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日常の変化
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ジョージアたちの卒業式が終わり、新しい年度の始まりを迎えていた。
私は相変わらずだったし、殿下もハリーも相変わらずであった。
友人たちも特に変わったところはなかった。
変わったのは、日常的にあった校舎裏へのお呼び出しがより一層増えたこと。
告白から始まり、ジョージア派閥にハリー派閥、自国の公爵令嬢に虐められるようになった。
虐めと言っても……校舎裏への呼び出しが多くなったって言う程度だ。
取り巻きを含め、セリフはいつも同じなのだ。
最近少しずつ変化をつけているようだが、結局内容は、どのお呼び出しでも同じでつまらない。
悪役令嬢でも目指しているのか、悪口のレパートリーの少なさが残念である。
私、悲劇のヒロインになったつもりで、涙を流しながら崩れ落ちたほうが雰囲気的にいいのだろうか?
なんて、くだらないことを真顔で考えながら今日も同じ言葉を繰り返し聞いているところだ。
呼び出しが増えたのだから、そろそろひねりのきいたセリフの一つでも持ってきてほしいものだ!
去年の3割増しで、うんざりしているし聞いているのも退屈しているところだ。
元々、公爵令嬢のイリアは、ハリーに想いを寄せている。
なのに相手にされてないから、私に八つ当たりをしてきているのだが……小さい頃からハリー一筋であることには感心してしまう。
私に対して八つ当たりと言うのは、全くのとばっちり……とは言い難い。
ハリーも昨年度の卒業式のパートナーとして、私に打診してくれているくらいだから。
ジョージアと約束があったので断ったのだが、ハリーはその後、誰にも卒業式のパートナーを申し込んでないらしい。
そこで、イリア嬢に打診していたら、先に私への打診があったことで角は立つかもしれないが、とりあえず、私のお呼び出しの回数は増えなかったであろう。
「ジョージア様は、籠絡できたとしても、ヘンリー様はそうはいきませんから!」
「変に色目なんて使わないでちょうだい!」
「あなたのような淫乱な侯爵令嬢なんて、見たことありませんわ!」
「私のヘンリー様に関わらないでください!ただじゃおきませんよ!!」
「ヘンリー様はお優しいから、あなたのような誰彼構わず誑し込んでいるような人でも、相手にされる
のよ!少しは、謹みなさい!」
エトセトラ、エトセトラ……
ようは、ハリーに近づくなと言いたいらしいが、1日に2回も呼び出されたら、だんだんめんどくさくなってくる。
逆にローズディアのお嬢様方の反応は、かなり友好的なのだ。
よっぽど、ダドリー男爵家のソフィアが、ローズディアの令嬢たちから嫌われているのだろう。
卒業式にソフィアも来ていて私を射殺すかのごとく見ていたが、これ見よがしに私はジョージアにより着飾れていたわけだ。
国の花である薔薇をふんだんにあしらったドレスに、公国外には未発表となっている青薔薇の宝飾品を身につけていた。
ジョージアと並ぶためだけに用意されたモノで、全てジョージアが私のために作らせたモノだと、ご令嬢たちの耳にも入っているのだろう。
「アンナリーゼ様は、どのようにジョージア様の心を射止めたのかしら?」
「ご婚約の話は聞いてないけど……アンナリーゼ様が卒業されたら、ご婚約されるのかしら?」
「卒業式のお二人はとってもお似合いでしたね……」
「ソフィア様と婚約なんて、おやめになればよろしいのですよ!」
両国のご令嬢が、私の評価を勝手にしてくれている。
