は、どうなんだろう……?
 そんなトラブルメーカーのように言われるのは、不本意だったが、他の二人も同じようなことを言っているので、納得はできないが、そうなのかなぁ……と思ってしまった。


「再来週には、元気いっぱい学園に行くわ!その前に、お出かけのほうよろしくね!!」


 今日はここまでと母の侍女が、門限までに帰れるよう手配してくれた馬車に三人が乗り込んで学園へ帰っていった。
 私はそれを見送り、次に会えることを楽しみに、火傷の治療に専念するのであった。
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