卒業式に参加していなかった在校生も噂話に入っているのから、ハリーとジョージアの人気ぶりに感嘆だ。
「デビュタントの時もかなり話題になっていたけど、アンナは今回もかなり話題になっているね?」
ハリーが呑気に総評をしてくれているが、私にとって何も特別な卒業式ではなかった。
『予知夢』で予見することができなかっただけで、あとはジョージア様と一緒に過ごしただけの卒業式である。
「そうなのよね……話題になっているのはいいのだけど、呼び出しが増えたのが……
正直めんどくさいわ……ハリー、イリア嬢はなんとかならないの?」
明け透けにいう私にハリーは肩をすくめるだけだった。
「それは、仕方ないであろう?あの者は、ハリーの第一夫人を狙っておるのだから……」
「殿下……それだけは……」
殿下に本当のことを言われ、ばつの悪そうにしているハリー。
でも、私は、そんなに悪い取り合わせではないと思っているのだが、本人が嫌だというものを勧めるわけにもいかない。
「イリア嬢ももう少し控えめにすれば、素敵な女性だと思うけど?って、一度冗談でもいいから
言ってあげたら?もう少しナチュラルな君の方が素敵さ!とか」
本人にその気がないのだが、殿下に追随するように私もハリーをからかう。
「それで治るなら……一度試してみるよ!あの、ケバケバしさは正直寄ってきてほしくない程、
なんだよね……殿下はよくデビュタントで我慢できましたね……?」
本音ダダ漏れのハリーにご愁傷様と殿下と私が片肩ずつ手を置くと、ハリーからため息が漏れる。
私は、ジョージアの婚約話で結構頭いっぱいになっていたが、実は、ハリーもイリアのところからかなりの重圧をかけられているらしい……
同じ公爵位のため、無下にもできず笑って躱しているらしいが、それも時間の問題だろうって聞いたことがある。
もうそろそろ、本当に、それぞれの結婚相手が決まるのだ。
この楽しい日常も、さらに劇的に変化していくことになりそうで寂しい。
◆◇◆◇◆
今年の新入生にローズディア公国の第二公女が学園に入ってきて話題になっている。
入学式でチラッと見たら、どことなくジョージアに似ているような雰囲気をもった可愛らしい女の子だった。
容姿は淡い青みがかった金髪で目は翡翠のような色をしている。
うっすらと瞳の淵には蜂蜜色が混ざっているような不思議な瞳であった。
何はともあれ、そう、とっても美人なのである。
是非ともお友達になって、殿下に紹介しようと私も躍起になっているところだ。
秘密のお茶会で、こっそり名前とか好きなお菓子とか色々調査済みであるのだが、ただ、公族なのでなかなかお目通りが叶わないので、躍起になっていると言っても大人しくしているしかないのだった。
私は相変わらずだったし、殿下もハリーも相変わらずであった。
友人たちも特に変わったところはなかった。
変わったのは、日常的にあった校舎裏へのお呼び出しがより一層増えたこと。
告白から始まり、ジョージア派閥にハリー派閥、自国の公爵令嬢に虐められるようになった。
虐めと言っても……校舎裏への呼び出しが多くなったって言う程度だ。
取り巻きを含め、セリフはいつも同じなのだ。
最近少しずつ変化をつけているようだが、結局内容は、どのお呼び出しでも同じでつまらない。
悪役令嬢でも目指しているのか、悪口のレパートリーの少なさが残念である。
私、悲劇のヒロインになったつもりで、涙を流しながら崩れ落ちたほうが雰囲気的にいいのだろうか?
なんて、くだらないことを真顔で考えながら今日も同じ言葉を繰り返し聞いているところだ。
呼び出しが増えたのだから、そろそろひねりのきいたセリフの一つでも持ってきてほしいものだ!
去年の3割増しで、うんざりしているし聞いているのも退屈しているところだ。
元々、公爵令嬢のイリアは、ハリーに想いを寄せている。
なのに相手にされてないから、私に八つ当たりをしてきているのだが……小さい頃からハリー一筋であることには感心してしまう。
私に対して八つ当たりと言うのは、全くのとばっちり……とは言い難い。
ハリーも昨年度の卒業式のパートナーとして、私に打診してくれているくらいだから。
ジョージアと約束があったので断ったのだが、ハリーはその後、誰にも卒業式のパートナーを申し込んでないらしい。
そこで、イリア嬢に打診していたら、先に私への打診があったことで角は立つかもしれないが、とりあえず、私のお呼び出しの回数は増えなかったであろう。
「ジョージア様は、籠絡できたとしても、ヘンリー様はそうはいきませんから!」
「変に色目なんて使わないでちょうだい!」
「あなたのような淫乱な侯爵令嬢なんて、見たことありませんわ!」
「私のヘンリー様に関わらないでください!ただじゃおきませんよ!!」
「ヘンリー様はお優しいから、あなたのような誰彼構わず誑し込んでいるような人でも、相手にされる
のよ!少しは、謹みなさい!」
エトセトラ、エトセトラ……
ようは、ハリーに近づくなと言いたいらしいが、1日に2回も呼び出されたら、だんだんめんどくさくなってくる。
逆にローズディアのお嬢様方の反応は、かなり友好的なのだ。
よっぽど、ダドリー男爵家のソフィアが、ローズディアの令嬢たちから嫌われているのだろう。
卒業式にソフィアも来ていて私を射殺すかのごとく見ていたが、これ見よがしに私はジョージアにより着飾れていたわけだ。
国の花である薔薇をふんだんにあしらったドレスに、公国外には未発表となっている青薔薇の宝飾品を身につけていた。
ジョージアと並ぶためだけに用意されたモノで、全てジョージアが私のために作らせたモノだと、ご令嬢たちの耳にも入っているのだろう。
「アンナリーゼ様は、どのようにジョージア様の心を射止めたのかしら?」
「ご婚約の話は聞いてないけど……アンナリーゼ様が卒業されたら、ご婚約されるのかしら?」
「卒業式のお二人はとってもお似合いでしたね……」
「ソフィア様と婚約なんて、おやめになればよろしいのですよ!」
両国のご令嬢が、私の評価を勝手にしてくれている。
卒業式に参加していなかった在校生も噂話に入っているのから、ハリーとジョージアの人気ぶりに感嘆だ。
「デビュタントの時もかなり話題になっていたけど、アンナは今回もかなり話題になっているね?」
ハリーが呑気に総評をしてくれているが、私にとって何も特別な卒業式ではなかった。
『予知夢』で予見することができなかっただけで、あとはジョージア様と一緒に過ごしただけの卒業式である。
「そうなのよね……話題になっているのはいいのだけど、呼び出しが増えたのが……
正直めんどくさいわ……ハリー、イリア嬢はなんとかならないの?」
明け透けにいう私にハリーは肩をすくめるだけだった。
「それは、仕方ないであろう?あの者は、ハリーの第一夫人を狙っておるのだから……」
「殿下……それだけは……」
殿下に本当のことを言われ、ばつの悪そうにしているハリー。
でも、私は、そんなに悪い取り合わせではないと思っているのだが、本人が嫌だというものを勧めるわけにもいかない。
「イリア嬢ももう少し控えめにすれば、素敵な女性だと思うけど?って、一度冗談でもいいから
言ってあげたら?もう少しナチュラルな君の方が素敵さ!とか」
本人にその気がないのだが、殿下に追随するように私もハリーをからかう。
「それで治るなら……一度試してみるよ!あの、ケバケバしさは正直寄ってきてほしくない程、
なんだよね……殿下はよくデビュタントで我慢できましたね……?」
本音ダダ漏れのハリーにご愁傷様と殿下と私が片肩ずつ手を置くと、ハリーからため息が漏れる。
私は、ジョージアの婚約話で結構頭いっぱいになっていたが、実は、ハリーもイリアのところからかなりの重圧をかけられているらしい……
同じ公爵位のため、無下にもできず笑って躱しているらしいが、それも時間の問題だろうって聞いたことがある。
もうそろそろ、本当に、それぞれの結婚相手が決まるのだ。
この楽しい日常も、さらに劇的に変化していくことになりそうで寂しい。
◆◇◆◇◆
今年の新入生にローズディア公国の第二公女が学園に入ってきて話題になっている。
入学式でチラッと見たら、どことなくジョージアに似ているような雰囲気をもった可愛らしい女の子だった。
容姿は淡い青みがかった金髪で目は翡翠のような色をしている。
うっすらと瞳の淵には蜂蜜色が混ざっているような不思議な瞳であった。
何はともあれ、そう、とっても美人なのである。
是非ともお友達になって、殿下に紹介しようと私も躍起になっているところだ。
秘密のお茶会で、こっそり名前とか好きなお菓子とか色々調査済みであるのだが、ただ、公族なのでなかなかお目通りが叶わないので、躍起になっていると言っても大人しくしているしかないのだった。
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